日本透析医学会雑誌
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40 巻, 6 号
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第51回日本透析医学会ワークショップより
原著
  • 佐藤 英一, 白石 裕盛, 池田 耕一, 福田 祐幹, 須藤 祐司
    2007 年 40 巻 6 号 p. 483-489
    発行日: 2007/06/28
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    【目的】血液透析患者に発生した骨折症例をretrospectiveに集計し, 副甲状腺機能ならびに骨密度などの背景因子の検討を試みたので報告する. 【対象と方法】血液透析患者312症例中, 2003年から2005年までの間に骨折の診断を受けた25症例 (8.0%) を対象とした. 背景因子として, 性別, 年齢, 透析期間, 原疾患, 測定項目としてintact PTH (iPTH), ALP, 骨密度等の各項目について検討した. 【結果】骨折症例は男女比で女性に有意 (p<0.01) に多く認められ, iPTH値と骨密度では有意 (p<0.01) に低値を示した. 2003年K/DOQIガイドラインに基づいてiPTHを3群に分類し検討したところ, Hypo群 (<150pg/mL) では骨折患者の割合がNormo群 (150~300pg/mL), Hyper群 (>300pg/mL) に比して有意 (p<0.05) に高いことが示された. 次にHypoの基準を200pg/mL未満として検討しても同様にHypo群ではNormo群 (200~300pg/mL), Hyper群 (>300pg/mL) に比して有意 (p<0.05) に骨折頻度が高いことが示された. 次に骨折の危険因子と考えられたiPTHと骨密度との関係について検討したところ, iPTH Hypo群 (<150pg/mL) においては, Normo群, Hyper群に比して有意 (p<0.05) に骨量が保たれていた. 【結論】iPTHの低値例において骨折が有意に多く認められ, また骨密度が有意に保たれていた. 骨折予防のためにはiPTHの目標下限値を若干高めに設定することが必要と考えられた. さらに骨量が保たれていても, 低回転骨を示している場合があり, 血液透析導入時や骨折発症以前の時期から注意を要する必要があると考えられた.
  • 山本 忠司, 出雲谷 剛, 奥野 仙二, 山川 智之
    2007 年 40 巻 6 号 p. 491-500
    発行日: 2007/06/28
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    PD中止後腹腔洗浄を行った患者240名で, 腹腔洗浄中のEPS, 腸閉塞, 腹水貯留, CRP上昇に対する発症頻度とその危険因子解析についてコホート研究を行った. 洗浄中アウトカムは一次転帰 (腸閉塞, EPS) および二次転帰 (腹水貯留, CRP上昇) とし, 調査した予測因子はPD期間, PD中止時PET (D/P-Cr), PD中止時中皮細胞面積 (中止面積), 腹腔洗浄中のアウトカム生起時もしくは調査打ち切り時点での中皮細胞面積 (洗浄面積), 腹腔洗浄液種類とした. 一次転帰は13名 (5.4%), その内, EPSは4名, 二次転帰は42名 (17.5%), その内, 腹水貯留は34名であった. 危険因子は一次転帰, 二次転帰ともにPD期間, 中止面積, 洗浄面積であった. 感度および特異度から求められるカットオフ値は, 中止面積は一次転帰, 二次転帰ともに350μm2, 洗浄面積は一次転帰320μm2, 二次転帰300μm2, PD期間は一次転帰120か月, 二次転帰96か月であった. アウトカム累積発症率は, 一次転帰は予後良好群 (洗浄面積<320μm2およびPD期間<120か月) で1年発症率4.2%, 2年4.2%, 予後不良群 (洗浄面積≧320μm2およびPD期間≧120か月) で1年累積発症率39.7%, 2年39.7%と有意差を認めた (p=0.0138). 二次転帰は予後良好群 (洗浄面積<300μm2およびPD期間<96か月) で, 1年発症率5.3%, 2年5.3%, 予後不良群 (洗浄面積≧300μm2およびPD期間≧96か月) で1年発症率は55.5%, 2年70.3%と有意差を認めた (p=0.0013). 洗浄面積の変化では一次転帰群は3か月で低下し, 二次転帰群では9から15か月で最も低下した. 転帰なし群の中止面積350μm2未満群では27か月まで変化なく, 350μm2以上群では3から21か月目で低下した. 腹腔洗浄中止後のアウトカム調査では, 104名中3名にEPS, 4名に腹水貯留を認めた. 腹腔洗浄中にも一次転帰, 二次転帰は生起した. しかし, 危険因子であるPD期間96および120か月, 中止面積350μm2, 洗浄面積300および320μm2をカットオフ値とすることによりその発症率を抑制できることが示唆された.
  • 福井 淳
    2007 年 40 巻 6 号 p. 501-506
    発行日: 2007/06/28
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    【目的】慢性血液透析患者における長時間作用型カルシウム拮抗薬, 塩酸ベニジピン (以下, ベニジピン) の骨密度に及ぼす影響を検討する. 【方法】1年前に骨密度を測定していた降圧薬治療中の慢性血液透析患者30例で無作為割付並行比較試験を実施した. 登録患者をベニジピン治療群 (ベニジピン群, 16例) およびベニジピン非治療群 (コントロール群, 14例) に割付け, 1年後に骨密度を測定した. 【結果】血圧は試験期間を通じて両群ともに同程度まで低下していた. 骨密度はコントロール群で有意に低下したが (2.42→2.35mmAl, p<0.05), ベニジピン群では有意な変化は認められなかった (2.37→2.39mmAl, p=0.642). 【結語】本プレリミナリースタディで, ベニジピンは, 慢性血液透析患者において降圧作用に加えた骨密度の低下に対する抑制作用を持つことが示唆された. 今後, ベニジピンの骨代謝に及ぼす影響については, 多施設研究として, 骨代謝関連パラメータを含め, 詳細に検討する必要がある.
  • 小池 勤, 供田 文宏, 絹野 裕之, 杉森 弘子, 鍵谷 聡志, 井上 博, 林 省一郎, 中村 國雄, 林 健志, 平田 仁, 松本 三 ...
    2007 年 40 巻 6 号 p. 507-512
    発行日: 2007/06/28
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    血液透析患者において, ビタミンE固定化ダイアライザー (CL-EE) が血液粘性に及ぼす影響を酸化ストレスの面から検討した. 14例でCL-EEによる血液透析を1年間行い, その前後で血液粘性, 血漿粘性, ヘマトクリット, 血漿フィブリノーゲンおよび酸化ストレスの指標として血中酸化LDLを測定した. CL-EE使用前, 血液粘性は透析後に上昇した. 1年間のCL-EEによる透析後, 血液粘性は透析前ではCL-EE使用前と差はなく透析後に上昇した. しかし透析後の上昇は有意に抑制された (使用前, 3.1±0.3→3.8±0.9mPa・s ; 使用後, 3.1±0.3→3.4±0.5mPa・s ; 交互作用, p<0.05). 酸化LDLは, CL-EE使用前では透析後に上昇し, CL-EE使用後ではCL-EE使用前にくらべ透析前値と透析後の上昇は有意に抑制された (使用前, 3.3±1.0→4.2±2.0ng/μg LDL protein ; 使用後, 1.9±0.7→2.1±0.60ng/μg LDL protein ; 交互作用, p<0.05). CL-EE使用前後において, 透析後の血液粘性の変化は血漿粘性, ヘマトクリット, 血漿フィブリノーゲンの変化とともに酸化LDLの変化との間に正の相関 (r2=0.62, 0.60, 0.42, 0.17) を認めた. 以上より血液透析患者では, ビタミンE固定化ダイアライザーCL-EEの長期使用により, 酸化ストレスの軽減とともに透析後の血液粘性の上昇は抑制されることが示された. このCL-EEの臨床効果は, 透析患者の動脈硬化および心血管系疾患の発症および進展の阻止に有用である可能性が期待される.
短報
  • 櫻庭 陽, 武内 秀之, 武内 操, 庄司 みす, 森山 朝正
    2007 年 40 巻 6 号 p. 513-516
    発行日: 2007/06/28
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    維持血液透析患者のQOL低下が問題となっているが, その要因の一つである患者が抱える愁訴についての十分な報告は少ない. 今回われわれは, 患者が抱える愁訴の状況を把握すると同時に, その対策として期待されている鍼治療に関してアンケート調査を行った. その結果, 多くの血液透析患者 (92.7%) が複数の愁訴 (平均3.3愁訴/人) を抱えていること, 愁訴数と年齢および透析年数の関係性や各原疾患における愁訴の顕著な特徴がないことがわかった. 鍼治療については, 経験患者は少なく (30%), そのイメージの結果からも理解が得られていないことがわかった. 鍼治療を希望する患者も多く, 鍼治療が多用されている痛みやシビレの愁訴を抱える患者が多かった点から, 鍼治療が維持透析患者に貢献できる可能性を示唆した.
透析技術
  • 花房 規男, 近藤 靖司, 金子 知代, 丹羽 拓馬, 山本 裕子, 渡邊 恭通, 榎本 裕, 野入 英世, 藤田 敏郎
    2007 年 40 巻 6 号 p. 517-521
    発行日: 2007/06/28
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    【背景】近年, バスキュラーアクセスの穿刺困難例が増加している. 一方, 患者安全管理面から確実な穿刺への要請が高まりつつある. 従来こうした例では, 別の機会に超音波検査を行い, その記録をもとに穿刺を行わざるを得なかった. 最近携帯型の超音波診断装置を導入し, 穿刺に良好な効果を得ているので, 実際の手技につき, 標準手順とともに報告する. 【方法】超音波診断装置はSonosite 180 Plusを使用. 想定された穿刺部位から約1~2cm先に, 血管の短軸方向, つまり穿刺方向に直角にプローブを置きリアルタイムに観察を行う. 穿刺後, 穿刺針の先端がエコー上確認できたところで外筒を進め, 針を留置する. 【考察】血液透析は, アクセスの穿刺なくしては治療自体開始できない. このため, 良好なアクセスへのカニュレーションが十分な透析量の確保のみならず, 円滑な透析室の運営を行ううえでも, 非常に重要である. 本法は, リアルタイムに穿刺針が観察できるため, 容易に確実な穿刺が可能となる. 本法では血管の短軸方向で観察したが, 長軸方向で観察することも可能である. しかし, 長軸方向では, 観察面から穿刺針が外れると見失ってしまう点, プローブが穿刺の邪魔になる可能性がある点などの欠点が存在する. さらに, 短軸方向での観察では, プローブの左右と実際の穿刺側からみた左右を合わせることにより, 穿刺針の修正も容易である. 以上の点から, 短軸方向での観察は長軸方向での観察よりすぐれていると考える. 表在静脈では適応がやや困難であるが, それ以外のエコーで内腔が確認できる血管には適応が可能である. 【結語】短軸方向のエコーガイド下アクセス穿刺は, 穿刺困難例については, 非常に有用な穿刺補助法である.
透析看護
  • 中村 みどり, 寺脇 博之, 中山 昌明, 伊藤 貞嘉
    2007 年 40 巻 6 号 p. 523-529
    発行日: 2007/06/28
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    本邦PD施行施設での食塩コントロール指導に対する実態と医療者意識を把握することを目的とするアンケート調査を行った. 対象は東北地方40施設の食事指導責任者である. 実態に関する設問では, 指示量を日腎ガイドラインに基づき設定している施設は5.0%に過ぎず施設によりばらつきがみられた. 指示量設定には主に医師が, 指導には栄養士が担当しチーム医療が展開されていた. しかしながら指導の評価は半数以下の施設では行われていなかった. 指導頻度は, 「医師の指示があった時に適宜」行うとするのが最多であり, 定期的に行う施設は限られていた. 指導管理状況に関して, 「うまくいっている」と回答した施設 (40.0%) での主な理由は, 指導の反復, 患者背景を考慮した指導であり, 一方「うまくいっていない」と回答した施設 (55.0%) での主な理由は, 指導回数・体制の不備, 患者コンプライアンス不良であった. PD患者に対する食塩コントロールの目標設定および評価基準にばらつきがあり, その基準の策案と, 指導体制・指導内容の標準化が求められると考えられた.
症例報告
  • 中川 潤, 村松 崇, 大田 恵子, 安藤 稔
    2007 年 40 巻 6 号 p. 531-535
    発行日: 2007/06/28
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    血清抗アセチルコリン受容体抗体陰性, 筋特異的チロシンキナーゼ (Muscle specific tyrosine kinase ; MuSK) 抗体陽性の薬物治療抵抗性であった重症筋無力症患者に対して, 二重濾過血漿交換療法を施行したところ著効を示した症例を経験した. 症例は55歳, 女性. 2000年から重症筋無力症に罹患し, 胸腺摘出術, ステロイドパルス療法, プレドニゾロンおよび数種類の免疫抑制剤の併用療法で治療されていた. 発症時に2回の重症筋無力症クリーゼを経験していたが, 2005年6月に3回目のクリーゼのため当院神経内科に緊急入院した. 人工呼吸器管理となり, ステロイドパルス療法, γ-グロブリン大量療法を施行したが治療抵抗性であった. 人工呼吸器からの離脱も困難な状態が持続していたため, 二重濾過血漿交換療法 (DFPP) を開始したところ, 数回の施行後から呼吸状態および球症状の自覚的, 他覚的改善を認めた. DFPPを総計21回施行後, 重症筋無力症症状は軽減し退院可能となった. 現在, この患者はプレドニゾロン30mg隔日内服, およびタクロリムス3mgの内服に加えて約40日間隔で4回 (週2回, 2週間) のDFPP治療を定期的に追加することにより外来通院可能な状態が維持できている. 抗MuSK抗体陽性重症筋無力症の有病率は低いもののクリーゼ合併など重症例があり, 治療抵抗性のことが多いとされる. この症例の経験から本疾患の難治例を治療する上でDFPP療法選択の意義は大きいと考え, ここに報告する.
平成18年度コメディカル研究助成報告
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