日本透析医学会雑誌
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40 巻, 7 号
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第51回日本透析医学会ワークショップより
『新たな腹膜透析液の開発』
原著
  • 安永 親生, 松尾 賢三, 田中 弘, 馬場 三男, 中本 雅彦
    2007 年 40 巻 7 号 p. 573-579
    発行日: 2007/07/28
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    活性型ビタミンD3によるパルス療法は二次性副甲状腺機能亢進症 (2°HPT) における副甲状腺ホルモン (PTH) 分泌の抑制と高代謝回転骨の是正に有効である. しかし, 同療法が透析患者の臨床症状を改善し, 骨塩量の増加および副甲状腺のサイズを縮小させるかどうかについては議論が残る. 今回の研究では, Maxacalcitolを用いた静注パルス療法により, 2°HPTに典型的な臨床症状と骨塩量の改善および副甲状腺縮小の効果について1年間以上プロスペクティブに観察した. 対象は22例 (男性10例, 女性12例), 平均年齢55.6±11.3歳, 平均透析歴13.5±7.3年. 開始時intact-PTH 865±392pg/mLは48週後には409±253pg/mL (p<0.001) と約53%の低下を示し, 200pg/mL以下まで低下した症例は5例 (23%), 400pg/mL以下までの低下は10例 (45%) であった. Alpは開始時593±817IU/Lから48週後には252±135IU/Lと正常値近くに収束した. 腰椎の骨塩量 (%L2-4 BMD) は投与前87.8±14.2%から48週目には91.0±16.1% (p=0.033) と有意に改善した. 臨床症状スコアでは投与前17.3±11.8点より24週目のみで14.0±12.2点と有意に改善した (p=0.039). しかし, エコーで計測した副甲状腺総体積は投与前0.40±0.68cm3から48週目には0.49±0.76cm3 (p=0.023) と有意に増加した. Maxacalcitolによる静注パルス療法は, 全症例からみた場合には骨塩量の改善には有効であるが, 副甲状腺総体積の縮小には無効であった. しかし, intact-PTH<200pg/mL以下を安定して達成できた5例においては5%以上の腰椎骨塩量の増加と副甲状腺の縮小傾向を認めた.
  • 佐々木 信博, 上野 幸司, 白石 武, 久野 宗寛, 中澤 英子, 石井 恵理子, 安藤 康宏, 草野 英二
    2007 年 40 巻 7 号 p. 581-588
    発行日: 2007/07/28
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    生体電気インピーダンス法 (BIA法) は, 生体に微弱な電流を流して, 身体の体水分量 (TBW), 細胞外水分量 (ECW), 細胞内水分量 (ICW), 体脂肪量 (BFM) などを測定することが可能であり, 透析患者のドライウェイト (DW) の指標になり得ると考えられる. 高精度体成分分析装置であるInBody S20は, 多周波数分析, 8点接触型電極, 部位別測定, 仰臥位測定といった特徴を有し, 高い精度と再現性が立証されており, 近年, その臨床報告が相次いでいる.
    今回われわれは, 本装置を用い各種体液量を測定し, DWの指標となり得るか検討した. 対象は当院で維持透析を施行している41名で, 透析前後でInBody S20による各体液量と一般血液検査, hANPを測定し, 透析後に胸部X線による心胸比 (CTR) と超音波断層法による下大静脈径 (IVC) を測定した. その結果, 1) hANPは, CTR, IVCe (安静呼気時最大径) とそれぞれ有意相関 (p<0.01, p<0.05) を認めた. 2) 各種体水分量 (TBW, ECW, ICW) は, 透析後に有意に低下し, IVCeと有意相関 (p<0.001) を認めた. 3) 体水分量変化率 (%TBW) は, 循環血液量変化率 (%BV) や循環血漿量変化率 (%CPV) と有意相関 (p<0.001) を認めた. 4) 浮腫値 (ECW/TBW) は, 透析後に有意に低下し (p<0.001), hANPと有意相関を認めた (p<0.001). 5) InBodyで測定した透析後DW (BIA-DW ; 浮腫値0.38のBW) と臨床でのDW (cDW) は, 強い正相関を示した (r=0.99, p<0.001).
    InBody S20は, 簡便性, 非侵襲性, 即時性に優れ, 血液透析患者の体液量・体組成の定量的評価が可能で, 浮腫値や透析後BIA-DWは, 実際のDWの指標として有用と考えられた.
  • ―第二報 皮膚の明度の低下と年齢, 透析期間, 基礎疾患との関連―
    柴田 昌典, 太田 匡宣, 青木 隆成, 多和田 英夫, 谷口 信吉
    2007 年 40 巻 7 号 p. 589-594
    発行日: 2007/07/28
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    維持透析患者100名 (慢性腎炎55名, 糖尿病性腎症45名) と対照患者137名の皮膚の色調をコニカミノルタ社製の分光測色計CR-400®で定量的に測定した. 透析患者では有意に皮膚の明度が低く (p<0.01), この低下と年齢とは相関がなかったが, 維持透析の継続期間の長さとは有意の相関がみられた (p<0.01). 糖尿病性腎症による患者にくらべ, 慢性腎炎の患者の皮膚の明度は有意に低かった (p=0.0005). 維持透析患者にみられる皮膚の色素沈着が糖尿病性腎症患者では軽度である理由は不明であるが, インスリンがMSH代謝へ及ぼす影響の可能性につき述べた.
  • ―高分子量アディポネクチン-レプチン比の有用性について―
    對馬 惠, 寺山 百合子, 蔦谷 知佳子, 百瀬 昭志, 舟生 富寿, 大山 力, 羽田 隆吉
    2007 年 40 巻 7 号 p. 595-602
    発行日: 2007/07/28
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンとレプチンは肥満と密接に関連し, その血中濃度は男性より女性が高値, また一般人口にくらべ透析患者で高値を示すとされている. 著者らは, 透析患者の内臓脂肪面積を評価する新しい指標を得るために, 透析患者におけるアディポネクチンおよびレプチンと内臓脂肪面積との関連を検討した. 対象は, 血液透析患者104例と腎機能正常者35例 (対照) である. 測定項目はアディポネクチン (Adipo), レプチン (Lep), 内臓脂肪面積, 皮下脂肪面積であり, 加えて総アディポネクチンに対する高分子量アディポネクチンの比 (h-Adipo/t-Adipo) とアディポネクチンとレプチンの比 (Adipo/Lep ratio) を求めた.
    透析患者を内臓脂肪面積により, I群 (40cm2未満), II群 (40~70cm2), III群 (70~100cm2), IV群 (100cm2以上) に分類した. 総アディポネクチン, 高分子量アディポネクチン, レプチンおよびh-Adipo/t-Adipoは男性にくらべ女性が高値であった. また, I群にくらべ, 総アディポネクチンと高分子量アディポネクチンおよびh-Adipo/t-AdipoはIV群で有意に低値, レプチンはIII群とIV群で有意に高値, t-Adipo/Lep ratioとh-Adipo/Lep ratioはIII群とIV群で有意に低値であった. とくにh-Adipo/Lep ratioはIII群に対してもIV群で有意低値であった. 総アディポネクチン, 高分子量アディポネクチンおよびレプチンは男女それぞれに内臓脂肪面積と有意な相関性を認めた. h-Adipo/Lep ratioのlog値は男女ともに内臓脂肪面積と有意な負相関を示し, 2つの回帰直線の勾配は一致していた. 以上より, 透析患者においてh-Adipo/Lep ratioのlog値は内臓脂肪面積の指標として有用と考えられた.
  • 古久保 拓, 川口 博資, 和泉 智, 佐藤 みのり, 松永 千春, 前川 きよし, 田部 茂, 木村 英二, 奥野 仙二, 吉本 勝美, ...
    2007 年 40 巻 7 号 p. 603-608
    発行日: 2007/07/28
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    血液透析実施のためのバスキュラーアクセスを目的として, 一時的に留置された中心静脈カテーテル (central venous catheter : CVC) 関連感染症の発生率を2003年, 2004年の2年間を対象としてレトロスペクティブに調査した. 2年間で延べ439例に533本のCVCが使用され, CVC1本あたりの留置期間の中央値は14日であった. CVC留置後の発熱の頻度は14%であり, 11例にCVC関連感染症を認め, その頻度は1.63/1,000CVC-daysであった. これを留置部位別にみた場合, 内頸部留置時には0.83/1,000CVC-daysであったが, 鼠径部留置時には8.16/1,000CVC-daysと内頸部留置にくらべ9.8倍高く, 鼠径部留置時の感染症発生率 (7.4%) は内頸部留置時 (1.1%) にくらべ有意に高値であった (p<0.001). ロジスティック回帰分析によると, CVCの鼠径部留置がCVC関連感染症 (オッズ比4.98, 95%信頼区間1.34-18.54 ; p=0.017) および発熱 (オッズ比2.87, 95%信頼区間1.55-5.30 ; p<0.001) に対する有意な因子であった. またCVC関連感染症をきたした症例11例すべてにおいて, CVC先端培養もしくは静脈血培養検体のいずれかよりグラム陽性菌が同定されたが, グラム陰性菌および真菌は少数であった. これらのデータをふまえサーベイランスを実施することにより, 有効かつ効率的なCVC管理を行い, さらには透析患者におけるCVC関連感染症の危険因子を明らかにすることが重要と思われた.
症例報告
  • 吉岡 徹朗, 向山 政志, 内藤 雅喜, 中西 道郎, 原 祐介, 森 潔, 笠原 正登, 横井 秀基, 澤井 一智, 越川 真男, 齋藤 ...
    2007 年 40 巻 7 号 p. 609-615
    発行日: 2007/07/28
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    症例は, 39歳男性. 36歳時に硝子体出血を機に初めて糖尿病を指摘され, 以後当科で加療されていたが, 糖尿病性腎症によるネフローゼ症候群加療のため入退院を繰り返し, 次第に腎機能が低下した. 2005年5月に腸炎症状を契機に乏尿, 労作時息切れ, 下腿浮腫, 体重増加をきたし, 血清クレアチニン5.8→13.0mg/dLと急激に上昇したため, 血液透析導入目的で当科入院となった. 透析開始後, 積極的な除水にもかかわらず, 心胸比は縮小せず, 透析導入後第6病日以降血圧が低値となり, 第10病日には収縮期血圧で70mmHg前後にまで低下した. 心エコー検査にて心タンポナーデを認め, 心膜穿刺にて多量の血性心嚢液を吸引除去した. 臨床経過, 穿刺液の検査所見, 血清学的検査所見, 画像検査所見から, 尿毒症性心外膜炎と診断し, 心嚢腔の持続ドレナージと連日の血液濾過透析を行い軽快した.
    尿毒症性心外膜炎は, 透析治療が発達した今日ではまれであるが, 急性腎不全, 慢性腎不全の透析導入期, あるいは透析不足の維持透析患者において, 心嚢液貯留を認める場合, 溢水のほか, 悪性疾患や感染症, 膠原病とともに考慮する必要がある.
  • 小林 凡子, 岩本 麻里, 若林 麻衣, 花田 繁, 長岡 英気, 天野 英介, 菅野 隆彦, 羽田 俊彦, 藤原 等, 石田 雄二, 安藤 ...
    2007 年 40 巻 7 号 p. 617-621
    発行日: 2007/07/28
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    症例は13年間維持透析を行っている69歳の女性. 左上腕人工血管にて透析を行っていたが, 2週間前から続く左前腕部の無痛性発赤・腫脹のため来院した. 左前腕部正中に拍動性の腫瘤を触れ, 表在エコー, 3DCTを施行. 上腕動脈近傍の橈骨動脈に直径2.5×2.5×1.5cmの動脈瘤が認められ, 動脈瘤除去術を行った. 術後前腕の腫脹は軽快した. 病理組織像は仮性動脈瘤, 培養は陰性であった. 部位的に侵襲が加えられた既往はなく, 動脈硬化性の仮性動脈瘤が疑われた. 他部位の動脈瘤の存在は認めなかった. 血液透析患者における非医原性の孤立性動脈瘤の発生はまれであり, 報告する.
  • 関根 芳岳, 羽鳥 基明, 武井 智幸, 柏木 文蔵, 曲 友弘, 福間 裕二, 西井 昌弘, 濱野 達也, 山本 巧, 柴田 康博, 伊藤 ...
    2007 年 40 巻 7 号 p. 623-627
    発行日: 2007/07/28
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    Bartter症候群では一般的に腎不全に進行することは少ない. 今回われわれは腎不全を呈した小児Bartter症候群type IV症例に対して生体腎移植を施行した1例を経験したので報告する. 患者は15歳男児で, 新生児期より哺乳不良, 体重増加不良であり, 10か月時多飲多尿が出現した. 1歳9か月時の精査にて血漿レニン活性の高値, 低カリウム血症, 難聴などを認めたことからBartter症候群type IVと診断されインドメタシン, スピロノラクトン, 塩化カリウムの投与が開始された. 腎機能に関しては, 乳児期より低下していたが思春期になりさらに低下し, 生体腎移植目的に2004年4月に当科紹介受診となった. 2004年11月中旬に移植予定であったが, 10月中旬にBUN 156mg/dL, Cr 17.2mg/dLと腎機能の悪化を認めたため, 腎移植前のコンディショニングとして血液透析を開始し, 11月中旬に40歳の母親をドナーとして生体腎移植を施行した. Bartter症候群の腎移植症例として, 術前にRAA系の亢進は認めていなかったがマレイン酸エナラプリルとロサルタンカリウムを移植前より投与した. 腎移植後, 腎機能は改善しRAA系の亢進も認めていない. Bartter症候群では一般的に腎不全に進行することはまれであり, 腎不全の因子としてはBartter症候群の病態だけでなく, Bartter症候群の治療に用いられるNSAIDsもその因子のうちの一つである. またこれまでの報告を含め, 腎不全を呈したBartter症候群に対しては, 腎移植後に腎不全だけでなくBartter症候群による内分泌学的異常も改善し, 腎移植が有用な治療であると考えられた.
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