日本透析医学会雑誌
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41 巻 , 3 号
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委員会報告
第52回日本透析医学会コメディカルシンポジウムより
原著
  • 権藤 麻子, 松本 博, 岡田 知也, 長岡 由女, 吉野 麻紀, 外丸 良, 岩澤 秀明, 和田 憲和, 朱 時世, 林 亜美, 中尾 俊 ...
    2008 年 41 巻 3 号 p. 187-193
    発行日: 2008/03/28
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    糖尿病性腎症による透析患者は近年増加が著しく,これらの患者の糖代謝動態を把握する上で,内因性インスリン分泌能を評価することは重要である.経静脈内ブドウ糖負荷による急性インスリン分泌反応の測定により,患者自身の内因性インスリン分泌能を評価することはすでに確立された方法であるが,今回われわれはこれを血液透析施行中に行うことで同様に評価可能か否か検討した.血液透析患者19名に対し,非透析日の早朝空腹時に50%ブドウ糖20mLを1分間で静注負荷し,静注前,5分後,15分後の血糖(GLU)と血清インスリン(IRI)およびC-ペプチド(CPR)を測定した.同一患者で血液透析施行中の昼食前,または夕食前に体外循環回路より同様に行い,ブドウ糖負荷前後のGLUとIRIおよびCPRの濃度変化(5′Δ,15′Δ)を両者で比較した.その結果,血液透析施行中検査と非透析日早朝空腹時検査の相関関係は,5′ΔIRI(r=0.952,p<0.0001),15′ΔIRI(r=0.827,p<0.0001),5′ΔCPR(r=0.781,p<0.0001),15′ΔCPR(r=0.725,p<0.001)といずれも良好であり,とりわけ5′ΔIRIが最も強い相関を示した.また,糖尿病透析患者では非糖尿病患者にくらべ,5′ΔIRIは有意に低値であった(p=0.002).以上より,血液透析患者の内因性インスリン分泌能は,透析施行中の簡便な検査で評価可能と考えられる.
症例報告
  • 岡本 真智子, 中原 徳弥, 岩渕 仁, 浅野 学, 小口 健一, 中野 栄治
    2008 年 41 巻 3 号 p. 195-198
    発行日: 2008/03/28
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    62歳,女性,透析歴13年.左腕頭静脈狭窄に対して2006年8月初回PTA(percutaneous transluminal angioplasty),同年9月にステント留置を行った.その7日後より嗄声および嚥下障害が出現し,左声帯麻痺と診断された.薬物治療の継続により症状は徐々に軽快してはいるが,1年を経過してなお完全な回復には至っていない.PTAにおける多くの合併症は安全な操作を心がけることによって回避しうるが,このような稀な合併症を生ずる危険性を認識すべきであろう.
  • 小林 和裕, 井上 勉, 池田 直史, 鈴木 洋通, 伴 慎一
    2008 年 41 巻 3 号 p. 199-205
    発行日: 2008/03/28
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    ポリスチレンスルホン酸カルシウム(calcium polystyrene sulfonate:CPS)は急性および慢性腎不全による高カリウム血症の治療に用いられる陽イオン交換樹脂の一つである.CPSの副作用としては便秘がよく知られており下剤が併用されることが多い.またソルビトールを懸濁に用いた症例で腸管の潰瘍・壊死・穿孔が報告され添付文書にもソルビトールによる懸濁を行わないことと記載されている.一方でソルビトール不使用例でも腸管穿孔の報告がみられCPS自体の作用も考えられる.今回われわれはループス腎炎から末期腎不全となり腹膜透析(peritoneal dialysis:PD)施行中の患者で,CPSゼリー内服中に便秘が原因と考えられる直腸穿孔,緊急開腹手術を施行した症例を経験した.病理所見で穿孔部の壊死物質あるいは炎症性滲出物中に好塩基性を呈する多角形状のCPS crystalsが多数認められた.同様のCPS crystalsは穿孔部漿膜側のフィブリン化膿性腹膜炎を呈している部分の炎症性滲出物中にも認められた.穿孔部周囲の大腸粘膜には表層上皮の脱落,陰窩上皮の粘液減少と核の幼若化,萎縮性の陰窩,粘膜固有層の軽度出血などの所見がみられ軽度の虚血性変化を示していた.CPSを使用する際は,特に便秘傾向にある場合腸管穿孔の危険性があることに留意する必要がある.
  • 山木 万里郎
    2008 年 41 巻 3 号 p. 207-212
    発行日: 2008/03/28
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    症例は血液透析歴5年の63歳,女性.飲水食事制限が不十分で高カリウム血症に対しポリスチレンスルホン酸カルシウム(PS-Ca)を,高リン血症に対し炭酸カルシウムおよびコレスチミド(Col)を,および頑固な便秘に対し下剤を内服していた.'04年1月貧血および便潜血陽性がみられ大腸内視鏡(CF)を施行.大腸憩室および出血性腸炎と診断され絶食と輸血で軽快.その後暫くは落ち着いていたがエリスロポエチンβ 9,000U/週投与にもかかわらず貧血進行があり再度便潜血陽性となった.同年4月の上部内視鏡では軽い表層性胃炎と診断.それに対する治療を続けるも貧血と便潜血の改善がなく6月にCFを再検.上行,下行結腸に数個の憩室のほか横行結腸(特に右側)にヒダ頂部を中心とする飛び石状のびらん~潰瘍を認めた.同部位の生検では粘膜固有層に慢性炎症細胞浸潤および多角形の結晶性物質がみられ,多種の染色(Hematoxylin Eosin, Congo Red, Direct Schiff, PAS)にてそれらはPS-CaとColと判明した.以上より繰り返す大腸炎の原因として内服したイオン交換樹脂製剤の関与が濃厚に示唆された.また当症例においては頑固な便秘があったことが上記薬剤の副作用をおこしやすくしたものと推察された.
  • 岩嶋 和子, 辻本 吉広, 田畑 勉, 細見 由佳, 二上 志帆子, 梶應 陽子, 井上 隆
    2008 年 41 巻 3 号 p. 213-218
    発行日: 2008/03/28
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    ペットのネコが原因でPasteurellaによるPD腹膜炎を発症した2例を経験したので若干の考察をまじえて報告する.[症例1]患者はPD歴3年の41歳,男性で,夜間サイクラー使用中に,飼いネコが注液チューブを咬んで破損した.翌日にPD腹膜炎を発症し,CEZ 1g/日,TOB 30mg/日の腹腔内貯留を開始した.下痢が頻回なため第4病日からPAPM/BPを0.5g/日で経静脈投与して治癒した.PD排液のグラム染色で菌は検出されなかったが,培養でP. multocida以外のPasteurella菌と判明した.ネコによるP. multocida以外のPasteurella菌のPD腹膜炎報告例は,Walletらに続いて2例目となる.[症例2]患者はPD歴2か月の29歳,女性で,排液バッグ付きYセットで排液中にバッグの破損から液漏れを認めた.数時間前に飼いネコが排液バッグの上を歩いていたことを思い出した.それから13日後にPD腹膜炎を発症し,CEZ 1g/日,TOB 30mg/日の腹腔内貯留で治癒した.PD排液のグラム染色で菌は検出されなかったが,培養でP. multocidaが検出された.Pasteurella症は感染後24時間以内に発症すること,および破損したバッグは排液用であったことから,PD腹膜炎発症につながる感染は発症24時間以内にあったと考えられる.PD患者に,ペットから感染する疾病の存在を伝え,衛生環境整備の重要性を指導することで今後の予防に努めたい.
  • 横山 健, 窪島 真吾, 鶴岡 佳代, 市川 大介, 櫻田 勉, 白井 小百合, 土田 浩生, 磯貝 晶子, 佐藤 雄一, 安田 隆, 佐藤 ...
    2008 年 41 巻 3 号 p. 219-223
    発行日: 2008/03/28
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    症例は糖尿病性腎症を原疾患とする慢性腎不全末期の56歳,男性である.2004年3月22日に持続携行式腹膜透析(continuous ambulatory peritoneal dialysis;CAPD)を導入し合併症なく退院したが,5月2日より陰嚢腫大が出現し,同時に除水不良が顕著となり約8kgの体重増加を認めた.Computed tomographic peritoneography(CT peritoneography)を施行し再構成した3次元画像を元に腹膜鞘状突起の開存による交通性陰嚢水腫と診断した.陰嚢水腫と除水不良は1.5%ブドウ糖透析液の注液量を2.0Lから1.5Lへの減量と安静のみで改善した.患者の強い希望によりその後も手術を行わず経過観察したが2005年11月8日に永眠されるまでの19か月の間に交通性陰嚢水腫の再発は認められなかった.CAPD患者の交通性陰嚢水腫の診断においてCT peritoneographyの有用性を報告している文献は散見されるが,3 dimensional-CT peritoneography(3D-CT peritoneography)は解剖学的関係をより明確に示すことができる信頼性の高い検査であることが示された.また,CAPD患者の交通性陰嚢水腫を保存的に治療した症例は稀である.
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