日本透析医学会雑誌
Online ISSN : 1883-082X
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41 巻, 4 号
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原著
  • 今田 直樹, 清水 輝記, 大西  彰, 森田 壮平, 森 優, 小山 正樹, 青木 正, 畑 佳伸, 田中 善之
    2008 年 41 巻 4 号 p. 237-243
    発行日: 2008/04/28
    公開日: 2008/10/21
    ジャーナル フリー
    血液透析患者の貧血の治療には静注用鉄剤と遺伝子組み換えヒトエリスロポエチン(rHuEPO)の投与が重要である.鉄剤については効果に差がないと一般的に考えられている.しかし,当院では静注用鉄剤を含糖酸化鉄からシデフェロンに変えた時に変化がおこることを経験している.認められた変化は予想を上回る血清フェリチン値の上昇,鉄剤の投与量およびrHuEPO投与量の減少であった.今回,同一患者に3種類の静注用鉄剤(含糖酸化鉄,シデフェロン,コンドロイチン硫酸鉄コロイド)をそれぞれ1年間投与して各鉄剤投与期間のヘマトクリット(Ht)値,ヘモグロビン(Hb)値,鉄剤投与量,血清フェリチン濃度,平均赤血球容積(MCV),rHuEPO投与量について比較検討した.対象は慢性維持透析患者86例である.なお,rHuEPOの投与はHt値を指標に当院で設定しているrHuEPO投与量に従って次週の投与量を決定した.静注用鉄剤の投与量は毎月1回測定したフェリチン濃度を基準に決めた.その結果,観察期間中を通して,平均Htはほぼ30%を維持できていたが,その中でもシデフェロン投与期が最も高かった.さらに,シデフェロン投与期では,血清フェリチン濃度の有意な上昇と,MCVの増大が認められ,Hb値も最も高かった.また,フェリチン濃度の維持に必要な鉄投与量はシデフェロンが最も少なく,rHuEPO投与量は,含糖酸化鉄と比しシデフェロン投与で有意に少なかったが,コンドロイチン硫酸鉄コロイド投与とは差がなかった.このように,シデフェロンは少ない投与量でも有効利用され,最も血清フェリチン濃度を上昇させた.血清フェリチン濃度の上昇時期とrHuEPO製剤投与量の低下時期には重なりがみられ,血清フェリチン濃度の確実な上昇がrHuEPO製剤の投与量の減量を可能にしたと考えられた.
  • 祖地 香織, 新納 誠司, 中村 雅将, 水口 潤, 川島  周
    2008 年 41 巻 4 号 p. 245-249
    発行日: 2008/04/28
    公開日: 2008/10/21
    ジャーナル フリー
    Transonic Systems社製HD02血液透析モニタ(以下HD02)を用いて,シャント流量と再循環率,穿刺方向別の再循環率を測定し,穿刺間隔・穿刺方向と再循環率との相関ならびにシャント流量と再循環の発生について検討した.シャント流量700mL/min程度で,狭窄や分岐の少ない健全なシャントでは,穿刺方向にかかわらず穿刺針先端の間隔が30mm以上あれば再循環はおきないことが示された.また対向穿刺で,穿刺針先端間隔が50mm程度の場合,シャント流量300mL/min未満で再循環が出現しはじめ,血液流量(以下QB)を調節しても再循環率に改善はみられなかった.
短報
  • 鈴木 正司, 斎藤 明, 下条 文武, 西沢 良記, 秋澤 忠男, 富野 康日己, 椿原 美治, 秋葉 隆, 平方 秀樹, 渡邊 有三, 川 ...
    2008 年 41 巻 4 号 p. 251-254
    発行日: 2008/04/28
    公開日: 2008/10/21
    ジャーナル フリー
    血液透析導入患者の腎性貧血治療における目標Hb値と生命予後の関係を検討する目的で,エポジン注特定使用成績調査が実施されている.今回,2007年6月までにデータが収集された症例について,導入時の患者背景および導入3か月後の貧血治療状況を検討した.その結果,導入時にはすでに循環器系疾患の既往歴および合併症を有した症例が多いこと,導入時の平均Hb値は欧米に比べ極めて低値であることが判明した.
症例報告
  • 真栄里 恭子, 岡 真知子, 真野 勉, 池江 亮太, 守矢 英和, 大竹 剛靖, 小林 修三
    2008 年 41 巻 4 号 p. 255-261
    発行日: 2008/04/28
    公開日: 2008/10/21
    ジャーナル フリー
    症例は50歳,女性.2001年8月より稽留熱,2003年1月,上気道炎を契機に急激な腎機能悪化,意識障害を認めたため他院に入院し,原疾患不明のまま維持透析を8か月行っていた.しかし,全身倦怠感,貧血,HTLV-1抗体陽性,CRP高値(13.4~16.3mg/dL),多クローン性高γグロブリン血症が持続し,精査目的で転入院となった.腋窩リンパ節生検でidiopathic plasmocytic lymphadenopathyと診断.骨髄穿刺などほかの所見をあわせてCastleman病と診断した.さらに,腎組織検査で間質性腎炎と病理診断,病的所見の認められない残存糸球体の割合が70%で原疾患の治療により回復する見込みが高いと判断し,DFPPを6回施行後グロブリン産生抑制目的にプレドニン20mg/日内服を開始した.これらの治療にすみやかに反応し,腎機能は改善,Cr 3.64mg/dL,Alb 3.0g/dL,TP 8.6g/dL,CRP 3.9mg/dLとなりHDを離脱した.現在まで3年を経過しているが,およそ半年に一度のステロイドパルス療法を加えることによりプレドニン10mgの維持量にて腎機能はさらに改善しCr 2~3mg/dLとなっている.すでにHDを定期的に施行していてもデータをよく検討し,正しく原疾患を検証した上で積極的治療を行うことによりHDを離脱させることができた貴重な症例を経験したので報告する.
平成19年度コメディカル研究助成報告
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