末梢血中を循環する樹状細胞(Dendritic cell:DC)は未熟段階にあるDCであるが細菌,ウイルス,真菌など外的抗原の侵入に対しては,自然免疫の最も初期にかかわり,侵入抗原を認識し,貪食処理し死滅させると同時に,インターフェロン(IFN)やサイトカインを分泌することにより自然免疫システムを多方面から統御する.この過程の中で末梢血中DCは成熟し,リンパ組織に移動後は自己が認識した抗原をhelper T細胞(Th)に提示することにより,獲得免疫開始のスイッチを入れる.このように末梢血中のDCは最も初期段階で自然免疫と獲得免疫をリンクし,免疫による生体防御系を発動させるという重要な役割を果たしている.本研究では血液透析患者の循環血液中樹状細胞の2種類のサブタイプ,ミエロイドDC(DCm)と形質細胞様DC(DCp)の絶対数を測定し,血清β
2ミクログロブリン(β
2MG)値,Th細胞の分化反応および血液透析(HD)操作との関連について検討を加えた.HD患者48例と年齢を一致させた健常者18例の静脈血を用い,血中のDCmとDCpの絶対数を血液透析の前後でフローサイトメトリーにより測定した.また,血清β
2MG値とmitogen刺激に対するThのサブタイプ(Th1とTh2)への分化を同時に調べた.HD患者血中DCp数は健常者にくらべ約40%に減少し,そのためDCm/DCp比は上昇していた.Th2分化は有意に低下しており,Th1/Th2比は上昇していた.また,膜材質にかかわらずHDによりDCm数,DCp数に変化はなかった.HD患者のDCp数は血清 β
2MG値と負の相関関係を示した.DCm/DCp比とTh1/Th2比には有意な相関関係はなかった.結論:HD患者の血中DCp数は減少しており,β
2MGの血中蓄積がこれに関与しているかもしれない.HD患者における免疫能の異常に循環血液中のDCp数の不足が関係している可能性がある.
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