日本透析医学会雑誌
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41 巻, 6 号
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第52回日本透析医学会 学会・学術企画より
原著
  • 高原 健, 難波 倫子, 高橋 篤史, 畑中 雅喜, 山本 毅士, 竹治 正展, 山内 淳
    2008 年 41 巻 6 号 p. 371-376
    発行日: 2008/06/28
    公開日: 2008/12/02
    ジャーナル フリー
    【目的】抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎におけるびまん性肺出血合併例の予後は一般的に不良である.強力な免疫抑制療法が推奨されているが,感染症による死亡が多くみられることから,免疫抑制の程度についてはなお明確な基準はない.肺出血合併ANCA関連血管炎に対し,免疫抑制薬を使用することなく,ステロイド治療に血漿交換(PE)を併用し,その有用性について検討した.【方法】過去10年間に当院で経験したMPO-ANCA型急速進行性腎炎22例中,肺出血を合併した7例(男性2例)を対象とした.全例にPEを施行し,肺出血が改善するまで継続した.全例にステロイドパルスおよび後療法としてステロイド内服治療を行った.【結果】平均年齢は72±9歳,入院時MPO-ANCA titer 569±581EU,血清Cr 5.7±3.3mg/dL,観察期間は34±22か月であった.肺出血の初期症状として全例に血痰があり,低酸素血症を伴う強い呼吸困難,急激な貧血の進行,胸部CTにてびまん性間質影を認めた.3例に人工呼吸管理を要した.血痰出現から血漿交換開始までの期間は2.9±2.0日,平均3.5±1.3回のPEを行った.肺出血は全例治癒し,退院時に人工呼吸や酸素吸入を要する例はなかった.入院時全例に腎機能障害を認め,腎生検を施行した2例はpauci-immune半月体形成性腎炎で,5例が透析を必要とした.そのうち3例は維持透析に移行したが,ほかの例では腎機能の改善を認めた.重篤な感染症は認めず,16か月後に誤嚥性肺炎で失った1例を除き全例生存中である.【まとめ】肺出血合併ANCA関連血管炎は予後不良とされているが,早期診断の上,PEとステロイドの併用療法により予後を改善させ得ると考えられる.
  • 安藤 稔, 土谷 健, 矢吹 恭子, 新田 孝作
    2008 年 41 巻 6 号 p. 377-382
    発行日: 2008/06/28
    公開日: 2008/12/02
    ジャーナル フリー
    末梢血中を循環する樹状細胞(Dendritic cell:DC)は未熟段階にあるDCであるが細菌,ウイルス,真菌など外的抗原の侵入に対しては,自然免疫の最も初期にかかわり,侵入抗原を認識し,貪食処理し死滅させると同時に,インターフェロン(IFN)やサイトカインを分泌することにより自然免疫システムを多方面から統御する.この過程の中で末梢血中DCは成熟し,リンパ組織に移動後は自己が認識した抗原をhelper T細胞(Th)に提示することにより,獲得免疫開始のスイッチを入れる.このように末梢血中のDCは最も初期段階で自然免疫と獲得免疫をリンクし,免疫による生体防御系を発動させるという重要な役割を果たしている.本研究では血液透析患者の循環血液中樹状細胞の2種類のサブタイプ,ミエロイドDC(DCm)と形質細胞様DC(DCp)の絶対数を測定し,血清β2ミクログロブリン(β2MG)値,Th細胞の分化反応および血液透析(HD)操作との関連について検討を加えた.HD患者48例と年齢を一致させた健常者18例の静脈血を用い,血中のDCmとDCpの絶対数を血液透析の前後でフローサイトメトリーにより測定した.また,血清β2MG値とmitogen刺激に対するThのサブタイプ(Th1とTh2)への分化を同時に調べた.HD患者血中DCp数は健常者にくらべ約40%に減少し,そのためDCm/DCp比は上昇していた.Th2分化は有意に低下しており,Th1/Th2比は上昇していた.また,膜材質にかかわらずHDによりDCm数,DCp数に変化はなかった.HD患者のDCp数は血清 β2MG値と負の相関関係を示した.DCm/DCp比とTh1/Th2比には有意な相関関係はなかった.結論:HD患者の血中DCp数は減少しており,β2MGの血中蓄積がこれに関与しているかもしれない.HD患者における免疫能の異常に循環血液中のDCp数の不足が関係している可能性がある.
症例報告
  • 花房 雄治, 横山 良望, 相田 貞継, 月原 弘之, 河村 英之, 岡田 典之, 儘田 文子, 長田 真理, 勝見 勝吉, 岩本 和彦
    2008 年 41 巻 6 号 p. 383-387
    発行日: 2008/06/28
    公開日: 2008/12/02
    ジャーナル フリー
    Clostridium difficile(C. difficile)感染症のうち,偽膜形成を伴わずに,難治性の下痢を伴う,いわゆるC. difficile associated diarrhea(CDAD)症例を経験したので報告する.症例は58歳,女性.糖尿病性腎症が原因で透析歴は9年になる.インスリン治療を行っており,また,高血圧を合併しているため,降圧療法も施行している.近接期に抗生剤投与は行っていないが,発熱,腹痛を伴わない水様性下痢が出現し,多いときには1日20回以上に及んだ.止痢薬やプロバイオティクスの投与と輸液を行いながら,経過観察していたが,治療には全く反応しなかった.2か月にわたり下痢が持続していたが,全身状態の悪化は認めなかったため維持透析を継続していた.便検査よりC. difficileは検出されなかったが,便CD抗原が陽性となったため,大腸内視鏡を施行.偽膜形成を伴った大腸病変は認められず,そのほかの大腸器質的病変もポリープのみしか認められなかった.CDADの診断でバンコマイシンを1.5g/日×14日間投与し,下痢は消失した.その後,再発なく経過良好である.難治性下痢を伴う維持透析症例の中には,本症例のようにCDAD例が含まれると考えられる.このため,透析患者において,頻回の下痢を伴う例では,便CD抗原の検査は必須と考えられ,また,CD抗原陽性の際にはバンコマイシン投与が有効であると考えられた.
  • 高島 毅, 佐内 透, 岸 知哉, 宮園 素明, 池田 裕次, 江頭 八千代, 熊川 智恵子, 佐竹 義泰, 挽地 裕, 上村 哲司, 前田 ...
    2008 年 41 巻 6 号 p. 389-393
    発行日: 2008/06/28
    公開日: 2008/12/02
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,女性.1992年に糖尿病性腎症による末期腎不全で血液透析導入となった.これまでに4回ほど下肢低温熱傷で潰瘍形成歴があり,軟膏などの処置で治癒した.2007年3月上旬より右足趾の疼痛を自覚し,徐々に右第1,2足趾から足背にかけての壊疽が出現したため,3月27日当科紹介入院となった.感染合併に対し抗生剤投与を継続したが内科的治癒は困難であると判断した.下肢magnetic resonance angiography(MRA)にて右下腿3分枝のびまん性狭窄があり,皮膚灌流圧(skin perfusion pressure:SPP)は右足背28mmHg,足底26mmHg,足関節近位107mmHgで当初右下腿遠位での切断が必要と考えられた.しかし,右前脛骨動脈に対しPTA施行し,皮膚灌流圧は足背,足底ともに40mmHg以上まで上昇したため,踵を残してのショパール切断を施行することができた.
  • 田中 宏明, 小原 真美, 高田 健治, 山田 啓子, 生井 友農, 山縣 邦弘
    2008 年 41 巻 6 号 p. 395-400
    発行日: 2008/06/28
    公開日: 2008/12/02
    ジャーナル フリー
    72歳,男性.糖尿病性腎症による慢性腎不全にて維持血液透析を施行されていた.2006年1月歯周炎にて近医で抜歯されたが,その後左頸部の強い疼痛が出現し2月1日当院受診.頸部CT検査でガス産生蜂窩織炎と診断し,同日緊急で切開排膿術を施行した.膿の培養でStreptococcus anginosus/milleriPrevotella intermediaを検出し,非クロストリジウム性蜂窩織炎と診断した.γ-グロブリン製剤投与に加えて,ABPC/SBT 3g/日,CLDM 1,200mg/日連日投与,および1日3回の創洗浄を行い,2月13日,壊死組織の除去,創閉鎖術および,抜歯・腐骨除去術を施行した.術後も創洗浄の継続にて排膿量は減少し,培養検査も陰性化したため,3月9日ドレーンを抜去した.左側頭部痛,頸部・顎下部の腫張は速やかに改善,経口摂取も可能となり3月10日退院した.退院1か月後のCTでは,abscessは消失していた.歯周炎から蜂窩織炎を発症した血液透析症例で,糖尿病合併などcompromised hostであったために重篤と思われたが,早期の切開排膿と適切な術後管理により救命しえた.
平成19年度コメディカル研究助成報告
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