日本透析医学会雑誌
Online ISSN : 1883-082X
Print ISSN : 1340-3451
ISSN-L : 1340-3451
41 巻 , 7 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
原著
  • 後藤 淳, 岩田 英信, 清水 俊行, 高橋 督, 白形 昌人, 佐藤 充則
    2008 年 41 巻 7 号 p. 415-420
    発行日: 2008/07/28
    公開日: 2008/12/16
    ジャーナル フリー
    慢性血液透析患者が安心してカリウム(K)含有量の多い食品を食べることを検証するために,透析開始直前のミカン摂取が透析前後の血清K値および透析によるK除去量におよぼす影響を検討した.過去3か月の透析前血清K値が6.0mEq/L以下の透析患者13名(男性6名,女性7名;平均年齢59.3±12.6歳)を対象として,ミカン非摂取日および摂取日の透析前後の血液と透析排液を採取して電解質濃度を測定した.ミカン摂取日は透析開始直前にMサイズのミカン5個(総重量0.5~0.55kg,K負荷量約15mEq)を摂取した.血清K値は,ミカン非摂取日は透析前4.8±0.5mEq/L,透析後3.3±0.4mEq/L,ミカン摂取日は透析前5.0±0.6mEq/L,透析後3.3±0.3mEq/Lであった.透析によるK除去総量は,ミカン非摂取日44.9±9.5mEq,ミカン摂取日51.5±9.6mEqであり,その差は6.6±7.1mEqでミカンによるK負荷量の44%が除去された.以上の結果から,普段の透析前血清K値が6.0mEq/L以下の透析患者においては,Mサイズのミカン5個程度までなら透析開始直前に摂取しても安全と考えられた.
  • 向井 正法, 向井 一光, 市川 博雄, 若狭 幹雄, 真田 大介, 柴田 孝則, 河村 満, 秋澤 忠男
    2008 年 41 巻 7 号 p. 421-428
    発行日: 2008/07/28
    公開日: 2008/12/16
    ジャーナル フリー
    【目的】透析患者の栄養状態と大脳白質病変(white matter lesions:WMLs)の信号強度との関連について検討した.【方法】昭和大学病院の関連施設で維持血液透析中の患者(n=28)を対象とした.全ての患者で脳MRI(T1,T2強調画像,FLAIR画像)を施行し,同時期に血液検査を含む各種臨床検査を施行した.栄養状態の指標はbody mass index(BMI),血清アルブミン濃度(Alb),標準蛋白異化率(nPCR),末梢血リンパ球数(TLC)を選択した.BMI<18.5(kg/m2),Alb<3.5(g/dL),nPCR<0.9(g/kg/day),TLC<1,500(cells/mm3)の4項目のうち,該当する数が1項目以下の群をgroupI,2項目の群をgroupII,3項目以上の群をgroupIIIとした.WMLsのスコア化はMRI画像上のWMLsをFazekas分類に基づき,脳室周囲高信号域スコア(perivascular hyperintensity(PVH)score)と,深部白質高信号域スコア(deep subcortical white matter hyperintensity(DSWMH)score)に分けて行った.【結果】groupIII(PVH score 2.40±0.90,DSWMH score 2.40±0.90),groupII(PVH score 1.75±0.71,DSWMH score 2.00±0.76)はgroupI(PVH score 0.93±0.46,DSWMH score 0.87±0.74)と比較して高いPVH・DSWMH scoreを示した.重回帰分析を行った結果,低栄養指標(上記4項目)の該当項目数がPVH score(標準化回帰係数(標準化β)=0.608,p<0.001),DSWMH score(標準化β=0.537,p<0.005)に対する有意な説明変数となった.【結語】血液透析患者の栄養状態(特に低栄養)とWMLsの信号強度が関連する可能性が考えられた.
  • 小松 まち子, 南 幸, 水口 潤, 川島 周, 島 健二
    2008 年 41 巻 7 号 p. 429-435
    発行日: 2008/07/28
    公開日: 2008/12/16
    ジャーナル フリー
    維持血液透析中の糖尿病患者28名(前投薬なし5名,ほかの糖尿病薬からの変更23名)にミチグリニドを1年以上継続投与し,ミチグリニド長期投与の有効性と安全性を検討した.前治療別のミチグリニドの有効性の検討:前投薬のない群(5例),ナテグリニド(9例),少量のインスリン(2例)およびボグリボース(1例)からの変更では良好なコントロールが得られたが,スルホニル尿素薬からの変更では良好なコントロールが得られにくかった.ミチグリニド長期投与の有効性と安全性の検討:観察終了時点(中央値26か月:範囲15~28か月)でのグリコアルブミン値(GA)≦21%をコントロールGood,21<GA<24%をFair,GA≧24%をPoorとし,各群間で患者背景,ミチグリニド投与量,低血糖の頻度を比較した.コントロールGood群は13名(46.4%),Fair群7名(25.0%),Poor群8名(28.6%)で,GAの推移(投与前→観察終了時点)は,各々20.8±2.6→18.3±1.8%,23.1±2.4→22.8±0.8%,24.3±4.1→27.2±3.5%であった.ミチグリニド平均投与量は,Good群13.6±9.7,Fair群15.7±9.6,Poor群25.5±5.1mg/日とPoor群の投与量がGood群にくらべて有意に多かった(p<0.05).各群間に年齢,糖尿病罹病歴,透析歴,BMIおよび前治療法に有意差はなかった.低血糖は,Good群7⁄13例,Fair群3⁄7例,Poor群4⁄8例に,主に透析後に認められたが,重症の低血糖は認めなかった.以上より,ミチグリニドは,低血糖に注意しながら慎重に投与すれば,透析糖尿病患者にも有用かつ安全に使用できる薬剤である.
  • 三和 奈穂子, 土谷 健, 木全 直樹, 浜口 行雄, 新田 孝作, 秋葉 隆
    2008 年 41 巻 7 号 p. 437-444
    発行日: 2008/07/28
    公開日: 2008/12/16
    ジャーナル フリー
    透析患者での鉄の充足状態の評価は適切なエリスロポエチン療法上不可欠である.そこでわれわれは,赤血球レベルでの鉄欠乏状態を的確に把握しうる指標として注目されつつある網赤血球ヘモグロビン等量(reticulocyte hemoglobin equivalent:RET-He)を透析患者で測定し,その診断的有用性,臨床的応用性に検討を加えた.RET-Heは赤色半導体レーザを光源としたフローサイトメトリー原理を搭載したXE-2100のRETチャンネルから得られるパラメータであり,フローセルを流れる細胞に対してレーザ光を照射することにより,個々の細胞からの散乱光を得ることができる.網赤血球はpolymethine dyeにより染色,蛍光強度により同定され,RET-HeはRETチャンネルから得られる散乱光強度と平均赤血球色素量との関係から算出されている.当院透析患者217名を対象として採血し,RET-Heとフェリチン,トランスフェリン飽和率(TSAT),またすでに機能的鉄欠乏の指標として確立されている網赤血球ヘモグロビン含量(CHr)を同時に測定した.さらにTSAT 20%未満もしくはフェリチン100ng/mL以下を鉄欠乏とし,鉄欠乏と推定された症例の鉄補給時のRET-Heの動態を観察した.従来の赤血球関連指数とRET-HeはSysmex XE-2100にて,CHrはADVIA120の各血算算定器を用いて測定した.透析患者における平均RET-Heは32.4pgであり,CHrとも良好な相関(r=0.873)が認められた.ROC曲線によるカットオフ値は33.1pgであった.鉄欠乏と診断された症例は鉄剤投与に対して,CHr同様,RET-Heも2週間以内に反応が認められた.RET-HeはCHrと同等の反応が認められ,赤血球レベルでの鉄欠乏の状態を把握できる鋭敏な指標である.またその測定に特定の機器を必要とせず,汎用され普及した血球分析装置により測定が可能な点で臨床上有用と考えられた.
症例報告
  • 山崎 修, 花房 規男, 白井 雅弓, 花村 菊乃, 衣笠 哲史, 浜崎 敬文, 三村 維真理, 遠藤 陽子, 里中 弘志, 柴垣 有吾, ...
    2008 年 41 巻 7 号 p. 445-449
    発行日: 2008/07/28
    公開日: 2008/12/16
    ジャーナル フリー
    70歳,男性.糖尿病性腎症を原疾患とし,15年の透析歴がある.1995年頃から下血を主訴に他院で消化管精査行うも出血源特定できず.AB型Rh(-)と特殊な血液型のため製剤入手に苦慮した.精査加療目的で2006年6月当院初診.小腸内視鏡上,Treitz靭帯を越えて3mの部分の拍動性の出血性病変に対してAPC焼灼とクリップで止血を行った.その後も2006年11月,2007年8月,9月に同様のエピソードがあり,内視鏡上,別部位に出血を認めたが,同様の処置を行い止血が可能であった.本例では,頻回の再発を認め,また入手困難な血液型であったため治療に苦慮したが,小腸内視鏡による止血を得た.ESRD患者は消化管出血の頻度が高く,上部下部内視鏡上,出血源が特定できず診断,治療が困難なことも多い.小腸内視鏡はこうした例でも開腹術を行わずに止血が得られ,有効な手段である.
  • 柴冨 和貴, 和泉 泰衛, 久保田 陽子, 西村 大介, 加藤 有史, 豊福 一輝
    2008 年 41 巻 7 号 p. 451-455
    発行日: 2008/07/28
    公開日: 2008/12/16
    ジャーナル フリー
    症例は慢性糸球体腎炎由来の腎不全にて10年来血液透析を行っている36歳の女性.1997年初回妊娠,妊娠中に血液透析導入をされたが,妊娠27週で帝王切開にて早産,児は体重362gで新生児死亡となった.近医で維持透析を続けていた.2000年人工授精で妊娠するも31週でやはり帝王切開で早産.児の体重は452g,新生児死亡となった.2006年人工受精で妊娠し,同年6月妊娠9週で当院産科に妊娠管理目的で紹介入院となった.入院後19週までは週5回の透析,20週以降は週6回透析とした.妊娠高血圧症候群は発症せずむしろ低血圧となり透析中の血圧管理に慎重を要した.妊娠中児の発育は良好で形態異常は認めなかった.妊娠37週6日腰椎麻酔下帝王切開術を施行し,児の体重は2,370g,Apgar scoreは1分後8点,5分後9点であった.母児ともに経過は良好で術後8日目に退院となった.退院後児は現在まで正常で良好な発育を示している.われわれは透析10年目で無尿の透析患者の妊娠管理,満期産での出産に成功したので報告する.
feedback
Top