日本透析医学会雑誌
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41 巻 , 9 号
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第53回日本透析医学会 学会・委員会企画セッションより
原著
  • 松田 明子, 安藤 稔, 土谷 健, 新田 孝作
    2008 年 41 巻 9 号 p. 611-616
    発行日: 2008/09/28
    公開日: 2009/01/21
    ジャーナル フリー
    透析患者を含む慢性腎不全患者が易感染性であることは周知の事実であるが,その原因,機序については必ずしも明確にされていない.慢性腎不全患者ではlipopolysaccharide(LPS)刺激に対する単球の炎症性サイトカイン産生反応の低下があることからその原因の一つとして抗原認識受容体であるトルライク受容体(TLR)の発現およびそのシグナル伝達系に着目し検討を加えた.血液透析(HD)患者21例(平均年齢64±14歳),健常者10例(平均年齢59±16歳)から得られた末梢静脈血を用い,以下の実験を行った.まず,全白血球から得られたRNAを用いて,microarrayによりTLR関連遺伝子の発現を網羅的にスクリーニングし,異常を認めた主要遺伝子の発現レベルを定量的リアルタイム逆転写PCRにより評価した.さらに,抗CD14陽性細胞(単球)上に発現するTLR2とTLR4を各特異的モノクローナル抗体により染色し,その陽性率をフローサイトメトリーにより求めた.同時にTLR4の抗原認識機能を評価するために単球におけるLPS刺激に対する炎症性サイトカイン(TNF-αとIL1β)産生反応を細胞内サイトカイン染色法により調べた.mRNA発現レベルはHD患者においてTLR2,TLR4,CD14,およびIRF-7で有意な発現低下が確認された.また,健常者にくらべて単球上に発現するTLR2とTLR4の陽性率は有意に低下していた(TLR4:15.2±7.05% vs. 53.7±10.4%;TLR2:12.2±11.3% vs. 42.0±8.35%).さらに,LPSに対するTNF-αとIL1β両者の産生反応とTLR4陽性率には有意な正の相関関係が得られた.結論:HD患者では遺伝子レベルおよび蛋白レベルでTLR2および4に発現低下があり,これに加えて,TLR4が機能する上で必須のCD14とインターフェロンα産生シグナル伝達に関連するIRF7遺伝子発現にも低下がみられた.これらは患者血球が病原体認識レベルから自然免疫系発動に弱点を持つことを示唆している.
  • 田村 雅人, 甲藤 和伸, 塩津 智之, 中村 章一郎
    2008 年 41 巻 9 号 p. 617-620
    発行日: 2008/09/28
    公開日: 2009/01/21
    ジャーナル フリー
    透析患者においては免疫機能の低下,創傷部の血流の低下など創管理には慎重であるべきであり,今後,糖尿病患者の増加,高齢化などにより,さらに慎重な管理を要すると思われる.近年,創傷管理においては湿潤環境を保った創傷ドレッシングが推奨されるようになってきている.今回,191例の内シャント作製手術で,創閉鎖はポリディオキサノン4-0で連続皮内縫合を行い,薄型ハイドロコロイドドレッシングの使用を試みた.中等度以上の出血,滲出液を認めても,良好に吸収され,被覆が必要と考えられる48時間以内にはがれを生じたのは,3例のみであった.創部感染,皮膚の異常を認めた症例はなく,98.4%の症例で有用と考えられた.また,創の閉鎖方法の工夫により,抜糸の手間や抜糸時の疼痛を軽減することが可能であった.以上から,安全性,有用性,医療の省力化などの面からも優れた方法であると考えられた.
  • 西 隆博, 栗田 宜明, 崔 啓子, 三瀬 直文, 多川 斉, 杉本 徳一郎
    2008 年 41 巻 9 号 p. 621-625
    発行日: 2008/09/28
    公開日: 2009/01/21
    ジャーナル フリー
    近年,透析導入時にはすでに虚血性心疾患(IHD)を有している症例が増加している.今回透析導入前に,すでにCABGを施行していた23例についてHD導入後の予後を検討した.23例中男性は21例(91.3%),DMは17例(73.9%),CABG施行時の年齢は59.9±8.3(SD)歳,腎機能は推定Ccr 32±23mL/minであった.全例でCABGにより,完全血行再建がされた.CABGからHD導入までは4.0±5.0年,HD導入時年齢は64.8±8.4歳で,腎機能は推定Ccr 13±7mL/minであった.HD導入後の観察期間は5.0±3.0年であった.予後は16症例(69.6%)が死亡し,下肢壊疽1例,脳梗塞1例,小腸壊死1例を含め心血管死は10例(62.5%)であった.これらの症例では原疾患,年齢,腎機能,導入時の左室駆出率は,透析導入後の生命予後を規定しなかった.CABGにより完全血行再建され,CKDステージ4を乗り越え透析導入に至った症例では,導入後の生命予後は透析患者全体とくらべ遜色がない可能性がある.
症例報告
  • 古宮 俊幸, 辻井 知美, 石床 学, 田原 佐知子, 米本 智美, 塚本 達雄, 武曾 恵理
    2008 年 41 巻 9 号 p. 627-633
    発行日: 2008/09/28
    公開日: 2009/01/21
    ジャーナル フリー
    血液透析の抗凝固薬としてヘパリンが広く用いられており,透析導入時にヘパリン起因性血小板減少症(heparin induced thrombocytopenia;HIT)を発生した報告は多くみられる.今回われわれは,関節リウマチ患者で,血液透析導入時にHITを発症した2症例を経験したため報告する.症例1は73歳,女性.慢性腎不全・関節リウマチにて通院中であった.大腿骨頸部骨折のため当院入院となったが,腎機能増悪のため術前に抗凝固薬にメシル酸ナファモスタットを用いて血液透析導入となった.股関節人工関節置換術施行後,抗凝固薬をヘパリンに変更したところ,血小板減少と体外循環回路内の凝血を認めた.抗凝固薬を再度メシル酸ナファモスタットに変更したところ,血小板数は速やかに改善した.症例2は70歳,女性.慢性関節リウマチにて近医通院していたが,腎機能増悪のため血液透析導入となった.透析導入後,血小板減少・肝機能障害・深部静脈血栓・四肢循環障害が出現し,全身状態悪化のため当院へ転院となった.抗凝固薬をヘパリンからメシル酸ナファモスタットに変更したところ,血小板減少・肝機能障害は改善したが,下肢壊疽部感染から敗血症となり永眠された.肝・腎・大腿動脈には血管炎はなく,血管壁へのアミロイドの沈着を認めた.両症例とも抗ヘパリンPF4複合体抗体が陽性であり,HITと診断した.関節リウマチは,HIT抗体を産生しやすい病態である可能性があり,透析導入の際にはHITの発症に注意する必要がある.
  • 石原 知明, 速見 浩士, 米澤 智一, 和田 武子, 谷口 賢二郎, 牟田 裕美, 諸冨 久展, 中川 昌之
    2008 年 41 巻 9 号 p. 635-640
    発行日: 2008/09/28
    公開日: 2009/01/21
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,女性.慢性糸球体腎炎による慢性腎不全にて1988年から血液透析が導入された.2005年5月から骨髄異形成症候群に対しステロイドの内服を開始し,二次性の糖尿病を合併していた.2005年9月17日,外陰部に認められた1.5cm大の腫瘤がバルトリン腺炎と診断され,tosufloxacin(TFLX)の内服が開始された.19日からはcefotiam(CTM)の点滴静注に変更されたが炎症所見は増悪し,20日には外陰部に皮下気腫が触知されるようになり,腹部単純X線と腹部・骨盤部CTで皮下にガス像が認められたことから外陰部ガス壊疽と診断され,当院に入院した.局所所見では,左大陰唇に血疱,左鼠径部の広範囲に紫斑と黒色壊死組織が認められ,悪臭を伴っていた.また下腹部,腰背部,左大腿部皮膚に握雪感が認められた.入院当日に左鼠径部から下腹部にかけて切開排膿とデブリドマンが施行された.起炎菌としてBacteroides属が認められたため非クロストリジウム性ガス壊疽と診断された.術後は,抗生剤投与,生理食塩水による連日の創洗浄,高気圧酸素療法を行い,皮膚欠損部に対して肉芽が形成されるのを待って,2006年1月11日に縫縮術が施行された.維持透析患者に外陰部ガス壊疽の発症は稀であるが,ステロイドの内服や糖尿病などの易感染状態の要素が重なることで重症化することを考慮しなければならない.
  • 鈴木 裕子, 伊藤 文夫, 中澤 速和, 前田 佳子, 吉田 一彦, 巴 ひかる, 友杉 直久
    2008 年 41 巻 9 号 p. 641-645
    発行日: 2008/09/28
    公開日: 2009/01/21
    ジャーナル フリー
    症例は66歳の男性.1974年に慢性糸球体腎炎を原疾患とする慢性腎不全に対し,血液透析療法を開始した.1980年に献腎移植を受けるも,1年半後に移植腎動脈血栓症のため移植腎機能は廃絶に至った.この血栓症の発症を契機に先天性アンチトロンビンIII(AT III)欠乏症と診断された.今回,自己腎発生の腎癌に対し,2007年1月に腹腔鏡下腎摘除術を施行した.周術期には,AT III活性を100%以上に維持するようにAT III製剤を適宜投与した.合併症は手術終了直前に投与したヘパリンによる後出血のみで,周術期に血栓症は認められなかった.維持透析患者にはさまざまな合併症のみられることも多く,周術期にはそれぞれに適切に対処する必要がある.自験例のようにAT III欠乏症を合併する場合には,一般患者と同様,AT III製剤の適切な補充が血栓症予防策と考えられる.
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