日本透析医学会雑誌
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42 巻 , 12 号
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原著
  • 新里 高弘, 林 功, 加藤 竜典, 原 和弘, 三輪 真幹, 前田 憲志
    2009 年 42 巻 12 号 p. 921-929
    発行日: 2009/12/28
    公開日: 2010/01/27
    ジャーナル フリー
    血液透析開始前に目標Kt/Vを入力すると透析終了後には入力されたKt/Vが得られるのであれば,計画的な透析の実施が容易となる.これを実現するためには,必要な透析条件を透析開始前に決定しなければならない.そこでわれわれは,局所血流尿素動態モデル(regional blood flow urea kinetic model)を解析することにより,血液透析開始前に目標Kt/Vが得られる透析液流量を算出する方法を開発した.この方法では,まず月1回の定期採血日に施行した透析の諸条件と透析開始時と終了時の実測の血清尿素濃度から体液量を算出する.そして,その後の1か月間は各透析の開始前にすでに算出されている体液量とさまざまな透析条件から目標Kt/Vを実現する透析液流量を算出する.60名の患者において,この方法により計画透析を試みた.その結果,透析後には,設定したKt/V(目標Kt/V)が得られることが示された.設定Kt/V(x)と実測Kt/V(y)との間には高い直線相関が認められ(y=1.01x-0.03,r=0.973),かつ設定Kt/V(1.15±0.21)と実測Kt/V(1.14±0.22)との間には有意の差が認められなかった.この方法を用いれば,より高い血流量とより低い透析液流量の組み合わせによる計画透析も可能になる.尿素クリアランスを変化させないという制約の下で血流量を増やし透析液流量を減らした場合,リン酸クリアランスやβ2-ミクログロブリンクリアランスに変化が生じるか否か調べた.その結果,血流量を増やして透析液流量を減らしてもリン酸クリアランスは変化せず,β2-ミクログロブリンクリアランスはむしろ増加するという所見を得た.
  • 高津 千裕, 古久保 拓, 松永 千春, 根来 早紀子, 和泉 智, 奥野 仙二, 前川 きよし, 山本 忠司, 山川 智之
    2009 年 42 巻 12 号 p. 931-938
    発行日: 2009/12/28
    公開日: 2010/01/27
    ジャーナル フリー
    シナカルセト塩酸塩(シナカルセト)は,カルシウム(Ca)感知受容体に作用して副甲状腺ホルモンの分泌を抑制する二次性副甲状腺機能亢進症治療薬であり,これまでの臨床試験において,消化器症状や低Ca血症の副作用が多いと報告されている.今回,シナカルセトを投与された透析患者93名を対象とし,副作用発現状況について24週間の追跡調査を行った.シナカルセトは25 mg/日で開始され,血清intact-PTH値の中央値は519 pg/mLから追跡終了時に193 pg/mLへと有意に低下した.93名中51名(55%)に副作用が生じ,消化器症状が34名と最も多く,低Ca血症は18名において認められた.消化器症状を発現した34名中17名で内服開始1週間以内に症状が発現した.消化器症状への対策として,消化器系薬剤の追加処方が12名になされ,投薬の中止は7名であった.また,低Ca血症を発現した18名のうち,15名は内服開始4週間以内に発現した.低Ca血症を発現した患者のうち15名に活性型ビタミンD製剤や炭酸Ca製剤の追加あるいは増量が行われ,ほとんどの例で中断することなく継続投与が可能であった.今回の観察研究により,シナカルセトによる消化器症状の発現率は高く,内服開始時と増量時に特に注意が必要と思われた.また,低Ca血症も早期に発現することから,低Ca血症を回避するために活性型ビタミンD製剤や炭酸Ca製剤の適切な使用が必要であると思われた.
  • 米須 功, 儀間 朝次, 渡嘉敷 秀夫, 渡久山 博也, 照屋 尚, 島袋 浩勝, 新川 勉, 大城 譲, 中村 浩明, 田島 隆, 大城 ...
    2009 年 42 巻 12 号 p. 939-945
    発行日: 2009/12/28
    公開日: 2010/01/27
    ジャーナル フリー
    【目的】透析療法は,患者の高齢化や糖尿病患者の増加に伴い重度の合併症を持つ患者も増加し,長期入院を余儀なくされる場合もある.外来および入院透析患者におけるADLを,すでにリハビリテーションの場で確立した評価法であるFIMで評価し,透析患者のADLを低下させ,長期入院をきたす原因を検討した.【方法】当院で血液透析治療を行い,同時期にリハビリテーションを受けている患者71名(外来31名,入院40名)を対象とし,患者の基本情報,原疾患,合併症,FIMを調査した.【結果】入院患者は外来患者に比較し,原疾患が糖尿病の患者が多く,糖尿病患者は合併症のため入院するリスクが高いことが示唆された.外来患者は運動器リハビリテーションが87%と多いのに対し,入院患者では脳血管疾患や廃用症候群のリハビリテーション処方が65%と多かった(p<0.0001).入院患者のFIMは65±33点と,外来患者の124±4点に比較して著明に低下していた(p<0.0001).入院期間は平均676日と長期化しており,合併症を検討すると脳卒中16例(梗塞8例,出血7例,低酸素脳症1例)が最も多く,麻痺がADLを著明に低下させていた.整形疾患が8例(大腿骨頸部骨折4例,腰椎圧迫骨折4例),ASOは7例(片側下腿切断2例,両側大腿・両側下腿・片側大腿切断各々1例,難治性潰瘍2例),精神疾患は6例(躁うつ病1例,精神発達遅滞2例,重度の認知症3例),医療的要素の強い患者は3例(コントロール困難な糖尿病2例,心不全1例)であった.ADLが良好な社会的入院患者も存在した.【結語】入院患者のFIMは外来患者に比較し著明に低く,脳卒中等の合併症を発症するとADLが著明に低下し,長期入院となってしまうと考えられた.従って,外来透析を維持するためには,上記合併症の予防が重要であり,日々の全身管理,運動療法によるADLの維持が必要であると思われた.社会的入院患者も存在し,透析医療と介護保険の合理化,透析患者を受け入れられる介護施設の整備,透析施設と介護施設の連携の強化が急務であると考えられる.
  • 朝倉 伸司, 佐々木 廉雄, 足助 雄二, 渡辺 弘規, 加賀 誠, 清水 ひろえ, 川田 松江, 播磨 晋太郎, 長濱 裕, 松田 道生
    2009 年 42 巻 12 号 p. 947-953
    発行日: 2009/12/28
    公開日: 2010/01/27
    ジャーナル フリー
    透析施行に際して動脈―静脈吻合を設置すると,その局所でのblood accessは高ずり応力の存在する動脈系から中あるいは低ずり応力が働くと考えられる吻合部遠位側(心臓側)へと移行するため,吻合部周辺での血栓形成の機序は必ずしも単純ではないと考えられる.さらにPTA(percutaneous transluminal angioplasty)による圧ストレスが血管内壁上で血液凝固線溶機構にどのように関連しているか,あるいは動脈硬化病変が血栓形成にどのように影響するか等については,十分に検討されてきていないのが現状である.今回,われわれはPTA施行前後の当該シャント部位での血液凝固線溶関連因子の変動を検討し,血栓形成の初期に形成される可溶性フィブリン(soluble fibrin, SF)が15例中4例が著明に上昇していることを見出した.また,SFとともにトロンビン―アンチトロンビン複合体(thrombin-antithrombin complex, TAT)も上昇していたが,SFとは相関を示さず,両者の上昇は異なる反応によるものと推定された.SFはフィブリンモノマー1分子に対しフィブリノゲン2分子が結合した3分子複合体であることが示されており,そのフィブリンモノマーの中央に位置するE領域に接合している1対のalpha C globuleがトロンビンにより切断,遊離されることにより,alpha鎖(96-97)に存在するRGDドメインがフィブリンモノマーのE領域表面に露呈されること,また,これが細胞膜に存在し,フィブリノゲン受容体(fibrinogen receptor)として働くα5β1インテグリンおよびビトロネクチン受容体(vitronectin receptor)であるαvβ3をも巻き込みながら細胞伸展を促進することをわれわれはすでに報告しており,SFが単に血液凝固亢進を示す分子マーカーであるだけでなく,血管壁への血小板の強力な接着に貢献することが明らかになった.SFが著明に上昇していた4例(SF著明上昇群)では動脈硬化の指標であるpulse wave velocity(PWV)がSF非上昇群に比し有意に上昇していた.またSF上昇群は非上昇群に対しシャントトラブルの年間発生率が高いことから,SFの上昇はPTA後の血行動態,ことに血栓形成機序の解明ならびにシャントトラブル発生とその予後の予想に有用な分子マーカーとなることが期待される.
症例報告
  • 中原 徳弥, 荒川 欣治, 岡本 真智子, 岩渕 仁, 浅野 学, 小口 健一
    2009 年 42 巻 12 号 p. 955-958
    発行日: 2009/12/28
    公開日: 2010/01/27
    ジャーナル フリー
    79歳,女性.2004年4月血液透析導入.Vascular access不全と心機能低下のため2008年5月CAPD導入に至った.この間約半年間にわたり好酸球増多症が持続していたが,原因の特定はできなかった.PDカテーテルを留置後6日目に末梢血好酸球数は10.1%から22.3%に上昇した.2週間後にCAPDを開始し,その22日目に排液中の白血球数ならびに好酸球数の増加を認めた.腹痛や発熱を伴わず排液の細菌培養は陰性であったことから好酸球性腹膜炎と診断した.CAPDは継続したまま経過をみたところ自然軽快し,第49病日退院に至った.第56病日の末梢血好酸球数は5.5%であった.好酸球性腹膜炎はCAPDシステム自体が誘因と推察されているが,最終的な因果関係については不明なことが多い.本症例の特徴はCAPD導入以前より好酸球増多症が先行し,その経過の中で好酸球性腹膜炎を発症した点にある.
  • 北村 哲也, 森本 聡, 万木 孝富, 岡本 貴行, 来島 泰秋, 福井 政慶, 中嶋 章貴, 岩坂 壽二
    2009 年 42 巻 12 号 p. 959-964
    発行日: 2009/12/28
    公開日: 2010/01/27
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,男性.既往歴として,閉塞性動脈硬化症に対して2003年6月に,Aorto-bifemoral bypassを受けた.また腹部大動脈人工血管に仮性動脈瘤を生じ,人工血管置換術,ステントグラフト挿入術を受けていた.その後腎機能低下のため2006年3月に,血液透析が開始となった.2006年11月20日右大腿部の疼痛および腫脹を認めたため当科に入院した.CTにて右大腿部の血腫,血管造影にて右大腿回旋動脈瘤破裂によると思われる出血点が2箇所にみられたため同部位に塞栓術を施行された.第37病日には,人工血管仮性動脈瘤破裂をきたしたが,破裂部の閉鎖術に成功した.透析患者は,動脈硬化性疾患の発症のリスクが高く,透析患者が下肢痛や腫脹を認めた場合には,本症例のような下肢動脈瘤破裂も鑑別疾患の1つとして考慮すべきであると考えられた.
  • 安田 真子, 一色 啓二, 坂口 正芳, 金崎 雅美, 加藤 紀子, 山原 康佑, 高木 彩乃, 岩井 環, 上田 久巳, 荒木 信一, 杉 ...
    2009 年 42 巻 12 号 p. 965-972
    発行日: 2009/12/28
    公開日: 2010/01/27
    ジャーナル フリー
    症例は54歳の男性.10か月間で腎機能が急激に低下(血清Cr値1.2 mg/dLから5.15 mg/dL)したため紹介.腎生検にて半月体形成性糸球体腎炎と診断,proteinase-3-antineutrophil cytoplasmic antibody(PR3-ANCA)が陽性であったため,PR3-ANCA関連腎炎と考えた.ステロイド療法を行わず外来加療していたところ,退院2か月後より微熱が出現.myeloperoxidase(MPO)-ANCAも陽性を示した.4か月後には,貧血の進行・食欲不振・全身倦怠感・胸水の貯留・心拡大が出現したため,血液透析を導入した.胸部CTにて両側鎖骨上窩,縦隔,大動脈周囲にリンパ節の腫大を認め,左鎖骨上窩リンパ節生検施行.Langhans型巨細胞を伴う壊死性肉芽腫を認め,結核菌PCRにて陽性であったため,結核性リンパ節炎と診断.4剤併用抗結核療法を開始しリンパ節の縮小を認めている.ANCA関連腎炎は維持透析の原因疾患として決して稀な疾患ではない.結核症がANCA陽性を呈する可能性もあるため,慢性腎不全患者や透析患者におけるANCA陽性時や再上昇時には血管炎の再燃とともに,活動性結核症の合併を考慮にいれる必要性が示唆された.
  • 舛本 祥一, 井上 剛, 片桐 大輔, 勝馬 愛, 南 恵理, 星野 太郎, 柴田 真希, 多田 真奈美, 中村 太一, 日ノ下 文彦
    2009 年 42 巻 12 号 p. 973-978
    発行日: 2009/12/28
    公開日: 2010/01/27
    ジャーナル フリー
    症例は78歳,男性.糖尿病性腎症による慢性腎不全のため2004年10月より,維持血液透析を施行していた.2006年10月頃から除水強化にて改善しない右片側性胸水の貯留を認め,精査目的に入院.胸水の性状は血性・滲出性であり,各種検索を行ったものの原因は明らかではなかった.結核性胸膜炎を疑い抗結核薬の投与を行ったが改善せず,2007年6月には左側にも胸水貯留を認めるようになった.CTガイド下胸膜生検,胸腔鏡下胸膜生検まで施行したが,悪性腫瘍や結核性胸膜炎の所見は認めなかった.2007年11月に呼吸不全のため死亡したが,病理解剖の結果,胸膜の線維化と胸膜炎を認めるのみであり,総合的に判断した結果,尿毒症性胸膜炎の疑いが強いと考えられた.尿毒症性胸膜炎は維持透析患者の胸水の原因として比較的多いと考えられるが,十分に認知されていない疾患である.結核や悪性腫瘍などの器質的疾患に伴う難治性胸水は維持透析患者でも比較的頻繁に認められるが,本症例は病理解剖にても胸水の原因となる器質的疾患が確認できず,尿毒症性胸膜炎と判断せざるを得ない症例であり,透析患者における胸水貯留の鑑別を考えるうえで示唆に富む症例と考えられる.
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