日本透析医学会雑誌
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42 巻 , 2 号
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総説
原著
  • 崔 啓子, 栗田 宜明, 西 隆博, 三 瀬 直文, 多川 斉, 杉本 徳一郎
    2009 年 42 巻 2 号 p. 145-149
    発行日: 2009/02/28
    公開日: 2009/06/10
    ジャーナル フリー
    【背景】維持透析患者での特発性の出血の特徴を明らかにすることを目的とした.【方法と結果】対象は1987年1月から2007年8月の間に,当院に特発性出血のため入院した,もしくは入院中に特発性に医学管理を要する出血を発症した維持透析患者11例(男性9例,女性2例)である.出血は特発性に限り,また消化管,脳,眼底,バスキュラーアクセス関連の出血および播種性血管内凝固症候群に伴う出血は除外した.10例が血液透析患者,1例が腹膜透析患者であった.出血のイベントは計13件認め,腎周囲出血5件,後腹膜出血2件,腹腔内出血1件,腹直筋内出血1件,大網出血1件,下肢動脈出血3件であった.平均年齢は59±12(36~81)歳,平均透析歴は14±10(5~32)年,原疾患は慢性糸球体腎炎9例,腎硬化症2例であった.関連因子として抗血小板薬使用(2例),抗凝固薬使用(4例),高血圧患者(8例)があった.無痛性出血は4件認めた.治療は経皮的動脈塞栓術7件,外科的手術1件,保存的治療5件であった.10例は軽快退院し,1例は入院中に他疾患で死亡した.【考察】透析患者の特発性出血には腎不全による血小板機能障害のほか,透析歴,薬剤,血圧など多因子が関与する.典型的には疼痛症状を伴うが,時に疼痛を呈さない例もあるので,急速な貧血や血圧低下の際の鑑別診断に重要と思われる.
  • 名城 一臣, 前川 陽子, 島尻 艶子, 渡嘉敷 かおり, 下地 陽子, 屋良 朝博, 仲里 聰, 城間 勲
    2009 年 42 巻 2 号 p. 151-157
    発行日: 2009/02/28
    公開日: 2009/06/10
    ジャーナル フリー
    非透析患者で慢性収縮性心不全に対するレニン・アンジオテンシン系抑制薬(RA系抑制薬)の有効性は確立している.透析治療で,特に心不全合併時は適切なdry weight(DW)維持が重要であるが,心疾患例ではDW設定困難な場合があり,また重症例ほどDWの安全域は狭い.透析導入例における糖尿病(DM)患者の割合は年々増大.DM例においては透析中の血圧低下が多く,特に心不全合併時には透析血圧が不安定性で,DWの設定,維持に難渋する場合がある.このような症例でRA系抑制薬の効果が期待される.しかし,透析慢性心不全におけるRA系抑制薬の検討は不十分である.EF 50%未満のDM透析慢性心不全患者においてRA系抑制薬の有効性を検討した.症例は男性7例,年齢64.4±8.7歳,BMI 22.0±2.9 kg/m2.DM罹病期間10.9±11.4年,HbA1c 6.5±1.6%.DM治療は食事療法2例,経口血糖降下剤4例,インスリン治療1例.透析期間49.7±44.3か月.全例NYHA classII.心疾患はDCM 1例,虚血性心疾患6例.投与薬剤はenalapril 1例,losartan 1例,valsartan 3例,telmisartan 2例.RA系抑制薬は常用量上限を目標として漸増した.目標量に対して到達投与量は82.1±24.9%,投与期間(観察期間)12.6±8.8か月.治療前後で,DWは57.6±7.6から61.5±8.3 kgへ増加したが,CTRは52.3±4.5から48.9±5.3%に縮小した.治療前後でLAD 45.7±6.4から39.7±6.7 mmへ,LVDd 60.9±3.2から52.2±5.5 mmへ縮小した.EFも39.8±8.0から55.0±8.6%に改善した.透析時血圧,脈拍数は変化なし.以上,RA系抑制薬により,DW増加にもかかわらず透析DM慢性心不全例でCTR減少,左心機能改善を認めた.
症例報告
  • 清水 阿里, 武井 卓, 森山 能仁, 板橋 美津世, 大坪 茂, 秋葉 隆, 新田 孝作
    2009 年 42 巻 2 号 p. 159-164
    発行日: 2009/02/28
    公開日: 2009/06/10
    ジャーナル フリー
    44歳,男性.生後3か月より啼泣時にチアノーゼが出現し,生後7か月時に当院にてファロー四徴症と診断された.17歳時にascending aorticopulmonary shunt手術を施行.以後,外来にて経過観察されていた.41歳時,腎機能低下を指摘され,チアノーゼ性腎症の疑いと診断された.2007年(43歳時)感冒を契機に全身倦怠感,尿量低下,下肢けいれんが出現し,尿素窒素10.1 mg/dL,クレアチニン3.38 mg/dLと慢性腎不全が増悪し,カリウム8.0 mEq/Lと高カリウム血症のため,緊急入院となった.血液透析を3回施行後,利尿が得られ,退院となった.しかし,その4か月後,感冒を契機に再び尿量減少,下腿,眼瞼浮腫が出現.胸部X線上両側胸水貯留がみられ,低酸素血症を認め,緊急入院となった.血液透析を再導入したが,導入後も,利尿は得られず,維持透析となった.全身状態の改善が認められたため,退院し,外来維持透析となった.本症例は根治術を施行されず成人まで至ったファロー四徴症であり,チアノーゼ性腎症を合併した可能性があり,慢性腎不全から血液透析を導入した稀な症例である.
  • 青木 明子, 安田 雅子, 田中 純子, 内田 啓子, 田中 好子, 新田 孝作, 秋葉 隆
    2009 年 42 巻 2 号 p. 165-171
    発行日: 2009/02/28
    公開日: 2009/06/10
    ジャーナル フリー
    血液透析患者の巨大な軟部組織石灰化病変に対しエチドロン酸二ナトリウム(EHDP)(ダイドロネル®)の高用量長期投与が奏功した2症例について以前報告した1) .しかし,その後に2症例とも病的骨折をきたしたので再度報告する.症例1は61歳,女性,1993年血液透析導入.1997年頃より両肩,恥骨前部に疼痛出現し,同部位に硬い腫瘤を触知.また,抗生剤に反応しない炎症反応の上昇があり,X線にて疼痛部位に一致する石灰化を認めた.EHDP 300 mg/日を7か月,200 mg/日を1年半,200 mg隔日を半年間内服したところ,疼痛の軽減と石灰化の縮小を認めた.その後EHDP 200 mg×28日/10週休薬を5クール行ったが,疼痛と炎症反応の再増強をみたため400 mgを3か月内服,3か月休薬に変更した.石灰化病変は縮小したが骨密度の低下とともに2004年,肋骨骨折,中足骨骨折をきたした.症例2は60歳,男性,1991年血液透析導入.1995年頃より両肩,股関節に疼痛のある硬い腫瘤が出現.C-reactive proteinの上昇,X線にて疼痛部位に一致する石灰化を認めた.1998年からEHDPの内服を開始.200 mg/日×4週間内服/10週休薬,8週間内服/20週休薬により疼痛の改善は得られたものの,石灰化病変が大きく拡大傾向であったため,200 mg~400 mgの9か月間持続,200 mg 3か月内服/3か月休薬を4クール行った.石灰化の縮小を認め炎症反応は改善したが,2002年9月,骨密度の低下とともに無症候性肋骨骨折をきたした.EHDPは異所性石灰化の改善には有効であるが,骨に対する作用からみると骨吸収抑制だけでなく骨石灰化抑制も強いとされている.今回の症例はそのため骨量が低下して骨折をきたしたと考えられた.
  • 小川 さえ子, 難波 義夫, 小田原 正浩, 石田 豊
    2009 年 42 巻 2 号 p. 173-177
    発行日: 2009/02/28
    公開日: 2009/06/10
    ジャーナル フリー
    血液透析患者に合併した特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の1例を経験したので報告する.症例は60歳男性.糖尿病性腎症より腎不全となり1999年5月血液透析導入となった.2002年11月閉塞性動脈硬化症悪化のためアロプロスタジルの投与を開始.2003年2月血小板は0.6×104/μLに減少し,原因と思われる薬剤を中止したが改善は認められず,特発性血小板減少性紫斑病と診断した.第一選択として副腎皮質ステロイドの投与を開始したが改善なく,肛門周囲膿瘍を発症したためダナゾール投与に変更し,3日後に血小板数は著明に改善した.少量のダナゾールが著効し,副作用の発現はみられず,15か月の漸減期間および中止33か月後も再発を認めていない.ダナゾールは透析患者のITP合併時,治療選択肢のひとつになり得ると考えられた.
  • 佐藤 かすみ, 岩崎 美津子, 伊東 由紀枝, 若狭 幹雄
    2009 年 42 巻 2 号 p. 179-183
    発行日: 2009/02/28
    公開日: 2009/06/10
    ジャーナル フリー
    症例1は68歳,女性.血液透析18年目に肛門管腫瘍切除術を施行された.腫瘍組織は管状腺癌であった.固有筋層および粘膜下組織の小動脈にβ2-microglobulin染色陽性のアミロイド沈着を認めた.症例2は75歳,女性.血液透析18年目に頸椎前方固定術の術後にS字結腸憩室穿孔による腹膜炎を発症した.組織標本にて漿膜下組織の静脈にβ2-microglobulin染色陽性のアミロイド沈着がみられたが,粘膜,粘膜下組織,筋層には認めなかった.いずれも長期血液透析患者であり,先行する消化器症状はなく,偶然,消化管アミロイドーシスが発見されたが,腸管のアミロイド沈着部位は異なっていた.長期透析患者では,消化管アミロイドーシスは常に念頭におくべき疾患であると考えられた.
  • 坂本 いずみ, 木村 敏樹, 榊原 雅子, 草深 裕光, 村上 弘城, 三輪 高也, 西尾 知子
    2009 年 42 巻 2 号 p. 185-191
    発行日: 2009/02/28
    公開日: 2009/06/10
    ジャーナル フリー
    71歳,男性.糖尿病性腎症を原疾患とする末期腎不全のため維持透析を開始.5か月目に特発性脾破裂を発症した.合併症として甲状腺機能低下症,C型慢性肝炎,閉塞性動脈硬化症,既往に悪性リンパ腫に対する化学療法治療歴と2度の大腸癌の手術歴があった.透析時にヘパリンとエリスロポエチンが,閉塞性動脈硬化症に対して抗血小板剤が投与されていた.64歳初発,67歳再発した悪性リンパ腫発症時に脾腫を認め,治療後縮小.脾破裂の3か月前のCTでは脾腫の増大傾向はなく,リンパ腫寛解と判断していた.全経過を通じ巨大な脾腫を呈した時期はない.某年11月11日覚醒時に腹部膨満,下肢のしびれ,脱力を自覚し,救急外来を受診.BP 85/47 mmHg,HR 116回/分,Hb 6.4 g/dL,腹部CTで脾臓の血腫と腹腔内出血を認めた.脾破裂による出血性ショックと診断しICUへ入院.輸血によりバイタルサインが安定したため慎重に経過観察した.しかし翌日,貧血の進行とCTで血腫の増大を認めたため,第3病日に脾臓摘出術を施行した.術後経過は良好で,第28病日に軽快退院した.摘出した脾臓の病理学的検討では,うっ血所見のみで腫瘍細胞や血管破綻像・アミロイドーシス・ペリオーシスは認めなかった.脾門部の動脈にアテローム硬化があるが,明らかな血栓症や血管閉塞はみられなかった.患者に外傷の既往はなく,脾腫を背景とした特発性脾破裂と診断した.特発性脾破裂(非外傷性脾破裂)は極めて稀な病態である.ウイルスやマラリアなどの感染症による脾腫,腫瘍,ペリオーシス,血管炎,脾梗塞など原因疾患は多岐にわたり,多くは急性腹症で発症し出血性ショックを呈する.維持透析患者では過去に12例の報告があり,ヘパリンなどの抗凝固剤の使用や腎性貧血を合併しているため短時間で生命に危険が及ぶ可能性がある.迅速に診断し,外科手術を含めた治療を行う必要があると考えられる.
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