日本透析医学会雑誌
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42 巻 , 6 号
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報告
原著
  • 安藤 亮一, 秋葉 隆
    2009 年 42 巻 6 号 p. 423-433
    発行日: 2009/06/28
    公開日: 2009/09/10
    ジャーナル フリー
    2000年に続いて,2006年に透析施設におけるウイルス性肝炎の感染の現況を把握し,院内感染防止の実態を明らかにするためにアンケート調査を行った.1,817施設から回答があり,回答率は50.63%であった.HBs抗原陽性率(2.39%),HCV抗体陽性率(11.27%)はいずれも2000年より低下していた.感染対策委員会,感染対策マニュアルの整備など感染防止体制は,2000年よりも高率に認められた.HCV抗体陽性患者は67.3%で決められたブロックあるいはベッド固定がなされ,11.3%でスタッフ固定がなされ,いずれも2000年よりも増加した.エリスロポエチンの複数患者への分割投与,使用済み注射器の再使用,余った返血用生食の別患者への使用など院内感染の原因となり得る処置はいずれも減少したが,根絶されてはいず,さらに徹底した対策が必要と考えられた.エリスロポエチンのプレフィルドシリンジは94.9%と普及率が高かったが,ヘパリンのプレフィルドシリンジの普及率は27.1%にとどまっていた.透析操作終了時に手袋をする施設のほうがしない施設よりHBs抗原,HCV抗体陽性率が有意に低く,HCV抗体陽性患者にHCV抗体陽性を伝えている施設およびHCV抗体陽性患者への感染予防のための日常生活の注意をしている施設でHCV抗体陽性率が有意に低かった.肝炎ウイルス陽性患者の定期的な画像検査は,80%の施設で定期的に行われていたが,肝臓専門医での診察は25.3%にとどまった.ウイルス性肝炎に対する治療は39.6%の施設で行われていたが,インターフェロンなどの抗ウイルス療法は少なかった.以上より,ウイルス性肝炎に対する院内感染防止対策は,2000年より改善が認められたが,改善する余地が残っている.また,透析患者のウイルス性肝炎の診療は十分とはいえず,今後,透析患者のウイルス性肝炎の診療ガイドラインの策定が望まれる.
  • 黒田 泰二, 奥村 宜士, 竹岡 浩也, 西岡 敬祐, 池田 昌樹, 近藤 麻紀子, 和泉 雅章, 倭 正也, 金光 律和, 大植 麻衣, ...
    2009 年 42 巻 6 号 p. 435-440
    発行日: 2009/06/28
    公開日: 2009/09/10
    ジャーナル フリー
    血液透析(HD)患者157例にダルベポエチン アルファ(ネスプ®)を1年間静脈内投与し,その有効性,安全性および医療経済について検討した.透析患者のHb値が目標Hb濃度(10g/dL~11g/dL)に維持できるように本剤10μg,15μg,20μgを週1回静脈内投与した.しかしHb値が11g/dL以上になれば休薬した.また鉄関連検査値より鉄欠乏と診断(TSAT20%以下,血清フェリチン濃度100ng/mL以下)した場合は含糖酸化鉄を透析ごとに10回ゆっくり静注した.経済効果を調べるために1年間投与した本剤とrHuEPO製剤の総薬価額を集計し比較検討した.月別ごとのHb濃度推移値は9.68±1.11g/dL~10.58±1.56g/dLで概ね目標Hb濃度範囲内値であった.1回投与量は10μgが全体の57%と最も多く,15μgが23%,20μgが20%であり,休薬期間は1.5±0.4週であった.本剤による明らかな副作用は認められなかった.1年間のrHuEPO製剤使用薬価額は約5,158万円,本剤は約3,004万円であった.以上より本剤はHD患者に週1回10~20μg長期静脈内投与にてHb値が目標Hb濃度内に維持され,副作用がなく,かつ有意な医療経済効果が期待できる薬剤であることが示唆された.
短報
  • 羽山 智之, 石川 勲, 森田 恭子, 中沢 哲也, 梅木 浩一
    2009 年 42 巻 6 号 p. 441-444
    発行日: 2009/06/28
    公開日: 2009/09/10
    ジャーナル フリー
    回診時に医師が人工透析管理システムMiracle DIMCS21(Mics21)を使用しやすいよう新たなソフトを開発した.このソフトでは,Mics21の中から回診時に必要な情報すなわち,透析記録,心胸比,主要検査データ,使用薬剤,プロブレムリストなどを抽出し一画面(回診情報画面)に集約させた.また必要に応じて前回の成績へも簡単にアクセスできるうえ,透析,処方,検査の詳細情報へも到達できる.なお,Mics21は院内電子カルテシステムと繋がれ,検査データ,処方内容がMics21側に取り込まれるようになっている.われわれのセンターでは現在90床188名の透析患者に本ソフトを使用しているが,回診順を前もって組み込めるようにしたので,患者間の移動とともに医師が無線LAN接続のコンピュータ端末をワンクリックすれば,瞬時に次の患者の情報画面に移ることができる.これまで電子カルテでは患者が代わると情報を得るのに時間がかかったが,本ソフトではこの弱点が解消されたため,短時間で必要な情報を取得でき,回診を支援するものとなった.
症例報告
  • 柴田 真希, 片桐 大輔, 勝馬 愛, 舛本 祥一, 南 恵理, 星野 太郎, 多田 真奈美, 井上 剛, 中村 太一, 日ノ下 文彦
    2009 年 42 巻 6 号 p. 445-451
    発行日: 2009/06/28
    公開日: 2009/09/10
    ジャーナル フリー
    血液透析歴5年の50歳代男性.原疾患は多発性嚢胞腎.6年前,急性大動脈解離に対し,胸腹部大動脈人工血管置換術の施行歴あり.入院1か月前より持続する38度台の不明熱の精査目的に当院入院.入院時CRP 16.85 mg/dL,血液培養では,MSSAが検出された.胸腹部CTにて大動脈人工血管周囲に軽度の軟部組織増生を認めたが,熱源の同定には至らなかった.FDG-PETにて,胸腹部大動脈人工血管周囲に一致して18F-FDGの異常集積が認められたため,大動脈人工血管のMSSA感染と診断した.入院2か月前にシャント刺入部に膿を形成した既往があったことが判明し,内シャント感染からの波及が原因と考えられた.胸腹部にまたがる大動脈人工血管感染は手術成績が極めて不良で生存例の報告が少ないため,保存的に抗生剤治療を継続する方針とし,退院時には炎症反応はCRP 0.18 mg/dLと軽快した.しかし37度台の微熱は残存し,治療開始2か月後のFDG-PETでも人工血管周囲の集積は持続しているため,今後の抗生剤投与期間等に課題を残している.FDG-PETは従来悪性腫瘍の全身検索のために用いられてきたが,糖代謝が盛んな部位に取り込まれる特性を利用して,感染巣の同定にも有用であることが知られている.透析患者では,免疫力低下のため易感染性でありながら症状が非特異的となることが多く,不明熱の熱源同定が難しいことが少なくないが,透析患者の不明熱診断においてFDG-PETは非常に有用である可能性が示唆された.
  • 金田 幸司, 福永 直也, 工藤 明子, 大野 絵梨, 今川 全晴, 大石 健司, 田嶋 倫江, 青木 宏平, 菊池 秀年, 安田 透, 松 ...
    2009 年 42 巻 6 号 p. 453-458
    発行日: 2009/06/28
    公開日: 2009/09/10
    ジャーナル フリー
    症例は91歳,女性.過去に腎機能障害なく,明らかな投薬歴もなし.平成19年2月上旬からふらつき感出現.同年2月21日,顔色不良と顔面浮腫を自覚したため近医受診.BUN 105 mg/dL,Cr 8.2 mg/dLと腎機能低下を認めたため,紹介入院となる.同日から血液透析開始.翌日には肺出血も発症し,MPO-ANCA 141 EUにてANCA関連急速進行性腎炎および肺出血例としてステロイドおよび透析治療継続した.血液透析開始13日目に血小板が18.9万/μLから1.7万/μLまで低下しHIT抗体陽性でヘパリン起因性血小板減少症(HIT)と診断した.HITに対して,ヘパリンを中止し透析時の抗凝固剤としてフサン®を用いたが,血小板数は増加せず,直接的抗トロンビン薬であるアルガトロバンに変更後に血小板数は改善した.本例はその後,ANCAも正常化しCrも4 mg/dL前後で安定し透析は離脱し退院している.さらに約5か月後の検査成績でも血小板の低下は認められなかった.HITは透析導入期に数%の頻度で発症し回路内の凝血や動静脈血栓等の臨床症状を呈するとされるが,本例のように定期検査による血小板減少が診断の端緒である場合も多い.血栓性合併症による死亡率は20%に及び特にANCA関連腎炎発症早期にはDIC,薬剤起因性,血栓性微小血管症(TMA)等の血小板減少をきたす病態も併存しやすく,HITが疑われた時点での早期診断治療が重要であると考えた.
  • 梶原 健吾, 中村 享道, 勝屋 弘明, 柿添 豊, 前川 愛, こう 健博, 井上 秀樹, 北村 健一郎, 冨田 公夫
    2009 年 42 巻 6 号 p. 459-463
    発行日: 2009/06/28
    公開日: 2009/09/10
    ジャーナル フリー
    白血球除去療法 (LCAP) は,体外循環下に患者末梢血から白血球を除去する治療法であり,潰瘍性大腸炎(UC)の重要な治療法の一つである.LCAP施行の際には,メシル酸ナファモスタット(NM)が抗凝固剤として選択される.これはUC患者における消化管出血のリスク軽減のためや,セルソーバEX® を構成する陰性荷電膜と血液の接触によるブラジキニン(BK)の産生を抑制し,BKに誘発される血圧低下などのアナフィラキシー様症状を抑制するためである.しかしNMに対しアレルギーを有する患者にヘパリンを抗凝固剤として使用すると,産生されたBKによる症状のためLCAPを中止せざるを得ないことがある.今回,私たちは初めてNMアレルギーの患者に対し,NMの代わりにメシル酸ガベキサート(GM)を使用することで,LCAP施行中のBK産生抑制およびBK関連症状の消失を認めたため報告する.BKによる症状のためLCAPを中止せざるを得なかったNM不耐性患者において,GMはLCAPの継続を可能とし,UCの改善に貢献するものと思われる.
  • 田崎 尋美, 清水 健史, 深谷 圭, 岡本 智子, 小林 圭, 内藤 正吉, 青山 東五, 長場 泰, 竹内 康雄, 守屋 利佳, 坂本 ...
    2009 年 42 巻 6 号 p. 465-469
    発行日: 2009/06/28
    公開日: 2009/09/10
    ジャーナル フリー
    症例は66歳の男性.慢性糸球体腎炎による末期腎不全のために1981年より外来維持血液透析を受けていた.2006年11月に39度台の発熱がみられ,胆道感染症の診断で抗菌薬投与を受けるも改善がなく,同年12月に当院へ入院となった.熱源検索のために行った腹部超音波,CT,MRI,骨シンチグラフィーにて右腸骨,肋骨,椎体,両側副腎,腹膜に癌の転移巣を発見した.一方,消化管,肝,胆,膵,脾,呼吸器,循環器,腎尿路などの検索で,原発巣を診断できなかった.2007年2月に永眠され,病理解剖を行ったところ,右腎原発の径3×2 cm大の淡明細胞癌が診断された.多嚢胞化萎縮腎に発生した腎細胞癌の一部は画像診断が困難な場合があることを考慮し十分な検索が必要である.
平成20年度コメディカル研究助成報告
事故調査報告
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