日本透析医学会雑誌
Online ISSN : 1883-082X
Print ISSN : 1340-3451
ISSN-L : 1340-3451
42 巻 , 7 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
原著
  • 本岡 精, 円城寺 由加里, 力武 修
    2009 年 42 巻 7 号 p. 495-500
    発行日: 2009/06/28
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    血液透析患者の貧血の変動が生命予後に関連すると報告されている.この変動の要因を調べるため,維持血液透析患者110名を対象に採血検査の14週間前から1週間前までに投与されたエリスロポエチンの週間平均投与量,すなわち週間移動平均値を算出し,各赤血球検査値との関連を検討した.血液検査の14週間前から1週間前までのエリスロポエチン移動平均値(EPO-MA(-14w-1w))とヘマトクリット値は経過図で極めて類似した曲線を示した.110例中65例ではエリスロポエチン移動平均値とヘマトクリット間に有意の正相関を認めた.正相関を認めなかった45例中30例は,鉄剤投与によりエリスロポエチン製剤の投与量を減量できた症例であり,相関は認めないまでも両者の変動は類似していた.エリスロポエチン移動平均値を求める期間の検討では,血液検査前の14週~1週において相関係数が最も高くなり,今回の移動平均値を求める期間が妥当であることを裏付けた.貧血の変動の大きな原因はエリスロポエチン投与量の変更であり,移動平均を用いた考え方から14週間前(約3か月半前)のエリスロポエチンの投与量と比較しながら現在の投与量を変更すれば,ヘマトクリットの変動を抑えられると考えられる.
  • 保條 めぐみ, 山崎 民千明, 永田 剛史, 蓑島 謙一, 堀江 正宣, 中根 邦雄
    2009 年 42 巻 7 号 p. 501-505
    発行日: 2009/06/28
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    糖尿病透析患者の下腿潰瘍の治療において皮膚灌流圧(skin perfusion pressure:SPP)を測定し,どれぐらいの値で創傷治癒機転が働くか検討した.対象は2005年8月から2007年10月までの期間でSPPを測定した糖尿病透析患者64名128肢とした.これらを難治性潰瘍発生群と非難治性・潰瘍非発生群(以下,潰瘍発生群,非発生群とする)に群別し,群間の差異を比較検討した.結果,潰瘍発生群のSPP値は38.9±18.7 mmHg,非発生群は51.7±19.8 mmHg(p=0.000336)であった.糖尿病透析患者の下腿潰瘍の治療は困難で,観察期間中潰瘍が治癒状態になったのはわずか7名で,その平均SPP値は49.2±20.4 mmHgであった.SPP測定は簡便で低侵襲であり,重症虚血肢の創傷治癒判定の予測補助診断法として有用であると思われるが,CTや血管造影との併用が必要である.
  • 斎藤 修, 草野 英二, 戸澤 亮子, 伊澤 佐世子, 斎藤 孝子, 武藤 重明, 村山 直樹, 目黒 輝雄, 奥田 康輔, 下山 博身, ...
    2009 年 42 巻 7 号 p. 507-514
    発行日: 2009/06/28
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    血液透析患者における皮膚掻痒症は患者のQOL(quality of life)を低下させる合併症の一つであり,現在のところ主として抗ヒスタミン薬が皮膚掻痒症の治療に用いられている.今回,われわれは塩酸フェキソフェナジンを血液透析患者に投与し,透析患者の皮膚掻痒症に対する有効性を自覚症状に加えてQOLならびに睡眠の面からも併せて検討した.VAS(visual analogue scale)スコアで40以上の掻痒を訴える80例の維持血液透析患者が登録され,77例を解析対象とした.塩酸フェキソフェナジン60 mgを1日2回朝夕食後8週間経口投与し,自覚症状,QOL,睡眠障害ならびに日中の眠気の評価を2,4,8週間後に実施した.かゆみの自覚症状はVASを用いて評価し,QOLはSkindex 29を用いて評価した.塩酸フェキソフェナジンの投与開始2週間後には,かゆみの強さ,範囲,頻度のいずれも投与開始前に比して有意に改善軽快し(p<0.001),8週まで連続して有意な改善を認めた.また,Skindex 29のいずれのスコアも投与開始後には投与開始前に比して有意に低下し(p<0.001),QOLの改善がみられた.夜間の睡眠障害は塩酸フェキソフェナジンの投与により有意に改善され(p<0.001),その結果,日中の眠気も有意に改善された(p<0.001).また重篤な有害事象は認められなかった.以上の結果より塩酸フェキソフェナジンは2週間の投与でも掻痒症状・QOLおよび睡眠障害の有意な改善効果を認め,その効果は継続投与でさらに8週まで改善がみられた.塩酸フェキソフェナジンは安全性も高く,血液透析患者の皮膚掻痒症に有用であることが示唆された.
症例報告
  • 矢崎 順二, 柳田 知彦, 小黒 俊樹, 片岡 政雄, 佐川 幸司, 白岩 学, 酒井 多喜夫, 櫛田 信博, 松岡 俊光, 野宮 正範, ...
    2009 年 42 巻 7 号 p. 515-520
    発行日: 2009/06/28
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    新生児3症例に対し緩徐血液透析(以後CHD)を施行し2症例を救命しえたので報告する.症例1は出生体重2,720 gの新生児であり,日齢5に先天性代謝異常によるコントロール困難な高アンモニア血症を呈した.48時間のCHD後,高アンモニア血症から改善し経口内服薬に切り替え透析離脱可能となった.症例2は出生体重1,710 gの新生児であり日齢3に一過性高アンモニア血症にて40時間CHDを施行した.順調に高アンモニア血症から改善し透析より離脱した.症例3は出生時において重症新生児仮死と診断された症例であった.約9日間,透析療法を確実に施行することができたが救命しえなかった.今後新生児の救命率の向上により本症例のごとく血液浄化療法の必要とされる症例の増加が予想され,より安全で効率的な透析療法の確立が求められる.
  • 栗山 哲, 上田 裕之, 菅野 直希, 大塚 泰史, 田尻 進, 星野 優, 谷山 大輔, 油田 さや子, 貞廣 威太郎, 加藤 尚彦, 細 ...
    2009 年 42 巻 7 号 p. 521-528
    発行日: 2009/06/28
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    長期透析患者にはさまざまな合併症がみられ,その病像を複雑に修飾する.今回,われわれは,erythrocyte stimulating agent(ESA)抵抗性貧血を契機に診断された顆粒リンパ球増多症を経験した.症例は31歳から血液透析を開始した62歳女性で,既往歴に腎盂腎炎(24歳時),化膿性膝関節症と変形性股関節症(40歳時)などがある.59歳時,右腎癌が発見され腎摘出術を受けたが,1年後には胸膜転移と骨転移を認めた.60歳時,ESA抵抗性貧血が出現し,末梢血で顆粒リンパ球の増加を認めた.そのため骨髄穿刺を行い,リンパ球細胞表面マーカーを検査したところCD3+,CD8+,CD16+,CD56-であり,顆粒リンパ球増多症(成熟T細胞型)と診断した.顆粒リンパ球増多症に対しては,今回の入院に数か月先立ち,シクロスポリン(Cyclosporine, Neoral ® )の投与が開始となった.入院時の主訴は,発熱,全身倦怠感,胸水貯留,臀部褥瘡であった.入院後,顆粒リンパ球増多症に対してはシクロスポリンを継続し,随伴するESA抵抗性貧血に対しては頻回の赤血球輸血,感染症に対しては抗生物質,胸水に対してはドレナージなどの治療を行った.しかし,その後治療にもかかわらず病勢は緩徐に進行し,数か月の経過で敗血症から死の転帰をとった.長期透析患者において,高血圧,腎性貧血,骨ミネラル代謝異常などの腎不全に伴う合併症の治療は着実に進歩している.一方,長期存命によって悪性疾患が増加し患者生命予後を規定する重要な因子となっている.本症例では,腎癌に加えて顆粒リンパ球増多症と,二種の悪性腫瘍がみられた.顆粒リンパ球増多症は,白血病の一型であり,発現頻度は比較的まれで,予後良好とされる疾患であるが,本邦において透析患者の報告はみられない.本疾患は血液専門医のみではなく,腎臓医,透析医においても認識すべき疾患と考え報告する.
  • 熊谷 文昭, 櫛田 隆久, 佐々木 路佳, 近藤 正道, 由良 茂貴, 石崎 賢一, 坂本 和也
    2009 年 42 巻 7 号 p. 529-534
    発行日: 2009/06/28
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    透析に導入されてから13年を経過した63歳女性に,鎖骨下動脈スチール症候群(subclavian steal syndrome(SSS))の発症がみられた.患者は50歳のときに,糖尿病を合併するIgA腎症を原病とする腎不全に対して,左前腕定型的標準的内シャントを設置して血液透析を始めた.約10年を経過したころからめまいの散発をみるようになり,検索を受けた脳神経外科で,左椎骨動脈の逆流現象が認められた時点で,subclavian steal phenomenon(SSP)と診断され,経過観察を指示されていた.13年を経過した2008年初めから,めまい,吐き気が頻発し,再び脳神経外科で検索を受けSSSと診断された.内シャントの影響を考慮に加えることにより高流量化した前腕の内シャントが,鎖骨下動脈の血流速度を亢進するとともに,鎖骨下動脈の血圧を低下することになり,椎骨動脈の逆流をきたし,椎骨脳底動脈血流不全(verteblobasilar insufficiency(VBI))をきたしたという病態が判明した.診断のために,脳血管造影,MRA,SPECTなどが用いられたが,診断過程から経過観察過程まで含めて,血管Echo検査が有用であった.高流量化した内シャントに吻合の縮小,静脈床の削減を行ってシャント血流量の減量をはかったが無効で,従来のシャントを閉鎖し対側前腕に新たに内シャントを造設することによりSSSは消失した.
  • 長谷川 善之, 森本 順子, 玉井 路加子, 中園 秀朗, 徳丸 良太, 川越 伸俊, 間野 正衛
    2009 年 42 巻 7 号 p. 535-540
    発行日: 2009/06/28
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    フルニエ壊疽は会陰部の劇症壊死性筋膜炎とされ,早期に診断加療しなければ予後不良の病態として知られている.今回われわれは,フルニエ壊疽を発症し,救命し得た維持血液透析患者2症例を経験したので報告する.症例1は73歳,男性.原疾患は慢性糸球体腎炎であり,8年の透析歴がある.2007年4月肛門周囲膿瘍を契機に発熱,陰嚢腫大を自覚し当院泌尿器科を受診.悪臭と一部皮膚壊疽を伴う顕著な陰嚢腫大,高度の炎症反応,腹部CTで陰嚢・臀部皮下にエアーを伴う膿瘍を指摘.フルニエ壊疽と診断.同日,患部の切開排膿を行い,MEPMの全身投与を開始.患部の細菌培養からは嫌気性菌のBacteroides fragilisが検出され,右精巣摘出を含む広範なデブリートメント,連日の創部洗浄を施行.術後60病日に退院した.症例2は75歳,男性.原疾患は糖尿病性腎症であり,5か月の透析歴がある.2007年8月尿道カテーテルによる尿道損傷を契機に発熱,陰嚢腫大が出現.高度の炎症反応,腹部CTで陰茎・陰嚢にエアーを伴う膿瘍を認めフルニエ壊疽と診断した.同日,左精巣摘出を含む広範なデブリートメントと膀胱瘻造設を行い,MEPMの全身投与を行うことで治癒した.患部の細菌培養からは嫌気性菌のBacteroides fragilisが検出された.両症例とも血液透析患者であり,患者の抵抗性減弱(宿主側要因:感染防御機構の低下,栄養状態の低下,高齢,糖尿病の合併)などの潜在的病態が基礎にあると考えられる.このような患者に発熱,会陰部から下腹部の急激な発赤,腫脹を認めた際は,本疾患の発症を念頭におき対処することが必要である.
  • 濱田 哲, 松原 雄, 遠藤 修一郎, 山田 幸子, 家原 典之, 中山 晋哉, 伊丹 淳, 渡辺 剛, 坂井 義治, 深津 敦司
    2009 年 42 巻 7 号 p. 541-545
    発行日: 2009/06/28
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    症例は,69歳女性で,食道癌手術目的で入院,初回血液透析終了後から発熱を生じるようになった.種々の原因検索の結果,先発医薬品(以後先発品),後発医薬品(以後後発品)両者の含めたメシル酸ナファモスタットが原因であることが分かった.詳細に臨床症状を検討した結果,両者では副作用発現様式に明らかな相違が認められた.後発品の場合,使用回数とともに発熱までの時間が短縮し,血圧低下も合併するようになった.一方,先発品に変更後は後発品と同様に発熱は認められたが,透析終了後一定時間を経過して生じるようになり,アナフィラキシー症状は認められなかった.この相違に対して可能な限りの血清学的検索を行った.DLSTでは後発品使用後116日目に陽性,先発品は128日目に陰性,以後は両者とも陰性であった.先発品でメシル酸ナファモスタットに対するIgE抗体は陰性,IgG抗体は陽性であった.後発品では抗体検索システムが確立されておらず測定不可能であった.以上の結果を総じて,透析関連性の発熱の原因としてメシル酸ナファモスタットが原因であること,先発品・後発品で明らかに発症状況に差があり,発症機序が異なっていることが示唆された.先発品ではIgGによる免疫反応が発熱の原因であると推測された.しかし後発品のアレルギー症状と免疫反応との関連が発症機序の理解に重要であると考えられたが,原因検索システムが整備されておらず解明できなかった.本症例のように,先発品,後発品両者の間で,アレルギー症状発現様式に相違があることを,詳細に分析した症例報告は検索した範囲内では認められなかった.後発品においても先発品同様副作用の原因検索システム構築が重要であることを指摘する上でも貴重な症例であると考えられた.
feedback
Top