日本透析医学会雑誌
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42 巻, 8 号
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症例報告
  • ―2症例の報告―
    鎌野 千佐子, 大沢 弘和, 橋本 和政, 坂田 紗弥子, 山本 美生, 吉田 秀光, 齋藤 サビーネ 京子, 木嶋 祥一郎, 柏木 哲也, ...
    2009 年 42 巻 8 号 p. 573-580
    発行日: 2009/08/28
    公開日: 2009/10/06
    ジャーナル フリー
    血液透析(hemodialysis;HD)で血液がダイアライザーと接触すると補体,凝固・線溶系,血小板,白血球,サイトカインなどの活性化がおこる.このため血小板や白血球はHD開始直後に低値を示し,HD終了後にほぼ前値へ回復するとされている.われわれは,当院入院中の維持HD患者でダイアライザーが原因と考えられる血小板数の低下を認めた2症例を経験した.いずれの症例も,発症時にFPX®(polysulfone membrane;PS膜)を使用していた.血小板数はHD終了ごとに減少していたためダイアライザーを変更すると,HD後に血小板が減少することはなくなり,血小板数は回復した.経過および検査結果よりdisseminated intravascular coagulation(DIC)は否定した.1症例目は抗凝固剤heparinの投与は一切なく,2症例目ではheparinを中止することなくダイアライザーの変更のみで血小板数が回復したことからheparin induced thrombocytopenia(HIT)は否定した.薬剤歴および骨髄所見から薬剤性骨髄抑制も否定的であった.患者の状態が安定したところで,インフォームドコンセント(informed consent;IC)を得て再度FPX®を使用したところ,HD後に血小板数は著明に低下した.Heparinの投与量に関してはactivation coagulating time(ACT)を用いて評価を行った.FPX®は,生体適合性が比較的高いと考えられている.しかし,2症例ともFPX®使用開始後に血小板減少を認めており,血小板数はHD後に減少する傾向がみられ,ダイアライザーの変更のみで血小板数が前値へ回復した.またFPX®を再使用した際HD後の血小板数が半減した.このため血小板数の減少にはFPX®の関与が示唆された.
  • 松浦 友一, 竜崎 崇和, 麻薙 美香, 佐方 克史, 奥 佳代, 小林 絵美, 青木 洋敏, 半田 みち子
    2009 年 42 巻 8 号 p. 581-586
    発行日: 2009/08/28
    公開日: 2009/10/06
    ジャーナル フリー
    症例は56歳(2009年現在),男性.1993年に慢性腎不全(原疾患不明)にて血液透析を導入された.1997年多血症の精査目的にて入院.血中エリスロポエチン高値であることから検査を進め,多血症の原因として睡眠時無呼吸症候群・喫煙・透析時低血圧が原因と判断した.睡眠時無呼吸症候群については気道の閉塞病変に対してすでに耳鼻科的な治療が行われていたため,食事療法による減量を行い,多血症も短期的な改善をみていた.2003年に再度,簡易アプノモニターを装着すると重症の睡眠時無呼吸症候群という評価になった.合併症である多血症に関して過去に減量の効果があったため,continuous positive airway pressure(CPAP)を導入せず経過観察としたところ,2004年居眠り運転にて交通事故を起こす結果となった.今回の症例に関してはCPAPの導入をもっと早期から始めるべきであったと考えた.
  • 小藤田 篤, 加藤 真紀, 秋元 哲, 高橋 秀明, 伊藤 千春, 武田 真一, 安藤 康宏, 武藤 重明, 湯村 和子, 草野 英二
    2009 年 42 巻 8 号 p. 587-593
    発行日: 2009/08/28
    公開日: 2009/10/06
    ジャーナル フリー
    ヘパリン起因性血小板減少症(heparin-induced thrombocytopenia;HIT)は近年本邦でも広く認知されるようになってきた.今回われわれは,シャント造設中のヘパリン投与後より出現した呼吸器症状がHIT診断の契機となった1透析症例を経験した.症例は81歳,女性.真性多血症の既往があり,糖尿病性腎症による慢性腎不全の進行のため,平成19年12月28日カテーテル挿入下に透析導入となった.9日後の内シャント造設術中のヘパリン静注直後より肺血栓塞栓症を思わせる胸痛,頻呼吸,低酸素血症が出現し,翌日には透析導入時に52.8×104/μLであった血小板数が3.2×104/μLまで著減した.画像上右内頸静脈カテーテル周囲の血栓および腎梗塞像を認めたが,肺血栓塞栓症の所見は確認されなかった.抗platelet factor 4(PF4)-ヘパリン抗体が陽性であることが判明し,ヘパリンを中止しargatrobanによる治療を開始したところ,持続していた呼吸器症状は消失し,血小板数も安定した.本症例におけるHITの診断の契機になった呼吸器症状は,各種画像検査にて肺血栓塞栓症と診断しえない病態として知られる偽性肺塞栓症によるものと判断した.従って,シャント造設時のヘパリン投与により肺血栓塞栓症を思わせる胸部症状が急速に出現した場合は,HITの可能性を念頭に置き精査を進める必要があると思われた.また,真性多血症の存在が本症例のHITの臨床経過に及ぼした影響は不明であるものの両者の合併は決して例外ではなく,真性多血症を伴った血液透析導入症例に遭遇した場合には,HITを含めた血栓症の発現の可能性を念頭に置きながら加療にあたることも重要であると考えられた.
  • 山崎 安人, 渡辺 淳一, 崎村 直史, 宮崎 健一, 村谷 良明, 塚崎 祥子, 西村 直樹
    2009 年 42 巻 8 号 p. 595-599
    発行日: 2009/08/28
    公開日: 2009/10/06
    ジャーナル フリー
    患者は61歳,男性.1998年,慢性糸球体腎炎による末期腎不全で血液透析を導入.2008年7月,定期の腹部CTで左腎腫瘍,膀胱腫瘍を認め精査し,左腎腫瘍はT1N0M0,膀胱腫瘍はT2N0M0の臨床診断に至り,2008年8月,全身麻酔下に根治的左腎摘除術,膀胱部分切除術を施行.病理診断で左腎腫瘍はClear cell carcinoma,pT1N0M0,Grade 2,膀胱腫瘍は膀胱褐色細胞腫pT2N0M0であった.術前より高血圧を認めたが,発作性の高血圧や失神,排尿に関連した症状を認めなかったため,褐色細胞腫を鑑別診断として考えておらず,ホルモン学的検査を施行していなかった.術中,術後特に血圧変動に問題なく,膀胱褐色細胞腫はホルモン不活性腫瘍と思われた.透析患者における膀胱腫瘍の頻度は非常に少ない.乏尿・無尿である透析患者においては肉眼的血尿などの症状を認める機会が少なく,発見が遅くなることも多い.透析患者におけるスクリーニングとしては膀胱洗浄細胞診や積極的な膀胱鏡を行うしか方法がない.透析導入や腎移植の精査の際にみつかることも多く,本症例でも定期の腹部CT検査で偶発的に認められた.今回われわれは長期血液透析患者における膀胱褐色細胞腫と左腎細胞癌を同時に認めた非常に珍しい症例を経験した.血液透析患者に膀胱褐色細胞腫を認めた症例は本邦5例目で,腎細胞癌を合併した重複腫瘍の症例としては本邦初であり,透析患者における腫瘍発生や膀胱褐色細胞腫に関して若干の文献的考察を加え報告する.
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