日本透析医学会雑誌
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43 巻 , 11 号
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原著
  • 安藤 亮一, 要 伸也, 吉田 雅治, 村上 彰, 栗本 義直, 桧垣 昌夫, 小沢 尚, 松川 重明, 宮川 博, 村上 円人, 小泉 博 ...
    2010 年 43 巻 11 号 p. 891-897
    発行日: 2010/11/28
    公開日: 2010/12/16
    ジャーナル フリー
    2009年4月から2010年3月まで流行した,新型インフルエンザA(H1N1)の発生状況およびワクチン接種状況について,東京都多摩地区において調査した.調査方法は,三多摩腎疾患治療医会の災害ネットワークを活用し,2009年10月から2010年3月までの透析患者およびスタッフの新型インフルエンザA(H1N1)の新規発生数および2009年11月から2010年3月までの新型インフルエンザA(H1N1)ワクチンの接種状況について集計した.93施設中延べ76施設より回答があり,透析患者,スタッフともに感染率は2009年10月より漸減し,2010年3月には0となった.6か月間で,透析患者70名,透析スタッフ25名の感染が報告された.感染率は透析患者1.58%,スタッフ2.59%であった.人工呼吸器を要する重症例は透析患者で1例に認められたのみで,その症例も軽快退院し,当地区における新型インフルエンザA(H1N1)による透析患者の死亡例はなかった.透析患者の感染者のうち65歳以上は34.3%であった.A型インフルエンザ迅速診断キット陽性率は,透析患者40%,スタッフ60%であった.新型インフルエンザA(H1N1)は2009年~2010年で国民全体の6人中1人が感染したといわれるが,今回の検討では,透析患者,スタッフともに感染率は低かった.その主な原因としては,年齢構成が特に透析患者で高かったためと考えられた.地域の透析施設における新型インフルエンザの発生状況の調査および情報共有は感染対策上有用と考えられた.
  • 黒田 昌弘, 西村 結樹, 清水 雅夫, 榎本 正貴, 高田 茂和, 小北 克也, 山本 忠司, 山川 智之
    2010 年 43 巻 11 号 p. 899-908
    発行日: 2010/11/28
    公開日: 2010/12/16
    ジャーナル フリー
    クエン酸含有重炭酸透析液について基礎的検討を行った.対象はカーボスター®L(CL)でキンダリー®AF2号(K2),キンダリー®AF3号(K3)と比較した.CL,K2,K3を規定の混合比率で希釈後,密閉状態でイオン化Ca(iCa),総Ca(tCa),pH,pCO2を48時間経時的に測定した.炭酸塩析出について,非密閉状態のCL,K2を偏光顕微鏡400倍にて結晶数と結晶面積を測定した.A剤による機器部材の劣化およびブドウ糖分解について,CL,K2のA剤にフッ素ゴム部材,SUS316を密閉状態で4か月間完全浸漬させSUS316からの溶出金属測定,およびフッ素ゴム部材の電子顕微鏡観察および引張強度・引張伸度測定を行った.ブドウ糖の安定性について,CL,K3において加速試験(40℃)と苛酷試験(50℃)を行い,分解物として3-デオキシグルコソン(3-DG),5-ヒドロキシメチルフルフラール(5-HMF),レブリン酸濃度を6か月間測定した.tCa(mg/dL)は開始時点でCL:5.8,K2:5.7,K3:4.8であり安定していた.iCa(mmol/L)は開始時点ではCL:0.82,K2:1.23,K3:1.09とCLが最も低値であり,これは4時間まで持続した.4時間までのCaのイオン化率(iCa/tCa比)の平均は,CL:0.64,K2:0.84,K3:0.91とCLが最も低値であった.pHでは全液において時間の経過とともに上昇,pCO2は低下した.結晶面積ではCLがK2に比し増加したが,個数には差はなかった.フッ素ゴム部材の劣化および金属溶出では各液間に差は認められなかった.ブドウ糖安定性試験では,3-DGはK3がCLより高値であった.5-HMFではCLがK3より高値であり,CLで分解が進行していることが示された.レブリン酸は各液で検出感度以下であった.クエン酸含有重炭酸透析液では,機器腐食に関しては問題なかったが,クエン酸のキレート作用と炭酸Caの生成促進によるiCa濃度の低下とブドウ糖分解の促進が生じており,実際の使用にあたっては注意が必要であることが示された.
  • 吉田 泉, 駒田 敬則, 森 穂波, 安藤 勝信, 安藤 康宏, 草野 英二, 大河原 晋, 鈴木 昌幸, 古谷 裕章, 飯村 修, 小原 ...
    2010 年 43 巻 11 号 p. 909-917
    発行日: 2010/11/28
    公開日: 2010/12/16
    ジャーナル フリー
    われわれは,透析患者の除水による循環血液量の変化をモニターする機器(Blood Volume Monitoring system:BVM)を日機装社(静岡)と共同開発し,多施設共同研究において臨床的にドライウエイト(DW)が適正と判断された患者の循環血液量の変化(BV%)の予想範囲を設定し,すでに報告した(Ther. Apher. Dial. in press).本論文では,その予想範囲が適正な除水量設定に有用か否かを検討した.維持透析を行っている9施設の144名を対象とし,採血日を含む3回の透析日に,BVM搭載装置を用いて透析を行った.DWが適正と判断された患者のBV%予想範囲は,上限ライン:BV%/BW%後=-0.437t-0.005 下限ライン:BV%/BW%後=-0.245ln(t)-0.645t-0.810.BV%は循環血液量変化率,BW%後は透析による除水量の前体重に対する比率,tは透析時間(h).今回の検討では,DW適正の可否を問わずに144例を抽出し,430データを集積した.プロトコール違反の94データを除外した336データを解析対象症例とした.各施設の判断によりDW適正と判断された230データで,BVMでも適正と判断された適正合致率は167データ(72.6%)であった.臨床的にDWを上げる必要があると判断された45データで,BVMでもDWを上げる必要があると判断されたのは10データ,逆に臨床的にDWを下げる必要があると判断された61データで,BVMでも下げる必要があると判断されたのは37データであった.その結果,BVMによる判定と臨床的判定の適合率は63.7%であった.不適合の原因としては,バスキュラーアクセスの再循環率(VARR),体位変換,体重増加量が1.0kg以下などであった.PWI(Plasma water index)による判定との適正合致率は71.6%で,適合率は58.0%であった.hANPによる判定との適正合致率は68.8%で,適合率は48.7%であった.循環血液量のモニターは,透析患者の除水設定管理の一助になり,われわれが設定したBV%予想範囲は臨床的にも妥当性が高いと考えられた.
  • 廣瀬 幸恵, 中西 昌平, 金 鐘一, 深川 雅史
    2010 年 43 巻 11 号 p. 919-923
    発行日: 2010/11/28
    公開日: 2010/12/16
    ジャーナル フリー
    代謝性アシドーシスの状態把握は透析患者においても重要であるが,透析患者についての酸塩基平衡やアニオンギャップ(AG)に関する文献は少なく,また生化学検査と比し,血液ガス分析を測定する機会は極めて少ない.血液ガス分析でしか得られない重炭酸イオン濃度(HCO3-)を通常測定する生化学検査のデータを用いて代謝性アシドーシスの状態が推測できれば臨床的に有用であると考え,維持透析患者83名のシャント静脈血から得られた血液ガス分析の結果と生化学検査の結果を用い,AGとよい相関を認める血清無機リン濃度(IP)を用いてHCO3-の近似式を得,日常診療で使用しやすいように簡略化し,推定式HCO3-=Na-Cl-IP-7を得た.この式はHenderson-Hasserbalch式から求めたHCO3-とよい相関を認めた.今回の検討で透析患者ではAGの形成にIPが大きく関係していることが示唆された.このことは透析患者の高リン血症が,リン酸塩としてAGの構成要素として健常人とくらべて増大していることを改めて示すとともに,透析患者で増加していると考えられている不揮発性酸とIPとの間に相関がある可能性を示している.1施設での検討のため,今後上記推定式の有用性について多施設での検討がなされることを希望する.
  • 清水 詩子
    2010 年 43 巻 11 号 p. 925-931
    発行日: 2010/11/28
    公開日: 2010/12/16
    ジャーナル フリー
    目的:わが国において慢性透析者の高齢化と透析の長期化が顕著となりつつあり,介護保険制度の活用が望まれる.目的は,慢性透析者の在宅生活の継続に不可欠な移動に関するADLの経時的変化について,要介護認定調査結果のうち中間評価項目第2群「移動」,第3群「複雑動作」,第4群「特別介護」,第5群「身の回り」の得点を用いて明らかにし,在宅生活を継続するうえで必要な支援を検討することである.方法:調査対象は,新潟市の要介護認定者のうち,透析者すべてと非透析者,計1,000名の,2003年4月から2009年3月末のデータである.分析対象は,介護保険を4年以上利用する者のうち,過去14日間に受けた医療の項目「透析」の該当者を透析者,非該当者を非透析者とし,透析群と非透析群に分けた.非透析群は過去14日間に受けた医療の非該当者とした.直近の認定調査結果を4回目,1年遡るごとに3,2,1回目とし,年代別・男女別に中間評価項目の第2~5群における各回の平均値を従属変数,要介護認定調査回数と透析の有無を独立変数とする二元配置分散分析を行った.結果:透析群は69歳以下24名,70歳代44名,80歳以上53名,非透析群は69歳以下15名,70歳代86名,80歳以上234名.認定調査回数と透析の有無の交互作用はなかった.透析の有無について中間評価項目得点の差の検定で透析群が有意に低値を示したのは,第2群69歳以下女性(p<0.05),透析群が有意に高値を示したのは,第4群80歳以上女性(p<0.01),第5群70歳代女性(p<0.05),第5群80歳以上男性(p<0.05)と女性(p<0.001)であった.考察:介護保険を4年以上利用する透析者において,移動の能力は69歳以下女性で有意に低下し,移動を伴わない身の回りの行為は80歳以上の男女で有意に維持された.通院支援と介護予防の必要性が示唆された.
  • 新海 信雄, 柳瀬 雅裕, 京田 有樹, 竹内 基, 武居 史泰, 水野 孝祐, 中島 孝治, 三浦 良一, 中鉢 純, 佐々木 勇人, 足 ...
    2010 年 43 巻 11 号 p. 933-938
    発行日: 2010/11/28
    公開日: 2010/12/16
    ジャーナル フリー
    血液透析における透析液カルシウム濃度は時代により変わりつつあるが,近年ではビタミンD製剤やカルシウム含有リン吸着剤がよく使用されることに伴い,カルシウム濃度2.5mEq/Lの透析液が好んで使われるようになってきた.当施設では2003年8月よりカルシウム濃度3.0mEq/Lの透析液を使用してきたが,2008年9月より2.5mEq/Lの透析液への変更を行った.血液透析患者のカルシウム・リン代謝に対して透析液カルシウム濃度の変化が及ぼす短期的な効果につき検討した.当科において血液透析を行っている81例(2008年9月現在)のうち,血液透析導入後6か月未満の症例,透析液カルシウム濃度を変更しなかった症例,透析液変更後8週のうちにカルシウム・リン代謝関連薬の処方内容変更を行った症例を除外した52例を対象とし,血清カルシウム値,血清リン値,カルシウム・リン積,インタクトPTH値の透析液変更前後での推移および,日本透析医学会ガイドラインにおける管理目標値達成率の変化を検討した.変更後8週以降は,カルシウム・リン代謝関連薬の処方内容変更を容認した.透析液変更後,それぞれ有意差をもって血清カルシウム値の低下,インタクトPTH値の上昇,血清リン値の上昇を認め,カルシウム・リン積は有意に上昇した.結果,カルシウム・リンの管理目標値達成率は低下したが,透析液変更8週目以降に処方内容変更を行った結果,それらのパラメータは有意に改善を示し,管理目標値達成率も透析液変更前とほぼ同等となった.透析液カルシウム濃度が変わっても,処方内容の調整によりカルシウム・リンの管理目標値にコントロール可能であると考えられた.
症例報告
  • 粕本 博臣, 成山 真一, 山本 貴敏, 金光 秀史, 西田 賀計, 伊東 芳江, 氷室 恵子, 景山 一美, 櫻井 麻美, 中田 千鶴子, ...
    2010 年 43 巻 11 号 p. 939-943
    発行日: 2010/11/28
    公開日: 2010/12/16
    ジャーナル フリー
    症例は88歳,男性.2008年7月から糖尿病性腎症由来の慢性腎不全のため血液透析導入となった.同時期よりインスリンによる血糖コントロールを中止し,α-グルコシダーゼ阻害剤(ボグリボース)の内服を開始した.2008年11月下旬頃より腹部膨満感を自覚,11月30日腹部CTにて腹腔内遊離ガス像を認めたため入院となった.腹膜炎症状を認めなかったため絶食のみにて経過観察としていたが,腹部膨満感は改善しなかった.12月4日試験開腹施行,消化管穿孔はなく回腸末端より約70cm~150cmの回腸腸間膜側に腸管嚢腫様気腫症を認めた.腸管嚢腫様気腫症の原因はいまだ解明されていないが,最近α-グルコシダーゼ阻害剤による発症の報告が散見されるようになってきた.本症例でもα-グルコシダーゼ阻害剤が原因に関与している可能性があると考えられた.
  • 岡田 志緒子, 稲荷場 ひろみ, 崔 吉永, 河野 仁美, 寺柿 政和, 岡村 幹夫, 吉本 充, 田中 あけみ, 根来 伸夫, 葭山 稔
    2010 年 43 巻 11 号 p. 945-951
    発行日: 2010/11/28
    公開日: 2010/12/16
    ジャーナル フリー
    ファブリー病に対して酵素補充療法(ERT)が実用化され,アガルシダーゼアルファ,アガルシダーゼベータの2剤が使用可能である.しかし,透析患者に対してのデータは少ない.特に,アガルシダーゼアルファに関しては血液透析(HD)中投与のデータがないため,HD中投与の可否につき薬物動態の検討を行った.【症例】46歳,男性.26歳時に脳梗塞を発症し,ファブリー病と診断.平成18年7月に血液透析導入,11月よりアガルシダーゼベータによるERTを開始したが,投与関連反応高度のため,平成19年4月よりアガルシダーゼアルファに薬剤を変更.疼痛発作,発汗障害,下痢などの自覚症状はERT開始後1年程度で改善し,心機能の悪化も認めていない.本例に対しHD中,非HD中にERTを行い,薬物動態を検討したが,HD中投与と非HD中投与で,血漿中の酵素活性に差は認めなかった.【まとめ】アガルシダーゼアルファはベータと同様にHD中に投与可能である.また,ERTにより,症状の改善のみならず,心機能維持効果が示唆された.透析患者に対しても,ERTの継続は重要であり,ベータとアルファでの臨床効果の差は認められず,ベータが投与困難な症例に対しアルファへ変更し投与を継続することは効果的であると思われる.
  • 神田 怜生, 濱田 千江子, 下山 正博, 柳川 宏之, 佐藤 信之, 大崎 憲, 長濱 莉莉, 田中 裕一, 井尾 浩章, 金丸 裕, 大 ...
    2010 年 43 巻 11 号 p. 953-958
    発行日: 2010/11/28
    公開日: 2010/12/16
    ジャーナル フリー
    症例は54歳,女性.平成3年,IgA腎症による慢性腎不全のため腹膜透析(PD)を施行し,平成12年から血液透析(HD)を併用した.平成19年6月,PDカテーテルを抜去した.その直後から腹水の貯留を認めるようになり,被嚢性腹膜硬化症(EPS)を疑い副腎皮質ステロイド内服治療を行ったが,腹水は改善しなかった.平成20年2月,腹痛と血圧低下で緊急入院し,腹水穿刺でゼリー状の貯留液を認めた.直ちに腹部MRIを行ったところ,左卵巣腫瘍の腫大と腹腔内に多量の腹水を認め,卵巣腫瘍と腹膜炎を疑い緊急手術となった.開腹所見では,左卵巣の腫大と多数の大腸憩室,腹腔に充満したゼリー状内容物を認め,回盲部周囲の内容物は混濁していた.病理組織所見から左卵巣の粘液性嚢胞性腫瘍の穿破による腹膜偽粘液腫と憩室炎による腹膜炎と診断された.PD中止後の腹水貯留に対して,体液過剰やEPSのみならず,稀ではあるが粘液や漿液産生腫瘍などの発症も考慮し,病態の検索が必要であると考えられた.
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