日本透析医学会雑誌
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44 巻 , 10 号
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原著
  • 柴田 佳菜子, 伊藤 恭彦, 水野 正司, 鈴木 康弘, 平松 英樹, 伊藤 功, 戸田 晋, 丸山 彰一, 松尾 清一
    2011 年 44 巻 10 号 p. 1007-1013
    発行日: 2011/10/28
    公開日: 2011/11/29
    ジャーナル フリー
    二次性副甲状腺機能亢進症(2°HPT)の治療薬であるシナカルセトは副甲状腺のカルシウムセンシングレセプター(CaSR)に結合することにより,副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌を抑制する.CaSRは副甲状腺のみならず,腎臓や骨,脳など全身に発現している.腎臓では,ヘンレループの上行脚や集合管に発現しているため,CaSRを介したマグネシウム(Mg),カリウム(K)代謝への影響が考えられる.腹膜透析(PD)は残腎機能保持が特徴であり,尿量が維持されているPD患者は多い.今回,残腎機能を有するPD患者へのシナカルセト投与の有用性,およびMg,K代謝を含めた安全性を検討した.残腎機能を有するPD患者6名を対象として,シナカルセト投与前と投与2か月後のintact PTH(iPTH),血清Ca値,血清P値,血清Mg値,血清K値,およびそれぞれの尿中排泄量の変化を検討した.また,腎機能の評価とシナカルセト服用中の有害事象,併用薬の調査を行った.シナカルセト投与により,血清iPTH値,血清P値,尿中P排泄量が有意に低下した.iPTHは中央値427.2(Interquatile range;IQR:351.2~1,313.3)pg/mLから中央値234.4(IQR:86.0~721.3)pg/mLに有意に減少した.一方,血清Ca値,血清Mg値,血清K値,Ca,Mg,Kの尿中排泄量には著明な変化はみられなかった.治療前後の血清Mg値,血清K値の中央値はそれぞれ2.2(IQR:1.9~2.3)mg/dLから2.0(IQR:1.8~2.5)mg/dL,4.5(IQR:4.4~5.2)mEq/Lから4.6(IQR:4.2~4.8)mEq/Lで,いずれも基準値内で有意な変化を示さなかった.シナカルセト投与による血清Mg,K濃度への影響は認められず,残腎機能を有するPD患者に対しても安全に使用できることが示唆された.
  • 村本 弘昭, 北田 欽也, 武藤 寿生, 竹内 正義
    2011 年 44 巻 10 号 p. 1015-1021
    発行日: 2011/10/28
    公開日: 2011/11/29
    ジャーナル フリー
    終末糖化産物(AGEs)は糖尿病や尿毒症において生成が促進され,血管合併症の発現に深く関与していると考えられている.今回われわれはリン吸着薬であるセベラマー塩酸塩によるAGEsの吸着除去効果につき検討した.3か月以上安定して週3回の血液透析を施行している患者9例を対象に,炭酸カルシウムから徐々にセベラマー塩酸塩に変更し,最終的に全例にセベラマー塩酸塩4.5g/日,1例に炭酸カルシウム1.5g/日を投与した.24週間経過を観察しAGEs,脂質,カルシウム,リン,intact PTHおよび高感度CRPの血清濃度を検討した.AGEsは食品中に多く含まれるglucose由来のGlc-AGEsおよび生体内で生成され強い毒性を呈するglyceraldehyde由来のGlycer-AGEsをELISA法で測定した.Glc-AGEsは29.64±7.86U/mLから12週後25.41±11.27U/mLと変化はなかったが,24週後13.97±10.21U/mLへ有意に低下した.またGlycer-AGEsも8.31±1.23U/mLから12週後に8.27±0.73U/mLと変化はなかったが,24週後5.49±1.04U/mLへ有意に低下した.Non-HDLコレステロール値は127±34mg/dLから4週後84±25mg/dLと有意に低下し,24週後も80±15mg/dLと有意な低値を持続した.血清カルシウム,リン,intact PTHおよび高感度CRP値には24週後に有意な変動は認めなかった.Glc-AGEsは経口的に体内に取り込まれ強毒性のGlycer-AGEsの産生を増強することが報告されており,血清AGEs値の低下はセベラマー塩酸塩による食事中のAGEsの吸着除去効果も考えられるが,その他オキシダントなどさまざまな物質の除去による酸化ストレス軽減も影響している可能性が考えられた.これらの効果により透析患者の血管合併症の進展抑制が期待される.
症例報告
  • 成山 真一, 飯田 正人, 粕本 博臣, 増田 重樹, 伊東 芳江, 徳岡 正子, 氷室 恵子, 金光 秀史, 佐田 竜尚, 高橋 亜麻奈, ...
    2011 年 44 巻 10 号 p. 1023-1029
    発行日: 2011/10/28
    公開日: 2011/11/29
    ジャーナル フリー
    多発性骨髄腫に対する治療薬として新規分子標的薬プロテアソーム阻害剤であるボルテゾミブが開発され,その有効性が示されている.今回,われわれは,血液透析を要する急性腎不全を合併した多発性骨髄腫に対しボルテゾミブを投与し奏効した1例を経験した.症例は65歳,女性.2009年9月,複視で発症,生検で頭蓋底の形質細胞腫と組織診断され,精査の結果,多発性骨髄腫と確定診断された.2010年2月に急激な腎機能障害をきたし,血液透析療法を施行するとともに高用量デキサメサゾン療法を行った.しかし腎機能の改善は得られずボルテゾミブによる治療を開始し,ボルテゾミブ・デキサメサゾン療法(BD療法)を4クール施行した時点で血液透析を離脱した.BD療法は,重症の急性腎不全を合併した多発性骨髄腫に対して有効な治療選択肢の一つとなり得ることが示唆された.
  • 中田 純一郎, 濱田 千江子, 中野 貴則, 佐藤 大介, 鈴木 祐介, 鈴木 仁, 井尾 浩章, 堀越 哲, 富野 康日己
    2011 年 44 巻 10 号 p. 1031-1037
    発行日: 2011/10/28
    公開日: 2011/11/29
    ジャーナル フリー
    症例は46歳,男性.慢性糸球体腎炎による慢性腎不全で,16年間の腹膜透析(PD)歴がある.血液透析へ移行後,右側腹部痛および嘔吐とともに腹水を認めるようになり精査したところ,好酸球性腹膜炎と診断された.Prednisolone(PSL)の内服により症状は改善し,PSLは漸減された.以後経過観察されていたが,好酸球性腹膜炎の再発は認められなかった.しかし,約17か月後より腸閉塞を繰り返すようになった.このためPDカテーテル抜去および腹膜癒着剥離術を行ったが,この際,被嚢性腹膜硬化症(EPS)と診断された.しかし,術後腹水の出現は認められず,腸閉塞の再発もみられていない.EPSの原因は多岐にわたるが,本症例は好酸球性腹膜炎の発症を契機にEPSへ進展したと考えられるまれな1例であり,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 高木 彩乃, 八田 告, 上野 里紗, 門 浩志, 瀬川 裕佳, 塩津 弥生, 澤田 克徳, 秋岡 清一
    2011 年 44 巻 10 号 p. 1039-1045
    発行日: 2011/10/28
    公開日: 2011/11/29
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,男性.主訴は,全身倦怠感,PD排液異常.既往歴に関節リウマチを認める.現病歴:慢性腎不全(原疾患不明)のためSMAP法にてPDカテーテル挿入.その後2006年10月からCAPDにて当院で透析導入.2年9か月のPD歴で,出口部感染や腹膜炎の既往を認めず経過していた.2009年6月X日にエリスロポエチン注射と採血を実施,特に体調不良の訴えもなく帰宅した.後日判明した採血結果でCRPが31.24mg/dLと異常高値を示していた.その前後に腹痛なく,排液混濁も認めなかったが,同年7月10日早朝より「腹痛はないが,突然に透析液の注入途中から肛門より排液する」との訴えで診察依頼があり,独歩にて救急来院した.PDカテーテルから食物残渣を含む混濁した排液を確認,穿孔性腹膜炎を疑い,緊急開腹手術をした.カテーテル周囲で瘻孔形成し,癒着した消化管の剥離に難渋して穿孔部位の同定は困難であった.臨床経過から本症例の穿孔性腹膜炎の機序は次のとおりと推察する.すなわち,憩室炎などを原因にすでに潜在した腹膜炎を約2週間前に発症し,被覆した腸間膜とカテーテルが治癒過程において癒着.その後,機械的刺激によりCAPDカテーテル先端が脆弱箇所を穿通し,腸管内に迷入した.PD患者の穿孔性腹膜炎の診断はしばしば困難である.その理由に,(1)free airや腹水が消化管穿孔の根拠になりにくいこと,(2)腹膜透析液による洗浄効果で腹膜刺激症状が緩和されること,(3)通常のPD腹膜炎との鑑別が困難であること等があげられ,高い死亡率の原因となっている.穿孔性腹膜炎の死亡率が高いことから臨床上,極めて危険な合併症であるといえる.腹膜透析液による洗浄効果で腹膜刺激症状が緩和されるなど発見が遅れる可能性があることを留意し,排液の詳細な観察ならびに炎症所見などのデータの推移には十分注意する必要があると思われた.
  • 金子 友香, 徳山 博文, 脇野 修, 木田 可奈子, 林 松彦, 林 晃一, 伊藤 裕
    2011 年 44 巻 10 号 p. 1047-1052
    発行日: 2011/10/28
    公開日: 2011/11/29
    ジャーナル フリー
    慢性腎不全維持血液透析中,低栄養,鉄過剰症,骨髄異形成症候群(MDS)など複数の免疫能低下に寄与する要因が重なり,メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)によるシャント感染・敗血症を契機に多発膿瘍の合併に至った症例を経験した.透析患者のシャント感染を契機に,本症例のような重症多発性化膿性膿瘍を合併することはまれであり,文献的考察を加え報告する.症例は67歳,女性.慢性糸球体腎炎を原病として,慢性腎不全の進行に伴い,1988年に血液透析導入となった.1993年骨髄穿刺の結果骨髄異形成症候群と診断され(染色体異常なし),2007年から適宜赤血球輸血を施行されていた(合計40単位).2010年1月14日血液透析施行中40度の発熱があり,両下肢痛と腰部痛が出現した.インフルエンザ迅速試験陰性で解熱鎮痛薬を処方されるも改善せず,1月19日WBC 8,600/μL,CRP 46.75mg/dLであり,精査加療目的で同日当院へ緊急入院した.Vancomycin hydrochloride(VCM),meropenem hydrate(MEPM)を開始したが,第3病日,血液培養でMSSAが検出されたため,第4病日からcefazolin sodium(CEZ)へ変更した.Gaシンチグラフィ,MRI,CTなど各種画像検査および眼科検査で,シャント部皮下膿瘍,腰部硬膜外膿瘍,腰部脊椎炎・椎間板炎,多発化膿性関節炎,腰部化膿性筋炎・傍脊柱筋筋肉内膿瘍,多発性細菌性肺塞栓,右眼内炎が認められ,シャント皮下膿瘍から播種性に全身膿瘍をきたしたと考えられた.CEZを継続したところ,血液培養は陰性化し,各感染巣は縮小,消失した.本症例は維持透析,MDS,低栄養,鉄過剰症などのさまざまな易感染性の要素を有していたため,非常にまれな重症多発性感染巣が形成されたと考えられた.このような複数の易感染傾向を有する患者では特に日常の感染対策が必須である.今後,易感染性の末期腎不全患者の増加が見込まれるが,感染症の予防という点から,感染のリスク要因を極力排除し,症状出現時における早急な検査,診断を進めることが重要である.
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