日本透析医学会雑誌
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44 巻 , 2 号
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総説
  • 高橋 進
    2011 年 44 巻 2 号 p. 109-121
    発行日: 2011/02/28
    公開日: 2011/03/31
    ジャーナル フリー
    腎臓病早期発見推進機構(IKEAJ)は,いかに早く,CKDを発見し治療を進めていくかということを目指している.早期発見は絶対に必要であるが,残念ながら,言うのは簡単であるが,それを実行することは難しいのが現実であり,さまざまな問題点が指摘されている.まず,だれを選択したらいいか,日本人全員を調べる,これは当然コストの面から不可能であろう.次に,どのような検査がよいのか,検査といっても,全国共通で行うためには,単純かつ簡易なものでなければならず,さらに,効率的に見つけるということも必要である.また,診断基準は当然のことながら,世界的標準のものを用いるべきである.IKEAJは,米国腎臓財団(NKF)による早期腎臓評価プログラム(KEEP)の日本版プログラムを開発し,KEEP JAPANを呼称し,本人に糖尿病や高血圧症の有無,または糖尿病・高血圧症・腎臓病の家族既往症歴の有無のリスク因子のある方を対象に,わが国のCKD発生率およびリスク因子等を検討している.アルブミン-クレアチニン比率と推定糸球体ろ過量(eGFR)によるCKD発生率(ステージ1-4)は26.7%である.糖尿病の参加者の中でのCKD発生率は35.0%,非糖尿病の参加者と比べて1.7倍上回っている.高血圧症の参加者の中でのCKD発生率は34.8%,非高血圧症の参加者と比べて3.4倍上回っていた.CKDの参加者のCVD発生率は28.9%で,非CKD参加者と比べて1.9倍上回っている.糖尿病および高血圧症の既往症歴をもった参加者の38.3%はCVDである.CKD罹患率は従来想像されていたより高い.KEEP JAPNは,本プログラムの目標とされた本質に基づいて,CKDの痕跡がある高リスク集団を明らかにし,これらのデータを基に各国のデータと比較する.世界保健機関(WHO)は戦略の一つとして非感染性疾患(NCD)対策を重要課題とし,フォーカスとなっているのは,CVD,がん,糖尿病,慢性呼吸器疾患であり,これらは密接にタバコ,不健康な食事,運動不足,およびアルコール摂取などの生活習慣共通のリスクの関与が明白となっている.糖尿病やCVDとCKDはその発症や合併症の面などで関連が強いにもかかわらずCKDに対する社会認識はこれらの生活習慣病に比べて低い.しかし,CKDを生活習慣病の仲間といえ,CKDの認知度をグローバルに向上させることが,とりもなおさずCKD対策である.
第55回日本透析医学会・第53回日本腎臓学会共催シンポジウムより
原著
  • 岩崎 学, 秋澤 忠男
    2011 年 44 巻 2 号 p. 137-144
    発行日: 2011/02/28
    公開日: 2011/03/31
    ジャーナル フリー
    近年,hemoglobin variability(Hb-var)が死亡や入院など血液透析患者の予後に悪影響を与えるとの報告があり注目されている.Hb-var発現の原因は判明していないが,ダルベポエチンアルファ(DA)のような持続型ESA製剤は同じESA製剤であるrHuEPO製剤よりもHb-varの発現に影響を与えている可能性を示唆する報告もあるが,結論はまだ得られていない.今回,持続型ESA製剤とrHuEPO製剤のHb-varに与える影響の違いを検討するため,血液透析患者を対象としたエポエチンアルファ(EPO)とDAの無作為化二重盲検比較試験のデータを用いて解析を実施した.Hb-varの明確な定義がないため,過去に提案されている六つの評価方法をHb-varの指標として用いた.その結果,EPO群とDA群でHb-varに違いは認められず,Hb-varに与える影響はESA製剤の種類によって違いはない可能性が示唆された.
  • 今田 直樹, 奥原 紀子, 大西 彰, 平山 きふ, 関 英夫, 小山 正樹, 北村 亮治, 青木 正
    2011 年 44 巻 2 号 p. 145-151
    発行日: 2011/02/28
    公開日: 2011/03/31
    ジャーナル フリー
    近年赤血球造血刺激因子(erythropoiesis stimulating agent:ESA)製剤投与中の血液透析患者におけるhemoglobin cycling(Hb cycling)という概念が注目されている.これはESA投与中の血液透析患者にみられる非生理的なヘモグロビン(Hb)値の周期的な変動であり,Hb値の変動が大きいほど入院,合併症,死亡のリスクが高く,血液透析患者の予後を悪化させることが報告されている.Hb変動は患者の予後に関連する因子の一つであり,Hb変動を抑制することは腎性貧血治療を行う上で極めて重要な課題である.当院での安定した血液透析患者230例(男性140例,女性90例)を対象に従来のrHuEPO使用レジメンによるHb変動の実態を解析したところ,平均Hb値が低く,リスクの高い変動パターンの割合が高いことが判明した(9.68±0.97 g/dL,Low:33.5%,LAL:51.7%).そこでrHuEPO使用レジメンを変更し,1年間の観察を行ったところ,平均Hb値がガイドラインの目標値内に上昇し,リスクの高いHb変動パターンの減少がみられた(10.35±1.05 g/dL,Low:11.8%,LAL:56.5%).当院の変更後rHuEPO使用レジメンは臨床現場で活用可能なHb変動の改善が得られる具体的投与方法の一つであると考えられた.
透析看護
  • 安食 和子, 丸山 祐子, 原田 孝司, 舩越 哲, 井上 範江, 分島 るり子, 古島 智恵
    2011 年 44 巻 2 号 p. 153-161
    発行日: 2011/02/28
    公開日: 2011/03/31
    ジャーナル フリー
    目的:慢性透析患者(以下,透析患者)の医療・療養における意思決定希求度・情報希求度の現状と,医療・療養における意思決定場面においての医療者の関わりを透析患者がどう感じているかを明らかにすることで,透析患者の意思決定を支援する医療者の役割についての示唆を得る.方法:S病院・Sクリニック外来に通院中の透析患者で,研究の同意が得られた63名を対象とし自記式質問紙調査を行った.意思決定希求度・情報希求度の測定はEndeらが開発したAutonomy Preference Index(以下,API尺度)をOhkiらが邦訳版に作成したものを使用した.また,意思決定場面における医療者の関わりについては研究者がCharlesらの提唱するThe Shared Treatment Decision-Making Modelをもとに独自に作成した質問項目(以下,SDM質問項目)を用いた.なお,本研究は医療法人衆和会桜町病院倫理委員会の承認を得て実施した.結果と考察:1.API尺度により透析患者は医療における意思決定場面において,医師に決定を委ねたいと思う傾向にあることが明らかになった.2.透析患者の意思決定希求度は年齢・職業の有無により有意差が生じることが明らかになった.3.SDM質問項目により,医療者から十分な情報の提供と不安や悩みの傾聴が行われた透析患者は医療者との信頼関係の構築ができ,透析患者の納得のいく意思決定が行われることが推察された.結論:意思決定場面において医療者が慢性透析患者の不安や悩みを十分に傾聴し共感することが,医療者と透析患者との信頼関係を形成する上で不可欠であるということ,また,透析患者が決定において独断と偏見の中で誤った決定を下したり後悔の念を抱いたりすることを防ぐために必要であることが示唆された.
症例報告
  • 小林 則善, 佐藤 信之, 島岡 哲太郎, 谷本 光生, 井尾 浩章, 合田 朋仁, 大澤 勲, 濱田 千江子, 堀越 哲, 神谷 康司, ...
    2011 年 44 巻 2 号 p. 163-167
    発行日: 2011/02/28
    公開日: 2011/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は62歳,女性.55歳時に,低身長,人形様顔貌,肝腫大,低血糖,脂質異常症(高脂血症),高乳酸血症,高尿酸血症を認め,糖原病I型と診断された.その後,徐々に腎機能障害が増悪し末期腎不全となった.ブドウ糖の持続的な供給による糖代謝の改善と透析の安定性から腹膜透析の導入を検討したが,肝腫瘍が認められ,腹膜透析の自己管理が困難と判断されたため血液透析を選択した.当初は血液透析施行中に低血糖を認めたが,毎回の補食により回避され,血液透析の経過は安定した.糖原病I型は,空腹時の著しい低血糖と高乳酸血症などが特徴であり,比較的若年で末期腎不全に至る症例が多い.本症例のように,十分な食事療法がなされていない状況での,60歳代の透析導入は稀である.また,本疾患における血液透析は低血糖により透析困難状態になり易いとされている.本症例は,補食のみにて安定して血液透析が施行できた興味深い1例と考えられたので報告する.
  • 加藤 真紀, 小藤田 篤, 秋元 哲, 高橋 秀明, 武藤 重明, 草野 英二
    2011 年 44 巻 2 号 p. 169-172
    発行日: 2011/02/28
    公開日: 2011/03/31
    ジャーナル フリー
    血液透析症例におけるvascular accessの狭窄や閉塞に対して経皮的血管形成術(percutaneous transluminal angioplasty:PTA)が臨床応用されるようになり,vascular access修復の選択肢が近年拡がっている.今回われわれは,内シャント造設後に,ヘパリンにより血小板減少や血栓塞栓症がひき起こされるヘパリン起因性血小板減少症(heparin-induced thrombocytopenia:HIT)の診断に至った78歳女性の症例を経験した.シャント造設後,シャントの発達が不良であったことから,argatrobanによる抗凝固療法下にPTAを施行した.シース挿入後にargatroban 5 mgを静脈内に投与したのち,シャント近位側静脈本幹の狭窄部に対してPTAを行い,シャント血流不全の解除に成功した.治療時間は30分で,術後の経過も良好であった.ヘパリンを抗凝固療法として用いることのできないHIT症例において,内シャントPTA施行時にargatrobanが抗凝固薬として応用される可能性が示唆された.
  • 石川 康暢, 西尾 妙織, 千葉 尚市, 佐藤 亜樹子, 耒海 美穂, 池之上 辰義, 中垣 祐, 中沢 大悟, 伊藤 政典, 柴崎 跡也, ...
    2011 年 44 巻 2 号 p. 173-179
    発行日: 2011/02/28
    公開日: 2011/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は35歳,男性.1998年にGoodpasture症候群にて血液透析を導入されたが,ブラッドアクセストラブルのため2000年より腹膜透析に変更された.2003年12月より高P血症が原因でCa・P積が90(mg/dL)2を超え,右肩に手拳大,左臀部に小児頭大の異所性石灰化を認めるようになった.2004年10月より血液透析へ移行されたが異所性石灰化は改善しなかった.2005年2月24日に母をドナーとした生体腎移植を希望し,当院を初診.石灰化部はGaシンチで集積を認め,排膿よりメチシリン耐性黄色ブドウ球菌が検出されたことから感染を伴う石灰化と診断され,腎移植は見送られた.以後血液透析の継続,抗生剤治療を行ったが,異所性石灰化は増悪し続けたため,週22時間の長時間透析が施行された.長時間透析開始後,Ca・P積は是正され,異所性石灰化は改善し,2009年1月14日に腎移植が施行された.高度に進展した異所性石灰化は治療困難であるが,その治療として長時間透析は有用であることが示唆された.巨大な異所性石灰化が長時間透析により改善し腎移植を施行できた報告はこれまでになく,貴重な1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
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