日本透析医学会雑誌
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44 巻 , 4 号
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第55回日本透析医学会ワークショップより
症例報告
  • 松田 潤, 伊藤 大介, 森 大輔, 角谷 裕之, 村田 尚子, 竹治 正展, 山内 淳
    2011 年 44 巻 4 号 p. 307-311
    発行日: 2011/04/28
    公開日: 2011/05/25
    ジャーナル フリー
    症例は79歳の男性.2009年9月発熱,全身倦怠感および食思不振を主訴に近医受診.炎症反応上昇に加え,血清クレアチニン(Cr)2.3mg/dLと腎機能低下を指摘.抗菌薬内服で症状改善なく,1週間後には腎機能が増悪(Cr=14.9mg/dL)したため,精査加療目的に当科紹介.無尿が続き,連日血液透析を施行.右下肺に肺炎像を認め抗菌薬の点滴加療を継続していたが,炎症反応の改善に乏しく,自己免疫性疾患の合併が疑われた.抗好中球細胞質抗体や抗糸球体基底膜抗体などの各種自己抗体は陰性であった.造影CTにて腎動脈分枝の不整な狭小化を認め,腎実質の造影は減弱していた.また空腸動脈末梢の狭窄と同支配域の腸管壁肥厚を認めた.腎生検では糸球体や細・小血管に炎症を示唆する所見なく,高度な尿細管壊死を認めた.以上より古典的結節性多発動脈炎(polyarteritis nodosa:PN)による腎動脈分枝の血管炎により,虚血性の急性腎不全を呈したと考えられた.ステロイドパルス療法の後,プレドニゾロン(PSL)40mg/日の内服を開始したところ,全身状態は著明に改善し,炎症反応はほぼ陰性化した.透析離脱には至らなかったが,1年後にはPSL 10mg/日まで減量し再発を認めていない.古典的PNで透析を要する急激な腎機能低下をきたすことはまれであり,予後不良で生前診断に至らないことも多いが,本症例では早期診断と治療介入により救命することが可能となった.
  • 角谷 裕之, 伊藤 大介, 森 大輔, 平井 康裕, 森脇 琢磨, 松田 潤, 村田 尚子, 竹治 正展, 山内 淳
    2011 年 44 巻 4 号 p. 313-318
    発行日: 2011/04/28
    公開日: 2011/05/25
    ジャーナル フリー
    高カルシウム(Ca)クリーゼは重篤で生命の危険を伴う電解質異常であり,原発性副甲状腺機能亢進症(primary hyperparathyroidism:PHPT)によるものが多数を占める.症例は80歳,男性.糖尿病および慢性腎不全にて外来加療中.2009年夏に食欲低下,全身倦怠感を自覚.1か月後,傾眠傾向と構音障害が出現し当院救急外来を受診.慢性腎不全の増悪と著明な高Ca血症(16.3mg/dL:アルブミン補正値)を認めたため入院.血液透析導入とともにエルカトニンを投与したが,徐々に効果減弱.アレンドロネートの内服を開始したが効果不十分であった.そこでゾレドロネート4mgの点滴投与を行ったところ,血清Ca値は正常化し症状も改善した.臨床経過および画像検査にて原発性副甲状腺機能亢進症と診断.外科的に切除し臨床所見は改善した.慢性腎不全に原発性副甲状腺機能亢進症による高Caクリーゼを合併するケースは比較的まれである.透析患者の高Caクリーゼに対してゾレドロネートを使用した報告はないが,本例では副作用の出現なく有効に使用可能であったことから,今後選択しうる治療法の一つであると考えられた.
  • 小寺 永章, 三瀬 直文, 内田 梨沙, 石本 遊, 田中 基嗣, 田中 真司, 栗田 宜明, 杉本 徳一郎
    2011 年 44 巻 4 号 p. 319-322
    発行日: 2011/04/28
    公開日: 2011/05/25
    ジャーナル フリー
    34歳,男性.1型糖尿病による腎不全のため,2008年4月腹膜透析(peritoneal dialysis:PD)導入し,マニュアル接続によるダブルバッグシステムにて夜間間欠的腹膜透析(nocturnal intermittent peritoneal dialysis:NIPD)を施行していた.2009年1月22日腹痛・下痢・嘔吐・PD排液混濁を認め受診.来院時体温37.4℃,腹膜刺激症状あり,WBC 12,800/μL,CRP 1.1mg/dL,PD排液WBC 2,500/μLと上昇しており,腹膜炎と診断した.セファゾリン(CEZ),セフタジジム(CAZ)の腹腔内あるいは静脈内投与8日間に加え,セフォチアム(CTM)経口投与を6日間施行したところ,腹膜炎は治癒し,現在まで再発は認められていない.PD液からはNeisseria subflavaが検出され,起因菌と考えられた.分離菌はCEZ,CAZ,CTMに感受性であった. Neisseria subflavaは口腔内常在菌で,まれに心内膜炎,髄膜炎などの起因菌となる.PD患者のNeisseria腹膜炎も少数ながら報告されており,腎不全以外に合併症のない症例でも発症している.本症例は糖尿病患者の感染脆弱性,およびバッグ交換時のマスク非着用がリスクと考えられ,感染経路は飛沫による経カテーテルと推察された.マスク着用による,バッグ交換時の飛沫感染予防の重要性が再確認された.
  • 安田 圭子, 佐々木 公一, 畑中 雅喜, 猪阪 善隆, 楽木 宏実, 林 晃正
    2011 年 44 巻 4 号 p. 323-328
    発行日: 2011/04/28
    公開日: 2011/05/25
    ジャーナル フリー
    症例は85歳,男性.慢性腎臓病,慢性心不全のため入退院を繰り返していた.血清クレアチニン(creatinine:Cr)値は4.5mg/dL前後であったが保存的には体液管理ができず,平成21年10月から血液透析(hemodialysis:HD)を導入した.内シャント造設術に際して,慢性心房細動(atrial fibrillation:Af)に対して内服していたワルファリンをヘパリンに変更したが,11月下旬の術後からはワルファリンを再開した.術後11日目の夕食摂取後に,突然上腹部痛が出現したが,心電図に変化はなく腹部所見は乏しく,腹部X線および検査所見では大きな変化を認めなかったため,鎮痛薬の投与を行い経過観察した.しかし,翌朝腹部全体に反跳痛が出現したため,造影CTを施行したところ上腸間膜動脈(superior mesenteric artery:SMA)に閉塞を認めた.発症から約12時間が経過しており,カテーテルによる動脈造影下での血栓除去療法の適応はないと判断し,手術を勧めたが同意が得られず,その翌日死亡した.SMA閉塞症は,近年の画像診断および治療法の進歩にもかかわらず,依然として予後不良の疾患である.その原因としては早期に本疾患を疑うことの困難さによる治療の遅れがある.また,本疾患の発症にはAfの合併との関連が指摘されているが,HD患者ではAfに対する抗凝固療法に関して一定の見解が得られておらず,今後の検討課題といえる.
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