日本透析医学会雑誌
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45 巻, 12 号
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第57回日本透析医学会学会委員会企画コンセンサスカンファレンスより
総説
原著
  • 村上 穣, 萩原 正大, 大沢 紘介, 北本 匠, 降籏 俊一, 西野 克彦, 山崎 諭, 山口 博, 池添 正哉
    2012 年 45 巻 12 号 p. 1125-1131
    発行日: 2012/12/28
    公開日: 2013/01/23
    ジャーナル フリー
    カテーテル関連血流感染症(catheter-related bloodstream infection:CRBSI)は血液透析用カテーテルの使用に伴う最も重篤な合併症である.今回われわれは非カフ型カテーテルに合併したCRBSIの現状を明らかにし,今後の課題や治療戦略について検討するため実態調査を行った.当院において2006年4月から2009年3月までの3年間に非カフ型カテーテルを挿入された患者は254例で,そのうちCRBSIを合併した全14例を対象に後ろ向きに調査した.非カフ型カテーテルの感染率は4.6(episodes/1,000 catheter days)であった.カテーテルの留置部位は内頸静脈が79%(11/14例)で,平均カテーテル留置期間は11.8±8.1日であった.CRBSIの起炎菌はグラム陽性球菌が全体の79%(11/14例)を占め,Staphylococcus aureusが最多であった.薬剤感受性別では起炎菌の57%(8/14例)が抗MRSA薬にのみ感受性を有していた.経験的治療として抗MRSA薬が投与された群(7/14例)の30日後の死亡率は14%(1/7例),非投与群の死亡率は57%(4/7例)であった(p=0.078).治療開始から72時間以内の解熱率は抗MRSA薬投与群では86%(6/7例)であったのに対し,非投与群では14%(1/7例)で有意差を認めた(p=0.0291).非投与群では合併症として敗血症性ショックを2例,化膿性血栓性静脈炎と転移性感染症としての肝膿瘍をそれぞれ1例ずつ認めた.本結果より,非カフ型カテーテルに合併したCRBSIの起炎菌としてMRSAを始めとする耐性化したグラム陽性球菌が多いことが明らかになった.CRBSIを早期に診断し,抗MRSA薬による経験的治療を開始することが重要であると考えられる.
  • ―東海地区17施設における1,936例のアンケート調査―
    山田 成樹, 櫻井 寛, 春日 弘毅, 川原 弘久
    2012 年 45 巻 12 号 p. 1133-1140
    発行日: 2012/12/28
    公開日: 2013/01/23
    ジャーナル フリー
    目的:血液透析患者におけるそう痒症の最近の実態を明らかにするとともに,オピオイドκ受容体作動薬ナルフラフィン塩酸塩の臨床効果を検討することを目的とした.方法:東海地区17施設の血液透析患者を対象に,かゆみの程度[5段階カテゴリー評価(白取のかゆみスコア)およびvisual analogue scale],頻度,および,かゆみによる睡眠障害の程度等について実態調査を行った.さらに,実態調査で回答が得られた患者を対象にナルフラフィン塩酸塩投与後の臨床効果の調査を行った.結果:実態調査は,1,936例(男性1,261例,女性675例,年齢平均65.1歳,透析歴平均6年11か月)に実施した.回答があった1,927例のうち1,289例(66.9%)にかゆみで悩んだ経験が認められ,かゆみの程度と頻度の関係は,かゆみが強いほど,頻度も高かった(p<0.01).かゆみによる睡眠障害は41.2%(461/1,120例)にみられ,その程度もかゆみの程度と相関していた(p<0.01).また,実態調査後ナルフラフィン塩酸塩が投与された52例(うち15.4%(8例)は5.0μg/日に増量)を対象にしたアンケート調査の結果,63.5%(33例)で白取のかゆみスコアが改善し,平均VAS値(平均値±標準偏差)も投与前後で70.9±22.2mmから39.5±29.8mmへと有意に低下した(p<0.01).また,42.3%(22例)の患者に睡眠障害の程度の改善が認められ,睡眠障害を伴う患者は23例から10例に減少,特に中等度以上の睡眠障害を有する患者は15例から2例に減少した.結論:現在でも,多くの透析患者にそう痒症が認められ,睡眠障害などQOLに影響を及ぼしていることが確認された.ナルフラフィン塩酸塩は,透析そう痒症および透析そう痒症に伴う睡眠障害に有用であった.
  • 原 道顯
    2012 年 45 巻 12 号 p. 1141-1146
    発行日: 2012/12/28
    公開日: 2013/01/23
    ジャーナル フリー
    足底部の皮膚灌流圧(SPP)は,透析患者における末梢動脈疾患合併時の血流障害によって低下するが,測定時血圧によっても変動する.また,健常者の中にSPP低下例もみられる.今回,健常者105例と維持透析患者78例を対象として,左右第1趾と第2趾基部の中点でSPPを測定し影響する因子を検討した.SPP測定値に影響する因子は,1)測定ごとに変化する測定因子,2)症例ごとに変化する動脈硬化因子に大別された.測定因子には上腕収縮期血圧と脈拍を用い,動脈硬化因子には動脈硬化リスクファクター(モデル1)と動脈硬化検査総頸動脈max-IMT(モデル2)とを用いた.各因子を構成する要素間には独立性が仮定され,SPPを目的変数とする2変量の関係は,健常者と透析患者の双方で連続尺度では一次式,名義尺度では平均値の変化を示した.以上より,健常者と透析患者では同一のモデルが成立し,モデル1は質的変数を含む重回帰分析,モデル2は重回帰分析で解析できると考えられた.各モデルにおける動脈硬化因子による変動に注目すると,動脈硬化の進行に伴い健常者では増加し透析患者では減少した.以上よりSPPは動脈硬化の進行に伴い,初期には増加しその後減少すると考えられた.
  • 田端 秀日朗, 菊地 勘, 石田 英樹, 田邉 一成, 新田 孝作
    2012 年 45 巻 12 号 p. 1147-1153
    発行日: 2012/12/28
    公開日: 2013/01/23
    ジャーナル フリー
    【目的】生体腎移植レシピエントを対象とし,HCV抗体陰性患者とHCV抗体陽性患者での腎生着率と生存率を検討する.【方法】1990年1月から2009年12月に東京女子医科大学泌尿器科で生体腎移植を施行した全患者964名[HCV抗体陰性914名(男性583名,女性331名),HCV抗体陽性50名(男性34名,女性16名)],HCV抗体陰性患者とHCV抗体陽性患者の2群に分け,2群間での腎生着率および生存率を比較した.【結果】2群間での移植腎生着率を比較すると,HCV抗体陰性群(%)vs. HCV抗体陽性群(%)で,36か月後93.6 vs. 83.5,60か月後88.4 vs. 71.8,120か月後75.6 vs. 51.3とHCV抗体陽性群の生着率は経年的に有意に低下した(Log-rank test p<0.001).2群間での生存率を比較すると,HCV抗体陰性群(%)vs. HCV抗体陽性群(%)で,36か月後98.3 vs. 94.0,60か月後97.3 vs. 89.3,120か月後93.7 vs. 81.3とHCV抗体陽性群の生存率は経年的に有意に低下した(Log-rank test p<0.001).【考察】生体腎移植患者のみを対象とし,HCV抗体陰性患者とHCV抗体陽性患者の腎生着率および生存率を比較した,初めての大規模な観察研究である.HCV抗体陰性患者と比較しHCV抗体陽性患者では,腎生着率が低下し生存率も低下することが明らかとなった.腎生着率が低下する原因とし,HCV抗体陽性群ではchronic rejectionや移植後腎炎の割合が高いこと,PTDMの発症率が高率であったことがあげられる.本研究の限界とし,肝不全による死亡を調査対象としておらず,肝不全死が生命予後に影響したかどうか不明である.【結語】HCV抗体陰性患者と比較しHCV抗体陽性患者では,腎生着率が低下し生存率も低下する.
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