日本透析医学会雑誌
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45 巻 , 1 号
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わが国の慢性透析療法の現況(2010年12月31日現在)
  • 中井 滋, 井関 邦敏, 伊丹 儀友, 尾形 聡, 風間 順一郎, 木全 直樹, 重松 隆, 篠田 俊雄, 庄司 哲雄, 鈴木 一之, 谷口 ...
    2011 年 45 巻 1 号 p. 1-47
    発行日: 2011/12/28
    公開日: 2012/02/22
    ジャーナル フリー
    2010年末の統計調査は全国の4,226施設を対象に実施され,4,166施設(98.6%)から回答を回収した.2010年1年間の年間導入患者数は37,512人であった.年間導入患者数は2008年をピークとして2年続けて減少した.2010年1年間に死亡した患者は28,882人であり,年間死亡患者数は増加し続けている.2010年末のわが国の透析人口は298,252人であり,昨年末に比べて7,591名(2.6%)の増加であった.人口百万人あたりの患者数は2,329.1人である.2009年末から2010年末までの年間粗死亡率は9.8%であり,緩やかに増加しつつある.透析導入症例の平均年齢は67.8歳,透析人口全体の平均年齢は66.2歳であった.年間導入患者に占める糖尿病性腎症を原疾患とする患者の割合は43.6%であり,昨年の44.5%に比べて減少した.透析人口に占める糖尿病性腎症を原疾患とする患者の割合は35.9%であり,慢性糸球体腎炎を原疾患とする患者の割合である36.2%に近づいた.手根管開放術(CTx)の既往を持つ患者は透析人口全体の4.3%に認められたが,これは1999年末の5.5%に比べて減少していた.CTxの既往を持つ患者の割合の減少は,透析歴が20~24年の患者において顕著であった(1999年48.0%,2010年23.2%).腹膜透析による週Kt/Vと残存腎による週Kt/Vの和が1.7以上に達していたのは,腹膜透析患者全体の59.4%であった.
原著
  • 中村 裕也, 清水 辰雄, 藤田 喜一郎, 井上 通泰, 後藤 博道, 後藤 善和, 稲垣 昌博, 小口 勝司
    2011 年 45 巻 1 号 p. 49-57
    発行日: 2011/12/28
    公開日: 2012/02/22
    ジャーナル フリー
    糖尿病合併血液透析患者におけるアログリプチン安息香酸塩(以下アログリプチン)の効果を検討した.対象は2010年9月に埼友草加病院で血液透析治療をしている患者381例中,ヘモグロビンA1c(以下HbA1c)≧6.1%かつグリコアルブミン(以下GA)≧20%で,食事療法や運動療法では血糖コントロールが不良な2型糖尿病患者16名を対象とした.インスリン注射や経口糖尿病薬の内服をしている患者はすべて除外された.年齢は62.5±9.2歳で,男性は13名,女性は3名だった.アログリプチンは1日1回6.25mgを内服とした.アログリプチンの投薬前後のHbA1c,GA,血糖値,インスリン値,C-peptide immunoreactivity値,グルカゴン値,活性型グルカゴン様ペプチド-1(以下GLP-1)値を測定した.採血はすべて透析開始前に行われた.検査値はWilcoxon signed-rank testを用いて解析された.HbA1cおよびGAは,投薬開始8週以降で投薬開始前とくらべて有意に低下した(p<0.05).HbA1cは投薬開始前が6.7±0.2%(平均±標準誤差)で,投薬開始後40週で5.6±0.2%に低下した.GAは投薬開始前が22.5±0.7%で,投薬開始後40週で19.7±0.5%に低下した.40週の観察期間で,16名中13名(81.3%)の患者がHbA1c<6.1%かつGA<20%を達成した.アログリプチン投薬前の活性型GLP-1値は8.9±5.7pmol/Lで,アログリプチン投薬前後で約2倍上昇した(p<0.05).アログリプチン内服による有害事象は,薬疹が1名だったが低血糖はいなかった.本研究では,糖尿病治療の選択肢が少ない血液透析患者において,新規治療戦略の一つとして期待されるアログリプチン(DPP-4阻害薬)の有効性を示唆することができた.
短報
  • 秦 道代, 小島 かな子, 鈴木 信夫
    2011 年 45 巻 1 号 p. 59-62
    発行日: 2011/12/28
    公開日: 2012/02/22
    ジャーナル フリー
    透析歴30年以上の慢性透析患者の日常生活活動度(activities of daily living:ADL)に関する調査は,これまでほとんど行われていない.そこで当院における透析歴30年以上の患者26名(男性18名,女性8名)について,透析歴30年目のADL,背景,および臨床検査値について調査したところ,以下のことが分かった.透析歴30年目の慢性透析患者は,1)女性の方が,男性よりもADLが有意に高かった(p<0.001).2)「終日就床」の患者は,いなかった.3)冠動脈大動脈バイパス移植術,または経皮的冠動脈形成術の既往のある患者は,いなかった.4)原疾患は1名がSLEで,25名が慢性腎炎由来で,糖尿病性腎症由来の患者は,いなかった.5)透析導入時年齢,dry weight,body mass index,血清アルブミン,hematocrit,透析前尿素窒素,β2-マイクログロブリン,二次性副甲状腺機能亢進症手術の既往,手根管症候群手術の既往,については,ADLとの関連性はみられなかった.6)ADLと透析歴30年目のkt/vは,関連性がみられた(p<0.05).
症例報告
  • 平山 尚, 名和 徹, 浪越 為八, 十倉 健彦, 下江 俊成, 坂口 孝作
    2011 年 45 巻 1 号 p. 63-68
    発行日: 2011/12/28
    公開日: 2012/02/22
    ジャーナル フリー
    症例は60歳代,男性.2006年4月より尋常性乾癬に対し,合成レチノイド製剤(エトレチナート)内服と活性型ビタミンD3(以下VD3)外用剤(マキサカルシトール)を併用していた.2010年8月下旬より水様性下痢,食欲不振が出現し,ウイルス性腸炎の診断で近医で保存的加療を行われていた.その後,下痢症状は改善するも全身倦怠感が持続するため,近医より当科に紹介受診となった.来院時,尿素窒素(BUN)158.2mg/dL,血清クレアチニン(Cr)11.16mg/dL,カリウム(K)8.1mEq/L,重炭酸イオン(HCO3)15.6mmol/L,補正カルシウム(Ca)12.4mg/dLと急性腎不全,高K血症,代謝性アシドーシス,高Ca血症を認めたため入院,緊急血液透析を施行した.長期にわたりVD3外用剤を使用されていたことから,VD3外用剤による高Ca血症とそれに伴う急性腎不全と推察された.VD3外用剤と合成レチノイド製剤内服を中止し,計5回血液透析を実施後に離脱した.その後,腎機能はCr 2.46mg/dLまで改善し第58病日に退院となった.VD3外用剤の副作用として,高Ca血症と腎機能障害の報告例はいくつか認めるが,その多くは外用剤の中止と高Ca血症に対する治療で軽快しており,緊急血液透析を要した報告はない.今回,われわれはVD3外用剤の副作用によって,緊急血液透析を要した1例を経験したので報告する.
  • 畑山 忠, 西田 剛, 丸山 栄勲, 宮田 茂樹
    2011 年 45 巻 1 号 p. 69-72
    発行日: 2011/12/28
    公開日: 2012/02/22
    ジャーナル フリー
    CHDFを契機としてヘパリン起因性血小板減少症(HIT)を疑い,その後ヘパリン再投与に成功した症例を経験したので報告する.症例は51歳女性,透析導入後59日目に溢水による肺水腫のためCHDFを施行,頻回の回路の凝固閉塞のためHITを疑い抗血小板第4因子/ヘパリン複合体抗体(抗PF4/heparin抗体)を測定した.抗PF4/heparin抗体が陽性であったためHITを否定し得ず,抗凝固薬をアルガトロバンに変更した.アルガトロバンの投与を開始して約3か月後,PF4/heparin抗体の陰性化を確認した後に抗凝固薬をヘパリンに変更,HITの発症を認めずヘパリンの再投与に成功した.
  • 関根 一真, 川本 進也, 染矢 剛, 祝田 靖
    2011 年 45 巻 1 号 p. 73-78
    発行日: 2011/12/28
    公開日: 2012/02/22
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,男性.平成9年より糖尿病性腎症由来の慢性腎不全にて血液透析導入.平成19年より糖尿病性足壊疽にて加療されており,創部からはMRSAが検出されていた.平成22年4月12日から右下肢の蜂窩織炎の診断で皮膚科に入院中,翌13日夜間に突然の意識障害が出現し,精査加療目的にて内科へ転科.頭部MRI拡散強調画像にて新鮮な多発する梗塞巣を認めた.心臓超音波検査を施行したところ,僧帽弁の後尖に約2cmの疣腫を認めた.また血液培養検査にてグラム陽性球菌が4回にわたり検出されたため感染性心内膜炎と診断した.16日にその菌がMRSAと判明したが,すでに全身状態はより増悪しており抗MRSA薬を投与する間もなく,同日夕に死亡.剖検では僧帽弁に疣腫を認め,脳・肝臓・脾臓などに多発塞栓巣を認めた.疣腫および塞栓内いずれからもグラム陽性菌を認めた.その一部を培養しMRSAと同定した.本例は疣腫から多発性脳梗塞をはじめとする全身塞栓症をひき起こしたことを証明し得た貴重な1例と考えられた.
  • 中小路 やよい, 石黒 裕章, 草川 由佳, 川島 朋子, 滝沢 利一, 尾松 睦子, 諸星 利男
    2011 年 45 巻 1 号 p. 79-85
    発行日: 2011/12/28
    公開日: 2012/02/22
    ジャーナル フリー
    症例は,肺高血圧症,糖尿病,高血圧,高脂血症,陳旧性心筋梗塞の既往と喫煙歴のある76歳男性.一過性意識障害が生じ,肺血栓塞栓症(pulmomary embolism:PE)の診断で下大静脈フィルターの留置,抗血栓療法,抗凝固療法(ワルファリン3mg/日など)を施行した.入院時Cre 1.1mg/dLから第19病日Cre 7.7mg/dLまで悪化した.同時に全身に掻痒を伴う紅斑,足趾に紫斑を認め,皮膚生検でコレステロール結晶塞栓症(cholesterol crystal embolism:CCE)と診断し,PSL 40mg/日内服,LDL吸着療法を行った.腎機能は改善傾向となり,PSLは漸減していった.その後,食欲不振,再び腎機能の悪化を認め,尿毒症と考えて第48病日から血液透析を導入した.皮下出血が多く,厳格な抗凝固療法は行えなかった.第317病日胸痛が出現し,精査でPEの再発と診断し,下大静脈フィルターを留置した.CCEの既往があるため,血栓溶解は行わず,ヘパリン20,000単位/日投与,ワルファリン2mg/日内服に増量したが,その翌日PEにより死亡した.剖検では肺動脈には器質化した血栓が多数存在し,右上葉枝に比較的新しい血栓を認めた.腎小葉間動脈内にコレステロール結晶(cholesterol crystal:CC)を認め,増生した線維性結合組織が血管内腔を閉塞していた.その他,全身の表皮下・肝・脾・両側副腎・膵にもCCを認めた.本症例では肺塞栓に対し下大静脈フィルターを留置後,血栓溶解療法,抗凝固療法を行った結果,CCEの発症へとつながった.慢性肺塞栓に対しては十分なワルファリン投与ができず,最終的には肺塞栓により死亡に至った.治療法が相反するCCEと肺塞栓を合併し,治療に難渋した1例である.
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