日本透析医学会雑誌
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45 巻 , 6 号
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原著
  • 原田 浩, 堀田 記世彦, 高田 徳容, 関 利盛, 富樫 正樹
    2012 年 45 巻 6 号 p. 459-466
    発行日: 2012/06/28
    公開日: 2012/07/10
    ジャーナル フリー
    【目的】維持透析を経ない先行的腎移植(preemptive kidney transplantation:PKT)は末期腎不全(chronic kidney disease:CKD)に対する理想の腎代償療法であるが,実施割合は本邦においては依然低水準である.その普及にはCKD担当医から腎臓移植医への遅延なき紹介が鍵を握るが,紹介の時期を含めた認識に差異があるか否かを調査することを目的とした.【対象】腎疾患のセミナー聴講者であるCKD担当医42人,および2009年の移植実績上位30位タイの31施設に対してPKTに関するアンケート調査を施行した.アンケート内容は,PKTの認容度,紹介の時期などに関するものであった.【結果】CKD担当医への調査においては回答率59%で,76%がPKTの紹介実績があった.腎移植施設への紹介のタイミングはeGFRが30mL/min/1.73mm2を下回った時点が37%で,また15mL/min/1.73mm2を下回った時点での紹介も37%にみられた.血清クレアチニンでは5mg/dLを超えた時点での紹介が3mg/dLを超えた時点での紹介を上回った.一方腎移植施設への調査では,実際のPKTの紹介のタイミングでは半数以上がeGFRで15mL/min/1.73mm2を下回った時点であり,実際のPKT実施率も20%以下の施設が最多であった.また62%の施設でPKT受診時にすでにアクセスの作製がされていた.PKTの理想的な紹介時の残腎機能はほぼすべての施設がeGFR 15mL/min/1.73mm2以上のCKDステージ4あるいは3の時点としており,CKD担当医との解離がみられた.【結語】PKTを認容しているCKD担当医ですら,紹介の時期に関しては腎移植施設といまだに隔たりがみられ,その是正がPKTを増加させる鍵であると思われた.
  • 蔦谷 知佳子, 對馬 惠, 寺山 百合子, 山谷 金光, 齋藤 久夫, 舟生 富寿
    2012 年 45 巻 6 号 p. 467-474
    発行日: 2012/06/28
    公開日: 2012/07/10
    ジャーナル フリー
    心不全マーカーであるヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(N-terminal fragment of brain natriuretic peptide precursor:NT-proBNP)濃度は一般住民および慢性心不全患者において肥満と関連し,BMIと負相関すると報告されている.しかし,透析患者ではBMIの高値例は少なく,NT-proBNPとBMIの関連性は明らかでない.著者らは,透析患者におけるNT-proBNP濃度が内臓肥満に影響されているか否かについて,内臓肥満の指標に内臓脂肪面積を用い,心筋トロポニンT(cardiac troponin T:cTnT)を介在因子として検討した.対象は血液透析患者80例.本研究では内臓肥満の基準として,腹部CTにより測定した内臓脂肪面積(visceral fat area:VFA)を用い,VFA≥75cm2を内臓肥満群とした.非内臓肥満群のNT-proBNPは中央値7,155pg/mL,cTnTは中央値0.028ng/mLであったのに対し,内臓肥満群のNT-proBNPは3,604pg/mL,cTnTは0.038ng/mLであった.内臓肥満群のNT-proBNP濃度は非内臓肥満群にくらべ有意に低値であったが,cTnT濃度には2群間で差がなかった.非内臓肥満群においてNT-proBNPはcTnTと有意な正相関(r=0.513,p=0.0003)を認めたが,内臓肥満群では相関性が認められなかった.以上より,透析患者においてNT-proBNP濃度は内臓肥満に影響されており,NT-proBNP濃度は内臓肥満を考慮してその値を解釈する必要があると思われた.
  • 鎌田 正, 落合 美由希, 藤澤 奈央, 門屋 佑子
    2012 年 45 巻 6 号 p. 475-482
    発行日: 2012/06/28
    公開日: 2012/07/10
    ジャーナル フリー
    血液透析用ダブルルーメンカテーテル(DLC)は穿刺針径に比べてダイレーター・カテーテル径が大きい.従ってダイレーター挿入前に動脈穿刺になっていないかを鑑別することが安全上重要である.このため,われわれは内頸静脈にガイドワイヤー挿入後にワイヤー短軸像を超音波で描出し,プローブを鎖骨上窩の内側寄りの皮膚にあてて傾けていくことで,できる限り心臓に近い体内におけるガイドワイヤーの位置を確認している.本論文ではその手技の際に超音波視認性のよいガイドワイヤーについての検討を行った.まず,異なる血液透析用DLCガイドワイヤーの超音波視認性を超音波シミュレーターで比較した.シミュレーター模擬血管内の径0.97mmのワイヤーは超音波ビームとワイヤーとの角度が90°より40°において視認性が向上したが,径0.64および0.46mmのワイヤーは逆に低下した.次に,実際の症例で0.97mmと0.64mmのワイヤーの視認性を比較したところ,前者に比して後者はエコー輝度が低く,腕頭静脈内留置の確認により時間を要した.結論:内頸静脈DLC留置に際し,超音波視認性のよい直径の大きめのガイドワイヤーを挿入後に鎖骨上窩エコーで確認する手技は,ダイレーター挿入前にワイヤーの静脈内留置を確認する上で有用である.
短報
症例報告
  • 樋口 輝美, 水野 真理, 山崎 俊男, 大川 恵里奈, 上田 寛朗, 山道 慎也, 高崎 智也, 榎本 伸一, 石川 由美子, 志村 暁人 ...
    2012 年 45 巻 6 号 p. 487-493
    発行日: 2012/06/28
    公開日: 2012/07/10
    ジャーナル フリー
    症例は62歳の男性.慢性糸球体腎炎による慢性腎不全にて2001年より血液透析導入され,その後何回かの内シャント術を施行されていた.2008年に作製されていた人工血管による内シャントで透析を施行中であったが,2010年2月頃よりシャント肢の著しい腫脹を認め,腕頭静脈狭窄症に対しPTAを(wall stent留置)していた.しかし左上肢腫脹は改善せず,静脈圧高血圧症の原因が左腕頭静脈に狭窄病変以外にも責任病変が存在する可能性があると考え,再度,血管造影のほかpressure wireTMを使用しPTAを施行した.血管造影上,左腕頭静脈において以前のステント留置部の末梢側に約20mmの90%狭窄を認め,またpressure wireTMにて,上大静脈(SVC)8mmHg,腕頭静脈狭窄部の末梢側で53mmHgと圧の上昇を認めた.その後バルーンangioplastyのほかwall stentを留置し,血管造影上では良好な拡張が得られた.またpressure wireTMによる観察では,SVCの圧は変化せず,狭窄部にステント留置した病変部の末梢側ではPTA前の53mmHgから11mmHgへと低下した.その他血管造影上,人工血管から尺側皮静脈に逆向性の血流を認め,静脈の側副血行路の増生も認めたが,吻合部付近の狭窄病変ははっきりしなかった.pressure wireTMでは人工血管と尺側皮静脈の吻合部周辺で86mmHgと異常な高値を認めた.pressure wireTM上,人工血管と尺側皮静脈吻合部近傍にも病変が疑われ,静脈高血圧症の責任病変は2箇所あることが推測され,同部位にバルーンangioplastyとstent留置によるPTAを施行した.血管造影上,尺側皮静脈への逆向性の血流はなくなり,側副血行路も消失した.pressure wireTMでも人工血管吻合部側の病変部の圧はPTA前の86mmHgから12mmHgへと低下した.その後数日の間に上腕の腫脹はほぼ消失した.このことから複雑な静脈高血圧症に対するPTA施行時の際にpressure wireTMは補助的診断のデバイスになり得ると思われた.
  • 安藤 哲郎, 岩淵 裕子, 溜井 紀子, 久保 隆史, 添野 真嗣, 小林 充, 町田 昌巳, 小林 大志朗, 塩野 昭彦, 伊藤 恭子, ...
    2012 年 45 巻 6 号 p. 495-499
    発行日: 2012/06/28
    公開日: 2012/07/10
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,女性.糖尿病を原疾患とした慢性腎不全のため,血液透析導入となる.内シャント閉塞のため両側上腕部に人工血管移植術を実施したものの,スティール症状を頻回にきたしたため,右内頸静脈より透析用長期留置カテーテルの挿入を試みた.この際,右内頸静脈より右心系への流入路が通常と異なるため,右上大静脈欠損が疑われた.血管造影を実施したところ,左上大静脈遺残部分を経由し右房への到達が確認された.CT検査の結果,上記所見に加え,下大静脈欠損,左上大静脈・半奇静脈接合ならびに3個の脾を確認し,多脾症を呈する内臓錯位症候群と診断した.その後,外来通院にて血液透析を継続し,1年後にカテーテル内血栓のために交換後も経過は良好で,現在も維持血液透析を継続中である.カテーテル挿入に携わる医師は,ガイドワイヤーの走行が通常と異なる場合,本疾患の存在を念頭におく必要があり,複数個の脾臓の存在もしくは欠損が本症を疑う手がかりとなる.
  • 米森 雅也, 速見 浩士, 松下 良介, 大橋 保, 谷口 賢二郎, 牟田 裕美, 佐がた 芳久, 山田 保俊, 榎田 英樹, 中川 昌之
    2012 年 45 巻 6 号 p. 501-505
    発行日: 2012/06/28
    公開日: 2012/07/10
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,女性.高血圧,糖尿病,慢性関節リウマチ,慢性腎不全の診断にて前医で外来治療を受けていた.2007年6月から全身性の浮腫が増悪し,貧血の悪化と腎不全が進行したため前医に入院し,血液透析へ導入された.透析導入後のバスキュラーアクセスは両側大腿静脈の直接穿刺が施行されていたが,穿刺部である左大腿部に巨大な血腫が生じ,同時に左膝関節内出血と消化管出血が認められた.血液検査にて活性化部分トロンボプラスチン時間の延長,第VIII因子の低下が認められ,さらに抗第VIII因子抗体が39BU/mLと高値であったため,後天性血友病Aと診断された.当院に転院した後,バスキュラーアクセスカテーテルを右大腿静脈に留置し,週3回4時間の維持透析を継続した.出血性の症状に対する治療のために活性化プロトロンビン製剤を使用し,免疫学的療法として副腎皮質ホルモンの内服を開始した.出血傾向が改善した後,内シャント造設術を施行した.後天性血友病は徐々に改善し,内シャントの使用を開始した後,前医に転院した.血液透析を契機に後天性血友病が発見されるのはまれであり,血液透析や内シャント手術を実施するためにも,出血傾向をコントロールすることが重要であると考えられた.
平成23年度コメディカル研究助成報告
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