日本透析医学会雑誌
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45 巻 , 7 号
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総説
  • 林 松彦, 高松 一郎, 吉田 理, 菅野 義彦, 佐藤 裕史, 阿部 貴之, 橋口 明典, 細谷 龍男, 秋葉 隆, 中元 秀友, 梅澤 ...
    2012 年 45 巻 7 号 p. 551-557
    発行日: 2012/07/28
    公開日: 2012/08/07
    ジャーナル フリー
    カルシフィラキシスは,末期腎不全により透析療法を受けている患者を中心に発症する,非常に疼痛の強い難治性皮膚潰瘍を主症状とする,時に致死的な疾患である.病理学的所見としては,小動脈の中膜石灰化,内膜の浮腫状増殖を特徴的所見としている.これまで本邦における発症状況などは不明であったが,平成21年度厚生労働省難治性疾患克服事業として,われわれ研究班により初めて全国調査がなされた.その結果,発症率は欧米に比べて極めて低いと推定され,その要因の一つとして,疾患に対する認知度が極めて低いことが考えられた.そこで,疾患概念を明らかとして,その認知度を高めるとともに,診断を容易にするために,全国調査を基として診断基準の作成を行った.この診断基準は,今後の症例の集積に基づく見直しが必要と考えられるが,カルシフィラキシスに対する認知度を高める上では重要な試みと考えている.
原著
  • 樋口 輝美, 山崎 俊男, 水野 真理, 大川 恵里奈, 瀬戸口 晴美, 吉沢 美佳, 中島 詩織, 柳澤 順子, 榎本 伸一, 石川 由美 ...
    2012 年 45 巻 7 号 p. 559-566
    発行日: 2012/07/28
    公開日: 2012/08/07
    ジャーナル フリー
    目的:維持透析中の末梢性神経障害性疼痛を有する患者において,プレガバリンの安全性と有効性を検討する.対象:当院および当院附属クリニックにて維持透析中の患者で,選択基準を満たした137名に痛みのアンケート調査を施行し,末梢性神経障害性疼痛を有し同意が得られた患者32例.男性20例,女性12例で平均年齢69歳,平均透析期間92か月.方法:末梢性神経障害性疼痛を有する患者にプレガバリン25mgを初期投与量とし,その後2,4,8週間後にアンケート調査,SF-8,VASスケール,HS-CRPを検査した.また用量は患者に応じて最大75mgまで増量した.結果:めまい,ふらつき,効果不十分等にて服用中止例が12例.25mgの継続例7例,50mgは6例,75mgは7例であった.アンケート結果,VASスケール,SF-8で試験開始前に比べ開始8週後には有意な低下を認めたが,HS-CRPは有意な差を認めなかった.また副作用として眠気,めまいを訴えた患者はいたが重大な副作用は認めなかった.結論:透析患者へのプレガバリンの投与は副作用に注意し,慎重に用量を決めれば,末梢性神経障害性疼痛への効果が期待できる薬剤であると思われた.
短報
  • 大坪 茂, 矢吹 恭子, 石原 美和, 高崎 順代, 植田 修逸, 杉本 久之, 大坪 由里子, 新田 孝作
    2012 年 45 巻 7 号 p. 567-570
    発行日: 2012/07/28
    公開日: 2012/08/07
    ジャーナル フリー
    わが国の透析患者において,2010年の死亡原因の第1位は脳心血管障害である.シロスタゾールは脳卒中および末梢動脈疾患のガイドラインで推奨されている心血管障害に対する薬剤であり,シロスタゾール投与群ではHDLコレステロール値の上昇,トリグリセリド値の低下も認め,シロスタゾールの抗動脈硬化作用の一部の機序として脂質代謝の改善が考えられている.しかし,血液透析患者に対する脂質の変化の報告は今までになされていない.今回,われわれはアスピリン投与中の血液透析患者において,シロスタゾールへの切り替え後の脂質の変化を検討した.三軒茶屋病院の維持透析患者で,末梢動脈疾患や脳梗塞後の患者でアスピリン内服中の患者8名を対象とした.アスピリン100mg分1内服からシロスタゾール100mg分2内服に切り替え,投与前と投与1か月後の週初め透析前の血清アルブミン,中性脂肪,low density lipoprotein(LDL)コレステロール,high density lipoprotein(HDL)コレステロール,Apolipoprotein A1(Apo A-1),Apolipoprotein A2(Apo A-2),Apolipoprotein B(Apo B)を測定した.シロスタゾール切り替え後のHDL-コレステロールは45.8±11.5mg/dLより52.4±12.3mg/dLと有意に上昇した(p=0.003).Apo A-1は123.8±21.3mg/dLより139.4±19.1mg/dLと有意に上昇(p=0.004)し,Apo A-2も26.4±4.3mg/dLより28.9±3.6mg/dLと有意に上昇した(p=0.003).中性脂肪は103.0±70.0mg/dLから83.1±39.5mg/dLと低下傾向を示した(p=0.186).血液透析患者においてもシロスタゾールには,HDL-コレステロール,Apo A-1,Apo A-2の上昇作用がある可能性がある.
症例報告
  • 高橋 聖子, 八幡 真弓, 中屋 来哉, 岩動 一将, 佐久間 芳文, 森 康紀, 佐熊 勉, 相馬 淳
    2012 年 45 巻 7 号 p. 571-576
    発行日: 2012/07/28
    公開日: 2012/08/07
    ジャーナル フリー
    症例は23歳,女性.2008年8月にRaynaud現象,易疲労感等を認め,手背皮膚硬化,抗トポイソメラーゼI抗体陽性と併せて,近医で強皮症と診断された.2010年11月末から嘔気,嘔吐,食欲不振が出現し,12月中旬に近医を受診したが,BUN 92.1mg/dL,Cr 12.76mg/dLと高度の腎機能障害が認められたため当科に紹介入院となり,直ちに血液透析を開始した.著明な高血圧がみられたため,当初は強皮症腎クリーゼが疑われたが,尿蛋白量6.8g/gCr,尿中赤血球50-99/HPFと尿異常が高度であり,またmyeloperoxidase-antineutrophil cytoplasmic antibody(MPO-ANCA)が78EUと陽性であった.確定診断のために腎生検を行った結果,Pauci-immune型半月体形成性糸球体腎炎と診断された.メチルプレドニゾロン1日500mgのパルス療法を施行後,PSL 30mg/日の内服を行ったが腎機能は改善せず,本人の希望により維持透析療法として腹膜透析が選択された.当初夜間自動腹膜透析を行ったが,総クレアチニンクリアランス(Ccr)は25.0L/weekと透析効率が不充分であった.そのため,連続携行式腹膜透析(CAPD)に変更し,総Ccrは35.0L/weekとある程度透析量を確保できた2011年3月下旬に退院となった.除水量は1日1,000~1,200mLと維持され,2011年6月の腹膜機能平衡試験はD/P Cr 0.5,D/D0 Glu 0.5といずれもLow-Averageであった.しかし,2012年1月頃より除水量が1日800mLに低下し,体重の増加がみられたため,夜間のイコデキストリン透析液使用を開始した.その結果,再び1日1,000~1,200mLの除水量の確保が可能となり現在まで安定してCAPDが行われている.強皮症患者にMPO-ANCA陽性の半月体形成性糸球体腎炎を合併したとの報告は多数あるが,強皮症患者で腹膜透析導入を行った報告は少ないため報告の価値のある症例と考えられた.
  • 梶原 健吾, 田尻 景子, 富田 正郎, 中川 輝政, 野尻 奈央, 中西 俊人, 豊永 哲至, 田中 元子, 伊藤 和子, 松下 和孝, ...
    2012 年 45 巻 7 号 p. 577-580
    発行日: 2012/07/28
    公開日: 2012/08/07
    ジャーナル フリー
    本邦における透析患者数は増加の一途をたどっている.透析導入患者は年々高齢化し,透析患者全体の平均年齢も高くなっており,これに伴い認知症を持つ患者の割合は高まっている.また,慢性透析患者における脳血管障害の発症率は,非透析患者における発症率よりもはるかに高い.この脳血管障害の既往をもつ透析患者においては,既往のない患者に比べはるかに高率に認知症を伴うことがわかっている.このことも透析患者に認知症が多いことの要因になっている.さらには認知症に対する処方という修飾が加わることで,意識状態の変化を診断することに困難を伴うことが多い.今回,われわれは脳血管障害による認知症を持つ非糖尿病透析患者において,低血糖による意識障害が契機となり原発性副腎皮質機能低下症と診断された患者を経験した.本症例のように透析患者においては糖尿病の既往がなくとも,低血糖を意識障害の鑑別にいれる必要があると考えられた.
  • 吉川 美喜子, 原田 幸児, 住田 鋼一, 山口 通雅, 赤井 靖宏
    2012 年 45 巻 7 号 p. 581-585
    発行日: 2012/07/28
    公開日: 2012/08/07
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,男性.71歳から糖尿病性腎症による慢性腎臓病のため血液透析が導入されたが,自己血管での動静脈瘻の作製が不可能であったため,人工血管による内シャントが作製された.73歳時にMRSAによる人工血管感染と化膿性椎間板炎のため当院に入院し,抗生剤による治療と人工血管抜去術が施行された.動静脈瘻の再形成が困難と判断されたため,血液透析から腹膜透析に変更された.感染のコントロールは良好であったが,食欲不振と偏食のため栄養状態は不良であった.第86病日の朝から持続する全身性ミオクローヌス発作が出現し,夜間には不規則かつ粗大なバリスム様の不随意運動が出現した.低血糖,電解質異常,アルベカシン中毒,頭蓋内疾患などが疑われ,血液検査や頭部CT撮影が行われたが,明らかな原因となる所見は認められなかった.栄養状態が悪く,偏食であったことからビタミンB1欠乏症が疑われた.ビタミンB配合剤の静脈内投与が施行されたところ,不随意運動は速やかに消失した.後日,ビタミンB1値が10ng/mLと低値であることが判明し,Werniche脳症と診断された.
  • 嶺井 定嗣, 若林 靖久, 嶺井 定一
    2012 年 45 巻 7 号 p. 587-590
    発行日: 2012/07/28
    公開日: 2012/08/07
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,男性.53歳時から糖尿病性腎症による慢性腎不全のため血液透析導入.2011年1月陰茎亀頭部痛を訴え,泌尿器科を受診した.診察上,亀頭部および環状溝付近に黒色壊疽をきたしており,2月初旬に壊死部に対してデブリードメントを行った.しかし黒色壊疽は拡大,発熱も伴ったため第8病日目に感染拡大防止目的のため陰茎部分切断術を行った.術後の創感染もなく2月末日退院となった.その後,4月頃から陰茎切断部に黒色壊死が再発し,創哆開をきたした.デブリードメント処置を行い保存的に経過観察中であったが透析困難症や全身状態が徐々に悪化し,5月中旬に自宅で死亡しているのが確認された.
  • 西銘 圭蔵, 高嶺 朝広, 中村 成男, 金城 紀代彦, 斉藤 保
    2012 年 45 巻 7 号 p. 591-598
    発行日: 2012/07/28
    公開日: 2012/08/07
    ジャーナル フリー
    症例は44歳,男性.主訴は両下肢の先行する激痛後の皮膚の紫斑,壊死,潰瘍形成.既往歴は9年前,血液透析導入.現病歴は2008年2月,激しい痛みが先行した右下腿の皮膚の紫斑,小壊死,潰瘍が出現.壊死は周辺に広がる.同年6月,副甲状腺摘除(4腺摘除+右前腕自家移植).同年10月,都合8回の植皮を行う.皮膚生検による病理組織で細小動脈中膜への石灰沈着および石灰による血管内腔の完全閉塞が認められた.現在はほぼ治癒.Selyeは,1961年,ratを使った副甲状腺による感作病変を免疫学的機序と関連づけ,calciphylaxisと命名した.その後,尿毒症に起因する細小動脈中膜の石灰化が本態であり,CUAが適切な名称として提唱されている.現在では高P血症による中膜平滑筋細胞の骨芽細胞への形質転換によるactive de novo calcificationの結果,石灰による血管閉塞を起こすと考えられている.本例は,CUAの症状である「痛みが先行する壊死,潰瘍」を病理組織学的に裏付ける所見を示す貴重な症例と考えた.また,本例の検討からCUAの発症や消失に関するPTXの矛盾する論文報告に対して考察を加えた.これらを統一的に理解するためには,PTX前後のP/Ca動態がeu turnover boneになっていることが重要である.新規の治療としてsodium thiosulfate(STS)とcinacalcetに触れた.
委員会報告
  • 中井 滋, 若井 建志, 山縣 邦弘, 井関 邦敏, 椿原 美治
    2012 年 45 巻 7 号 p. 599-613
    発行日: 2012/07/28
    公開日: 2012/08/07
    ジャーナル フリー
    日本透析医学会が2001年から2010年までを対象期間として,全国の透析施設を対象に実施した調査の報告に基づいてわが国の透析人口の将来推計を試みた.各年の施設調査回収率によって補正された2001年末から2010年末までの各年末透析人口に基づいて2002年から2010年までの9か年の各年について透析人口年間増加率を算出した.次いで西暦年をx,当該年の透析人口年間増加率をyとする直線回帰を最小二乗法にて行い,その回帰式を求めた(y=450.372044-0.222751 x,R-square=0.7227,p=0.0037).この回帰式に基づいて2011年以降の各年透析人口年間増加率を推定し,推定された年間増加率に従って各年末透析人口を逐次推計した.その結果,わが国の透析人口は2021年末に348,873人(90%信頼区間:302,868~401,119人)で最大となり,その後減少に転じることが推計された.
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