日本透析医学会雑誌
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46 巻, 11 号
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総説
原著
  • 松浦 香織, 濱田 久代, 原 恵子, 森 恭子, 中堀 嘉奈子, 石原 則幸, 土田 健司, 水口 潤, 川島 周
    2013 年 46 巻 11 号 p. 1061-1067
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/10
    ジャーナル フリー
     血液透析 (HD) 患者の食塩摂取量について検討した. 2005年4月時点で安定してHDを施行している, 透析歴2年以上の患者547名を対象に, 食塩摂取量を計算し, その分布と推移, 年齢, 体重, 血圧との関連をみた. さらに観察開始時の食塩摂取量を5群 (6g未満, 6~8g未満, 8~10g未満, 10~12g未満, 12g以上) に層別し, 観察期間の生存率を比較した. さらにこれらの解析を踏まえ, 年齢66歳未満と66歳以上で食塩摂取量と生存率について比較した. 食塩摂取量は加齢に伴って少なくなり, BMIの大きい患者のほうが多い傾向にあったが, 血圧 (平均血圧) とは相関しなかった. 回帰分析の結果では, 食塩摂取量ごとのハザード比は食塩摂取量6g未満の層と比較すると6gから12g未満の層が低く, 食塩摂取量を6g未満に維持することが生命予後を良くするとは必ずしもいえない. さらに, 66歳以上の群では食塩摂取量の多い群で有意差は認めなかったが生存率が高い傾向を示した. HD患者の食塩摂取量は溢水の防止目的で基準を一律6g/day未満にすべき提案がされているが, 食塩摂取量は食事摂取量とも関連しており, 年齢, BMI, 身体活動レベルを考慮した目標値を設定する必要がある. 高齢患者では一般に食欲減退傾向にあり, 栄養指導は水分, 食塩の「制限」を指導の中心にするのではなく, 「体調維持」を念頭に置く必要がある.
症例報告
  • 元 志宏, 野辺 香奈子, 齋藤 加奈子, 高梨 秀一郎, 池田 直史
    2013 年 46 巻 11 号 p. 1069-1073
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/10
    ジャーナル フリー
     ビキサロマー内服中の血液透析患者に腸管穿孔を発症し, 救命しえた1例を経験した. 症例は75歳, 男性. 血清P値のコントロールが不良であり, 入院3か月前よりビキサロマー3,000mg/日を内服していた. 入院同日に突然の下腹部痛が出現し, 当院受診. 画像検査で腸管穿孔と診断され, 同日緊急手術が施行された. 術後もエンドトキシン吸着 (polymyxin B-immobilized fiber column-direct hemoperfusion : PMX-DHP), 持続血液濾過透析 (continuous hemodiafiltration : CHDF) などの集学的治療を行い, 一命を取りとめた. ビキサロマーは, ほかのP吸着薬と比較し便秘や腹部膨満などの消化器症状が出現しにくいP吸着薬である. 今までにビキサロマー内服中の透析患者に腸管穿孔をきたした報告はないが, ビキサロマーの副作用である便秘も腸管穿孔を発症するリスクになり得ると考えられた.
  • 宮富 良穂, 稲山 えみ, 永倉 一武, 茂田 安弘, 岩崎 雅志, 村上 康一, 永川 修, 坂井 健彦, 河野 孝史, 安藤 研, 白井 ...
    2013 年 46 巻 11 号 p. 1075-1081
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/10
    ジャーナル フリー
     当院では2008年7月1日から2012年8月31日の期間に5例の血液透析患者に合併したHIT (透析HIT) を経験した. 同期間中の当院透析導入患者74例 (そのうち緊急透析導入例は32例) と比較し, 当院の透析HIT症例の臨床的特徴を示す. 全例透析導入期の発症であり, 血管内留置カテーテルを使用した緊急透析導入症例であった. したがって, 血液透析導入期のHIT発症率は6.8% (5/74例) で, 血管内留置カテーテル使用下での緊急透析導入患者に限ると15.6% (5/32例) と高率であった. 2回以上の血管内留置カテーテルの閉塞は, 74例のうち6例で認めたが, そのうち4例はHIT症例であった. 1例はHIT抗体が陰性化せず, 他疾患で死亡したが, HIT抗体の陰性化を確認できた4例全例でヘパリンの再投与を行い, 現在のところ再発は認めていない.
  • 粕本 博臣, 櫨木 聡, 成山 真一, 木村 聡宏, 北川 彰洋, 多田 秀敏, 前田 哲男, 野村 祐介, 竹内 庸浩, 西田 悠, 青木 ...
    2013 年 46 巻 11 号 p. 1083-1087
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/10
    ジャーナル フリー
     症例は75歳, 男性. 2007年4月から慢性腎炎由来の慢性腎不全のため血液透析中であった. 2012年7月上旬に腹部膨満が出現, 翌日に血液透析のために来院した. 腹部単純X線で著明な腸管拡張を認め, 腹部単純CTで左閉鎖孔ヘルニアと診断した. 同日緊急手術にてヘルニア根治術を施行し, その後の経過は良好であった. 閉鎖孔ヘルニアは全ヘルニアの0.05~1.4%, 全イレウスの0.4%とまれな疾患とされている. また, 高齢の痩せた女性に好発し, 男性は5%とされている. 臨床症状が軽微な場合もあり, 閉鎖孔ヘルニアを疑うことは困難であるが, 致死率も高い疾患で早期診断・早期治療が重要である.
  • 野上 浩子, 原 大雅, 竹内 直哉, 東山 智香子, 藤田 拓朗, 河上 和代, 守時 政宏, 西岡 聡, 西島 陽子, 祖父江 理, 近 ...
    2013 年 46 巻 11 号 p. 1089-1094
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/10
    ジャーナル フリー
     症例は81歳, 男性. X-12年より慢性糸球体腎炎による末期腎不全のため前医にて血液透析中であった. X-1年4月頃より皮下出血や止血困難が出現し, 10月頃より貧血の進行を認めた. 貧血の改善がないため消化管精査されるも明らかな出血源が認められず, 精査加療目的でX年6月下旬に当科入院となる. 入院時検査で活性化部分トロンボプラスチン時間 (activated partial thromboplastin time : APTT) 混合補正試験でも補正されないAPTT延長, 第VIII因子活性の低下, 第VIII因子インヒビター異常高値 (1,261 Bethesda Units/mL) を認め, 後天性血友病Aと診断した. 第5病日よりprednisolone 50mg/日内服, インヒビター除去目的に第7病日より二重膜濾過血漿交換 (double filtration plasmapheresis : DFPP) を計5回行った. 第30病日に出血性胃潰瘍を併発し, 内視鏡下止血術を行ったが胃潰瘍からの出血が持続するため, 第36病日よりprednisolone減量, cyclophosphamide追加とした. 徐々にインヒビター力価の低下を認めたがタール便は持続し, 第48病日に高カリウム血症からの心室細動をきたし永眠された. 後天性血友病A患者にDFPPを行った報告はまれであるため報告する.
研究速報
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