日本透析医学会雑誌
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47 巻, 12 号
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総説
原著
  • —感染率と除菌成功率について—
    脇川 健, 峰 恵理子
    2014 年 47 巻 12 号 p. 723-729
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/22
    ジャーナル フリー
    血液透析患者90名のHelicobacter pylori (H.pylori) 感染率を調査し, 除菌成功率の評価を行った. 血清抗H.pylori IgG抗体 (抗HP-IgG抗体) を測定したところ, 透析患者21名 (23.3%) がH.pylori陽性と診断された. 除菌治療に同意された抗体陽性患者17名に, ランソプラゾール (LPZ) 30mg/日, クラリスロマイシン (CAM) 200mg/日, アモキシシリン (AMPC) 500mg/日の3剤を7日間投与し, CAM耐性患者3名には, CAMに変えてメトロニダゾール (MNZ) 250mg/日を用いた. 除菌判定の糞便中H.pylori抗原検査は, 17名中16名 (94.1%) が陰性を示した. 血清抗HP-IgG抗体は, 除菌前24.8±26.4U/mLが6か月後13.9±24.3U/mLと有意に低下した (p<0.05). 今回, 通常除菌の半量以下の服用量でも, 副作用を認めず高率に除菌された.
  • 生方 政光, 神山 貴弘, 能木場 宏彦, 雨宮 伸幸, 岩谷 周一, 細川 俊彦, 荒川 洋, 朝比奈 義仁, 新田 孝作, 武井 卓
    2014 年 47 巻 12 号 p. 731-736
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/22
    ジャーナル フリー
    糖尿病血液透析患者に対するサキサグリプチンの有効性および安全性を検討した. 2型糖尿病血液透析患者のうち, グリコアルブミン (GA) 20%以上の13例を対象とした. DPP-4阻害薬の新規投薬患者についてはサキサグリプチン2.5mgを開始し, すでにDPP-4阻害薬を内服していた患者については同2.5mgへ切り替えた. 随時血糖, HbA1c, GAなどに関して3か月間の観察を行った. 1例は心不全加療のため, 1例は嘔気のため離脱した. 随時血糖は開始時201±46mg/dLから1か月後には158±40mg/dL (p<0.05) と有意に低下した. HbA1cは開始時6.8±1.1%から3か月後6.6±0.9%, GAは開始時25.1±3.4%から3か月後22.9±2.6%と有意に低下した (p<0.05). 糖尿病合併血液透析患者における血糖低下の有効性を示唆することができた.
症例報告
  • 粕本 博臣, 山本 貴敏, 櫨木 聡, 金光 秀史, 西田 賀計, 織田 善子, 亀井 裕知, 宮地 智弘, 玉置 尚康, 安井 智彦, 下 ...
    2014 年 47 巻 12 号 p. 737-742
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/22
    ジャーナル フリー
    症例は90歳, 女性. 2002年7月から週3回の血液透析中, 高K血症のコントロール不能であったため, ポリスチレンスルホン酸カルシウム (CPS) を服薬中であった. 2012年12月中旬, 腹痛を主訴に救急外来を受診, 腹部CTにて腹腔内遊離ガス像・結腸内に硬便を認めた. 消化管穿孔・汎発性腹膜炎と診断し, 緊急手術となった. 下行結腸に穿孔, 同部に便塊を認め, 横行結腸+下行結腸部分切除術, 人工肛門造設術を施行した. 病理組織標本で穿孔部に一致してcrystalline materialを認め, CPSが結腸穿孔に関与した可能性が示唆された. 術後, 播種性血管内凝固・敗血症に陥り, エンドトキシン吸着等の集学的治療を行うも救命することができず, 第4病日に死亡した. CPSは陽イオン交換樹脂であり, 高K血症の治療に使用されるが, 副作用として便秘が多い. 腸管穿孔の報告も散見され添付文書でも注意勧告がなされている.
  • 三浦 裕子, 山本 起代子, 立枩 良崇, 河渡 恒延, 池田 一則, 葛谷 明彦, 佐藤 元美, 青山 功
    2014 年 47 巻 12 号 p. 743-747
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/22
    ジャーナル フリー
    症例は66歳, 男性. 慢性腎不全のため当院に通院中, 下痢, 嘔吐の症状が出現し, その後腎機能の増悪, 血小板減少の進行を認め入院となった. 血小板数低値は持続し, 骨髄検査, 血清学的評価から特発性血小板減少性紫斑病 (ITP) と診断した. プレドニゾロン (PSL 40mg/日), ヘリコバクターピロリ菌の除菌治療を開始したが, 4週間経過後も血小板数の改善はみられなかった. トロンボポエチン受容体作動薬 (TRA) であるエルトロンボパグの内服でも反応がみられなかったが, ロミプロスチムの皮下注へ切り替え, 増量したところ血小板数の改善がみられ, 自己血管内シャントを使用して安全に血液透析を導入することができた. TRAは腎不全患者に対して慎重投与となっているが, 今回末期腎不全, 透析導入期にロミプロスチムを安全かつ有効に使用できた症例を経験したので報告する.
  • 佐藤 真彦, 明円 真吾, 相馬 文彦
    2014 年 47 巻 12 号 p. 749-753
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/22
    ジャーナル フリー
    長期透析患者に発生した粘液管状紡錘細胞癌の1例を経験したので報告する. 患者は65歳男性, 1999年に糖尿病性腎症で血液透析導入. 2013年4月から肉眼的血尿が出現し10月の定期CTにて左腎腫瘍を指摘され当科紹介. CTでは左腎臓に65mmの腫瘤を認め, 傍大動脈リンパ節腫大も認めた. 左腎細胞癌 (cT1bN2M0) と診断し根治的左腎摘除術およびリンパ節郭清術を施行. 肉眼的に腫瘍の境界は明瞭で割面は黄褐色調であった. 組織学的に異型性の顕著な腫瘍細胞が管状~乳頭状構造を呈して浸潤性に増殖しており紡錘形細胞も混在していた. 免疫組織学的にはCK7 (+), CK34βE12 (-), vimentin (+), CD10 (+), P504S (+), TFE3 (-), CA9 (-) であり, Alcian blue染色で間質が陽性であった. 以上から粘液管状紡錘細胞癌と診断した. 現在術後6か月経過するが再発なく生存中である.
  • 渡邉 廉也, 高橋 宏治, 多田 和弘, 石村 春令
    2014 年 47 巻 12 号 p. 755-759
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/22
    ジャーナル フリー
    症例は糖尿病歴10年の65歳女性. 2014年2月上旬, 近医にてインフルエンザBと診断され, オセルタミビル, クラリスロマイシンの内服治療を開始した. 2週間後, 徐々に尿量が低下し, 嘔吐, 全身倦怠感が出現したため, 2月中旬, 当院夜間内科外来を受診した. 来院時検査にて著明な高K血症, 腎機能障害を認め, 緊急透析を施行し入院となった. 2回目の透析後より徐々に, 尿量が改善し血液透析を2回施行し離脱した. その後, 全身状態が軽快し退院となった. 急性腎障害の原因はさまざまであるが, 本症例は受診までの経過, 来院後の検査結果からオセルタミビルとクラリスロマイシンを被疑薬とする薬剤性腎障害が最も考えられた. 両薬剤とも日常診療で頻繁に使用される薬剤であり, 投与後の経過には注意が必要である.
  • 島田 典明, 西川 真那, 川北 智英子, 井出 陽子, 澤田 真理子, 大森 一慶, 木野村 賢, 山本 浩之, 門田 一繁, 福島 正樹 ...
    2014 年 47 巻 12 号 p. 761-767
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/22
    ジャーナル フリー
    急性心不全クリニカルシナリオ (CS) 1の透析患者において血管拡張薬で酸素化が改善した4例を報告する. 症例は62~81歳, 透析歴は2~12年. 週初めの透析前夜に急に呼吸苦をきたし搬送される. 肺水腫像を呈し, 血圧200-254/93-122mmHgで体重増加はドライウエイトの3.8~9.2%であった. 全例ニトログリセリン, ニカルジピンを使用し, 2例は非侵襲的陽圧換気を行った. 血圧上昇は改善し, 透析までに投与酸素は減量できた. 2例で緊急透析を行ったが, 除水は体重増加に0.5~0.8kgを加えた量を行い, 速やかに酸素化は改善した. CS1は急な血圧上昇により, 血液が末梢から心肺に急激にシフトする病態が考えられている. 硝酸薬など血管拡張薬を用いて, 体液を末梢へ再分布させることは有効である. 心不全では酸素化の迅速な改善が重要であり, 透析患者でもCS1では血管拡張薬で初期対応を行うべきと考える.
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