日本透析医学会雑誌
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47 巻, 7 号
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委員会報告
  • 糖尿病性腎症合同委員会 , 羽田 勝計, 宇都宮 一典, 古家 大祐, 馬場園 哲也, 守屋 逹美, 槇野 博史, 木村 健二郎, 鈴木 芳 ...
    2014 年 47 巻 7 号 p. 415-419
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/02
    ジャーナル フリー
     糖尿病性腎症合同委員会では, estimated glomerular filtration rates (eGFR) およびchronic kidney disease (CKD) の概念の普及を鑑み, 従来の糖尿病性腎症病期分類を改訂した. 新たな糖尿病性腎症病期分類2014は, 厚生労働省科学研究費腎疾患対策事業「糖尿病性腎症の病態解明と新規治療法確立のための評価法の開発」における研究成果を参考として作成した. 主要変更点は, 1. 病期分類に用いるGFRをeGFRに変更する, 2. 第3期AとB区分を削除する, 3. GFR 30mL/分/1.73m2未満を尿アルブミン値に拘わらず腎不全とする, であるが, 同時に, 4. いずれの病期においても非糖尿病性腎臓病との鑑別が重要であることを表記した.
原著
  • 齊藤 正和, 佐藤 智秋, 後藤 真希, 坂本 薫, 宮本 みづ江, 田畑 陽一郎, 伊東 春樹
    2014 年 47 巻 7 号 p. 421-426
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/02
    ジャーナル フリー
    【目的】外来血液透析 (HD) 患者の身体活動量に関連する因子を検討するとともに, HD施設までの通院方法と身体活動量および身体機能との関連について検討した. 【方法】外来HD患者53例 (男性34例, 女性19例, 平均年齢62±13歳) を対象とし, 基本情報, 合併症の重症度指標であるComorbidity Index, 栄養状態の指標であるGeriatric Nutrition Risk Index (GNRI), 身体機能の指標であるHD患者移動動作評価表, 身体活動量の指標であるLife Space Assessment (LSA) を調査した. 各調査項目とLSA得点との相関係数を算出し, LSA得点と有意な相関関係を示した因子を独立変数, LSA得点を従属変数とした重回帰分析を実施した. また, HD施設までの通院方法により通院自立, 送迎 (歩行) および送迎 (車いす) に分類し, HD施設まで通院が自立しているか否かを予測するLSA得点ならびに移動動作得点のカットオフ値をROC曲線より決定した. 【結果】LAS得点と有意な相関を認めた因子は年齢, GNRI, 透析期間, Comorbidity Index, 移動動作得点であり (p<0.05), LSA得点の規定因子として身体機能および年齢が抽出された (R2=0.54, p<0.01). また, 通院自立, 送迎 (歩行), 送迎 (車いす) の順で移動動作得点およびLSA得点は有意に低値を示し (p<0.05), HD施設までの通院方法が自立か否かを規定するLSA得点は, 63点 (ACU : 0.861, p<0.01, 95%CI 0.760-0.962), 移動動作得点は, 44点であった (ACU : 0.912, p<0.01, 95%CI 0.835-0.990). 【結語】HD血液透析患者の身体活動量の規定因子として, 年齢ならびに移動動作能力が抽出された.
  • 岡村 聡之, 高城 慶衣子, 竹中 恒夫, 鈴木 洋通
    2014 年 47 巻 7 号 p. 427-433
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/02
    ジャーナル フリー
    【目的】亜鉛欠乏は種々の障害をもたらすことが報告されている. そこで, 当院の外来維持血液透析患者における血清亜鉛濃度を測定し, 食事摂取状況との関連について検討した. 【方法】39名の外来維持血液透析患者を対象として, Food Frequency Questionnaire Based on Food Groups : FFQgを用いて食事調査を行い, 血清亜鉛濃度との関連を横断的に検討した. 【結果】単回帰では, 血清亜鉛濃度は強い血清アルブミン濃度との相関を示した (R=0.55, p<0.01). また, 血清総コレステロール濃度とも弱く相関した (R=0.32, p=0.05). 変数減少法を用いた重回帰分析では (R=0.45), 栄養素摂取量のうち, カリウム (t=3.0, p<0.01) とリン (t=−2.3, p<0.05) が血清亜鉛濃度の関連因子とされた. ステップワイズ回帰分析で, 血清亜鉛濃度と栄養素摂取量のなかからビタミンCが相関した (t=3.9, p<0.0001). 食品群を独立因子とした場合, 野菜/芋類/果実と血清亜鉛濃度は相関し (t=3.2, p<0.01), 特に果実類との相関傾向が認められた. 【結論】血液透析患者において, ビタミンCを上手く摂取し, リン摂取過多を回避することで, 低亜鉛血症を予防できる可能性があると示唆された. 食事指導や栄養管理の際, 亜鉛補充以外の新たな可能性を見出した.
  • 原 正樹, 柳澤 如樹, 能木場 宏彦, 森戸 卓, 岩佐 悠子, 菅沼 明彦, 今村 顕史, 味澤 篤, 安藤 稔
    2014 年 47 巻 7 号 p. 435-440
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/02
    ジャーナル フリー
    【背景】HIV患者の生命予後は抗HIV薬の多剤併用療法 (HAART) の登場により劇的に改善した. しかし, 長期生存例の増加に伴い, HIV陽性慢性透析患者の出現が新たな社会問題となっている. 本邦には, 慢性血液透析 (HD) に導入されたHIV患者の臨床経過および生命予後を検討した報告はない. 【対象と方法】2004年4月から2013年3月までに, 当院で慢性HDに導入され, サテライト透析施設で外来通院治療が可能であったHIV患者9例を対象とし, 導入後の臨床病像, HIV感染コントロール状態, 主な新規合併症, 入院回数, 延べ入院日数などを2013年9月に電子診療録により調査した. 生命予後をKaplan-Meier曲線にて解析し, 同時期に慢性HDに導入された非HIV患者の中で, 年齢, 性別, 糖尿病合併率をマッチさせた19例を対照として比較した. 【結果】慢性HD導入時の平均年齢は53.0±8.8歳, 観察期間中央値は4.6年 (範囲3.5~8.9年) であった. 全例がHAART治療を継続し, 5年累積生存率は, 88.9%であり, 対照群の79.9%とは有意差を認めなかった. 導入後調査時のHIV感染コントロール状態は良好だった. 新規合併症は心疾患5例 (狭心症+心不全2例, 急性心筋梗塞1例, 狭心症1例, 心不全1例), 細菌性肺炎3例, 中咽頭癌1例を6例の患者に認めた. 導入後の入院回数は平均2.2±1.4回, 延べ入院日数は平均58.0±51.8日だった. 針刺し事故, 他者へのHIV感染事例, 風評被害はなかった. 【結語】HD導入後もHIV感染コントロールの悪化はなく, 生命予後は良好である. 心疾患の新規発症例が多いが, 多くは独歩で外来通院透析を継続できている.
症例報告
  • 西村 謙一, 宮内 勇貴, 島本 憲司, 井出 健弘, 宇田 尚史, 野田 輝乙, 浅井 聖史, 三浦 徳宣, 白戸 玲臣, 柳原 豊, 菊 ...
    2014 年 47 巻 7 号 p. 441-445
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/02
    ジャーナル フリー
     症例は47歳女性. 2005年に慢性腎不全に対して血液透析を導入, 同年母親をドナーとした血液型適合生体腎移植を施行した. その後, 移植腎機能廃絶により2012年1月に血液透析再導入となった. 同年9月より38度台の発熱, 夜間咳嗽, 嘔吐を認めた. 血液検査, CT検査より移植腎に対する腎盂腎炎が考えられた. 抗生剤投与により一時的に改善したが, 再燃したため当院に紹介入院となった. 入院後, 抗生剤の変更によって一時的に軽快するも, 再び感染が再燃したため, 第11病日に移植腎摘除術を施行した. 摘出腎の病理結果より慢性拒絶反応および膿腎症と診断された. 移植腎機能廃絶後に血液透析を再導入した患者に発熱を認めた場合, 診断に苦慮する場合がある. 今回発熱の原因は感染症であったが, 保存的治療では改善せず移植腎摘除術を施行した. 腎移植後血液透析再導入の患者に対する移植腎摘除術の適応, 時期については, 個々の症例に応じて判断する必要がある.
  • 杉田 佳子, 設楽 敏也, 久保 星一, 佐藤 直之, 大谷 寛之, 伊原 玄英, 杉田 敦, 志村 哲, 六角 周, 別所 英治, 平山 ...
    2014 年 47 巻 7 号 p. 447-451
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/02
    ジャーナル フリー
     2012年12月から2013年11月までの間にHoLEPを施行した維持血液透析中の5例を報告する. 手術時平均年齢は71.2歳 (68~75歳) で, 平均一日尿量は420mL (100~700mL), 平均透析期間は57.4か月 (18~99か月), 平均推定前立腺体積は36.8mL (20.2~48.9mL) であった. 5例中3例が尿閉で, 他2例では夜間頻尿, 残尿感が主訴であった. HoLEPは全例抗凝固薬継続下で施行され, 平均腺腫核出時間は50.0分 (22~104分), 平均核出重量は11.8g (1~27g) であった. 術前後のHb低下量は平均1.8g/dL (0~5.1g/dL) で輸血を要した症例はなかった. 術後1か月でのIPSSとQOL indexは著明な改善を認めた. HoLEPは止血能力が高く, 透析症例のBPHに対して安全に施行可能で効果的な外科的治療法であると考えられた.
  • 佐藤 綾, 有村 義宏, 清水 英樹, 窪田 沙也花, 磯村 杏耶, 小西 文晴, 川嶋 聡子, 池谷 紀子, 吉原 堅, 駒形 嘉紀, 要 ...
    2014 年 47 巻 7 号 p. 453-457
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/02
    ジャーナル フリー
     症例は57歳女性. 喘息, 発熱, 紫斑を主訴に入院. 入院の16年前に気管支喘息の診断を受け加療. 入院6年前に喘息の悪化とともに末梢神経障害, 急速進行性糸球体腎炎, MPO-ANCA陽性, 腎生検で半月体形成性糸球体腎炎を認め好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 (eosinophilic granulomatosis with polyangiitis : EGPA, 旧称Churg-Strauss症候群) と診断. 免疫抑制療法を開始され, 腎外病変は消失し, MPO-ANCA値は正常化した. しかし, 腎機能は回復せず維持透析に導入された. その後, 約5年間, プレドニゾロン5mg/日で寛解状態であったが, 感染症併発を契機にプレドニゾロンを3mg/日に減量したところ, 喘息の悪化, 末梢血好酸球増多を呈した. その後, 発熱, 紫斑とともにMPO-ANCAの再陽性化を認めEGPAの再燃と診断した. ステロイドパルス療法を含む免疫抑制療法の強化を行いEGPAは再び寛解した. ANCA関連血管炎では透析中の再燃も認められる. EGPAによる維持透析例はまれであるが, EGPAの維持透析導入例で喘息増悪や好酸球数の増加を認めた場合にはEGPA再燃のリスクが高いことを考慮しMPO-ANCAを測定する必要があると思われた.
  • 高山 東仁, 安東 豊, 棟方 哲, 松寺 亮, 二見 夏子, 大森 弘基, 飯尾 健一郎
    2014 年 47 巻 7 号 p. 459-465
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/02
    ジャーナル フリー
     症例1 : 50歳代, 男性. 昭和56年原疾患不明の慢性腎不全に対し血液透析導入, 平成7年腎移植に伴い透析離脱, 平成16年8月頃移植腎機能低下に伴い血液透析再導入. 平成20年8月労作時呼吸困難, 心窩部痛出現したため, その精査目的に入院. CT施行し, 門脈ガスを認め腸管の虚血が疑われた. 外科的治療待機中に死亡. 症例2 : 70歳代, 男性. 昭和63年慢性糸球体腎炎による慢性腎不全に対し腹膜透析導入, 平成4年血液透析に移行. 平成14年に生体弁による大動脈弁置換術施行. 平成20年労作時呼吸困難, 血液透析中血圧低下による除水困難あり入院. 重症大動脈弁狭窄症を認め, 弁膜症悪化による心不全急性増悪と診断. 入院後カルベジロール導入. 労作時呼吸困難は改善したが, 心機能は改善せず. 透析中に突然の腹痛出現, CTにて門脈ガスを認め腸管虚血が疑われ緊急手術にて壊死した腸管を切除したが, 4日後死亡. 門脈ガス血症は比較的まれな疾患であり, 両症例とも20年来の血液透析施行歴と著明な左心機能低下を呈していた. 文献的考察を加え報告する.
  • 張 杰, 大山 聡子, 菅野 勝寛, 冨田 公夫
    2014 年 47 巻 7 号 p. 467-472
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/02
    ジャーナル フリー
     症例は71歳の男性. 腎硬化症による慢性腎不全のため血液透析を施行中であった. 肺炎治癒後発熱・解熱が繰り返し, 頸部リンパ節腫脹を認めた. 喀痰検査では抗酸菌塗抹陰性・培養陰性・結核菌PCR陰性であった. 1か月後リンパ節開放生検を施行し, 結核菌PCR陽性であり, 組織学的に結核性肉芽腫が認められたため結核性リンパ節炎と診断した. 造影CTで1か月前に認めなかった総肝動脈周囲リンパ節の腫脹と肝臓に結節性病変を数個認めた. 6か月間の抗結核薬内服により治癒した. 発熱, 炎症反応高値などの症状を透析患者に認めた際, 一般細菌による肺炎が発症・治癒しても背景に結核が潜在している可能性を考慮しておくことが重要であると思われる.
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