日本透析医学会雑誌
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48 巻, 12 号
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総説
症例報告
  • 柴﨑 俊一, 津田 勝路, 荒木 真, 山﨑 美佐子, 三浦 浩平
    2015 年 48 巻 12 号 p. 713-718
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/22
    ジャーナル フリー
    血液透析患者の高齢化に伴い, 悪性腫瘍合併は増加傾向である. しかし, 血液透析患者の抗がん剤治療は知見集積が少ないのが現状である. 血液透析患者の慢性骨髄性白血病 (chronic myeloid leukemia : CML) では, 検索した範囲内でイマチニブでの長期治療報告はなく, ダサチニブでは治療報告がない. 症例は87歳の男性. 81歳で血液透析導入. 82歳時にCMLと診断され, イマチニブ開始. イマチニブ300mg隔日投与を基本とし, 血液学的完全寛解を3年間維持した. イマチニブ抵抗性でダサチニブに変更後, 血液学的完全寛解は得られたが, 左室壁運動低下などの心毒性がみられた. ダサチニブ中止後に急速に改善した. 血液透析患者でもイマチニブで長期にCMLが制御できること, ダサチニブによる心毒性は血液透析患者で出やすい可能性が臨床的に示された.
  • 友杉 俊英, 大河内 治, 武田 重臣, 荘加 道太, 川瀨 義久
    2015 年 48 巻 12 号 p. 719-722
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/22
    ジャーナル フリー
    症例は61歳の男性. 原疾患不明の慢性腎不全に対して腹膜透析が導入された. 導入後4か月経過した際に, 両側陰囊の腫大が出現し増悪したため入院となった. 入院時には陰茎から下腹部まで浮腫を伴っていた. 腹膜透析を中止することで陰囊腫大は改善したが, 腹膜透析を再開後5日目には右陰囊の腫大が再度出現した. 腹腔内造影剤注入CTにて腹腔内より腹膜鞘状突起を経て陰囊に造影剤の貯留を認めた. 腹膜鞘状突起開存による交通性陰囊水腫の診断で手術を施行し, 開存した腹膜鞘状突起の高位結紮, 切離を施行した. 術後7日目に腹膜透析を再開したが, 合併症なく経過した. 腹膜透析に合併した交通性陰囊水腫は報告が少なく, 若干の文献的考察も含めて報告する.
  • 萩原 奏, 向山 佳宏, 大野 俊一, 杉本 雅幸, 近藤 靖司, 蕨 雅大, 谷澤 徹, 本間 之夫
    2015 年 48 巻 12 号 p. 723-727
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/22
    ジャーナル フリー
    症例は56歳, 女性. 20年の透析歴. CTで3cmの右腎腫瘍および右恥骨腫瘍を指摘. 恥骨腫瘍の針生検により肉腫様腎細胞癌が検出され右腎細胞癌の転移と診断. 入院40日目に死亡. 剖検で右腎に肉腫様部を伴う乳頭状腎細胞癌と肝, 副腎, 椎骨, 恥骨転移を確認. 国内での維持透析患者の肉腫様腎細胞癌は, われわれが調べ得た限り詳細の明らかなものは23例であった. 集計の結果, 透析歴10年以上に多く長期透析との関連が疑われた. 腫瘍径は小型で, 腫瘍径と透析年数には相関がなく腫瘍径と転移率, 癌死亡率にも明らかな関係はみられなかった. 転移は肝, 骨, 肺に多く血行性と思われる. 肉腫様腎細胞癌は診断が困難なうえに悪性度が高く極めて予後不良である. 透析患者の肉腫様腎細胞癌では手術適応には大きさよりも透析期間が重要と考えられ, 10年以上の長期透析患者では腫瘍径が小さくとも手術を考慮すべきである.
  • 松久 忠史, 舘山 美樹, 坂本 和也, 櫛田 隆久, 熊谷 文昭
    2015 年 48 巻 12 号 p. 729-734
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/22
    ジャーナル フリー
    症例は61歳の女性. IgA腎症による慢性腎不全で血液透析を施行している. 急性出血性胆囊炎に対する胆囊摘出術後の経過中に下血を認め, ダイナミックCTで急性小腸出血と診断した. 腹部血管造影では上腸間膜動脈根部が硬化, 狭窄しているため造影に用いた4-Frコブラカテーテルを十分に挿入できなかった. 小腸に造影剤の漏出像を認めた. コブラカテーテルの内腔を通して2.8-Frマイクロカテーテルを進め直動脈の選択的塞栓術を試みたが, マイクロカテーテルが出血点に近接するとコブラカテーテルが上腸間膜動脈から逸脱しマイクロカテーテルも後退するため可及的選択的位置から多孔性ゼラチン粒を用いて塞栓した. 術後は再出血や腸管虚血をきたすことなく経過し退院した. 動脈硬化が原因で腹部血管造影や動脈塞栓術における手技に制約を伴ったが, 透析患者に生じた急性小腸出血を的確に診断し適切に止血することができた.
  • 井上 英行, 木村 和生, 葛原 信三, 三浦 康子, 大坪 茂, 葛原 敬八郎
    2015 年 48 巻 12 号 p. 735-740
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/22
    ジャーナル フリー
    今回, 右腕頭静脈閉塞に対して右尺側皮静脈-左外頸静脈クロスオーバーグラフト移植術を行った症例を経験したので報告する. 症例は69歳女性. 1981年に慢性糸球体腎炎で血液透析導入となった. 当初, 左前腕にradio-cephalic arterio-venous fistula (RCAVF) が作製されたが, シャント狭窄を繰り返し, 頻回なpercutaneous transluminal angioplasty (PTA), 数回の再建術が行われた. その結果, 左上肢にシャント作製が可能な部位はなくなり, 2003年に右上腕に表在化尺側皮静脈-上腕動脈内シャント (transported basilic vein-brachial artery arterio venous fistula : TBBAVF) が作製された. しかし, その後も頻回数な狭窄とPTAによる拡張を繰り返し, 2012年11月には腕頭静脈が完全閉塞となったため, 右上腕表在化尺側皮静脈-左外頸静脈人工血管クロスオーバーバイパスグラフト移植術が施行された. その後2~7か月ごとのPTAを要してはいるが, 術後2年以上経過した2015年4月現在もグラフトは開存しており, 本術式は血液透析患者の中心静脈狭窄に対して有用と考えられたのでここに報告する.
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