日本透析医学会雑誌
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48 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著
  • 成末 まさみ, 杉本 悠花, 柴田 龍二郎, 大坪 俊夫, 平田 純生
    2015 年 48 巻 3 号 p. 155-161
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル フリー
    プレガバリン (リリカ®) は尿中排泄率約90%と腎排泄性薬物であり腎機能に応じた用量調節を行い安全に使用することが臨床現場での課題となっている. 光晴会病院では, 添付文書での推奨投与量以下の用量での有害事象発生状況について調査を行った. 調査期間は2010年6月~2013年11月で120名のうち, 14名でめまい・嗜眠などの中枢神経系有害事象が発生した. 多くは投与開始後6日以内にみられ, 有害事象発生群の体重は非発生群に比し, 有意に低かった (p=0.005). 腎機能低下が進行するほど有害事象発生率は高くなる傾向にあり, 非腎機能低下患者 (n=73) の発生率4%に対し, 腎機能低下患者 (n=47) の発生率は23%と有意に有害事象発生率が高かった (p=0.003). プレガバリンについて, 薬剤師が患者の腎機能を正確に把握し, 投与前の投与量の適正化を行うだけでなく, 体格を考慮した投与設計の実施が必要と考えられた.
  • 梶原 健吾, 富田 正郎, 岡村 景子, 中川 輝政, 坂梨 綾, 三浦 玲, 藤本 歌織, 梶原 奈央, 岩田 康伸, 信岡 真美子, 松 ...
    2015 年 48 巻 3 号 p. 163-167
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル フリー
    【背景】アムホテリシンBリポソーム製剤 (LAMB) は腎機能障害患者においても減量することなく使用できるが, その透析性については不明な点が多い. 今回ポリスルホン/ハイフラックス膜を使用した透析患者における血中濃度を測定したため報告する. 【方法】症例は72歳男性. 侵襲性アスペルギルス症と診断し, LAMBの1日1回連日投与を行った. 透析日は透析中投与を行い, 非透析日では通常静脈投与を行った. 透析中投与ではダイアライザー前後の血中濃度ならびに透析液での濃度, 通常投与では末梢での血中濃度を3日間測定した. 【結果】透析中投与では透析膜前後での血中濃度差に有意差はなく, 透析液濃度はほぼ検出感度以下であった. 透析中投与と通常投与においても血中濃度に有意差を認めなかった. 【結論】ポリスルホン/ハイフラックス膜を使用しても, LAMBは透析に関係なく投与でき, 用量の調節を必要としない可能性が示唆された.
  • 浪江 智, 浜辺 定徳, 川冨 正治, 川冨 正弘, 小田 英俊, 中沢 将之, 西野 友哉
    2015 年 48 巻 3 号 p. 169-177
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル フリー
    炭酸ランタンを服用中の70例の血液透析患者の腹部単純CTにおける胃のhigh density area (HDA) について検討した. 70例に173回のCT検査を行ったが, そのうち明らかなHDAを認めたものは42例 (60%) に計67回 (39%) であった. HDAを認めた群 (42例) はHDAを認めない群 (28例) と比較して, 炭酸ランタンの服用期間が有意に長かった. また, 服用期間が長いほどHDAの程度が有意に強かった. 胃内視鏡検査を施行した4例の内視鏡所見は胃粘膜の白色肥厚が特徴的にみられ, 組織所見は胃粘膜固有層に沈着物を認め, マクロファージの浸潤と貪食像を認めた. 胃組織中のランタン定量分析では, ランタンの存在が確認された. 炭酸ランタンを服用中止して8か月後に経過をみた2例の腹部CTでは, HDAは残存し, 1例の胃内視鏡所見では胃粘膜の白色肥厚が残存した. 炭酸ランタンが胃粘膜に与える影響について, 注意深い観察が必要であると考えられた.
透析看護
  • 柏木 久美子, 結城 美智子, 高瀬 佳苗
    2015 年 48 巻 3 号 p. 179-186
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル フリー
    【目的】地域で生活する糖尿病腎症透析患者の社会活動の実態と健康関連QOL (KDQOL-SFTM) との関連を検討した. 【対象と方法】対象はA県内3つの医療機関に通院する40歳以上の糖尿病腎症透析患者75人. 診療録からの情報と質問紙を用いた面接でデータを得た. 社会活動は3つの下位尺度 ([自己活動][身近な人々との交流][集団活動]) から構成. 社会活動に対する意欲および実施状況について健康関連QOLとの関連を比較検討した. 【結果】[自己活動], [身近な人々との交流], [集団活動]においてQOLとの関連があった. これらの社会活動を非透析日に週1回以上行っている者は, 行っていない者よりも健康関連QOLの程度が高いことが示された. 【結論】定期的な透析治療で制限のある生活においても, 社会活動に対する意欲を持つことができるように体調を管理し環境をつくること, 参加や継続を支援することの重要性が示唆された.
症例報告
  • 茂庭 仁人, 嶋村 昌之介, 長谷川 浩一, 滝沢 英毅, 佐々木 晴樹, 横山 由佳, 浅岡 克行, 浦 信行
    2015 年 48 巻 3 号 p. 187-192
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル フリー
    症例は72歳男性. 腎硬化症によるCKDにて近医を通院していた. 胆管癌に対し消化器内科で化学療法を開始したところ食欲不振と倦怠感が出現, 翌月再診した. Cr 9.63mg/dL, K 7.3mEq/Lと腎不全増悪, 高カリウム血症, 徐脈を認め入院となった. 右内頸静脈にflexible double-lumen catheter (FDLカテーテル) を挿入し血液透析を開始した. 脳転移検索目的に頭部CTを施行したところ右後頭葉に高吸収域像を認め, MR venographyにて右横静脈血栓症と診断した. FDLカテーテルを抜去し抗凝固療法を開始, この時点で腎機能はやや回復しており透析は離脱した. その後化学療法を再開したが腎機能の増悪なく透析の再導入はせず外来経過観察としている. 担癌患者など易血栓性状態にある患者では内頸静脈FDLカテーテル留置の合併症として脳静脈血栓症を念頭におく必要がある.
  • 元 志宏, 井上 勉, 佐々木 峻也, 野辺 香奈子, 斎藤 加奈子, 岡山 美香, 瀬戸 建, 池田 直史, 鈴木 洋通
    2015 年 48 巻 3 号 p. 193-198
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル フリー
    腎周囲血腫は外傷, 腫瘍, 感染などで生じるまれな疾患である. 抗血小板薬や抗凝固薬などにより腎周囲血腫をきたした症例や透析患者に発症した症例も散見される. 透析患者の腎周囲血腫の原因では多嚢胞化萎縮腎が重要な因子であり, 今回われわれが経験した8症例すべてに認めた. そのうち5例は結石, 腫瘍病変や外傷の既往なく, 多嚢胞化萎縮腎の破裂が原因と考えられた. 腹膜透析患者に生じた腎周囲血腫6例はすべて腹膜透析排液が血性となり, 腹膜透析患者が血性排液を呈した際は腎周囲血腫を鑑別にあげる必要があると考えられた. 長期透析患者の増加により多嚢胞化萎縮腎を合併し腎周囲血腫を発症する症例は今後増加すると考えられる. 透析患者が突然の腰背部痛を訴えた場合や腹膜透析患者に血性排液を認めた場合は, 腎周囲血腫も念頭に置いて精査を行い, 貧血の進行や全身状態, 腎癌の合併などを考慮し治療方針を決定する必要がある.
  • 西川 真那, 島田 典明, 永山 泉, 福島 和彦, 天野 圭慧子, 川北 智英子, 澤田 真理子, 木野村 賢, 福島 正樹, 浅野 健一 ...
    2015 年 48 巻 3 号 p. 199-205
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル フリー
    57歳男性, 透析歴35年. C型肝硬変があり週初めの血液透析 (HD) 後にのみ肝性脳症Ⅲ度を繰り返した. 低カリウム血症などの誘因はなく, 分岐鎖アミノ酸製剤とラクツロース, レボカルニチンを追加し透析液の重炭酸濃度を低減した. しかし再び週初めのHD後に肝性脳症Ⅲ度となり血漿アンモニア濃度は219μg/dLであった. CTで太い門脈-大循環シャントを認め, ドップラー超音波で測定した門脈血流はHD後に低下していた. 血液濾過透析 (HDF) への変更で門脈血流の低下を減少でき, カナマイシンも追加し以後の肝性脳症はみられていない. 肝性脳症の原因にはアンモニアなどの代謝異常に加え, 門脈血の大循環への流入がある. HDにより大循環の圧が低下することで, 門脈-大循環シャントを介した門脈血の大循環への流入量が増えHD後の肝性脳症を惹起するとされる. HDFによる門脈血流の保持を含めた集学的治療で肝性脳症の再発を抑制できた.
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