日本透析医学会雑誌
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48 巻, 6 号
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原著
  • 稲熊 大城, 黒田 友紀, 松浦 有希子, 浅井 謙一, 中川 星明, 高木 茂樹, 柴崎 俊一, 村田 実奈子, 新城 響, 寺澤 篤, ...
    2015 年 48 巻 6 号 p. 331-339
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/30
    ジャーナル フリー
    重症敗血症あるいは敗血症性ショック症例に対するAN69ST膜による持続的血液濾過透析 (continuous hemodiafiltration : CHDF) の短期的有用性を後方視的に検討した. 2013年1月から2014年10月の期間中に重症敗血症あるいは敗血症性ショックにてCHDFを24時間以上施行した連続28例を対象にAN69ST膜使用群11例とPMMA膜使用群17例との2群に分けて, 治療開始後72時間以内の血圧ならびにカテコラミンインデックス (catecholamine index : CAI) を比較した. CHDF開始時において, AN69ST膜使用群で有意にSequential Organ Failure Assessment (SOFA) スコア, AST, ALT, LDH, 総ビリルビンならびにCRPが高値を示した. 2群ともにCHDF開始時と比較し終了時のCAIは有意に低下した. 2群間で血圧, 血圧変化率ならびにCAIに有意差はなかったが, CHDF終了時の時間尿量はAN69ST膜群で有意に多く, またCHDF継続期間は有意に短かった. 後方視的研究ではあるが, AN69ST膜使用によるCHDFは重症敗血症あるいは敗血症性ショック症例に対し, polymethylmethacrylate (PMMA) 膜使用と同等以上の効果がある可能性が示唆された.
  • 日ノ下 文彦, 秋葉 隆, 勝木 俊, 戸村 成男
    2015 年 48 巻 6 号 p. 341-350
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/30
    ジャーナル フリー
    「障害透析患者の透析実態に関するアンケート調査」を実施し, 1,524の血液透析 (hemodialysis : HD) 施設から回答を得た. その結果, 832施設 (54.6%) が維持HD患者の送迎を実施していた. 送迎患者数は回答のあった811施設だけで28,715人であり, 77.1%の送迎実施施設が「負担」を感じており, 「負担でない」と答えた施設は19.8%であった. 長期留置型カテーテルによるHD患者がいる施設は1,524施設中506あり, 全体の約1/3にのぼった. 長期入院HD患者がいる施設は, 1,524施設中550 (36.1%) あり, 患者総数は522施設で5,275人に達した. 介護保険認定患者がいる施設は1,323施設あり, 患者がいないと答えたのは123施設だけであった. 高齢化しているHD患者の実態がある程度明らかになったが, 今後, さまざまな観点から対策を検討していく必要がある.
  • —多施設共同前向き比較研究—
    峰島 三千男, 江口 圭, 宍戸 寛治, 高橋 進, 久保 司, 川口 洋, 蔀 幸三, 柴垣 圭吾, 須賀 喜一, 長尾 尋智, 高田 幹 ...
    2015 年 48 巻 6 号 p. 351-360
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/30
    ジャーナル フリー
    透析中の末梢循環障害是正や急激な血圧低下防止を目的に間歇補充型血液透析濾過 (intermittent infusion hemodiafiltration : I-HDF) が考案された. 今回われわれは逆濾過透析液を用いたI-HDFの臨床効果を前希釈法On-line HDF (以下Pre-HDF) と比較するため, 前向き多施設共同臨床研究を実施した. 文書にて同意が得られた患者を同一施設内で2群に割付けし, 並行群間比較を行った. その際, ① 年齢 (±5歳), ② 基礎体重 (±5kg), ③ 糖尿病の有無をマッチングさせ, 36例 (18ペア) を対象とし臨床症状, QOL, 溶質除去などの観点から検証した. その結果, 臨床症状, QOLにおいて両群に有意差は認められなかった. 血液透析からの変更後, I-HDF群, Pre-HDF群とも治療が継続するにつれて収縮期血圧減少率の低下, 処置発生率低下傾向がみられた. また, I-HDFはPre-HDFに比べ中・大分子溶質の除去には劣るもののアルブミン漏出量の少ない溶質除去特性が確認された.
短報
  • 齋藤 友季子, 向井 賢司, 貴志 直哉, 川口 茂, 齋藤 真一, 齋藤 純一
    2015 年 48 巻 6 号 p. 361-364
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/30
    ジャーナル フリー
    【目的】重度認知症のため精神科入院となった透析患者の生命予後について, 重度認知症以外の精神科疾患を合併した透析患者の生命予後と比較検討した. 【対象・方向】7年間に当院精神科入院となった透析患者20例を対象とした. 認知症例に対し, 長谷川式簡易知能評価スケールを用いて, 認知機能障害度を重度と重度以外に区別し, 対象20例を重度認知症群と重度認知症以外群の2群に分けた. 2群間において, 患者背景を調査し, 精神科入院後の予後を, Kaplan-Meier生存曲線を用いて比較検討した. 【結果】重度認知症7例, 重度認知症以外群13例の2群に分けた. 重度認知症群の背景因子は, 平均年齢70歳, 男性, 日常生活レベルの低下であった. 2群間の生存曲線に有意差を認め, 重度認知症群が予後不良であった (ロングラン検定p=0.0034). 【結論】重度認知症を合併した透析患者の精神科病棟入院後の生命予後は悪いと思われた.
症例報告
  • 森田 さやか, 入村 泉, 江口 圭, 山下 真平, 吉田 宣子, 豊永 愛子, 竹村 俊輔, 髙木 通乃, 吉田 直史, 大屋 純子, 花 ...
    2015 年 48 巻 6 号 p. 365-370
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/30
    ジャーナル フリー
    骨髄異形成症候群 (myelodysplastic syndrome : MDS) を合併した慢性腎臓病患者において, 輸血依存性の高度貧血が持続したが, 高用量ダルベポエチン投与により輸血量の減少が可能となった症例を経験したので報告する. 症例は76歳, 男性. 58歳時に2型糖尿病, 74歳で慢性腎不全ならびにMDSと診断された. 外来でダルベポエチン・アルファ120μg/2週および赤血球濃厚液2単位/週を併用したが, 高度貧血が持続した. 76歳時に溢水加療目的に入院した際, ヘモグロビン (Hb) 6.8g/dLであった. 血液透析導入後, ダルベポエチン・アルファ180μg/週まで漸増し, Hb 8.0~9.0g/dLの維持が可能となり, 輸血頻度が減少した. 腎性貧血を合併したMDSによる不応性貧血に対し, 高用量ダルベポエチンが奏効する可能性があり, 選択肢の一つとして考慮すべきであると考えられる.
  • 野村 威雄, 福田 悠子, 宗像 さやか, 有馬 誠, 安森 亮吉, 近藤 能行, 山崎 六志, 三股 浩光
    2015 年 48 巻 6 号 p. 371-375
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/30
    ジャーナル フリー
    近年, 泌尿器科を含む腹部手術領域では, 腹腔鏡手術で使用するトロカー挿入部位を1か所にすることによる低侵襲性および整容性を追及する単孔式手術が施行されている. 切開創を臍にすることによる疼痛軽減や整容性の向上は高齢男性透析患者においても非透析患者や若年女性患者と同様に追及されなければならない. 症例は血液透析8年の75歳男性で, 腹痛精査で施行されたCTおよびMRIにて7.2×6.7×8.9cm大の左副腎腫瘍を指摘され, 当科紹介となった. 臍に沿って3.5cmの縦切開を加えGelpointを装着し, 経腹膜的に左副腎摘除を施行した. 第1病日から経口摂取および歩行開始し, 術後5日目に自宅退院した. 透析患者においても臍部単孔式腹腔鏡下副腎摘除術は, 腹腔鏡手術に熟達した術者であれば安全に施行可能であった.
  • 成山 真一, 小坂 文子, 濱松 初美, 野口 哲也, 尾藤 良子, 澁谷 浩司, 杉木 雅彦, 澁谷 浩二, 西岡 正登, 藤田 嘉一, ...
    2015 年 48 巻 6 号 p. 377-382
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/30
    ジャーナル フリー
    足などの爪白癬は無症状で経過することも多く, 患者自身も経年変化の一つと捉え未治療のまま経過している場合もある. しかし爪白癬は, 近年増加傾向を示している末梢動脈疾患や重症下肢虚血に伴う下肢切断の危険因子となり得ることから, 爪白癬の治療を行うことは下肢切断の回避・生命予後の改善といった観点からも有意義であると考える. 今回, われわれは維持血液透析患者に発症した爪白癬に対し, エフィナコナゾールを塗布し, その効果が示唆される症例を経験した. 症例は, 66歳女性, 糖尿病性腎症由来の慢性腎不全のため2011年6月から当院で血液透析導入となった. 両下肢第1趾に爪白癬を認めており, 2014年10月下旬から週3回の血液透析来院日にエフィナコナゾールを塗布した. 治療開始後約3か月時点で, 良好な爪の伸長を肉眼的に確認することができた. エフィナコナゾールは血液透析患者における爪白癬に対する有効な治療選択肢の一つとなり得ることが示唆された.
  • 岡部 智史, 木村 隼人, 梅元 あずさ, 三島 敬一郎, 米田 尚弘, 菅 真一
    2015 年 48 巻 6 号 p. 383-388
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/30
    ジャーナル フリー
    症例は47歳女性. IgA腎症による慢性腎不全のため, 2014年2月に腹膜透析カテーテルを留置され, 3月より腹膜透析を導入した. しかし, 導入19日目より頻回に注排液不良となり, 導入126日目より腹膜透析は一時中止とした. 原因検索のため, 導入143日目に腹腔鏡下手術を施行したところ, 右卵管采がカテーテル側孔に迷入しており, 内腔を閉塞させていたため, 迷入した卵管采を牽引して除去した. 術後, 腹膜透析を再開したところ, 注排液不良は改善を認めた. 導入197日目に貯留量を増量すると, 除水不良となり, 導入221日目には右胸水貯留を認めた. 導入227日目に胸腔穿刺を行ったところ, 胸水中の糖濃度の上昇を認め, 横隔膜交通症と考えられた. 導入234日目より2週間腹膜透析を中止した後, 日中のみで再開した. その後右胸水の再貯留はなく, 腹膜透析を継続しえた.
平成26年度コメディカル研究助成報告
Letter to Editor
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