日本透析医学会雑誌
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48 巻, 9 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
原著
  • 味村 啓司, 田野 裕美子, 石谷 精司, 山縣 優子, 徐 葉子, 平坂 尚久, 溝端 理恵, 西川 治, 西出 孝啓, 湯川 進, 長沼 ...
    2015 年 48 巻 9 号 p. 499-508
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/29
    ジャーナル フリー
    【目的】糖尿病と非糖尿病の透析患者で, GAと関連する因子について検討した. 【対象と方法】甲状腺疾患などを除外した糖尿病49名 (糖尿病群), 非糖尿病49名 (非糖尿病群) で検討した. 【結果】糖尿病群では, GAに対する単相関の検討で, 随時血糖値と有意の正相関を, FT3とのみ有意の逆相関を示した. 重回帰分析では, 随時血糖値が正相関を, FT3が逆相関を示し, 有意の説明変数であった. 非糖尿病群では, 単相関の検討で, 年齢と随時血糖値が有意の正相関を, BMI, アルブミン, リン, FT3, Crが有意な逆相関を示した. 重回帰分析では, 年齢が正相関を, BMIとPが逆相関を示し, FT3よりも重要な有意の説明変数となった. そこで, FT3の規定因子を検討すると, 糖尿病群ではGA, BMI, 非糖尿病群でCr, BMIであった. 【結論】透析患者, とくに糖尿病患者でGAはFT3と関連が強いことが示唆された.
  • 原 道顯
    2015 年 48 巻 9 号 p. 509-514
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/29
    ジャーナル フリー
    【目的】血液透析中の循環血液量変化に対する近似曲線の優劣を検討した. 【対象と方法】維持透析患者95例を対象に, 安静・仰臥位, 一定血流量, 一定除水量の条件下で測定. 近似曲線として1) 直線y=Cx+D, 2) 双曲線+直線xy=Ax2+Bx+C, 3) 放物線+直線y=A√x+Cx+D, 4) 対数曲線+直線y=ALn(x)+Cx+D, 5) 指数曲線+直線y=AExp(Bx)+Cx+Dを検討した. 【結果】測定開始時を除いた3時間 (N=540) の寄与率は, 1) 0.913±0.0725, 2) 0.992±0.0083, 3) 0.957±0.0401, 4) 0.955±0.0383, 5) 0.962±0.0367で, 大きさは1) < 4) < 3) < 5) < 2) の順であった. また, 2) 式の係数Aと時間除水量とが相関した. 【結語】比較的簡単であてはまりのよい2) 式は, 血液透析中の循環血液量の予測や血圧低下の防止に有用と思われた.
  • —バイオインピーダンス法を用いて—
    助田 菜奈, 北山 利香, 小寺 宏尚, 矢内 佑子, 家原 典之, 八城 正知
    2015 年 48 巻 9 号 p. 515-523
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/29
    ジャーナル フリー
    【目的】透析量としてKt/Vより総体液量 (V) の代わりに体表面積 (BSA) で標準化したKt/BSAが適切との報告がある. SpaldingによるWatson式によるVを用いた研究でKt/VからKt/BSAへの変換因子であるV/BSAが体格小の患者や女性で体格大の男性に比し低値であり, Kt/BSAを透析量の基準とするとKt/Vでは体格小の患者や女性で透析量の過大評価になるとされた. バイオインピーダンス法 (BIS) で測定したVでも同様か検討した. 【方法】透析患者132名でBISによりVを測定, 過剰水分量で補正した (cV). 【結果】cVを用いるとV/BSAは女性が男性より低値で性別にcVの大小を加味した4群比較でも女性, 体格小の患者で体格大の患者や男性に比し低値であった. 【結論】実測したcVを用いた検討でもKt/Vは体格小の患者や女性において透析量を相対的に過大評価する.
短報
  • 日比野 祐香, 神田 英一郎, 鈴木 梨江, 横部 佳子, 樋口 直美, 菅野 義彦
    2015 年 48 巻 9 号 p. 525-528
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/29
    ジャーナル フリー
    わが国の介護保険施設における腹膜透析 (PD) 患者受け入れ状況について関東周辺の介護保険施設1,139施設に対してアンケート調査を行った. 内容はPDに対する認識, PDの受け入れ状況, PDを受け入れていない施設に対して, 受け入れていない理由 (手技, 医療保険・介護保険制度など), 今後受け入れるための条件などとした. 回答が得られた535施設のうち, 現在PD患者を受け入れているのは4施設であった. PD患者を受け入れていない施設の理由として急変時の対応体制が不備 (23.2%), 問い合わせがない (22.1%), 液交換ができない (20.4%) が多かった. また体制が整えば受け入れ可能と答えた施設は34.4%であった. 以上より現在PD患者を受け入れている施設は少ないが, 体制を整えることによりこれを増やせる可能性があることが示唆された.
症例報告
  • 石渡 亜由美, 長谷川 純平, 齋藤 誉子, 井上 宙哉, 亀井 唯子, 山田 慶, 中山 一誠, 小川 俊江, 阿部 恭知, 遠藤 真理子 ...
    2015 年 48 巻 9 号 p. 529-534
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/29
    ジャーナル フリー
    敗血症性肺塞栓症 (SPE) は血流感染をきたした患者にみられるまれな肺合併症である. 今回われわれは, カフ型カテーテル挿入下でSPEを発症し, 右仙骨骨髄炎, 梨状筋膿瘍, 腰椎傍脊柱筋膿瘍を合併した症例を経験した. 症例は49歳女性. 原因不明の急性腎不全で32歳で血液透析導入. 人工血管感染を反復し, 47歳よりカフ型カテーテルで透析施行. 48歳で黄色ブドウ球菌による敗血症, 左化膿性仙腸関節炎を発症し抗菌薬で改善. 49歳で両臀部痛, 炎症反応高値で当院入院し, 右仙骨骨髄炎, 梨状筋膿瘍, 腰椎傍脊柱筋膿瘍に加え, 両肺に空洞を伴う結節影が多発しSPEを認めた. 来院時セフトリアキソン投与下で血液培養は陰性であった. ピペラシリン・タゾバクタム, バンコマイシンの投与でCRPは陰性化し, SPE, 右仙骨骨髄炎・膿瘍も画像上改善した. 透析患者は易感染宿主であり, 血流感染を疑う状況では臨床所見や画像所見から積極的にSPEの合併を疑い早期診断を行うことが重要である.
  • 木村 友美, 伊藤 千晴, 小湊 知, 水口 建, 小川 敦史, 佐藤 諒, 下串 浩矢, 笹川 祐司, 成田 亜衣子, 平塚 真紀, 水野 ...
    2015 年 48 巻 9 号 p. 535-541
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/29
    ジャーナル フリー
    症例は65歳男性. MPO-ANCA陽性で多発性肺肉芽腫性病変の経過中に2か月間で正常腎機能からBUN 63mg/dL, Cre 9.2mg/dLと急激な腎機能低下を認め, 当院に紹介となった. 腎生検では巨細胞を伴う壊死性半月体形成性糸球体腎炎を認め, 蛍光抗体法でIgGが基底膜へ線状に沈着していた. 抗基底膜 (GBM) 抗体350U/mL以上であったため, 抗GBM抗体型急速進行性糸球体腎炎 (RPGN) と診断した. 肺病変発症時, PR3-ANCA陰性, MPO-ANCAは軽度上昇していたが, その後MPO-ANCAのみ有意な上昇を認めた. 単純血漿交換療法とステロイドパルス療法を施行したが, 腎機能は回復せず, 維持透析療法を必要とした. 本例は多発血管炎性肉芽腫症 (GPA) に抗GBM抗体型RPGNを合併したと考えられ, 血管炎症候群の発症・進展機序に関して示唆に富む症例であり, 病理組織診断の重要性を示した.
  • 中野 寿洋, 橋本 博子, 森川 昌平, 澤田 桐子, 澤田 杏理, 宗像 優, 下村 浩祐, 三戸部 倫大, 小原 まみ子, 望月 隆弘, ...
    2015 年 48 巻 9 号 p. 543-547
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/29
    ジャーナル フリー
    血液透析中に両側腎細胞癌, 多発肺囊胞からBirt-Hogg-Dubé (BHD) 症候群と診断できた1例を経験した. 症例は73歳, 女性, 透析歴26年, 不明熱の精査目的に20××年10月に当院へ入院した. 胸腹部CT, 腹部MRIから両側腎細胞癌と多発肺転移, 多発肺囊胞と診断した. 気胸歴と気胸の家族歴があったため遺伝子検査を施行したところ, folliculin (FLCN) 遺伝子の変異がありBHD症候群 (常染色体優性遺伝) と診断した. 透析患者は腎細胞癌の合併が多く, 定期的な画像検査も受けるため, 腎細胞癌や多発肺囊胞の患者では, 本症例のような遺伝性疾患の可能性も疑い, 気胸の家族歴を聴取するなど初期での対応が重要である.
  • 櫻井 仁子, 遠藤 彰子, 清水 英樹, 高橋 孝幸, 宮澤 さやか, 村上 華奈子, 小林 昌史, 駒形 嘉紀, 要 伸也, 有村 義宏, ...
    2015 年 48 巻 9 号 p. 549-554
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/29
    ジャーナル フリー
    症例は61歳男性. 多発性囊胞腎による慢性腎不全のため7年前より維持血液透析を施行している. 2年前から顎下腺腫大を自覚していた. 8か月前より透析時の喘息発作と嘔気が出現し, ダイアライザー変更後も症状は持続した. 検査所見上, 好酸球増多 (8,000/μL), 高γグロブリン血症を認め, IgG4 1,540mg/dL (IgG 5,462mg/dL) であったためIgG4関連疾患の精査加療目的に当科入院となった. 顎下腺生検組織にて, IgG4陽性形質細胞を全形質細胞の50%以上に認め, IgG4関連疾患と診断した. その後, プレドニゾロン30mg/日で加療を開始し, 顎下腺腫大, 好酸球増多症, 透析中の喘息発作は劇的に改善した. 本症例では血液透析時の喘息発作がIgG4関連疾患を疑う契機となり診断に至った. IgG4関連疾患と透析時のアレルギー症状の関連について, その病因・病態の文献的考察と合わせて報告する.
Letter to Editor
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