日本透析医学会雑誌
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51 巻, 7 号
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原著
  • 山内 真哉, 内山 侑紀, 児玉 典彦, 道免 和久
    2018 年 51 巻 7 号 p. 435-440
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究の目的は, 慢性腎臓病 (chronic kidney disease: CKD) 入院患者において自立歩行に関連する評価項目を検討することである. 【方法】研究デザインは横断的研究とした. 対象は, CKD stage 4~5のCKD患者70例とした. 対象を歩行自立群と非自立群に分類し, 基礎情報や血液検査データ, 身体機能をもとにロジスティック回帰分析を行った. さらに, ROC曲線からカットオフ値を算出した. 【結果】分析の結果, 算出された評価項目とカットオフ値は, 膝伸展筋力体重比30.5%, 片脚立位保持時間2.7秒であった. 【結論】本研究の結果から, 膝伸展筋力, 片脚立位保持時間はCKD入院患者の自立歩行に関連しており, 自立歩行可否の判断にはこれら評価項目の必要性が示唆された.

  • 林 優里, 大城 義之, 依光 大祐
    2018 年 51 巻 7 号 p. 441-445
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
    ジャーナル フリー

    骨密度が低下した血液透析患者において, ビスホスフォネートの使用が骨代謝マーカーや骨密度に影響を及ぼすかについて検討した. 維持透析患者で骨粗鬆症の定義を満たした7例 (男性3例, 女性4例) に対し, 月1回透析終了後イバンドロネート1mgの静脈投与を行い検討した. これらの症例で6か月後, 12か月後のデータにて補正Ca値, P値, iPTH値に有意差は認められなかったが, 血清AlP値とTRACP5b値は231±45.7 (U/L) と623±308 (mU/dL) から, 166±67.9 (U/L) と345±199 (mU/dL) に12か月後に低下した. 大腿骨近位部骨密度は6か月後, 12か月後有意差を認めなかったが, 腰椎骨密度はT score −2.41±0.89から−2.00±1.08に, 12か月後に増加を認めた. この観察期間中にすべての症例にて脆弱性骨折は認められなかった. イバンドロネートの使用を契機に, 透析患者では骨代謝マーカーの改善および腰椎骨密度の増加が期待される.

症例報告
  • 櫻井 薫, 沼田 曉彦, 朝熊 英也, 亘理 裕昭
    2018 年 51 巻 7 号 p. 447-452
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
    ジャーナル フリー

    症例は77歳女性. 糖尿病性腎症による末期腎不全のため8年前から血液透析を継続中. 73歳時に左大腿骨頸部骨折の既往あり. 今回, 自宅で転倒し, 右大腿骨頸部骨折を発症した. 血液検査でPがやや低値であったが, CKD-MBDのガイドラインで推奨される管理目標値にほぼ近い値であり, 補正Caおよびintact PTHも目標範囲内にコントロールされていた. CKD-MBDは管理されていたが, 本症例では過去4年間に大腿骨近位部骨折を2回発症した. 尿毒症の状況下では骨の材質特性や生化学的特性が劣化することで弾性 (骨のしなやかさ) が障害される. このような骨変化を 「尿毒症性骨粗鬆症」 と呼び, CKD-MBDの骨病変とは関連しない疾患概念とされる. 本症例は高齢女性, 低骨密度, 既存骨折, 糖尿病といった大腿骨近位部骨折の危険因子を数多く有するが, その他の因子として尿毒症性骨粗鬆症の関与も可能性として考えられ, 末期腎不全患者における骨折の危険因子として認識する必要がある.

  • 須藤 ゆきな, 杉浦 章, 宮澤 恵実子, 上田 詩文
    2018 年 51 巻 7 号 p. 453-458
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
    ジャーナル フリー

    症例は48歳男性. 糖尿病性腎症にて透析開始直前のX月Y日に倒れ, 当院に搬送された. 来院時, 軽度の硬膜外出血, 腎機能増悪, 代謝性アシドーシス, JCS 2程度の意識障害を認めた. 頭部外傷を考慮し初日は降圧のみで経過観察し頭蓋内血腫は縮小したが, 意識レベルはJCS 3程度にやや増悪した. 尿毒症性脳症の関連を疑いY+1日に緩徐に血液透析を開始したが, Y+2日に意識レベルがJCS 100まで増悪したため, 持続血液透析濾過に移行した. Y+4日に頭部MRIを施行し, 脳梁に強い腫脹性変化を認めた. 外傷, 脳梗塞, 感染症を含めさまざまな疾患を鑑別し, 今回の意識障害は頭部外傷と全身状態悪化を背景とした不均衡症候群に類似した病態の可能性が考えられた. 経過を追うごとに脳梁病変は改善を認め, 意識レベルもJCS 0まで回復した. 軽症頭部外傷後に透析開始し, MRIでの特異な所見を呈した1例を経験したため報告する.

  • 寒川 顕治, 関川 孝司
    2018 年 51 巻 7 号 p. 459-462
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
    ジャーナル フリー

    血液透析患者はヘパリン起因性血小板減少症 (HIT) を発症し得る. HITを発症した透析患者がシャント不全となった場合, 治療にヘパリンが使用できない. 今回われわれは透析導入後にⅡ型HITと診断された維持透析患者の内シャント狭窄に対し, アルガトロバン使用下に計4回の内シャント経皮的血管形成術 (VAIVT) を行った. 周術期に血栓形成や出血等の合併症はなく管理は容易であった. ヘパリンを抗凝固薬として使用できないHIT患者のカテーテル治療に代替薬としてアルガトロバンが使用可能であった.

  • 桑形 尚吾, 大町 将司, 霍田 裕明, 澤井 和信, 今村 孔美, 大井 衣里, 多賀谷 允, 冨田 奈津子, 佐々木 裕二, 久米 真司 ...
    2018 年 51 巻 7 号 p. 463-467
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
    ジャーナル フリー

    症例は34歳, 男性. 悪性腎硬化症による末期腎不全のため腹膜透析用カテーテル留置術を施行, 腹膜透析 (peritoneal dialysis: PD) 導入となった. 術後6日目に発熱, 腹痛, 血液検査で炎症反応上昇, PD排液の混濁 (細胞数380/μL, 多核細胞優位) が出現した. 細菌性腹膜炎を疑い抗菌薬治療を開始したところ, 術後8日目には発熱と腹痛は消失したが, 炎症反応上昇とPD排液の混濁は持続した. 術後12日目に実施したPD排液の細胞診で, 著明な好酸球増多が認められた. PD排液の培養検査は陰性であったが, 細菌性腹膜炎と好酸球性腹膜炎の合併と診断した. 抗菌薬治療を14日間施行しPDは継続としたが, 炎症反応の改善に数日遅れてPD排液中の好酸球数も減少した. PD導入期に好酸球性腹膜炎が細菌性腹膜炎に合併し, 治療経過の評価と治療方針の選択に難渋した1例を経験したので, その対応の考察を含め報告する.

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