日本透析医学会雑誌
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55 巻, 11 号
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委員会報告
腎不全総合対策委員会報告
  • 中山 昌明, 宮澤 優介, 深川 雅史
    原稿種別: 委員会報告
    2022 年 55 巻 11 号 p. 613-625
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/28
    ジャーナル フリー

    【背景と目的】透析患者のQoL維持向上のためには,患者が重視するアウトカムを明確にする必要がある.本研究では,患者と医師を対象に,アンケート調査を行い,主要なアウトカムを確認するとともに,医師と患者間の乖離の有無について検討した.【対象と方法】外来通院中の慢性維持血液透析患者と日本透析医学会認定透析専門医(透析専門医)を対象とした郵送法による任意のアンケート調査を行った.調査内容は,回答者の特性,および透析関連キーワード(KW)45個(疾病・予防9個,透析関連18個,患者自覚症状12個,家庭・社会生活6個)に対する重要度の定量的・主観的評価である.さらに,各KWに対する対策について主観的意見を質問した.【結果】アンケート回収数(回答率)は医師184例(36.8%),患者898例(89.8%)だった.重要度“高”と回答された上位20個KWで医師と患者で共通していたのは14項目(すべて疾病・予防,透析関連),一方,患者に含まれ医師には含まれないのが6項目(患者自覚症状:慢性疲労感,透析後脱力,家庭・社会生活:旅行,家族や友人への影響,経済的な影響,就業・仕事への影響)だった.患者自覚症状における患者アウトカムとして,1位は透析後の脱力,次いで慢性疲労感だった.全KWにおいて医師と患者の重要度順位で最も乖離していたのは,1位が慢性の疲労感(患者10位・医師41位),次いで旅行(11位・42位),透析後の脱力(5位・34位)だった.透析後の脱力,慢性の疲労感への対策として“十分”と回答した割合は,医師でそれぞれ19.2%,12.1%,患者で44.4%,35.0%だった.【結論】重要な患者アウトカムとして,透析後の脱力・慢性の疲労感が確認されたが,医師の評価ではこれらの重要度は低かった.その一方で,対策は十分と回答した医師は少ないことから,これらは臨床イナーシャに該当すると考えられた.透析後の脱力・慢性の疲労感は,患者QoL向上のうえで集学的に取り組むべき重要課題である.

総説
  • ―沖縄透析研究50(Okinawa Dialysis Study:OKIDS50)―
    井関 邦敏, 比嘉 啓, 古波蔵 健太郎
    原稿種別: 総説
    2022 年 55 巻 11 号 p. 627-633
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/28
    ジャーナル フリー

    沖縄県では1971年6月に維持透析が開始され,2020年に50周年を迎えた.沖縄県人工透析研究会および沖縄県透析医会では2019年の総会にて50周年事業として沖縄透析研究50(Okinawa Dialysis Study:OKIDS)を提案・承認した.登録の対象は沖縄県内で末期腎不全により血液透析または腹膜透析に導入され,1か月以上生存した患者および腎移植患者である.急性腎不全,非居住者および外国人は除外した.登録患者数はOKIDS20(1971~1990年)が1,982例,OKIDS30(1971~2000年)が5,246例である.現在,OKIDS50(1971~2020年)を作成中であり,およそ13,500人前後になると予想される.沖縄県では74施設が稼働中である.本稿ではこれまでのOKIDS発表論文(主に死亡危険因子および透析導入予測因子)を中心にレビューし,今後の研究課題についても考察する.

原著
  • 水野 章子
    原稿種別: 原著
    2022 年 55 巻 11 号 p. 635-644
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/28
    ジャーナル フリー

    【目的】血清リン濃度(P)を6か月間継続観察し4.5mg/dLを超えた部分の1か月当たりの面積(AUC)および血清リン濃度(P)の6か月間の平均値(平均P),随時Pと,胸部単純X線写真による大動脈弓部石灰化指数(AoAC),心エコー検査による心機能との関係をみた.【対象】6か月以上観察できた血液透析(HD)患者109例.【方法】①AUCと平均P,随時Pとの相関をみた.②AoACの中央値で分け比較.③AUCまたは平均Pで3群に分け比較.【結果】①AUCは平均Pと強く相関.②AoAC高値群でAUC,平均Pが有意に高値であった.③AUC高値群,平均P高値群でAoAC,E/e´が有意に高値であった.【結語】AUCおよび平均Pが高いと,AoACが高く心拡張能が低下していた.変動が大きいHD患者のPの評価は,随時PではなくAUCが望ましいが,AUCと強く相関する平均Pでも遜色のない結果であった.

症例報告
  • 西沢 蓉子, 大野 秀樹, 木村 綾子, 平澤 慧里子, 登坂 真依, 細田 祐未, 山口 恵理香, 堀本 藍, 大前 清嗣, 土谷 健, ...
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 55 巻 11 号 p. 645-652
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/28
    ジャーナル フリー

    C型肝炎ウイルス(HCV)感染透析患者の抗ウイルス療法後の肝線維化の変化については不明点が多い.HCV RNA陽性血液透析患者5例にC型慢性肝炎の治療前後で肝臓MR elastography(MRE)による肝硬度と線維化マーカーMac-2結合蛋白糖鎖修飾異性体(M2BPGi)を測定し解析した.【症例1】48歳,男性.肝硬変(LC)あり.EBV+GZVで治療.【症例2】53歳,男性.EBV+GZVで治療.【症例3】60歳,男性.GLE/PIBで治療.【症例4】79歳,女性.DCV+ASVで治療.【症例5】78歳,女性.OBV/PTV/rで治療.全例で有害事象なくHCV RNAは陰性化した.治療前のMREによる肝硬度値はLCで5.6kPa,非LC2例で2.25,2.9kPaとLCで高値を示した.M2BPGi中央値は治療前,後でおのおのLC2.59,1.51C.O.I.,非LC1.88,1.31C.O.I.と治療後に低下した.

  • 村瀬 俊文, 森末 明子
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 55 巻 11 号 p. 653-657
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/28
    ジャーナル フリー

    繰り返す透析シャント閉塞と認知症のため,バスキュラーアクセスとしてカフ型カテーテルを用い維持透析を行っている77歳女性.先端形状が二股になっている(split-tip)カテーテルを使用していた.皮下トンネル部分でカテーテルが露出し,感染も伴っているため抜去の方針とした.心臓超音波検査やCT検査において右心房内のカテーテル先端部に血栓の付着を示唆する所見を認め,開胸手術によるカテーテル抜去の方針とした.人工心肺使用下で右心房内のカテーテルを血栓ごと摘出し,残りのカテーテルは経皮的に抜去した.術後の経過は良好であった.Split-tip透析用カテーテルを開胸手術で抜去した1例を経験したので報告する.稀な合併症ではあるが,複雑な形状のカフ型カテーテルを抜去する際には右心房内血栓に留意することが重要であり,その迅速な確認には心臓超音波検査などが有用であると考えた.

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