日本透析医学会雑誌
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55 巻, 9 号
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総説
  • 川西 秀樹
    原稿種別: 総説
    2022 年 55 巻 9 号 p. 509-514
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/28
    ジャーナル フリー

    血液浄化法の目的は尿毒症毒素を除去することであり,とくに中分子量(MM)が目標になっている.HDF に代表される浄化法が開発され透析低血圧防止・生命予後改善などが示されているがいまだ確定されていない.MM は糸球体を通過する溶質である分子量0.5~58 kDa の範囲として定義され,新たな分類として「small-middle 0.5~15 kDa」,「medium-middle >15~25 kDa」および「large-middle >25~58 kDa」が提唱された.日本ではlarge-middle 領域であるα1 ミクログロブリン(αMG)除去が目標とされてきたが,αMG の生理機能として抗酸化作用が注目され,新たな除去理論が構築されてきている.この機序の臨床的証明がなされれば血液浄化法の更なる発展が得られるであろう.

原著
  • 菊田 雅宏, 中村 淳史, 須田 健二
    原稿種別: 原著
    2022 年 55 巻 9 号 p. 515-523
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/28
    ジャーナル フリー

    血液透析中に気泡検知器で検知されずに体内へ送られている微小気泡の存在が報告されている.そこで,本研究では微小気泡の発生状況と血液透析用留置針内径,血液流量,脱血圧との関係について実験的な検討を行った.患者の血液循環を模擬した実験モデルを作製し,留置針内径17,18,19 ゲージにおいて血液流量200,250,300 mL/min とした場合と,脱血圧のみを変化させた場合の気泡数,気泡径,気泡体積を静脈側留置針の直後で計測した.計測された気泡の多くは100 μm 未満のマイクロバブルであり,気泡数は留置針が細い,血液流量が多い,脱血圧が低いほど増加した.とくに,設定血液流量と実血液流量の乖離率が-5%以上になる脱血不良の状態では急激に微小気泡が増加した.本研究から,留置針内径に対して過度な血液流量の設定をした場合や脱血不良が生じている場合には,微小気泡が患者の体内へ多量に流入していることが示された.

  • 古賀 俊充, 田中 義輝, 伊奈 研次, 南部 隆行, 玉城 裕史, 不破 大祐, 小島 木綿子, 佐々木 陽子, 柏原 輝子, 榊原 千穂 ...
    原稿種別: 原著
    2022 年 55 巻 9 号 p. 525-531
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/28
    ジャーナル フリー

    レムデシビルはCOVID-19 治療薬として本邦で最初に承認された抗ウイルス薬である.一般集団におけるレムデシビルの有用性については多くの報告があるが,透析患者に対するレムデシビルの安全性に関する情報は限られている.本研究では2022 年4 月までにCOVID-19 に罹患した透析患者58 例を対象にレムデシビルによる有害事象を後方視的に評価した.レムデシビル投与群43 例と非投与群15 例で有害事象の頻度に有意差を認めず,またレムデシビル3 日間投与群と非3 日間投与群においても有害事象の発生率と有効性に差はなかった.レムデシビル投与後,肝機能障害が3 例発現したが,1 例はグリチルリチン製剤を投与するのみで改善し,ほか2 例は自然に軽快した.以上よりCOVID-19 の治療として,レムデシビルの投与は,肝機能障害に注意すれば,血液透析患者に対しても安全で有用な治療法と考えられる.

  • 吉田 拓弥, 古久保 拓, 三宅 瑞穂, 和泉 智, 庄司 繁市, 山川 智之
    原稿種別: 原著
    2022 年 55 巻 9 号 p. 533-539
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/28
    ジャーナル フリー

    低酸素誘導因子―プロリン水酸化酵素阻害薬ロキサデュスタット(ROX)投与後に血清甲状腺刺激ホルモン(TSH)レベルが低下した血液透析(HD)患者の症例が報告されている.白鷺病院で維持HD を施行し,ROX を開始したHD 患者11 例(71±15 歳)を対象とし,血清TSH および遊離サイロキシン(FT4)レベル低下の頻度や程度について調査した.血清TSH レベルは,ROX 開始後11 例中9 例で低下し,3 例が基準値以下となった.血清FT4 レベルは,ROX 開始後11 例全例で基準値以下まで低下した.ROX 開始前後の血清TSH 変動と血清FT4 変動の間には強い正相関が認められた(ρ=0.838,p=0.001).影響が顕著だった1 例では,ROX 開始12 日後,血清TSH レベルは8.81 から1.04 μIU/mL,血清FT4 レベルは1.05 から0.38 ng/dL へ低下し,ROX 中止後に正常範囲まで改善した.ROX はHD 患者において高頻度で血清TSH レベルおよびFT4 レベルの低下を起こし,症例によってはその急速な発現や症状を伴う可能性に注意が必要であると思われた.

症例報告
  • 玉城 裕行, 江里口 雅裕, 山田 彩乃, 治村 章惠, 對馬 英雄, 鮫島 謙一, 鶴屋 和彦
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 55 巻 9 号 p. 541-545
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/28
    ジャーナル フリー

    症例は糖尿病性腎症を原疾患とした血液透析中の67歳男性で薬剤性の水疱性類天疱瘡に対してステロイド内服が2 年間継続されていた.右腕でスチール症候群を発症したため,左上腕動脈表在化術を施行した.術後16 日目に肘関節を屈曲した際に,動脈から拍動性出血を認めた.初回穿刺前にもかかわらず動脈損傷を認め,縫合修復した.しかし,その後3 日目に腕を屈曲させた際に再度の動脈性出血をおこし,出血点を確認したところ前回とは異なる箇所に1 cm 大の動脈壁欠損を認めた.止血のために行った用手圧迫による動脈損傷は激しく,損傷部位を人工血管で置換し,動脈は表在化せず深部に埋没した.その後,長期留置カテーテルを挿入し,透析を継続した.スチール症候群や心機能低下などにより自己血管使用皮下動静脈瘻が作製できない患者において動脈表在化は有用な方法だが,脆弱な皮膚組織や高度な動脈石灰化を認める場合にはその適応を慎重に考える必要がある.

短報
  • 三宮 彰仁, 春口 和樹, 近藤 晃, 蜂須賀 健, 川瀬 友則, 小山 一郎, 中島 一朗
    原稿種別: 短報
    2022 年 55 巻 9 号 p. 547-550
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/28
    ジャーナル フリー

    過剰血流シャントに対する血流抑制手術として,グラフトcovering 法(graft covering technique:GCT)を3 例に行った.内シャント閉鎖術,瘤化したシャント静脈の剥離,短切した人工血管グラフト(グラフト)の中に瘤化したシャント静脈を挿入(covering),その状態で内シャント再建術,covering したグラフトの端を吻合部に数か所縫合して固定.この手順で行うのが本術式である.5 mm径のグラフトを切って1.5 cm長にしたものをcoveringグラフトとして使用した.3 例とも術後早期から良好な血流抑制が認められた.この手術法の利点は,確実な血流抑制,術中の血流モニター不要,ターニケットを用いた駆血操作不要,血管内操作やグラフト吻合不要,グラフトcovering によりシャント瘤が見た目上消失するため整容性に優れることなどである.欠点は,シャント閉鎖,瘤の剥離,シャント再建,と手術操作が増えるため,若干の時間を要することである.しかし確実な血流抑制が可能であり,良好な長期予後が期待される.

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