日本透析医学会雑誌
Online ISSN : 1883-082X
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56 巻, 2 号
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原著
  • 吉原 真由美, 金子 尚史
    原稿種別: 原著
    2023 年 56 巻 2 号 p. 43-49
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/28
    ジャーナル フリー

    【目的】後期高齢者において透析モダリティの違いによってADLや生命予後,認知機能に差が生じるのかを明らかにすること.【方法】新規にHDあるいはPD導入となった75歳以上の患者を前向きに登録し,バーセルインデックス・KPSを3か月毎,HDS-Rを6か月毎に2年間測定した.【成績】2年間の組み込み期間でPD群18名,HD群40名が組入れとなった.平均年齢はPD群が有意に高齢であった.バーセルインデックス,KPSの組み込み時の値からの変化量はHD群で有意に高値となりPD群との間に有意差を認めた.HDS-Rは両群とも有意な変動は認めなかった.死亡と研究継続困難と判断されるADL・認知機能の低下で定義した観察中止までの期間は両群で有意差は認めなかった.【結論】HD群は透析開始後有意にADLが改善した.PD群はより高齢であるも,HD群と比べ認知機能の低下や観察中止までの期間に差を認めなかった.

  • 酒井 敬史, 吉川 憲子, 井上 暖, 内田 貴大, 小島 糾, 冨安 朋宏, 山田 宗治, 尾田 高志
    原稿種別: 原著
    2023 年 56 巻 2 号 p. 51-56
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/28
    ジャーナル フリー

    血液透析患者の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対して中和抗体の重症化抑制効果が期待されている.2021年8~9月に当院に入院したCOVID-19血液透析患者のうち,適用基準を満たしカシリビマブ/イムデビマブ(REGEN-COV)を投与した8症例を紹介する.投与例の平均年齢は72.8歳,男性5人,ワクチンの接種歴は2回4人,1回3人であった.COVID-19発症から平均3.8日目にREGEN-COVを投与した.REGEN-COV投与前に肺炎像を4人に認めた.慢性腎臓病以外の重症化リスク因子を7つ認めた症例のうち1人はREGEN-COV投与前に肺炎像を認めなかったが,投与後に新規に酸素需要と肺炎像を認め,13日目に死亡した.REGEN-COV投与後は良好な経過を辿った症例が多かったが,重症肺炎発症例も認めた.血液透析患者においてREGEN-COVは,重症化リスク因子数が多い場合に重症化を予防できない可能性がある.またオミクロン株には有効性が減弱する報告もあり,REGEN-COVの使用には重症化リスク因子数やウイルス株への配慮が必要である.

症例報告
  • 谷口 宗輔, 山本 直, 足立 憲, 三宅 孝典
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 56 巻 2 号 p. 57-62
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/28
    ジャーナル フリー

    症例は63歳女性.肝硬変や慢性腎不全で当院に通院中であった.貧血と血小板減少を認め,3年前に他院血液内科で精査され,肝硬変に伴う脾機能亢進症と診断された.2年前に血液透析導入となり,貧血に対し赤血球造血刺激因子製剤を投与されたが,効果は不十分であった.頻回の赤血球輸血によっても貧血の是正が困難となったため,当科入院のうえ部分的脾動脈塞栓術(partial splenic embolization:PSE)を施行した.2か月後に脾膿瘍を発症したがドレナージと抗菌薬の投与で軽快し,以後の輸血は不要となった.維持血液透析患者に合併した脾機能亢進症に対しPSEを施行した既報は少なく,その有用性を示唆する症例と考えられ報告する.

  • 木村 祐太, 宮岡 良卓, 辻川 祐香, 永井 麻梨恵, 荒井 誠大, 家村 文香, 知名 理絵子, 長井 美穂, 長岡 由女, 平井 秀明 ...
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 56 巻 2 号 p. 63-68
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/28
    ジャーナル フリー

    症例は67歳男性.X-3年より慢性腎臓病にて当科へ通院中であった.X年3月より持続する下痢,貧血の進行を認めたため,入院精査するも原因は不明であった.同年に高K血症,代謝性アシドーシスのため,緊急血液透析導入となった.頻回の輸血や赤血球造血刺激因子(erythropoiesis-stimulating agent:ESA)製剤を増量するも改善に乏しく,難治性下痢,炎症反応高値は持続した.骨髄生検を施行し,末梢性T細胞リンパ腫の診断となったが,経過観察の方針となり輸血,ESA製剤による治療を継続した.下痢の精査目的で施行した下部消化管内視鏡検査で膠原線維性大腸炎(collagenous colitis:CC)と診断し,被疑薬のプロトンポンプインヒビター(PPI)を中止したところ,症状の改善を認めた.本症例では,経過からCCによる慢性炎症が貧血の主な原因と考えられた.血液透析患者では腎機能障害の観点からH2ブロッカーの減量が必要であり,PPIの使用頻度が高くなるため,難治性下痢症の鑑別としてCCの認識が必要である.

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