日本透析医学会雑誌
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最新号
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原著
  • ―インターネットを介したアンケート調査報告―
    高橋 直子, 吉澤 拓
    原稿種別: 原著
    2024 年 57 巻 3 号 p. 111-122
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

    血液透析患者における皮膚瘙痒症は,多くの患者に認められる重大な合併症である.瘙痒症の原因は,複数の因子が複合的に関与し治療抵抗性であることが多く,原因別かつ包括的な治療を積極的に行ってかゆみを抑制することが必要となる.透析皮膚瘙痒症の実態については,いわゆるかくれたかゆみ患者も存在し,不明な部分が多い.今回,われわれはインターネットを介して集めた血液透析患者485名を対象に,かゆみの有無や程度,QOLに与える影響などについて実態を調査した.結果は,378名がかゆみを経験しており,そのうち20%を超える患者が中等度以上のかゆみを経験していた.中等度以上のかゆみを経験している患者の多くは,QOLへの悪影響を感じており,26.9%が未治療であった.かくれたかゆみ患者は21.7%存在していた.透析皮膚瘙痒症は,依然として多くの患者を悩ませており,医療従事者は適切な対処をすることが求められる.

  • ―後方視的コホート研究―
    水野 章子, 後藤 淳郎, 早川 宏, 國沢 恭平, 木村 里緒, 幸地 優子, 泉 朋子
    原稿種別: 原著
    2024 年 57 巻 3 号 p. 123-128
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

    【目的】血液透析(HD)患者の総体内鉄量(TBI),ヘモグロビン(Hb)鉄量,貯蔵鉄量と死亡または1か月以上の長期入院による外来HD(oHD)離脱率との関連を調べた.【対象】HD患者568名(男性395名,女性173名).【方法】性別で分け調査開始時の推定体内鉄量を調べ,oHD離脱率を評価項目とし後方視的にKaplan-Meier法とLog-rank検定,Cox比例ハザード比(HR)分析を用いて3年間解析した.【結果】女性ではTBI低値群(Log-rank p=0.038, HR 2.119;95%CI 0.984-4.563)で,また貯蔵鉄高値/Hb鉄低値群(Log-rank p=0.021, HR 4.853;95%CI 1.371-17.174)でoHD離脱率が有意に高かった.【結論】女性のHD患者では,TBIが低い場合また貯蔵鉄量が高くHb鉄量が低く機能的鉄欠乏がある場合,有意にoHD離脱率が高かった.

症例報告
  • 荒木 崇志, 中村 共生, 神戸 香織, 重原 理宏, 黄田 宗明, 森永 正二郎, 三上 修治, 鴇沢 一徳
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 57 巻 3 号 p. 129-133
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

    症例は79歳男性.原疾患不明の慢性腎不全のため腹膜透析を導入後,腹膜の除水能低下のために血液透析,腹膜透析の併用療法を行っている.定期的な腹部CT検査により虫垂の囊胞性腫瘤性病変が発見された.虫垂粘液産生腫瘍が疑われたが,破裂により腹膜偽粘液腫をきたす可能性があるために手術適応とされている.腹膜透析の継続を考慮し,腹腔鏡下での切除術を選択.術後,腹膜機能の低下なく,腹膜透析,血液透析の併用療法を継続できた1例を経験したので報告する.

  • 清水 瞭, 近松 大輝, 今井 健太郎, 後藤 千慶, 塚本 ちさと, 小島 博
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 57 巻 3 号 p. 135-140
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

    メトホルミンは2型糖尿病の治療薬として広く使用されている.極めて稀ではあるが,メトホルミンの重篤な副作用として乳酸アシドーシスがあり,致死率が高く迅速な加療を要する.今回,腎機能正常の59歳女性がCampylobacter jejuni 腸炎を契機に発症したメトホルミン関連乳酸アシドーシスに対して,長時間の血液透析を行い救命できた1例につき報告する.一般的に血圧が保持できれば,そのクリアランスの高さから血液透析が持続的血液濾過透析より推奨されるため,本症例では長時間の血液透析を施行した.一方で長時間の血液透析の施行により,ビタミンなどの除去が懸念される.そのためチアミンを適宜補充し,透析性が低い抗生剤を併用した.患者は過去に抗てんかん薬を怠薬し,てんかんを再燃した既往から徹底した内服の順守を心がけており,シックデイでも内服を継続していた.メトホルミンの処方を開始する際は,重篤な合併症を防ぐために適切な服薬指導を行うことが肝要である.

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