重篤で不可逆性の腎不全における慢性透析療法に対応して, 腎移植の意義とその概要を述べる. 腎移植例ではことに生体腎移植を中心に, その利害得失を慢性透析療法と比較し, ドナーの選択, シンピエントの適応と前準備, 組織適合性について簡単に解説する. 移植手術手技とともにもっとも重要なのは抗免疫療法であるが, この抗免疫療法の如何によっては術後経過に大きな影響を及ぼし, 致命的な合併症の誘発されることが少なくない. 感染症, 消化管出血, 肝障害などについて発生率の高いことが知られているが, 数年来, 移植患者における発癌率の高いことも注目されている. しかし現在までのところ, 本邦における腎移植患者の発癌率はきわめて低いことを強調した.
腎移植ことに生体腎移植の成績については, 1970年以前の症例がきわめて不良であったのに比, 1971年以降は欧米に比して優るとも劣らない成績が出されている. 慢性透析症例との生存率を比較しても, 本邦ではむしろ腎移植例の方が優位を示している. なお, 生体腎移植ではドナーの予後も重要な問題で, その安全性についても一言する.
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