人工透析研究会会誌
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17 巻, 3 号
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  • 糖尿病性腎症における透析療法の影響
    野村 佳成, 南條 輝志男, 宮野 元成, 坂本 健一, 岡井 一彦, 曽和 亮一, 栗山 茂司, 菊岡 弘芳, 里神 永一, 木村 茂, ...
    1984 年17 巻3 号 p. 153-158
    発行日: 1984/06/30
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    我々は糖尿病性細小血管障害の末期状態である糖尿病性腎不全症例においてHbA1値を測定し, Macro column法やチオバルビツール酸法による検索を加えることにより腎不全状態ならびに透析療法がHbA1に及ぼす影響について検討を行った. 対象は, I群, 慢性透析患者 (糖尿病性) 31名, II群, 糖尿病性腎不全患者 (非透析) 10名, III群, 腎障害のない糖尿病患者46名, IV群, 慢性透析患者 (非糖尿病性) 22名, V群, 正常者17名で, I, IV群では透析開始前 (すなわち朝食後2時間) と透析終了時に, II, III, V群では朝食後2時間に採血した.
    その結果, 以下のことが判明した. 1) 透析群 (I, IV群) の方が非透析群 (III, V群) に比し血糖値が同程度であるにもかかわらずHbA1は低値で, その傾向は糖尿病群でより一層著明であった. 2) 腎不全状態はHbA1値を低下させ, 長期透析患者のHbA1値はさらに低値であった. 3) 1回の透析過程はHbA1値やHbの溶出像に影響を及ぼさなかった. 4) HbA1c/HbA1a+b+cの比率は同程度のHbA1a+b+c値を示す非透析患者 (III, V群) に比し透析患者 (I, IV群) で低値を示した. 5) 糖尿病群においてHbA1 高値域 (すなわち血糖高値域) では透析群 (I群) の方が非透析群 (III群) に比し, そのglycosylationの度合が過大評価されている.
  • 石川 勲, 立石 圭太, 杉下 尚康, 福田 善裕, 尾内 善五郎, 斉藤 靖人, 小西 二三男, 谷 吉雄, 栗原 怜, 北田 博久, 由 ...
    1984 年17 巻3 号 p. 159-163
    発行日: 1984/06/30
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    血液透析患者に病腎のCTスキャンを施行する機会がふえるにつれ, 大動脈の石灰沈着が目につくようになった. 我々は透析患者にみられる大動脈の石灰沈着の頻度・部位を正常者と比べ, さらに腎内石灰沈着との関係を検討してみた. 我々の施設の透析患者144例および対照者226例について, CTスキャンを施行し臍の4cm上から上方8-10cmの範囲内での大動脈石灰沈着を定量的に評価した. すなわちスライス上の大動脈を12分割し, 石灰沈着の広がりを1分割1点として算出した. その総点数をスライスの枚数で除し, 10倍したものをAortic Calcification Index (ACI) とした. その結果, ACIは年齢とともに増加するが, 透析患者では正常者に比べ約20歳早く石灰沈着が出現・進行していた. しかし血液透析期間との間には関係が認められなかった. 石灰沈着の出現部位は対照と同一であるが透析患者では程度が強く, 全周性となる傾向を示した. ACIは血液透析開始5.6ヵ月前0.83, 透析1年目2.50, 2年目5.98であった. また20-40代の60例を約3年間にわたって経過を追ってみたが, ACIには有意な増加を認めなかった. 腎内石灰沈着は年齢よりも血液透析期間とともに増加した. 透析患者の動脈硬化をみる目的で, 腎移植受腎者20例の腸骨動脈の組織検査を行ったところ, 内膜に3例, 中膜に1例, 両方に1例石灰沈着が認められ, アテロームが4例にみられた. 以上より大動脈石灰沈着には粥状硬化の要素が加味されていると考えられる. 血液透析患者にみられる大動脈の石灰沈着の発生は, その出現程度が血液透析患者に強く, 血液透析期間の長さによらないなどの点から, 血液透析前ないし導入直後に主として起こる可能性がある. しかし同一例におけるfollow upが十分でなく結論は出せなかった. 本研究より, 血液透析患者は正常者に比べ20数年早く大動脈の加齢現象が出現するといえる.
  • II. 抗生物質投与の影響について
    木嶋 祥麿, 小沢 潔, 仲山 勲, 東海林 隆男, 笹岡 拓雄
    1984 年17 巻3 号 p. 165-171
    発行日: 1984/06/30
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    透析を受けている患者では経過中にいろいろな合併症が併発するが, 感染症は頻度も高くしばしば感染巣が不明で, 敗血症にいたる例も多い. そのため抗生物質の投与も必要となり, ときに長期にわたることもあるので, 副作用には十分な注意が必要である.
    末期腎不全患者の出血性素因はよく知られている. また抗生物質の半減期が延長するためいろいろな副作用も出やすく, その1つとしての出血症状は最近とくに注意が喚起されているところである.
    われわれは急性および慢性腎不全の患者10例において, 低プロトロンビン血症を伴う出血症状や顕著な血液凝固異常を経験したが, それがビタミンK剤の静注により改善したことから, ビタミンK欠乏症と診断した. 患者は高齢者が多く, 全例とも食事摂取量は極端に減少しており, かつ術後感染予防 (3例), 感染症 (5例), 不明熱 (2例) のため抗生物質が投与されていた.
    抗生剤の単剤使用例は7例, うち6例がセフェム系, 1例がペニシリン系であった. 他の3例はセフェム系, アミノ配糖体系, テトラサイクリン系が同時に併用投与されていた. 出血症状の発症までの期間は4-10日という比較的短い例もあった.
    低プロトロンビン血症の原因としてmethylthiotetrazole側鎖をもつ抗生剤が注目されているが, われわれの例ではこの側鎖をもつCMZ, LMOXが3例 (いずれも1剤投与) に使用されていた. しかし7例にはこれを持たない抗生物質が投与されていた. したがって抗生剤の種類だけでなく, 食事量減少などの背景的因子とともに腎不全に伴う代謝障害がきわめて重要と考えられる. ビタミンK欠乏性出血症と播種性血管内凝固症候群はいずれも重症疾患に併発するため, 十分な鑑別と早期の治療が必須である.
  • 石黒 源之, 澤田 重樹, 阿部 親司, 古田 昭春, 安江 隆夫, 渡辺 佐知郎, 沢田 正文, 山本 隆造, 稲川 寿夫
    1984 年17 巻3 号 p. 173-180
    発行日: 1984/06/30
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    ヘパリンを抗凝固剤として使用する透析方法は, 術後・消化管出血症例などではその出血傾向を助長する危険がある. 最近, ヘパリンを極力減少し, 透析回路のみ凝固時間を延長させる方法としてGMを用いた透析方法が試みられている. 今回, 我々は少量のヘパリン (300u/hr) とGM (1,200mg/hr) を併用して, 腎不全患者5例に血液透析を施行し, 透析液中・血中・尿中のGMおよびその代謝物を経時的に測定した. GMおよびBenzoate代謝物は紫外部吸収を有するので, これらの測定には紫外分光光度計を装着したHPLCを, また代謝物GCAはHPLCで分離後グアニジノ基を選択的かつ特異的に検出する試薬を用いてアルカリ条件下で反応させ, 生成する螢光物質を螢光光度計で測定した.
    GM投与下での血漿中代謝物濃度は, 約30-33n mole/ml/hrで増加し, 透析液中にはGCAが累積投与量の約30%, 遊離型benzoate代謝物 (EPHB+PHB) は同約18%が除去された. 透析終了後1時間, 24時間, 48時間と減少し続け, 72時間ではGCAは27.9n mole/ml (最小測定値) 以下, 総benzoate代謝物 (EPHB+PHB+glucuronized forms) は12.2n mole/mlであった. 今回の結果から, 透析終了後72時間のGMの体外未排泄量は, GCAが累積投与量の5.0%以下, 総benzoate代謝物が同2.2%であり, GMの代謝物は透析間隔期においてnonrenalに体外排泄され続けるものと思われる.
  • 太田 道男, 山海 嘉之, 山内 真, 鎌田 忠夫, 熊谷 頼篤, 熊谷 頼明, 小路 良, 池辺 潤
    1984 年17 巻3 号 p. 181-185
    発行日: 1984/06/30
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    HF用に開発されたダイアライザーのようなHi-Flux形のダイアライザーを用いて透析を行えばより高分子の物質の除去が期待できる. しかし, これらのダイアライザーは水の透過性が良く, 所定の除水量を得るためには, 従来の透析に比して膜間圧 (TMP) を低く保つ必要がある.
    そのために限外濾過圧制御装置 (オートクランプ) を開発し, TMPを一定値に保ち所期の除水速度を自動的に保持することを試みた. この装置ではダイアライザー膜にかかる血液側と透析液側の差圧を測定し, この差圧を外部で設定した値に保つように, 血液回路に設けられたチューブ絞り機構を自動的に調節する. 東レB1シリーズのダイアライザーを使用することを想定して, 400500ml/hr程度の除水速度を設定するために, TMPが40-80mmHgの間を5mmHgごとに設定可能とした. 圧調整の精度は±3%, 測定系の精度を保持するために, 1台の差圧変換器のみを使用している. クランプ部は, チューブをベアリング機構を介して, 滑らかな曲面で締めつけ, チューブに余分な歪が加わらないようにし, またクランプの急激な開閉は避け, 回路中の血流量の急激な変化を避けている. In vitroの限外濾過量調節を東レ, B1-100, 200, Lで行った. Hi-Fluxのため, アセテートイントレランスを回避するため, ラクテート透析液を使用し, 模擬血液としてサビオゾールを用いた. 実験結果からは, 500ml/hrのUFRを得るためのTMPは, 45mmHg (B1-L), 65mmHg (B1-200), 80mmHg (B1-100) 等であり, 本方法が十分実現可能であることが確認された.
  • 竹沢 真吾, 神品 順二, 酒井 清孝
    1984 年17 巻3 号 p. 187-191
    発行日: 1984/06/30
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    現在, 血液透析治療は, 質, 量ともに向上しつつあるが, すべての患者に対して最適の治療が施されているとは言いがたいと思われる. WADIC (Waseda automatic dialysis controller) は, 個々の患者に見合った至適透析を行うことを目的として考案された. 本システムは, 尿素窒素, クレアチニンおよびMMの透析液廃液中濃度を連続測定する. 尿素窒素は, 固定化ウレアーゼとアンモニア電極により, クレアチニンはJaffé比色法そしてMMは高速液クロマトグラフィにより分析している. さらに透析液廃液濃度を透析時間にて積分することで, 総除去量を求めた. また, 尿素窒素, クレアチニンについては, ダイアライザー内で物質収支をとり人体に1プールモデルを適用することにより, 血中濃度を推算した. そして簡便で安価に除水を行うために, 膜間圧力差による除水コントロールを考案した.
    透析中の血中溶質濃度変化から透析時間の設定が可能である. これは, 高性能なダイアライザーを用いたときの短時間透析の指標となる. さらに, 各治療ごとに血中溶質濃度, 溶質総除去量および体重などがコンピューターに蓄積されるため, 治療計画に必要不可欠な長期的な面から見た治療効果がわかる.
    今後は, 血圧モニターを付加し, 低血圧時の血液流量コントロール, 補液注入などが自動化され, 医療スタッフの労力が軽減するであろう. このようにWADICは, これまで画一的になりがちであった血液透析治療を改善し, 各患者に見合った至適透析を展開する上で重大な役割を果たすと思われる.
  • 平山 克己, 辻 英昭, 村上 真一, 山崎 俊生, 中島 健一, 雨宮 時夫, 野本 晴夫, 稲田 俊雄
    1984 年17 巻3 号 p. 193-197
    発行日: 1984/06/30
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    目的: 重曹透析は酸塩基平衡の改善が確実で, 無症状透析が可能であるといわれているが, 同一の透析液HCO3-濃度 (以下 〔HCO3-〕 D) で行った場合, 過剰なアルカリ化のためと思われる頭痛を訴えたり, あるいは酸塩基平衡の改善に相当な個人差がでるのを経験している. そこで今回我々は, 〔HCO3-〕 Dの測定法を検討した上で, 重曹透析において各症例に適した 〔HCO3-〕 Dについて血液ガスおよび臨床症状の面より検討した.
    対象・方法: 透析困難症やacetate不耐症と思われる11症例に対し, 個人用透析装置にbicarbonate-infucerを組合せて用いた. 透析液はAK-Solita Cである. 〔HCO3-〕 Dを23, 26, 29mEq/lの3種類に調整した. まず標準濃度を26mEq/lで行い, 血液ガスの改善が過剰で頭痛を訴えた1症例は23mEq/lに下げ, また改善が不十分な1症例は29mEq/lに上げた.
    結果・考察: 11症例中9症例は 〔HCO3-〕 D 26mEq/lで臨床症状と血液ガスはともに十分な改善が認められた. しかし, 1症例は 〔HCO3-〕 D 26mEq/lでは透析後pH 7.52, HCO3- 25mEq/lとアルカリ化への傾斜が高く, 透析中に頭痛を訴えた. そこで 〔HCO3-〕 D 23mEq/lに下げたところpH 7.35±0.022→7.43±0.023, HCO3- 20.28±1.16→22.6±0.49mEq/lと過剰傾向が是正され頭痛は軽減した. 一方, 26mEq/lではpH 7.27±0.018→7.39±0.014, HCO3- 16.0±1.67→20.6±0.80mEq/lと改善が不十分な1症例は 〔HCO3-〕 D 29mEq/lに上げたところ, pH 7.29±0.017→7.44±0.015, HCO3- 18.9±1.55→25.0±1.06mEq/lと好結果が得られた. なお, 〔HCO3-〕 Dの測定法に関してはpHとPco2より脳脊髄液のPK´・Sを用いてHenderson-Hasselbalchの式より求めたHCO3-値と, total CO2より求めたHCO3-値とは良好な相関 (r=0.961) が得られた. 以上の結果より, 重曹透析を行う場合, 個々の症例に合った 〔HCO3-〕 D濃度の処方が必要であると思われた.
  • 山本 忠司, 清水 元一, 堀内 延昭, 平田 純生, 西谷 博, 水谷 洋子, 山川 真, 岸本 武利, 前川 正信
    1984 年17 巻3 号 p. 199-203
    発行日: 1984/06/30
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    低温度透析液による血液透析が, 心循環系の安定性に関して優れていることは, すでに報告されている. 我々はこの透析液温度の心循環系に及ぼす影響をみるために, 常温透析との比較を試みた. 方法は慢性血液透析患者9例に対し, 34℃の低温透析と37℃の常温透析の交叉試験によった. また透析開始後および後半の透析そのものによる種々の影響を除き, 透析液温度のみの効果をみるために, 透析開始後20分間は常温透析によるcontrol期間, 以後60分間を常温透析または低温透析の比較期間とした.
    測定は心拍出量, 心拍数, 平均血圧, 総末梢抵抗, 血中ノルエピネフリン測定を10分毎に行った. また環境温度, 特に室温が体外循環血液温度に及ぼす影響をみるために, 牛血を用い室温14℃と25℃の場合の体外循環温度を測定した.
    結果, 心拍数は両透析で上昇するが, 常温透析でより高値であった. 心拍出量は常温透析で変化なく, 低温透析で有意に低下した. 平均血圧は低温透析で変化はなく, 常温透析で低下した. 総末梢抵抗は常温透析では変化なく, 低温透析で有意に上昇した. 血中ノルエピネフリンは両透析で上昇したが、 両透析の間で有意差はなかった. 環境温度の影響では室温14℃では、 透析液温が34℃, 37℃の場合でも, 透析器血液流入部と流出部の温度差は-4--5℃であったが, 室温25℃の場合では, 透析液温が37℃のとき, +0.4℃と上昇した.
    以上のことより, 低温透析による心循環系の安定性はTPRの上昇によるものであり, その作用機序は少なくとも透析前半ではカテコールアミンには関係のないことが判明した. また低温透析を施行する場合には, 透析液温だけでなく, 他の環境温度にも注意しなければならないことがわかった. 結論として, 低温透析は, 常温透析に比べ, 心循環系の安定性を増し, 無症候透析という面から, 有用性があると考えられる.
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