63歳の, 僧帽弁膜症既往をもつ男性が, 慢性腎不全のため, 血液透析に導入された. その後, 原因不明の白血球ならびに血小板増多をきたすようになり, ダイアライザーの残血も多くなった. 血液検査では, 赤血球315万/mm
3, ヘモグロビン9.4g/d
l, ヘマトクリット29.4%, 網状赤血球82%, 白血球19,900 (分葉核球83%, 桿状核球4%, 好塩基球0%, 好酸球0%, リンパ球4%, 単核球9%) であり, 血小板は最高144万/mm
3まで増加した. 血清鉄, ビタミンB
12は正常値であった. 血小板凝集能は, 自己血清で血小板数を正常化したものについて, コラーゲン10μg添加時, 正常対照は最高凝集が7.7分にて90%に対し, 患者は最高凝集7.9分にて87%と差がなかった. 好中球アルカリフォスファターゼ染色では, NAPスコア170 (対照168) と正常であり, フィラデルフィア染色体も陰性てあった. 骨髄生検で一部の線維化を伴った巨核球の増加が認められた. 以上の結果より, 原発性血小板血症と診断された.
さて, 患者は当初B, LによるHFを行っていたが, 心不全が落ちついたため, AM10によるHDに切り換えたところ, 強い掻痒感を訴えるとともに白血球の増加傾向を示した. そこで, 各種ダイアライザーを使用した時の, 透析中の白血球数を調べてみた. その結果, B
2150を使用した時, 透析前白血球10,300/mm
3が, 4時間目13,200/mm
3と若干増加しただけであったが, AM10を使用した時は, 透析前白血球11,200/mm
3が5時間目24,900/mm
3まで著増した. KF101でも, 透析前白血球10,800/mm
3が, 3時間目18,400/mm
3まで増えた. 高圧蒸気滅菌のAM 1,000Mでも透析前25,000/mm
3が3時間目37,800/mm
3, KF 201でも透析前27,400/mm
3が3時間目45,600/mm
3まで増えた. これらはすべて, 好中球の増加であった.
透析中に好中球が増加し, またダイアライザーによって差のあったことの原因は不明であるが, 極めて稀な現象であると考え, ここに報告する.
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