日本透析療法学会雑誌
Online ISSN : 1884-6211
Print ISSN : 0911-5889
ISSN-L : 0911-5889
18 巻, 5 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
  • 柴垣 昌功, 前田 貞亮, 島田 幸彦, 川崎 忠行, 松下 肇顕, 石橋 潤, 岡島 重孝
    1985 年 18 巻 5 号 p. 455-461
    発行日: 1985/10/31
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    1回3-4時間, 週3回の夜間短時間透析を続け, 5年以上経過した16症例の現況について臨床的検討を行った. 患者はすべて男性. 平均年齢44.4歳, 短時間透析の期間は平均7年. 透析には有効膜面積1.5-2.1m2の血液透析用ホローファイバー型ダイアライザーを用いた.
    血液生化学検査では, KおよびCaはほぼ正常範囲に維持され, Urea-N, iPも一部で高値がみられたが, その平均値はそれぞれ89.7mg/dl, 5.3mg/dlで, 通常の透析と比べて大差はなかった. ただ, 血清クレアチニンは平均18.0mg/dlで, 通常透析例に比べて明らかに高値を示した. しかし, それによって尿毒症状の悪化をみることはなく, 患者の活動力, 食欲など一般状態は良好であった.
    血清Al-P値は平均13.0KA単位でやや高く, c-PTHも平均7.8ng/mlでかなりの高値を認めたが, X線上の骨変化は軽微で, 異所性石灰化像を認めなかった.
    末梢神経伝導速度は, 大半の例で低下がみられたが, 自覚的な筋力の低下, 知覚異常は認めていない. ただ, 短時間透析導入初期よりの経過をみた数例で, 伝導速度の低下はさらに進行しており, 今後の追跡が肝要である.
    血圧のコントロールは容易であったが, 心電図では5例にST・T変化がみられた. 急速除水による低血圧症状は6例で比較的頻繁にみられたが, 重炭酸型透析液の適用, 透析液Na濃度のかさ上げ, あるいは高張食塩水の血管内持続注入などにより克服しえた.
    短時間透析の適用により, 非常勤会社役員の2例を除いて, 他はすべてフルタイムの仕事に従事し, 完全な社会復帰を果している.
    以上, 検査成績上, 2, 3の問題は残るが, 患者の一般状態は良好で適応症例を選び経過を十分に観察, 指導していけば, 1回3-4時間, 週3回の短時間透析でも, 日常活動に困難な問題をみることなく, 長期にわたる社会復帰が可能である.
  • 高末 真知子, 大島 富士江, 山本 享子, 岡田 洋一, 山田 和彦, 牛山 喜久
    1985 年 18 巻 5 号 p. 463-467
    発行日: 1985/10/31
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    透析患者における透析中の適正除水を目的として, 回帰推定による個人別除水管理法の実用性を検討した. あらかじめ15-30回の透析において, 圧 (陰圧, 静脈圧) およびそれらの圧が持続していた時間から算定した総仕事量と, 減少体重との回帰直線 (除水グラフ) を個人別に決定した. そこでこの個人別の除水グラフを実務の透析時の圧指導に導入し透析を行った結果, 導入前に比べ明らかに除水の適正化がみられ, 本法による水管理の有用性が確認された.
  • 橋本 寛文, 山本 明, 川西 泰夫, 湯浅 誠, 今川 章夫, 寺尾 尚民, 竹中 章
    1985 年 18 巻 5 号 p. 469-472
    発行日: 1985/10/31
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    血液透析患者236例の尿路感染症の発生頻度およびその特徴について検討した.
    1年間に自覚症状を伴う尿路感染症は42例17.8%に認められ, 他の臓器感染症とほぼ同等であり, 自覚症状を伴わず膿尿のみを認める症例を加えると76例32.2%にものぼった.
    血液透析患者は尿路感染症発症のためのいくつかの負の要素をもっているが, その発症には, 原疾患, 治療, 検査などが惹起要因として関与することも多く, 例えば, 糖尿病性腎症では, 糖尿病による神経因性膀胱, 嚢胞腎では, 嚢胞自体による上部尿路閉塞や嚢胞感染, 他にカテーテル操作, ステロイド投与などが惹起要因となる. これらの惹起要因をもつ患者では, 尿路感染症の発症が全身状態の悪化へのひきがねになることもあり, 十分な監視による早期診断, 早期治療が必要である.
  • DHT, testosterone, androstenedione, Zn動態
    長谷川 弘一, 小田 初夫, 森口 英世, 岡本 輝夫, 聴濤 貴一郎, 松下 義樹, 井上 隆, 西沢 良記, 森井 浩世
    1985 年 18 巻 5 号 p. 473-478
    発行日: 1985/10/31
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    血液透析中の男性慢性腎不全患者25例について血中5α-dihydrotestosterone (以下DHTと略す), testosterone (T), androstenedione (A) をradioimmunoassay, Znを原子吸光法を用いて測定した. 同時にLH, FSH, PRLをもradioimmunoassayを用いて測定した. 血液透析中の患者では健常人に比してT, DHT, Znは有意に低く, A値は有意に高かった. 血中T値とHt値との間に有意な正の相関関係を認め, TとDHTとの間には相関傾向を認めた. 年齢についてはLH, FSHは高い群ほど高値であった. 透析期間についてはT, LH, FSHは長い群ほど高値を示し, DHTについては低値を示した. AからT, TからDHTへの変換状態をみるためにA/T+DHT, T/DHTを求め, これらと透析期間, 血中Znとの関係をみたところ, T/DHTと透析期間の間に有意な正の相関関係を認めた. Znとの間にはいずれも有意な関係はなかった.
    以上の成績より男性血液透析患者の性腺機能障害については血中Tの低値とともに, より生物学的活性の高いDHTの低値が関与している可能性が強かった. またTのpre-hormoneであるAの高値については, AからTへの変換に障害があることが考えられ, 17β-hydroxysteroid dehydrogenaseの活性についても考慮すべきと思えた. しかしこれらの変換にZnが関与している可能性は見い出し得なかった. 透析期間とともにTは改善するが, DHTについてはさらに低値を示した.
  • 服部 文忠, 中本 雅彦, 冬野 誠三, 三井島 千秋, 藤見 惺, 王 幸則
    1985 年 18 巻 5 号 p. 479-481
    発行日: 1985/10/31
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    慢性血液透析患者2例に生じた難治性腹水にCAPDを試みた. 2症例ともに血液透析導入後, 原因不明の腹水が大量に貯留し, るい痩と食欲不振を伴っていた. 血液透析中あるいは限外濾過法単独による除水では腹水を軽減させることはできなかった. CAPDに変更すると, 食欲の回復と体重の増加がみられ, 腹水もまた消失した. うち1例は再び血液透析に戻したが, 腹水が貯留することはなかった. CAPD灌流液からのブドウ糖の吸収による糖負荷と, 頻回に腹腔内がドレナージされて腹部膨満感が軽減したことによる摂食量の増加とが, 灌流液への蛋白質喪失を上回って, 栄養状態の改善をもたらし, さらに腹水の消失に結びついたと考えられた. CAPDの短所とされる糖負荷も長所となり得るわけで, CAPDは難治性腹水の治療上有用な方法の1つと思われる.
  • 青木 正, 馬淵 非砂夫, 垣内 孟, 杉原 みどり, 丸山 圭史, 西沢 弘通, 松浦 史良, 村尾 之義, 田端 義久, 中橋 弥光, ...
    1985 年 18 巻 5 号 p. 483-489
    発行日: 1985/10/31
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    腎性骨異栄養症に大腿四頭筋膝蓋骨付着部腱断裂を併発し, 断裂部再建術ならびに副甲状腺亜全摘術を施行した透析患者の1例を報告した.
    症例は36歳の女子で, 原疾患は慢性糸球体腎炎. 1976年3月透析療法を開始. 1984年2月7日降雪のため転倒, 右膝関節部を打撲, 強度の疼痛, 歩行障害を訴え入院. X線所見で膝蓋骨のdislocationを認め, 大腿四頭筋膝蓋骨付着部腱断裂と診断. 同年3月14日腰麻下に断裂部再建術を施行腱は完全断裂, 関節軟骨, 半月板などに異常はなかった. 次いで同年5月23日全麻下に副甲状腺亜全摘術を施行. 摘出重量は7,500mg, 組織所見は暗調主細胞型ないしは水様明細胞型adenoma.
    骨生検所見は活形成面32.6%, 活吸収面36.7%, 線維組織10.7%で線維性骨炎と診断した. 術後経過は良好で, 入院4ヵ月後の同年6月18日退院, 現在通院透析を継続している.
    腱断裂は転倒による外力に加え, 二次性副甲状腺機能亢進症, アシドーシスなどによる腱の脆弱化により発生したと考えられる.
    透析患者の腱断裂は, 今までは比較的稀な合併症であったが, 長期透析例の増加してきた今日では, その発生頻度の上昇することが予想され, 今後十分な注意が必要と思われる.
  • 鈴木 盛一, 榊原 泉, 林 良輔, 雨宮 浩, 木村 玄二郎, 佐谷 誠
    1985 年 18 巻 5 号 p. 491-497
    発行日: 1985/10/31
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    慢性腎不全で血液透析導入直前の患者を対象に導入後経時的に免疫学的検査を行い, 以下の結果が得られた.
    1) PHA刺激によるT cellの反応は, 透析導入後14日目より低下し, 以後次第に著明となり, 1年目には66.6%の低下率を示した.
    2) PHA反応の低下は, cellulose膜群では導入後28日目より見られたのに対し, PMMA膜群ではそれより若干早く14日目に認められた.
    3) T cell subsetは, cellulose膜群で6ヵ月目よりLeu 3a-positive cellが, 12ヵ月目にはLeu 2a-positive cellが有意に低下した. しかし, Leu 3a/Leu 2a比は, いずれの時期も導入前と差はなく, 正常範囲内と考えられた.
    4) PWM刺激によるB cellの反応は, 1年目までいずれの群においても, 導入前と比較して低下は見られなかった.
    5) CIC値は, 透析導入前から高く, 導入後1日目には一時的に減少したが, 以後は高値を続けた. この1日目の低下はcellulose膜群で有意であった. PMMA群では, 6ヵ月目に一過性の著しい増加が認められた.
    6) C3, C4値は, 透析導入前に比べ多少の変動は認められたが, いずれも正常範囲内の変化であった.
  • 大平 整爾, 阿部 憲司, 佐々木 偉夫, 今 忠正, 佐藤 和広
    1985 年 18 巻 5 号 p. 499-511
    発行日: 1985/10/31
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    過去5年間に私どもが経験した腹部手術48例を検討の対象とした. 内訳は胃切除17例 (胃・十二指腸潰瘍11例, 胃癌6例), 虫垂切除9例 (すべて化膿性または壊死性で内4例は穿孔), イレウス7例 (腸切除5例, 癒着剥離2例), 胆嚢摘出2例, 脾摘出2例, 子宮摘出2例 (癌1例, 出血性筋腫1例), 直腸切断・人工肛門造設 (直腸癌) 1例, 虚血性腸管壊死に対する腸管切除5例, その他3例であった.
    これらの経験からまず開腹術前・中・後に共通する問題点をとりあげ, もっとも症例の多かった胃切除例を中心に考察した.
    胃切除後の追跡調査結果を腎機能正常な胃切除症例と対比すると真の体重増加, 貧血の改善, 活動力の回復など総じて透析患者では有意に劣っており特別な栄養学上の工夫, 管理が必要であった. 心機能の高度低下例ではSCUF, CAVH等の血液浄化法上の変法も有効であった. 次いで, 虚血性腸管壊死5例に6回の手術を行ったが, 病変は回盲部, 上行結腸に限局性にみられ病変部腸管は著しく貧血状で菲薄化していた. しかし, 比較的大きな腸間膜動脈より中枢側には血栓形成を認めていない. 開腹所見ではすべての汎発性腹膜炎の状態でありながら臨床的には必ずしも激裂な症状を呈してはおらず手術の決定には困難を伴った.
    いずれの症例も持続的低血圧かそれに近い状態にあることや, 透析間体重増加が大きく従って1回透析あたりの除水量が至適量をはるかに越えているなど, 透析患者の病態に特徴的な因子の関与が強く示唆されたためこれらについても考察を加えた.
  • 小林 弘忠, 小高 通夫, 平澤 博之, 添田 耕司, 小林 進, 室谷 典義, 伊藤 靖, 大島 郁也, 佐藤 博, 磯野 可一
    1985 年 18 巻 5 号 p. 513-517
    発行日: 1985/10/31
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    肝不全治療においては新鮮凍結血漿 (FFP) を置換液とした血漿交換 (PE) が臨床応用されている. しかし肝不全の病態としてalkalosisや高Na血症が存在し, これらがFFPに含有されるクエン酸やNaにより増悪する可能性も無視しえない. そこでPEによる酸塩基平衡異常や高Na血症への影響を検討し, さらにこの病態や副作用に対して処方透析液を用いた血液透析 (HD) による補正を試みた. 対象は1982年8月より1985年4月の間に当科においてFFP 40単位 (3,200ml) を置換液としてPEを施行した29症例で, 原疾患はウイルス性肝炎に続発した急性肝不全14例, 薬物性肝炎による急性肝不全3例, その他の原因による急性肝不全3例, および術後肝障害・高ビリルビン血症9例である. 検査結果はmean±SEにて示す. PE前値 (n=44) ではpH 7.47±0.01, HCO3- (mEq/l) 27.4±0.7, BE 4.31±0.55, 後値 (n=44) では同様に7.50±0.01, 28.8±0.8, 6.10±0.50, さらにPE施行1日後 (n=28) では7.50±0.02, 29.8±0.9, 5.51±1.09であった. またpCO2, pO2は全経過を通しての変化はなかった. 血液Na (mEq/l) はPE前値137.8±0.9より後値140.3±0.8 (n=87) へと変化した. すなわち肝不全に対するPEはalkalosisや高Na血症を増悪せしめる可能性が示唆された. そこでPE後, 高度なalkalosisや高Na血症を呈した5症例7回に対してHDによる補正を試みた. PE後値でpHは7.409より7.580に分布し, HCO3-は25.7より31.8, BEは3.8より9.6に分布していたが, HDにより, pHは7.409より7.495, HCO3-は23.4より29.1, BEは1.3より4.5に分布し, 補正されていた. また血液Na値もPE後値では153より162に分布したが, HD後値では140より150の値に低下した.
    以上よりFFPを置換液としたPEによる副作用としてalkalosisおよび高Na血症の増悪に注目する必要があり, さらにかかる病態・副作用に対してPE施行後のHDは有用であるとの結論を得た.
  • 山下 明泰, 田中 健一, 日台 英雄
    1985 年 18 巻 5 号 p. 519-523
    発行日: 1985/10/31
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    再生セルロース系の薄い膜が採用され, 細長い形状をとるようになった最近の血液透析用ダイアライザーの性能を, 小分子溶質除去能および透水性能の両面から, ほぼ同面積の従来器と比較した.
    尿素, クレアチニンのクリアランスの絶対値では, 新旧モジュールの間に大きな差はなかったが, 新型器の性能は透析液流量に, より依存しやすい傾向を認めた. 尿酸, 無機リンのクリアランスは新型が旧型を大きく上回るとともに, 透析液流量に対する依存性は, 新型において顕著となった. この差は治療に影響を与えるほど大きなもので, 性能の流量依存性を把握しておくが重要である.
    クリアランスと除去溶質の分子量との関係より, 薄膜化は大き目の溶質の除去に優れるものと思われた.
    薄膜化は膜自身の透水性能を向上させるが, 臨床で必要なモジュールの見かけの透水性能 (UFR/Pps) は, 透析液側の圧力損失によってコントロールされる. 透析液流量の増加にともない圧力損失も増加するため, UFR/Ppsは低下することがわかった. これによる除水の制御が可能と思われた.
  • 春木 繁一
    1985 年 18 巻 5 号 p. 525-530
    発行日: 1985/10/31
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    MSWの役割には, 経済・社会・法的問題を解決する場合の能動的, 指示的, 指導的, 積極的役割と, 心理・家庭・心理社会的問題を扱う場合の受動的, 支持的, 受容的, 中立的役割がある. 最近は「精神医学的透析困難症」と呼んでよいような, 順調な透析がてきにくい一群の人々が増えつつあるように思われる. こうした例のなかから, 複雑な家庭病理を有するいわゆる人格障害の透析患者の1例をとりあげ, このケースの治療を通して生じてきた問題を示しながら, 治療者がその過程て味わされる「陰性感情, 逆転移の問題」について考えた.
    症例は23歳の独身女性て, 演技的, 自己愛的, 境界線上人格障害の特徴を備え, さらに反社会的な面もあわせ持っている. この患者がさまざまな問題行動を繰り返し, そのために透析治療がいろいろな形で障害される. これに対しこの患者の両親は, 患者に対し否定的, 拒絶的, 逃避的である. 当然のことながら, 毎日この患者の透析に携わる治療スタッフにも患者に対する否定的な感情が生まれてくる. こうした状況のもとで, この患者のケースワークがMSWに依頼されてくることになり, 先述したMSWの後者の役割が始まることになる. しかし, 実際にはそのケースワークは困難をきわめ, その中て担当のMSWも, 患者に対し, あるいは患者の両親に対しても, さらには診療スタッフに対してもいやでも否定的な感情を抱かざるを得なくなる. これがMSWが体験する「陰性感情, 逆転移感情」である. しかし, 治療には陰性感情, 逆転移感情というものはつきものであり, むしろそれらの起こらない治療は, 表面的, 形式的なものてあるといえる. こうした場合, 大切なことは, MSW自身が自分の心の中に起こっているそうした感情に十分気づいていることである. そのためには, 教育的準備, パーソナリティ上の準備, 実践上の準備の3つの準備が必要であると考える.
  • 橋本 敏博, 柴田 昌雄, 山田 一正, 今井 常喜
    1985 年 18 巻 5 号 p. 531-535
    発行日: 1985/10/31
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    63歳の, 僧帽弁膜症既往をもつ男性が, 慢性腎不全のため, 血液透析に導入された. その後, 原因不明の白血球ならびに血小板増多をきたすようになり, ダイアライザーの残血も多くなった. 血液検査では, 赤血球315万/mm3, ヘモグロビン9.4g/dl, ヘマトクリット29.4%, 網状赤血球82%, 白血球19,900 (分葉核球83%, 桿状核球4%, 好塩基球0%, 好酸球0%, リンパ球4%, 単核球9%) であり, 血小板は最高144万/mm3まで増加した. 血清鉄, ビタミンB12は正常値であった. 血小板凝集能は, 自己血清で血小板数を正常化したものについて, コラーゲン10μg添加時, 正常対照は最高凝集が7.7分にて90%に対し, 患者は最高凝集7.9分にて87%と差がなかった. 好中球アルカリフォスファターゼ染色では, NAPスコア170 (対照168) と正常であり, フィラデルフィア染色体も陰性てあった. 骨髄生検で一部の線維化を伴った巨核球の増加が認められた. 以上の結果より, 原発性血小板血症と診断された.
    さて, 患者は当初B, LによるHFを行っていたが, 心不全が落ちついたため, AM10によるHDに切り換えたところ, 強い掻痒感を訴えるとともに白血球の増加傾向を示した. そこで, 各種ダイアライザーを使用した時の, 透析中の白血球数を調べてみた. その結果, B2150を使用した時, 透析前白血球10,300/mm3が, 4時間目13,200/mm3と若干増加しただけであったが, AM10を使用した時は, 透析前白血球11,200/mm3が5時間目24,900/mm3まで著増した. KF101でも, 透析前白血球10,800/mm3が, 3時間目18,400/mm3まで増えた. 高圧蒸気滅菌のAM 1,000Mでも透析前25,000/mm3が3時間目37,800/mm3, KF 201でも透析前27,400/mm3が3時間目45,600/mm3まで増えた. これらはすべて, 好中球の増加であった.
    透析中に好中球が増加し, またダイアライザーによって差のあったことの原因は不明であるが, 極めて稀な現象であると考え, ここに報告する.
  • 野田 春夫
    1985 年 18 巻 5 号 p. 537-548
    発行日: 1985/10/31
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    従来, 慢性血液透析患者では細胞性免疫能が低下しており, そのため, 種々の感染症に罹患する頻度が高いと言われている. したがって慢性腎不全患者の予後を改善するためには, その細胞性免疫能を正確に評価し, 細胞性免疫能の低下に関与する因子について検討することが重要である. そこで著者は, 基礎疾患が慢性糸球体腎炎である慢性血液透析患者79例を対象とし, 健常者20例を対照群として, その末梢血リンパ球の幼若化能の測定と末梢血りンパ球subsetの解析を行った. 非特異的T cell mitogenとしてはPHAおよびCon Aを使用した. 末梢血りンパ球subsetの解析については, fluoresceinを結合させたモノクローナル抗体を用いてリンパ球subsetを直接法にて染色し, 染色された細胞をflow cytometer (Ortho-Spectrum III) によって解析した. モノクローナル抗体としてはTcellに特異的なOKT-3, helper/inducer Tcellに特異的なOKT-4, suppressor/cytotoxic T cellに特異的なOKT-8, B cellに特異的なB-1を使用した.
    mitogen刺激に対する反応からみると, Tリンパ球の活性は, 慢性血液透析患者では健常人に比し, 低下していた. 慢性血液透析患者では, 対照群に比し, OKT-3陽性率は高かったが末梢血リンパ球数は減少していた. OKT-4/OKT-8陽性細胞比は患者群では, 1.70±0.80, 健常群では1.70±0.70であり, 両群間に有意差は認められなかった.
    慢性血液透析患者をOKT-4/OKT-8陽性細胞比の値によって3群に分けると, 末梢血リンパ球のPHA反応はOKT-4/OKT-8陽性細胞比が1.0-2.0の群ではQKT-4/QKT-8陽性細胞比が1.0未満および2.0以上の群に比して正常に近い傾向が認められた.
    週18時間以上血液透析を受けている患者群と週15時間の患者群について免疫学的パラメーターを比較すると, リンパ球幼若化能は両群間で有意差が認められなかったが, OKT-4陽性細胞数は前者では後者に比し有意に高値を示した. さらに, OKT-3陽性細胞率は1週間の透析時間数の増加とともに高くなる傾向がみられた. これらの結果より, 慢性血液透析患者の細胞性免疫能は透析時間の延長によって改善される可能性が示唆された.
feedback
Top