透析困難症に対し高Na重曹透析が有効とされ, すでにNa濃度の変更や重曹透析が併用可能な新型の供給装置が市販されている. しかし今回我々は既存の装置を利用する目的から, アセテート透析用の閉鎖循環式透析液供給装置, ホスパル社ローディアル75 (タンク内容量約75
l) を用いて, 高Na重曹透析を行う方法を工夫し, 基礎的および臨床的検討を加えた.
透析液はキンダリーAF 1号を使用し, タンク内にA液, 希釈水60
l, B液の順に注入する方法にて低Na (Na 135mEq/
l) から高Na (Na 160mEq/
l) までの重曹透析液を作成したところ, 炭酸塩の析出もなく十分に作成可能であった. 次に高Na重曹透析液を正Na (Na 140mEq/
l) 重曹透析液に希釈する方法を工夫した. それは希釈水をあらかじめ約37℃まであたためておき, 透析液in側から吸水させ同時にout側より希釈水と同量の透析液を排水するという希釈方法である. 希釈に要する時間は5-6分であり, 透析液の各電解質は安定して低下した.
以上の基礎的検討より臨床応用が可能と判断し, 5時間透析の慢性透析患者2症例に対して, 前半に高Na重曹透析を行い2時間後に透析液を希釈して正Na重曹透析を行う方法にて計230回 (1年5ヵ月) 行ったが, 透析液濃度は安定していた. 血清Naや血清浸透圧は2時間目まで上昇傾向を示し, それ以後は下降傾向を示した. 血清Ca値も経時的に次第に上昇しており, 血清中のHCO
3-は2時間目まで比較的急激に上昇し, それ以降安定していた. 以上のように臨床応用の結果も良好であり, ローディアル75においても我々の工夫した簡単な希釈方法によって高Na重曹透析が可能であった.
抄録全体を表示