日本透析療法学会雑誌
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19 巻, 10 号
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  • 長谷川 弘一, 松下 義樹, 井上 隆, 森井 浩世, 山路 徹
    1986 年 19 巻 10 号 p. 931-937
    発行日: 1986/10/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    40例の健常人, 14例の非透析慢性腎不全患者, 18例の血液透析中の慢性腎不全患者について血漿ADH, NSN, ESNをradioimmunoassayを用いて測定したところ, 慢性腎不全患者の2群では健常人に比してADH, NSN, ESNとも有意に高値を示した. また血液透析患者では非透析患者に比して有意に高値を示した.
    非透析患者ではADHとNSN, ADHと血清クレアチニン, 有効血漿浸透圧とADH, 血清クレアチニンとESNの間に有意な正の相関関係, 血清CaとADHおよび血清CaとNSNの間に有意な負の相関関係をみた.
    血液透析患者では血漿ADHは透析後, 透析前に比して有意に低下し, 血漿NSN, ESNは逆に有意に上昇した. ADHと有効血漿浸透圧および透析前後のNSNの変化率と循環血液量の減少率との間には有意な正の相関関係がみられた. しかしNSNとESN, ADHとNSN, ADHと血清Ca, ADHとMBP, 透析前後のADHの変化率と体重減少率, ADHの変化率と循環血液量の減少率との間には有意の関係はなかった.
    これらの成績によって慢性腎不全患者ではADHの分泌は第一次的には有効血漿浸透圧によって調節されているとともに, ADH, NSN, ESNのturnoverが減少していることが示された. さらに非透析腎不全患者ではADHとNSNのレベルが非常に相関していることも示された.
  • 北村 真, 飛田 美穂, 田坂 登美, 飯田 宜志, 黒川 順二, 平賀 聖悟, 佐藤 威
    1986 年 19 巻 10 号 p. 939-942
    発行日: 1986/10/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    心疾患を合併した症例や, 重篤な全身状態に陥った症例など, 通常の血液透析では循環動態に与える影響が大きすぎる症例に対し, 近年continuous hemofiltration (CHF) が用いられるようになった. 当腎センターにおいても, 1979年12月以来CHFの臨床経験を重ねている. 今回我々は, 術後急性腎不全, 透析困難症に陥った慢性腎不全および急性薬物中毒の各々2症例に対しCHFを行い, 見るべき成果をあげたのでその方法論, 効果などについて報告する.
    CHFの回路には血液ポンプを使用し, 原則として動脈カテーテルを留置しなかった. 血流量は約100ml/minとした. 置換液は平均8l/day. 溢水状態にある症例に対しては, 2l/dayの除水を行った. 炭酸リチウム等の過量服用による急性薬物中毒に対しては, 組織から遊離してきた薬物を持続的に除去する目的で, 積極的に本法を施行した.
    次のような結論を得た. 1) 血液ポンプを使用する事により動脈カテーテル留置を必要とせず, 安定した血流量を保つことができた. 2) HDに比し, 安定した血圧を保つことができた. 3) BUN, クレアチニン, 電解質などの改善を認めた. 4) 急性薬物中毒に対し, 臨床的に著効を認めた.
  • 西村 学
    1986 年 19 巻 10 号 p. 943-949
    発行日: 1986/10/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    まむし咬傷後にrhabdomyolysisをきたし急性腎不全に至った2症例を報告する. 第1例は55歳男性, まむし咬傷後にコーヒー色の乏尿と左上肢の浮腫を主訴として入院した. 入院時検査では, 血清CPK 16,980IU/l, BUN 66mg/dl, 血清Cr 2.9mg/dl, 血清, 尿ミオグロビンは著増していた. 2回の血漿交換後, 腎機能回復し良好な経過をとった. 入院6日目に受傷肢の筋生検を行ったところ表層部の巣状壊死がみられた. 入院14日目に腎生検を行った. 組織像では, 間質にリンパ球と好酸球の浸潤が認められ急性間質性腎炎と診断した. 糸球体には著変なかったが尿細管にはtubulitisの所見が認められた.
    第2例は75歳女性, 前胸部まで及ぶ左上肢の疼痛, 腫脹と無尿を主訴として入院した. 2日前にまむしに咬まれており, 1日尿量は30ml以下であった. BUNは65mg/dl, 血清Crは5.0mg/dl, 血清CPKは44,700IU/lであり血清ミオグロビンはアルドラーゼ同様著しく増加していた. 2回の血漿交換と7回の血液透析で利尿期に入り腎機能の回復をみた. しかし, その後CO2ナルコーシスによる意識障害をきたし数日間の呼吸管理を必要とした. さらに興味あることには, この患者は初診時高度の小球性低色素性貧血が認められ, 骨髄像にて赤芽球系の抑制がみられた. 貧血は病状の回復に伴い次第に改善してきた.
    これら2例は, rhabdomyolysisと急性腎不全を伴っており血漿交換が奏効した. しかしながらともに, 血漿交換の副作用と思われる一過性の肝機能異常を生じた. また, 第1例はまむし咬傷後に急性間質性腎炎を呈した最初の報告である.
  • 宮崎 哲夫, 内藤 秀宗, 坂井 瑠美, 駒場 啓太郎, 西岡 正登
    1986 年 19 巻 10 号 p. 951-955
    発行日: 1986/10/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    従来使用されてきたCAPD用カテーテルは, 腹腔内位置移動や被包化現象のため, 排液障害がしばしば発生し治療には難渋する. 今回我々は主にこの排液障害を防止する目的で開発されたValli catheter (Valli cath.) を, 慢性腎不全症例5例に臨床使用し, 検討を加えた.
    使用したValli cath.の形状は, 腹腔外部はTenckhoff double cuff catheter (Tenckhoff d. c. cath.) と同様であるが, 腹腔内部はカテーテル先端を3.5×8cmの楕円形バルーンで覆い, 腹腔内臓器より隔絶している.
    カテーテル留置法は, 全症例とも観血的開腹術 (腰椎麻酔下4例, 局所麻酔下1例) で挿入した. 観察期間は最長15ヵ月, 最短2ヵ月 (総53 patient-months), 平均10.6 patient-monthsで, 現在全例ともCAPD療法継続中である. この期間中, 全症例ともバルーンの形状は良好に保たれ, ダグラス窩に固定され, 注排液障害もなく, また注排液速度もTenckhoff cathと比較すると早い結果を得た.
    出口部感染, トンネル感染, カフ感染等はこの期間中発生しなかった. しかし, Valli cathの腹腔外部形状はTenckhoff d. c. cathと同一であることより, これらの合併症は同頻度で発生する可能性があり, さらに材質, 形状等につき研究開発される必要がある.
  • 大橋 宏重, 石黒 源之, 安江 隆夫, 琴尾 泰典, 鎌倉 充夫, 杉山 明, 松野 由起彦, 和田 久泰, 住田 康豊, 渡辺 佐知郎, ...
    1986 年 19 巻 10 号 p. 957-962
    発行日: 1986/10/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    ミオグロビン尿症は骨格筋細胞の急速な崩壊により, 大量のミオグロビンが血中に放出されて発症する. その原因にはtraumaticなものとnontraumaticなものがあり, 近年ミオグロビンの測定がRIA法により容易になったこともあり, nontraumatic rhabdomyolysisと, それに伴う急性腎不全の報告も増加してきた. 今回, nontraumatic rhabdomyolysisにより急性腎不全を併発した1例を報告するとともに, これに類似した本邦報告例を検討し, さらに本症の発生機序ならびに臨床像の特徴について考察した.
    症例は51歳の男性である. 1歳時に脳炎に罹患した. 昭和60年7月30日炎天下に約15km歩行し, 意識消失し, 某病院へ入院した. その後無尿が出現し, 発病3日目に当科へ転院した. 入院時, 体温37.5℃, 脈拍70/分, 血圧130/70mmHg, 胸・腹部に異常所見なく, 大腿部に腫脹と圧痛が認められた. 尿ミオグロビン190ng/ml, 血清Na 157mEq/l, K 5.1mEq/l, Pi 6.0mg/dl, クレアチニン9.5mg/dl, UN 125mg/dl, GOT 596IU/l, GPT 225IU/l, LDH 2,782IU/l, CPK 40,800IU/l, アルドラーゼ27.9IU/lと上昇し, Caは6.3mg/dlと低下した. 阻血下前腕運動負荷試験により, 遺伝性解糖系酵素欠損症は考えにくく, nontraumatic rhabdomyolysisによる急性腎不全と診断した. ただちに血液透析を開始し第2週より利尿をみて, 約2ヵ月後, 症状ならびに臨床検査値が改善し退院した.
  • 石川 勲, 四蔵 直人, 小市 裕子, 堀口 孝泰, 石井 博史, 篠田 晤, 石野 洋, 東田 紀彦, 尾内 善五郎, 斉藤 靖人, 赤崎 ...
    1986 年 19 巻 10 号 p. 963-967
    発行日: 1986/10/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    長期透析患者を管理していくうえで関節部痛, ことに肩の痛みを訴える患者が目立つように思われたので, 慢性血液透析患者138名を対象に肩の疼痛頻度・性質や関節可動域などについて調べた. その結果透析10年未満の患者の20.5%, 10年以上の66.7%が肩の痛みを訴えた. すなわち長期透析例では肩の痛みを訴える患者が有意に増加していた. 痛みは多くが両側性で, 主に夜間や安静時に重だるい, ずきずきするというものであった. 肩関節の屈曲, 伸展, 外転, 外旋の異常出現率はそれぞれ60.9, 60.9, 59.4, 50.0%で健康人にくらべ明らかに運動制限が認められた. また肩関節部痛の存在する症例で上記の異常出現率をみるとそれぞれ76.3, 39.5, 65.8, 87.5%と外旋制限を呈するもの, とくに70度以上の外旋ができないものが多く認められた. また透析期間と外旋可動域との間には有意な逆相関が認められた. 疼痛のある例に二次性副甲状腺機能亢進症が強いという関連性はえられなかったが, 疼痛を訴える例には手根管症候群や膝関節痛を同時に伴うものも多く認められた. 以上より, 透析患者の肩関節部痛には肩関節周囲に起こった慢性の病変が関係するように思われた.
  • 大平 整爾, 阿部 憲司, 長山 誠, 田中 康夫, 今 忠正
    1986 年 19 巻 10 号 p. 969-975
    発行日: 1986/10/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    脈管造影, 胆嚢造影, 腎盂・尿管造影さらに各種のenhanced CTなどの検査にはヨード含有造影剤が使用される. 慢性透析患者に対してもこれら検査法が用いられることが, 近年多くなってきている. ヨード含有造影剤は主として糸球体濾過によって腎より排泄されるため, 慢性透析患者ではその排泄が著明に遅延する. そこで60%コンレイ® (イオタラム酸メグルミン) 20mlを血液透析前日投与群と直前投与群とに分けて静注し, 経時的に血中総ヨード濃度を測定して慢性血液透析患者における本剤の動態を検討した.
    イオタラム酸メグルミンは分子量809で血漿蛋白質とはほとんど結合しない. 本剤は血液透析によって経時的に略, 指数関数的に減少したが, 血中総ヨード濃度は5時間の血液透析によって投与前値には復しなかった. 造影剤の血中半減期は前日投与群で約140分, 直前投与で約100分であった. 60%コンレイ®20ml静注投与による副作用として重篤なものを両群に認めなかった.
    しかし, 嘔気, 熱感, 掻痒感など中等度以下の副作用は明らかに前日投与群で遷延した. Enhanced CTなどではより大量の造影剤が使用されることもあり, ヨード含有造影剤を静注使用する検査後は速やかに血液透析を行うことが必要である.
  • 川西 秀樹, 土谷 太郎, 西亀 正之, 土肥 雪彦
    1986 年 19 巻 10 号 p. 977-982
    発行日: 1986/10/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    慢性血液透析患者に蓄積している低分子量蛋白 (LMP) の除去を目的として, 粉状活性炭シートカラム (UPC, BESPORETM) を用いた血液灌流の研究を行った. 透析患者プール血清を用いたBatch試験にて分子量3万までの物質 “β2-microglobulin (β-MG), lysozyme, retinol-binding Protein” に対し良好な吸着が得られることが示された. それに対し4万以上の物質 “α1-acidic glycoprotein, α1-antitrypsin, immunosuppresive acidic protein” はほとんど吸着されなかった. 血液透析患者4人対し計15回の血液灌流を行い, 分子量1万-3万のLMPの除去が得られることが示された. 特にamyloidosisの原因物質の1つとして最近注目されているβ-MGは1回の灌流で平均25%減少し, clearanceも初期30分で60ml/minと良好な除去が得られ総除去量は150mgであった. UPC-灌流はLMPの除去に優れており尿毒症症候の改善に対する効果が期待される.
  • 久間 知子, 堀井 康弘, 石田 正史, 平尾 健谷, 本宮 善恢, 貴宝院 邦彦, 金子 佳照, 吉田 克法, 丸山 良夫, 平尾 佳彦, ...
    1986 年 19 巻 10 号 p. 983-986
    発行日: 1986/10/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    クエン酸透析において, クエン酸中毒のriskを除き, かつ十分な抗凝固効果を得るためには, 回路内至適クエン酸濃度は1.0-1.5mM必要であり, この場合回路内Ca++濃度は0.6-0.8mMであることを, すでに確認し報告したが, 今回, 回路内至適クエン酸濃度1.0-1.5mMでの透析液至適Ca++濃度を検討した.
    ホロファイバー型ダイアライザーを用い, 回路流量200ml/min, 透析液流量500ml/min, 回路内Ca++濃度を一定に保つために2% CaCl2液を注入し, 回路リザーバー容量を10lに設定した再循環式閉鎖型回路を作製した. 動脈側よりチトラール30ml/hrを注入し, 回路作動後15分, 30分, 60分, 90分に, リザーバー出口, 動脈側, 静脈側の3点で試料採取を行った. Ca++濃度0mM, 0.5mM, 1.0mM, 1.5mMの透析液を採取し, 比較検討した.
    透析液Ca++濃度0mM, 0.5mMの場合, 動脈側, 静脈側ともに, 50%前後の回路内Ca++濃度の抑制が見られた. 一方, 透析液Ca++濃度1.0mM, 1.5mMでは動脈側で約50%の回路内Ca++濃度の抑制を得るが, 静脈側では殆ど抑制効果は認めなかった. したがって, クエン酸透析における至適透析液Ca++濃度は0.5mMと考える.
  • 細川 進一
    1986 年 19 巻 10 号 p. 987-991
    発行日: 1986/10/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    慢性腎不全のため長期血液透析を受けている40例を対象として血清, 血球中のMn, Ni値を検査した. 透析患者の血清Mn値は0.20±0.40μg/dlで正常値1.0±0.20μg/dlと比較して有意に低値を示した. 血球Mn値は透析患者では2.2±0.2μg/dlであったが正常例のそれは1.8±0.04μg/dlと有意に高値を示した. 透析患者の血清Ni値は0.26±0.04μg/dlで正常例の0.52±0.10μg/dlと比べて有意に低値を示した. 透析患者の血球Ni値は1.24±0.16μg/dlであり, 正常例では0.88±0.06μg/dlで有意に高値を示した. 透析前後で血清Mn値は特に有意な変化はなかった. また血球Mn値も同様, 透析前後で有意な変化は示さなかった. 血清Niは透析前後で有意な変化は示さなかった. 血球Ni値も透析前後で有意な差は認められなかった.
    40例の透析症例の血清Mn値とRBC, Hb, Hct値とは有意な正の相関を示した. また血清Ni値もRBC, Hb, Hct値とは有意な正の相関を認めた. しかし血清Mn値, 血清Ni値と血清鉄, TIBCとはいずれも有意な関係は認めなかった. 血球Mn値および血球Ni値はRBC, Hb, Hct値とはいずれも有意な負の相関を認めた. しかし血球Mn値, Ni値とも血清鉄, TIBCとは特に有意な相関は認めなかった.
  • 熊野 和雄, 清水 辰雄, 南部 正人, 草刈 修一, 酒井 糾, 桜井 健治, 片岡 浩, 国友 哲之輔
    1986 年 19 巻 10 号 p. 993-998
    発行日: 1986/10/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    18名のCAPD患者においてAlの体内動態について検討した. CAPD患者においても, 血清無機燐値のコントロールのためにACPB剤は必要でその平均投与量はHD患者とほぼ同様で3.6g/dayであった. 我々の使用している2種類のCAPD液のAl濃度は平均約5μg/lと非常に低く, CAPD液よりのAlの体内移動はまず考えられず, 安全に使用できると思われた. CAPD患者の血中Al濃度をCAPD導入後, 経時的に測定したが, CAPD導入直後より平均50μg/l前後の高値を持続していた. DFO負荷試験 (DFO 30mg/kg, DIV) によりAlの体内蓄積を調べたが, 透析歴の長い患者の方が体内蓄積は大きかった. このようにCAPD患者においてもHD患者と同様にAlの体内蓄積は高頻度に認められた. Alの蛋白結合率の検討ではAlの平均約86%が蛋白と結合しており, このままではCAPDによるAl除去はあまり期待できないが, DFO投与により蛋白結合率は約29%に低下し, 有効なAl除去が可能となり, Alのクリアランスは平均27l/Wであった. AlとDFOはin vivoではその血中濃度およびCAPD液濃度よりみてin vitroのような1:1結合はしておらず, より複雑な結合様式が考えられた. Al蓄積に対する治療としてDFO投与はCAPD患者においても有効な療法であり, 週1回, 30mg/kgの静脈内投与は安全かつ有効な投与方法と思われた. また5名の患者ではACPB剤をCaCO3剤に変更したが, その投与量は平均5.4g/dayで, いずれも高Ca血症などの副作用は認めなかった. ACPB剤中止12ヵ月後にはAlの体内蓄積は有意に軽減しており, CAPD患者においてはCaCO3剤は安全に使用できるphosphate binderと思われた.
  • 峰島 三千男, 山形 桂仁, 江良 和雄, 佐中 孜, 阿岸 鉄三, 太田 和夫
    1986 年 19 巻 10 号 p. 999-1003
    発行日: 1986/10/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    全身性浮腫や急性腎不全患者に対して, 持続的血液濾過法 (CAVH) が臨床応用されている. 本研究では入手された4社8種のCAVH用濾過器の性能を比較検討することを目的とした. そのためにin vitroにおいて定圧濾過実験を行った. 被験液としては血漿交換療法で得られたヒト廃棄血漿を用い, 37℃恒温下にて実験に供した.
    その結果, 膜間圧力差 (TMP) を変化させたところ, いずれの膜においてもTMP>400mmHg以上で濾過流束はプラトーに達し, 蛋白によるゲル層の形成が予想された. そこで次に限外濾過膜に対するゲル分極モデルの解から導出されたパラメータを用いデータを整理したところ, いずれも強い直線相関がみられ, モデル適用の妥当性が確認された. これらの直線の傾きが大きいほど透水性の高い膜と言えるが, cellulose triacetate, polyacrilonitril, polyamide, polysulfoneの4種の膜で大きな差異は認められなかった.
    一方, in vivoでは47例の患者に対してCAVHを適用し, 状況に応じて血流量を確保するためポンプを使用したり, 溶質除去を助長するために積極的に置換を施行した. 置換を余儀なくされたのは全体の2/3に及び, 純粋なnon-machineのCAVHは全体のわずか6.5%にすぎなかった. そこで平均的なCAVH患者に補液を用いた置換が必要であるか否かをコンパートメントモデルを用いて試算した. 平均的な慢性腎不全患者の1週間平均濃度レベルと同じレベルを維持するには尿素で8.5ml/minのクリアランス, すなわち12.2l/dayの置換を要することが明らかとなった. CAVHのような連続的な治療では代謝生成速度は緩徐になることが予想されるが, 平均的には1日10l程度の置換が必要と思われた.
  • 1986 年 19 巻 10 号 p. 1003
    発行日: 1986年
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
  • 松尾 武文, 島野 ちか子, 大木 康雄
    1986 年 19 巻 10 号 p. 1005-1008
    発行日: 1986/10/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    合成抗トロンビン剤 (MD 805) の抗凝固作用のモニタリング法については知られていない. 今回は, APTTと活性化凝固時間 (ACT) によるMD 805のモニタリングについて, ヘパリンを基準としてin vitroで実験を行った. 健常人より採血し, in vitroでヘパリンを添加し, APTTが添加前の基準値の1.5-2.5倍に延長するヘパリン濃度は, 0.1-0.34単位/mlを設定した. 同時に測定したACTでは1.14-1.48倍の延長を得るためのMD 805の血中濃度は, 0.23-0.75μg/mlであった. この濃度でのACTの延長は基準値の1.14-1.56倍であった. 結論として, MD 805使用に際してACTによるモニタリングがこの範囲にあれば, 十分な抗凝固作用が得られ, かつ出血の危険もないと考えられた.
  • 荒川 俊雄, 長坂 肇, 松下 健次, 山城 有機, 小林 登, 三木 章三, 後藤 武男, 坂井 瑠美, 西岡 正登, 駒場 啓太郎, 藤 ...
    1986 年 19 巻 10 号 p. 1009-1014
    発行日: 1986/10/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    今回, 我々は慢性腎不全患者の透析開始前の状態およびそのCAPDおよび血液透析導入後18ヵ月以上にわたる血中脂質像を観察し (血中アポAI, AII, E, LCAT, コレステロール結合能 (SCBR), HDL-コレステロール, トリグリセリド (TG), コレステロール, リン脂質, リポ蛋白分画), その経時的変動をretrospectiveに観察し, 比較検討を加えた. その結果, “アポAI, AIIに関しては, 6ヵ月および18ヵ月以上の時点で, CAPD群 (6ヵ月, N=15, アポAI=113.9±16.2, N=14, アポAII=27.0±4.9, 18ヵ月以上, N=13, アポAI=108.7±16.9, N=14, アポAII=25.7±3.3mg/dl) は, HD群 (6ヵ月, N=10, アポAI=95.7±17.1, N=10, アポAII=21.7±2.9, 18ヵ月以上, N=15, アポAI=85.5±10.2, N=15, アポAII=23.3±3.2mg/dl) に比し, 有意の高値を示したにもかかわらず, HDL-コレステロールに有意差は観察期間を通じて認められなかった. またLCATは透析開始6ヵ月後においてのみ, CAPD群がHD群に比し有意に高値であったが, 以後は減少傾向を示した. またコレステロール, β-リポ蛋白百分比も同様に, 6ヵ月および18ヵ月以上の時点でCAPD群はHD群に比し有意の高値を示したが, α, pre β-リポ蛋白分画は百分比で逆に低値の傾向を示した.
    次に, 両群におけるアポAI, AIIとHDL-コレステロールの相関に関しては, CAPD群は, その相関直線の傾きがほぼ一定しており, 殆ど変動を認めないのに対して, HD群では, その相関直線の傾きが経時的に増加する傾向が認められた.
    以上の結果より, CAPD長期継続例における脂質代謝の変動は特異的であり, 動脈硬化に関しprotecting factorと言われるアポAIが高値をとるにもかかわらず, HDL-コレステロールは低値であるという解離が認められる. これは血中HDLの質的変化を予測させた.
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