日本透析療法学会雑誌
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19 巻, 12 号
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  • 竹内 昭彦, 海津 嘉蔵, 森田 恵美子, 瓜生 康平, 阿部 理一郎, 滝下 正秀, 江藤 澄哉
    1986 年 19 巻 12 号 p. 1087-1092
    発行日: 1986/12/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    血液濾過法 (HF) は血液透析法 (HD) に比較し, 低血圧, 高血圧, 不均衡症候群, 酢酸不耐症等の面において短期的には優れていると言われているが, 長期単独療法に関する報告は少ない. 今回我々は, HF単独療法を約26ヵ月間の長期にわたり糖尿病性腎症腎不全症例に施行しえたので報告する.
    症例は67歳, 男性. 約30年前, 糖尿病が発症し, インスリン療法を受けていた. 昭和51年, 視力低下が, 同55年1月, 初めて浮腫, 蛋白尿が出現した. 同年6月, 当院の他科にて腎不全の指摘を受け当科に入院した. 入院時, 肥満なく, 意識清明で呼気アセトン臭はなかった. 起立性低血圧, 糖尿病性網膜症, 右眼白内障があり, 視力低下, 両足アキレス腱反射の消失を認めた. またBUN 106mg/dl, s-Cr 6.6mg/dlと腎不全があり, 中等度の正球性正色素性貧血, 代謝性アシドーシス等を認めた. 骨X-p上, 腎性骨異栄養症はなかった. そこで糖尿病性腎症腎不全と診断しHDに導入した. HD中低血圧が頻発し, 高Naおよびバイカーボネイト透析液にても同様であった. さらに緑内障を併発したため, 昭和58年5月より181置換によるHF (ザルトリウス社・血液濾過システム, 清水製薬・HFソリタ®) へ変更した. 変更直後より低血圧の頻度, 程度ともに著明に改善した. 約26ヵ月間のHF単独療法においてs-Crが軽度上昇した. 貧血も増悪したが, HFの直接効果か否か不明である. 他の検査データおよび自他覚症状に著変なかった. また, 我々はHF中の血糖の急激な低下を見出したが, これは糖無添加の補充液の使用によるものと判断し, ブドウ糖を添加したところ, 血糖の推移は非HF日と同様の緩徐なものとなった.
    以上より, 1) HF療法は低血圧頻発症例に有効であり, 2) HFの長期単独療法において重篤な副作用は発現せず, 3) HF施行にあたり補充液へのブドウ糖添加が, 特に糖尿病性腎症腎不全症例に, 必要であると思われた.
  • 丸山 良夫, 妻谷 憲一, 金子 佳照, 守屋 昭, 窪田 一男, 駒田 佐多夫, 久間 知子, 青山 秀雄, 小原 壮一, 本宮 善恢, ...
    1986 年 19 巻 12 号 p. 1093-1098
    発行日: 1986/12/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    慢性血液透析患者における易感染性, 悪性腫瘍の高い発生率および遅延型皮膚反応の低下など良く知られているが, その原因として細胞性免疫能の低下が考えられている. 今回われわれは細胞性免疫のうち, 特にnatural killer活性 (NK活性), antibody dependent cell-mediated cytotoxicity活性 (ADCC活性) を慢性血液透析症例およびCAPD症例について測定し, これらの活性が細胞性免疫能の低下に関与しているのかどうか, また両治療におけるNK活性およびADCC活性の差, さらに血液透析のこれらの活性に及ぼす影響について検討した.
    対象症例は慢性血液透析症例20例, CAPD症例7例で, 健康成人6例を対照例として測定した. 両治療群とも年齢, 透析期間とNK活性, ADCC活性との間に有意な相関はみられなかった. NK活性は対照群の平均値が36.4±14.8%, 慢性血液透析群の平均値が19.6±6.5%と対照群において有意に高値であったが (p<0.001), CAPD群の平均値は23.4±15.5%と前二者の中間の値でどちらの群とも有意差はみられなかった. ADCC活性も同様に対照群の平均値が71.4±4.2%, 慢性血液透析群の平均値が54.7±10.4%とコントロール群において有意に高値であったが (p<0.01), CAPD群の平均値は62.1±9.2%と両者の中間の値でどちらの群とも有意差はみられなかった.
    慢性血液透析症例5例について透析前後でのNK活性およびADCC活性を測定した結果, NK活性は透析前後において有意な差は見られなかったが, ADCC活性は透析前の平均値が65.2±2.9%であるのに対して透析後には52.4±5.6%で有意な低下がみられた (p<0.01).
  • 安藤 明, 津川 喜憲, 浜田 真, 紺井 一郎, 宮崎 良一, 東福 要平, 竹田 亮祐, 河原 栄
    1986 年 19 巻 12 号 p. 1099-1104
    発行日: 1986/12/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    CAPD療法は, 血液透析療法に比較して, いくつかの優れた利点を有しているのに反して, 重大な合併症として腹膜炎があげられている. 最近, 真菌による真菌性腹膜炎の報告が増えてきている. 一般に真菌性腹膜炎は, 細菌性腹膜炎の加療中に, 菌交代現象としておこったものが多い. われわれは, 今回, 先行細菌性腹膜炎なしに, 初回感染で真菌性腹膜炎を合併した1例を経験した.
    症例は40歳の男性. 基礎疾患はIgA腎症. 1977年8月から血液透析に導入した. 1983年3月にCAPD療法を開始した. その後順調に経過していたが, 1984年11月8日腹膜炎を発症した. 菌培養およびCAPD液のPAS染色にて, Candida giulliermondiiによる真菌性腹膜炎と診断した. 診断後, テンコフのカテーテルを抜去し, Amphotericin Bの全身投与にて軽快した.
    初回で真菌性腹膜炎を発症した原因として, 確定はできなかったが, ペットの猫からの濃厚感染が疑われ, CAPD患者の感染源の1つとして注意しなければならないと思われた. また本症例の免疫能低下の有無について検討したが, 著しい低下は認められなかった. 真菌性腹膜炎の診断は, 常在菌による汚染の可能性も否定できないので, CAPD液の真菌培養に加えて, PAS染色およびPapanicolaou染色を施行したが, この方法は, CAPD排液の培養結果によるよりは短時間で遂行できる利点があり, 真菌性腹膜炎の早期診断に有用と考えられた.
  • 飛田 美穂, 田坂 登美, 飯田 宜志, 北村 真, 黒川 順二, 平賀 聖悟, 佐藤 威
    1986 年 19 巻 12 号 p. 1105-1109
    発行日: 1986/12/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    1978年6月から1986年7月までに東海大学附属病院において, 維持血液透析者の悪性腫瘍合併例を20症例経験したので報告する.
    血液透析導入時の平均年齢は52.90±8.72歳 (34-67歳), 腫瘍診断時の平均年齢は56.95±8.35歳 (41-68歳), 透析導入時から腫瘍診断時までの期間の平均は4.05±8.56年 (7ヵ月-11年) であった.
    消化器癌が20症例 (22癌) 中9症例 (45.0%) と高い頻度であり, 胃癌4症例, 直腸癌3症例および上行結腸癌2症例であった. なおその1例は胃癌と膀胱癌の重複癌であった.
    その他の癌としては, 肺癌, 肝癌, 腎癌および膀胱癌が各2症例, 甲状腺癌, 下咽頭癌, 卵巣癌および白血病が各1症例であった. 腎癌の2症例はacquired cystic disease of the kidney (ACDK) に合併した腎細胞癌であり, さらにそのうち1症例は反対側の腎にtransitional cell carcinomaを合併した重複癌症例であった.
    また, 死亡例をretrospectiveに検討すると, 透析患者においては, 透析不十分, 低栄養, 感染症および出血が主な直接死因であった.
  • 加藤 禎一
    1986 年 19 巻 12 号 p. 1111-1123
    発行日: 1986/12/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    慢性腎不全患者の血液透析 (HD) 導入期にみられる出血傾向, 血小板凝集能の低下等の血小板異常はHDにより改善され, 維持透析患者ではこれらの異常は認め難い. しかし, HD患者では体外循環, 尿毒素等により血小板は少なからず影響を受けていると思われる. そこで, 維持透析患者の血小板に異常が存在するかどうかを研究するために, 血小板酵素活性を指標として用い検討を行った. 健常人 (34名), 維持透析期のHD患者 (30例) およびCAPD患者 (21例) を対象として, その血小板凝集能 (collagen 2μg/ml), Mg++-ATPaseとK+-EDTA ATPaseの酵素活性およびplatelet cyclo-oxygenase (PCO) 活性の指標となる血小板malondialdehyde (MDA) 産生能を測定し以下の成績を得た.
    1) 血小板凝集能は3群間に差を認めなかった. 2) Mg++ ATPase活性は, 健常人7.0±1.3nmol Pi/mg protein/min, HD患者5.7±1.5nmol Pi/mg protein/min, CAPD患者6.2±1.7nmol Pi/mg protein/minであり, HDおよびCAPD患者は健常人に比して有意の低下を認めたが (HD: p<0.005, CAPD: p<0.05), 患者群間に差を認めなかった. 3) MDA産生能は, 健常人13.3±2.0nmol/109 platelets, HD患者8.3±2.0nmol/109 platelets, CAPD患者9.6±1.2nmol/109 plateletsであり, HDおよびCAPD患者は健常人に比して有意の低下を認めた (HD: p<0.001, CAPD: p<0.001). さらにHD患者はCAPD患者より有意に低値を示した (p<0.05). 4) K+-EDTA ATPase活性はMg++ ATPase活性に比して低値を示し, 3群間を比較できなかった.
    以上の成績より, 慢性腎不全患者の血小板異常は血液浄化により改善されるが, 維持透析患者であっても臨床上見出し得ない血小板異常が存在することが示唆された. また, CAPDはHDに比して血小板に与える影響の少ない治療法であると推察された.
  • 古山 明夫, 奥谷 博昭, 坂 義満, 横地 徹, 佐藤 泰正, 伊藤 誠, 武内 俊彦, 村井 澄子
    1986 年 19 巻 12 号 p. 1125-1130
    発行日: 1986/12/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    目的: 血液透析 (HD) 中に血圧低下発作をきたす症例の循環動態的特徴を明らかにし, その予知について検討した. 対象: 心不全徴候のない慢性腎不全患者28例. 方法: impedance cardiography, carotid pulse wave, ECG, PCGをHD中に同時記録し, 胸廓平均impedance (Zo), 1回心拍出量 (SV), 心係数 (CI), 総末梢血管抵抗 (TPR), 収縮時相を求めた. 測定回数はHD開始直前, 直後, 以後30分毎にHD終了までの計12回とした. HD中に血圧低下発作が出現しなかったS群と, 血圧低下発作が出現したD群の2群に分け, 上記各指標の経時的変化を比較し, 両群間の相違について検討した. 結果: 28例中S群は19例. D群は9例で, うち3例はHD中期 (2時間から3時間の間) に, 6例はHD後期 (4時間から4時間30分の間) に血圧低下を認めた. HD開始前値では, D群のZoはS群に比較し有意に高値で, D群のSV, CIはS群に比較し有意に低値であった. 発作出現前 (HD開始後4時間) の両群間の血圧, HR, Zo, dz/dt min., SV, Cl, TPR, PEPには有意差はなかった. その30分前 (HD開始後3時間30分から4時間の間) の変化では, D群はS群に比較しΔsBP, ΔmBPの降下度, ΔPEPの延長度, ΔETcの短縮度, ΔET/PEPの減少度が有意に大であった.
    考察: HD中の血圧低下発作の出現機序は除水による循環血液量の減少が主因とされている. 今回の検討では, 発作出現前の血圧, SV, CI, TPRには両群間に有意差はなかったが, その30分前の変化ですでにD群の収縮時相の変化に相違を認めたことより, 循環血液量の減少だけでなく, 心筋収縮能や末梢血管応答の異常などが複雑にからんでいるものと考えられた. HD中に低血圧発作をきたす症例は, 発作出現30分前にすでに収縮時相の異常を呈する循環不全状態が存在しており, この収縮時相の異常をみつけることにより, HD中の低血圧発作の予知が可能と考えられた.
  • 巴 ひかる, 安尾 美年子, 早坂 勇太郎, 鈴木 利昭, 東間 紘, 太田 和夫
    1986 年 19 巻 12 号 p. 1131-1135
    発行日: 1986/12/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    慢性腎不全で血液透析を行っている患者の末梢血リンパ球内Ca++およびPHAによるCa++ influxを測定するとともに, PHA刺激に対するリンパ球の幼若化反応を正常人と比較することで, 透析患者の細胞性免疫機能について検討した.
    対象は血液透析患者24名と正常人10名で, 前者は短期透析群 (10.7月) 12名と長期透析群 (131.8月) 12名に分け, リンパ球内Ca++はQuin 2を用いて測定した. リンパ球内Ca++は正常人で0分値127.1±17.1nM, 30分値169.6±42.1nM, 60分値221.6±50.5nMで時間とともに上昇傾向を示し, 血液透析群でも同様の傾向を示した. 短期透析群では30分値145.9±45.9nM, 60分値190.0±65.2nMと低値を示したが, 各群間で統計学的有意差は認められなかった. また, PHA刺激によるCa++ influxの増加は, 正常人が338.3±65.3nM, 短期透析群が301.4±83.7nM, 長期透析群が352.5±142.5nMで, 短期透析群で低値を示したが有意差はなく, PHA刺激に対するリンパ球幼若化率も, 正常人が13.7±7.4, 血液透析群が17.5±11.3で各群間に統計学的有意差は認められなかった.
    以上により, toxicな尿毒症患者血清からいったん分離されたリンパ球はほぼ正常に近い反応を示し, 増殖機能の低下はほとんど認められなかった. 従って慢性腎不全患者の細胞性免疫機能の低下は, 尿毒症性物質によるリンパ球機能の可逆的抑制やリンパ球数の低下に起因するのではないかと考えられた.
  • 宍戸 洋, 藤倉 良裕, 上田 仁, 吉田 太一, 鈴木 富夫, 関野 宏, 二木 源, 熊谷 裕司, 樋渡 信夫, 浅木 茂
    1986 年 19 巻 12 号 p. 1137-1143
    発行日: 1986/12/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    近年, わが国では大腸癌の増加傾向が著しく, その原因として食生活の欧米化, 摂取線維量の減少などがあげられている. 透析患者の食生活は高蛋白, 高脂肪食の傾向が強く, 野菜, 果物などの摂取不足になり易い特徴をもっている.
    今回, 我々はこれまでに行った透析患者における下部消化管の検査において発見した大腸隆起性病変に検討を加えた.
    1981年9月から1986年6月までに宏人会中央病院で大腸のX線および内視鏡検査を行った維持透析患者数は81例 (男性55例, 女性26例) である. その結果, 1. 大腸隆起性病変を27例に46病変発見した. 大腸癌は6例, 8病変であった. そのうち3例は進行癌で外科手術を行った. 2. 大腸ポリープ例, 13例 (20病変) に内視鏡的ポリペクトミーを, 2例 (2病変) に外科的ポリペクトミーを行った. その結果, 3例で早期癌を発見した. 内視鏡的ポリペクトミー後3例で後出血をみたが保存的に止血しえた. 内視鏡検査中1例で穿孔し緊急手術を行った. 3. 大腸腺腫を19例に28病変発見した. うち21病変は5mm以上であった. 4. 大腸癌および5mm以上の腺腫例計18例は50歳以上が多く, また, 4年以上の長期透析例が多かった. 検査の契機は肛門出血や血便の例が9例を占めた. 5. 大腸隆起性病変 (癌, 腺腫, 平滑筋腫, 組織未確認) 計46病変の占居部位はS状結腸が12病変 (26%), 直腸10病変 (22%) で下部大腸で48%を占めた.
    以上から, 透析患者では大腸隆起性病変が多く, 出血で発見されている例が多いので, 問診, 直腸指診とともに積極的な下部消化管の検査が重要であるといえる. また, 透析患者では便秘例が多く, 低線維, 高脂肪食の傾向が強いので, 大腸癌の発生に留意する必要があると考えた.
    透析患者が大腸癌のハイリスクグループといえるかどうかはさらに症例数を重ねた検討を要する.
  • 添田 耕司, 小高 通夫, 田畑 陽一郎, 林 春幸, 伊藤 靖, 今関 英男, 磯野 可一, 嶋田 俊恒, 桜井 信也, 入江 康文, 鹿 ...
    1986 年 19 巻 12 号 p. 1145-1153
    発行日: 1986/12/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    1969年から1976年6月まで千葉大学第2外科および千葉社会保険病院で血液透析に導入した症例は, 128例であり, 10年, 15年, 17年生存率は, それぞれ50%, 42%, 25%であった. 10年生存後死亡例は9例で, その死因は, 脳血管障害5例, K中毒・頓死2例, 心筋硬塞および骨折後敗血症各1例であった. 48例について社会復帰および骨関節症状のアンケート調査を行い, 腎性骨異栄養症 (ROD) のパラメーターについて検討した. 男性36例, 女性12例で平均47.4歳であり, 慢性糸球体腎炎41例, 嚢胞腎3例, 他4例であった. 社会復帰状況は, 完全54%, 部分10%, 主婦19%, 余生4%で, 社会復帰率は87%であった. 社会復帰阻害要因として, 骨関節症状および手根管症候群が最大であった.
    骨筋系を中心とした症状では, 運動痛42%, 自発痛23%, 筋力低下67%, 手根管症候群 (CTS) 19%, 病的骨折2%であった. β2マイクログロブリン (β2 M) と透析歴には負の相関を認めたが, CTSの発症とβ2M値には相関がなかった. 透析歴とMD法のscoreおよびオステオカルシン (OC) は正の相関を示し, 透析歴とMClおよびΣGS/Dは負の相関を示した. 透析歴とPTH, 血清Al-Pおよび血清Al値には相関が認められなかった. Al剤投与例では, 非投与例に比し有意に血清Al値が高値を示した. 腎性上皮小体機能亢進症にて1例に上皮小体全摘兼自家移植術を施行した. N-PTHが350pg/ml以上の症例は6例あったが, このうち骨関節症状を示した症例は3例で, いずれも保存的治療が有効であった.
    10年以上透析例の骨パラメーターとして, MD法およびOCが有用と思われた. これらのパラメーターを中心にfollowし, RODに対する早期かつ保存的治療が望まれる.
  • 菅原 和博, 中村 昭弘, 松平 修, 菅原 浩二, 那須野 房江, 亀岡 慎二, 二瓶 宏, 三村 信英
    1986 年 19 巻 12 号 p. 1155-1157
    発行日: 1986/12/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    透析液原液の希釈に使用される水により, 溶血性貧血などの合併症がおこりうるとの報告がなされ, 水処理の重要性が注目されるようになった. 我々は水処理が透析患者の貧血におよぼす可能性を調べる目的で逆浸透処理水を使用する以前 (軟水化および活性炭濾過処理水) と使用後における貧血の変化を検討した.
    対象は特別な合併症を有さず定期外来透析を実施している男性13名, 女性8名, 合計21名で平均年齢は54歳4ヵ月, 平均透析歴は4年5ヵ月である. 調査期間は逆浸透処理水を使用する以前の昭和59年3月から12月, 使用後の昭和60年3月から12月であり, それぞれ10ヵ月間の総蛋白, 尿素窒素, クレアチニン, ヘモグロビン, 赤血球数, ヘマトクリット値の平均値を比較した. 症例別の血液学検査値をみるとヘモグロビンは10名に明らかな上昇がみられ, 赤血球数とヘマトクリット値は6名に明らかな上昇がみられた. しかし, 逆浸透処理水使用前後の生化学, 血液学検査の平均値を比較すると両群間に統計的な有意差は認められなかった. また, それぞれの期間において総蛋白, 尿素窒素の変化に伴うヘモグロビン, 赤血球数, ヘマトクリット値の変化は認めなかった.
    今回の調査では, アルミニウムをはじめとする微量な物質の除去が貧血の改善に関与している可能性が示唆されたものの, 今後の検討が必要である.
  • 平昭 浩司, 天野 国幹, 藤高 嗣生, 今津 通教, 岸川 博紀, 江崎 治夫, はい 柄球
    1986 年 19 巻 12 号 p. 1159-1161
    発行日: 1986/12/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    週3回・1回3時間以内の透析を短時間透析と定義し, 短時間透析希望者全員に対して短時間透析を行い検討した.
    ダイアライザーは男性にRENAK A-23 H (2.3m2), 女性にRENAK A-15 H (1.5m2) を用い, 血流を200ml/min以下で短時間透析を行った. 1年以上経過した症例の透析前血液生化学検査値, 死亡した症例の死因について検討した. 血液透析患者58例中56例が短時間透析を希望し, 54例 (希望者の96.4%) に施行した. 短時間透析施行1年後の透析前血液生化学検査はBUN 79.2±15.6mg/dl, Cr 13.0±3.20mg/dl, K 5.02±0.94mEq/l, Ht 20.6±3.70%, time-averaged BUN (TACurea) 58.9±11.3mg/dlで, 普通透析 (5時間透析) 時に比較し1%以内の危険率で有意差を認めなかった. 短時間透析施行1年後の透析前心胸比 (CTR) は55.9±6.30%で, 普通透析時に比較し1%以内の危険率で有意の増加を示した. 死亡15例中3例が透析との因果関係が推測されたが, 短時間透析に起因するものではなかった. 短時間透析に移行できなかった症例は大量水分摂取1例, 血流不足1例であった.
    我々の血液生化学的データからは, 血液生化学的に短時間透析がほぼ可能であると思われた. ただCTRの有意の増加が見られたことは今後の検討が必要と思われる.
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