日本透析療法学会雑誌
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20 巻, 8 号
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  • 山縣 淳, 小幡 紀夫, 水沢 直人
    1987 年 20 巻 8 号 p. 591-595
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    透析療法の進歩により, 長期透析患者が多くなり, 不定愁訴を訴える患者も増加してきた. 私たちは透析患者のニューロパチーを検討するために, 神経伝導速度を測定してきたが, 今回右正中神経について詳細に検査し, 健常対照群と比較検討した. 健常対照群では運動線維の神経伝導速度は加齢に従い低下しており, 逆に閾値は年齢とともに上昇していた. 知覚線維でもこの傾向はみられたが, 運動線維ほど著明ではなかった. 透析患者群の年齢による伝導速度の遅延, 閾値の上昇は運動線維, 知覚線維ともに著明であった. 運動線維の神経伝導速度は透析患者群では健常対照群にくらべ各年齢で著明に低下していたが, 知覚線維では差はみられなかった. しかし, 閾値は, 両群とも運動線維も, 知覚線維も加齢に従い上昇しており, 透析患者群の閾値は健常対照群に比べ明らかに上昇していた. 慢性腎不全患者の神経伝導速度の遅延, 閾値の上昇は軸変性に続いておこる脱髄性変性と考えられており, その変化は閾値に早期にみられた. このように神経伝導速度の測定は, 閾値を同時に記録することにより, 透析患者の神経傷害をみるうえで有力な方法と考えられるが, その場合に年齢による変化を考慮しなければならない.
  • 椿原 美治, 倭 英司, 横山 建二, 万代 尚史, 岡田 倫之, 中西 功, 飯田 喜俊, 秦 石賢, 大西 健二, 小林 芳夫
    1987 年 20 巻 8 号 p. 597-601
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    約4年の慢性血液透析歴を有する49歳の男性がvascular access infectionによると思われる感染性心内膜炎を合併した. 血液培養にてStreptococcus faecalisが検出された. 抗生剤にて炎症所見は改善したが, 大動脈弁および僧帽弁閉鎖不全により心不全が出現し血液透析による管理が困難となった. そこでCAPDを導入し術前管理を行い, 大動脈弁置換術および僧帽弁形成術を施行した. 術中, 人工心肺回路に重曹透析を併用した. 体外循環時間が2時間28分と長く, 大量の輸血を要したにもかかわらず, 極めて安定した水, 電解質バランスが保持された. 術直後も心不全の管理の目的でCAPDを継続した. さらにvascular access infectionによる置換弁への再感染の予防も考慮して社会復帰に際してもCAPDを採用した. 退院後現在に至る2年10ヵ月間術前にも勝る社会復帰状況にある.
    本症例の経験より透析患者におけるvascular access infectionの危険性に関し文献的考案を加え, 開心術前後の管理におけるCAPDの有用性, 人工心肺回路と重曹透析の併用の有用性について考察した.
  • 横山 睦子, 小柳 久枝, 大島 譲二, 小池 勝, 沢田 皓史, 新井 綾子, 村井 キヌエ
    1987 年 20 巻 8 号 p. 603-607
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    当院とその関連施設において, 10年以上透析歴のある患者の現状分析ならびに透析開始後1-2年時との比較を行った. 対象は10年以上透析歴のある患者男子19名, 女子11名で平均透析歴11.4年である. 導入時平均年齢31.1歳, 平均体重52.4kg, 平均収縮期血圧162mmHg, 拡張期血圧98mmHg, BUN 104mg/dl, Cr 13.2mg/dlで透析開始した. これらの患者の透析開始1年後と10年以上経過した現在の各データの比較では, 透析前BUNは有意差なく, BUN排除量は10年後有意に上昇している. Htは1年後が22%, 10年後が28%で有意に上昇し栄養状態の改善が示唆された. Na, Kについては10年後が有意に上昇しているが, 血圧は142/79mmHg, 心胸比は44%で有意に低下しており, 十分な除水が行えれば高Na透析液の使用下でも, 血圧はよくコントロールされている. 社会復帰状況は, アンケート調査によると夜間透析患者が64%と半数以上を占め, 完全社会復帰をしている. 昼間透析群では働いていない患者が40%を占めるが体力がない人の他に仕事がない人が含まれる. 食事に関しては, 家庭での食事ではとくに制限をしていない患者が81%を占め, 90%以上が外食もしている. 食事制限の厳しくないことは患者の社会生活を豊かなものとする最も重要な条件だと考える. 10年後の身体状況に関しては, 調査をすれば何らかの訴えはあるが, 患者の多くは元気に働いており, 現在が最も充実していると回答している. 現在は合併症が少ないが, 今後骨に関する訴えが増加するものと思われる.
  • 風間 真理子, 坂田 佐代子, 松本 邦子, 鈴木 亨, 下条 文武, 荒川 正昭
    1987 年 20 巻 8 号 p. 609-613
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    慢性血液透析患者が妊娠して児を得ることは困難と考えられているが, 今回私達は, 2回目の妊娠が無事継続して分娩に至り, 母児共に順調な経過をとっている1症例 (31歳, 女性: 透析歴3年) を経験したので, 看護面より若干の検討を加えて報告する.
    初回出産は透析2年目であるが妊娠26週に辺縁洞破裂のため早産した. 児は880g, 未熟肺のため17時間後に死亡した. 透析3年目再度妊娠し, 妊娠16週目腹部緊満症状が出現し, 産科へ入院した. 初回の経験を踏まえて, 最低妊娠32週まで継続させることを目標に, 透析室と産科で協力体制をとった. 私達は, 1) 妊娠の継続を計り, 母児ともに最良の状態で分娩に臨めるよう援助することと, 2) 不安と苦痛の緩和に努めることを看護目標にあげた. 看護上の問題点として, 1) 子宮筋収縮による腹部緊満症状がある, 2) 透析中に血圧低下が起きる, 3) 胎児に対する不安がある, 4) 全身掻痒感と長時間透析による苦痛があるなどをあげ, これらの問題点を中心に看護を展開した. 看護面としては, 妊娠20週頃から透析中に血圧低下と腹部緊満がみられたが, 注意深い綿密な観察に努め, 透析を十分行えるように検討を重ねて対処した. また胎児に対する不安や透析中の苦痛があるため, それらを少しでも緩和させ, 夫や家族とともに励ましたことが重要であった. 全身の掻痒感は妊娠中の肝機能障害とともに現われたが, 分娩後に消失した. 患者は, 妊娠34週に経腟分娩にて, 1,802gの男児を出産した. 母児ともに順調な経過を辿り, 現在に至っている.
  • 合屋 忠信, 阿部 哲哉, 佐内 透, 泊 真二, 内藤 正俊
    1987 年 20 巻 8 号 p. 615-618
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    頑固な肩痛を訴える長期透析患者の存在は多くの透析専門医の認識するところである. 私どもは昭和60年8月から12月までの5ヵ月間に, こうした症例で肩甲上神経絞扼障害と診断した6例に神経除圧術を行い, 著効を得たので報告する. 患者は男2, 女4, 年齢は36-55歳 (平均49.5歳), 透析導入から発症までの期間は76-121ヵ月 (平均107ヵ月) で, 6例中5例は内シャント作成肢の発症である. 診断は肩関節および肩関節周囲筋の整形外科的診察, 計測, 試験的肩甲上神経ブロック, 肩関節造影, 肩甲上神経の棘上筋棘下筋への運動神経終末伝導速度の測定によった. 肩甲上神経終末伝導速度は, 患側が健側あるいは患側腋窩神経に比較して著明な遅延がみられた. 手術は気管内挿管全身麻酔下で, 肩甲棘上方の横皮切で僧帽筋と棘上筋を鈍的に切離して肩甲切痕部に到達し, 上肩甲横靱帯を切離して肩甲上神経の除圧を行った. 術後7-10ヵ月 (平均8.5ヵ月) の観察で, 肩痛は5例に, 肩甲切痕部の圧痛は5例に, 肩関節の外転外旋障害が4例に, 肩関節周囲筋の筋力は外旋およびscapular protractionで5例に改善をみた. 肩甲上神経の終末伝導速度の遅延は, 平均値で棘上筋は6.4msecから3.9msecへ, 棘下筋は7.3msecから5.1msecに改善された. 総合的手術成績の評価は3例が優, 2例が良, 1例が不良であるが, 血腫, 感染, 神経損傷, 関節可動障害等の手術合併症はみられなかった. 上肩甲横靱帯は硬く肥厚しているが, 組織学的にアミロイドの沈着は認めなかった.
  • 露木 和夫, 山家 敏彦, 赤池 真, 野村 正征, 相原 正彦, 張 光哲, 海老根 東雄
    1987 年 20 巻 8 号 p. 619-624
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    慢性血液透析 (HD) 患者の最大有酸素運動能力の制限因子を検討する目的で, 35例のHD患者と52例の健常者に対して, 心機能および末梢循環機能を評価し, またヘモグロビン濃度を測定した. HD患者は心疾患の合併がなく, β-遮断剤やdigitalis製剤の服用もしていない症例であった. また運動負荷試験の中止理由が心電図異常や血圧異常でない症例であることを厳守した. 全対象において最大運動負荷試験より得られた最大酸素摂取量, 最大pressure rate productからBruceの計算式に従いfunctional aerobic impairment (FAI), left ventricular impairment (LVI) およびperipheral circulatory impairment (PCI) を求めた. HD患者のヘモグロビン濃度は最大運動負荷試験の前に測定した.
    その結果, 次のような成績が得られた. HD患者のFAI, LVIおよびPCIは, 健常者と比較して有意に高い値を示した. またHD患者のPCIはLVIよりも高値を示した. 健常者のFAIはLVIとPCIの両方に有意な相関関係を認めた. しかしHD患者のFAIはLVIとは相関せず, PCIのみに有意な相関関係を認めた. HD患者のFAIはヘモグロビン濃度との間に有意な相関関係を認めなかった.
    以上の成績からHD患者の最大有酸素運動能力の制限を決定する因子としては, 心機能の低下よりもヘモグロビン濃度の低下以外の末梢循環系の機能の低下に関係するものと考えられた.
  • 園部 美弥彦, 湯川 進, 西川 治, 日比野 彰, 宮井 利彦, 前田 孝夫, 野本 拓, 西川 紀子, 西出 巌
    1987 年 20 巻 8 号 p. 625-630
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    透析の有無にかかわらず慢性腎不全患者では中間型リポ蛋白 (IDL) の増加が認められる. IDLはatherogenicなリポ蛋白 (Lp) の1つとして知られ, 慢性血液透析患者 (HD) における動脈硬化症との関連で注目されているが, その性状については十分検討されていない. そこで今回, HD-IDLの性質について健常人 (C) のそれと対比した. 性, 年齢をマッチさせたHDおよびCの血清をHavelらの方法で超遠心を2回くり返し, IDLを得た. このIDLを透析脱塩後, その化学組成およびアポ蛋白 (アポ) を分析した. また一部でBiogel A-5mを用いたゲル濾過およびPAG電気泳動 (PAGE) を施行した. HDはCに比べ, 血清で中性脂肪 (TG) の増加とアポC-IIIの増加を示した. 一方総コレステロール (TC) やアポB, C-II, Eには差異はなかった. 血清IDL総量の増加を示した. その化学組成では蛋白, コレステロール (Ch) リッチでTGはむしろ低値を示し, Chのエステル比も低下していた. アポ蛋白組成では, アポBの増加とC-II, C-III, Eの低下を示した. その結果として, E/B比の著明な低下がみられたが, C-II/C-III比には差異はなかった. またゲル濾過およびPAGEでは両者で著明な差異は認められなかった. 以上の結果より, HDで増加しているIDLはCと比較すると, その化学組成やアポ蛋白組成では全く異なった性質を有するLpであることが判明した.
  • 岡田 義信, 高野 吉行, 森田 幸裕, 佐藤 建比呂, 鈴木 亨, 丸山 雄一郎, 下条 文武, 川田 一也, 山川 能夫, 荒川 正昭
    1987 年 20 巻 8 号 p. 631-637
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    腎不全のため血液透析を行った全身性アミロイドーシス12例 (骨髄腫随伴1例, 原発性4例, 続発性7例) について検討した. 続発性症例の原疾患は, RA 3例, 慢性腸炎1例, 中耳炎1例, 結核1例, ベーチェット病1例であった.
    初診時主訴は, 蛋白尿が7例と最も多く, 下痢3例, 巨舌1例, しびれ感1例であった. ネフローゼ症候群は8例に認められ, 治療抵抗性であった. 心アミロイドーシスが認められた症例は高窒素血症は軽度であったが, 肺浮腫のため早期の透析導入を余儀なくされたが, いずれも早期に死亡した. 心アミロイドーシスが認められない症例でも, 肺浮腫や全身浮腫のため早期の透析導入が行われた. 臨床的に心アミロイドーシスと診断されない例でも, 心エコー図, 心電図に異常所見が多く, 治療に抵抗性で, 心へのアミロイド物質と沈着が強く疑われた. また, 透析導入後新たに心アミロイドーシスが認められ, 心伝導障害のため死亡した症例もあり心アミロイドーシスは本症透析例の予後を左右する重要な因子と考えられた.
    腎, 心以外の障害としては, 透析中の血圧低下, 内シャント障害, 下痢, 腹痛などの消化器障害, 皮膚掻痒感, 甲状腺機能低下などが認められた. いずれも難治性であったが, 皮膚掻痒感に対してHDF, 甲状腺機能低下に対して甲状腺ホルモン薬が有効であった.
  • 1987 年 20 巻 8 号 p. 638-643
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
  • 1987 年 20 巻 8 号 p. 644-649
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
  • 1987 年 20 巻 8 号 p. 650-655
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
  • 1987 年 20 巻 8 号 p. 656-660
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
  • 1987 年 20 巻 8 号 p. 661-665
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
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