慢性透析患者の血清β
2-マイクログロブリン (β
2-MG) は, 透析導入時に既に高値を示している. 本値は透析開始後, 尿量の減少と共に急上昇し一旦, プラトーに達した後, クプロファン膜透析を長期継続すれば漸増し, 透析期間が10年前後に至ると本値が漸減する症例が散見されるようになる. PMMA, EVAL, PAN (AN-69) 膜透析群, CAPD群における血清β
2-MGレベルはクプロファン膜透析群に比較して明らかに低値を維持した. 血清β
2-MG値に影響を与える因子としては, (1) 尿量の減少 (2) 透析膜・透析方法, 透析血液量 (dialyzed blood volume) (3) 感染症 (4) 年齢 (栄養状態, 筋肉量) (5) 透析期間などが重要である. 血清Cr, BUNはいずれの膜を使用しても透析終了後次回治療までにほぼ直線的に増加しており, 血管外プールから血管内への移行はコンスタント, スムースに行われるものと考えられた. 一方, 同様な変化を血清β
2-MGについてみると, PAN (AN-69) 膜のようにβ
2-MG除去能を有する膜によるHD, HDFでは, 治療終了後の同値の上昇は二相性であった.
従って, β
2-MGは血管外の少なくとも二つの異なったプールに存在し移動係数に大差があるものと予測された.
臨床的に観察すると, β
2-MGと関連の深い手根管症候群およびアミロイド骨症の両者は, いずれも透析期間の延長と共に出現頻度が高くなることが確実であった.
しかし, これらは血清β
2-MGレベルと単純には相関していなかった. AI骨症におけるDFOテストのような蓄積量をより正確に把握する方法が必要となろう.
今後, 透析方法はβ
2-MG除去能を高める方向へ向かうであろうが, これによるmeritとdemeritの慎重な検討も向後の重要な課題の一つであろう.
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