スチール症候群により手指潰瘍が悪化した強皮症の透析例を経験したので, 報告する.
症例: 58歳, 女性. 30歳頃より, レイノー現象あり. 昭和62年冬, 両側第2指尖部に小潰瘍が出現した. 昭和63年12月, 咳嗽, 呼吸困難で, 他院入院. エコー上両腎は萎縮し, Cr 9.3mg/d
lと, 慢性腎不全を呈した. 左手にタバチエール内シャントを作成し, 血液透析に導入された. しかし, 8か月後に閉塞したため, 左前腕橈骨動脈一嶢側皮静脈間に側々吻合にて再建術を行った. その後, 発熱, 多関節炎, 胸膜炎, 心膜炎が出現し, 平成元年10月, 当科入院となった. 強指症, 両手末節骨吸収像, 肺線維症より, 強皮症と診断した. プレドニソロンの投与で諸症状は改善したが, 2年1月, 左第3指尖部に潰瘍出現, 疼痛を訴えていたが, とくに透析開始後よりシャント側左手の冷感, 蒼白化, 疼痛が増悪, いわゆるスチール症候群を呈した. その後, 左第5指尖部にも小潰瘍が発現し, 難治性であった.
強皮症は, その血管病変のためにスチール症候群が発生しやすい病態と考えられ, 本例のごとく, 手指潰瘍の出現や増悪をきたす可能性があり, 血液透析を行う場合には, ブラッドアクセスの作成方法, 部位の選択などの慎重な検討が必要と思われた.
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