二次性副甲状腺機能亢進症による腎性骨異栄養症 (ROD) に対して上皮小体全摘一部自家移植術 (PTX-AT) が行われているが, 術後3年以上の遠隔期における骨代謝, 骨所見に関する報告は少ない. 過去8年で38例に, PTX-ATを施行した. このうち術後3年以上経過した27症例について骨代謝の生化学的指標と, 全身骨X線所見について検討した. 透析歴は120-235か月 (平均181.1±30.7か月), PTX-AT後36-89か月 (平均61.9±11.9か月) を経過していた. C-PTHは術直後より減少し, 術後3年で5ng/m
l以下のものは22例で, 残り5例中4例は術後もほとんど減少せず, その後の検査で残存副甲状腺を確認した. 骨新生の指標となるオステオカルシンを, 術後症例 (PTX-AT群) とC-PTH 10ng/m
l以上の二次性副甲状腺機能亢進症例 (2°HPT群) で比較検討すると, PTX-AT群 (n=26) は平均106.9±98.7ng/m
l, 2°HPT群 (n=27) は平均230.9±157.9ng/m
lで, 有意にPTX-AT群が低値を示した (p<0.005). また, PTX-AT群では100ng/m
l以下のものは19例でその全例がC-PTH 5ng/m
l以下であった. 100ng/m
l以上の8例は, 2°HPT群と有意差を認めなかった. さらに, 両群においてオステオカルシンとC-PTHは正の相関が認められた (p=0.05). 全身骨X線所見を1. 手指骨 (Tuft resorption, TR), 2. 頭蓋骨 (Salt and pepper, SP), 3. 腰椎 (Rugger jersey, RJ) の骨吸収像に分けてPTX-AT前後で比較検討した.
1) TR (n=23): 悪化例0, 不変例2, 改善例21, 2) SP (n=21): 悪化例0, 不変例1, 改善例20, 3) RJ (n=21): 悪化例1, 不変例10, 改善例10.
以上より, PTX-ATにより手指骨, 頭蓋骨は著明に改善するが, 腰椎は半数が不変であり改善傾向が少なかった. また, 術後持続副甲状腺機能亢進症を呈する症例では, 骨所見改善に乏しく, 骨代謝の生化学的指標のC-PTH, オステオカルシンと骨所見は相関するものと考えられた.
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