文科省の2002年調査によれば「読むこと」に困難を持つ児童生徒が、義務教育段階で尐なくとも数十万人規模で存在すると推定される。欧米では通常の印刷物へのアクセスが困難な人々を"Print disabilities"と定義し、録音図書などの代替手段によるアクセス保障が進められてきた。
日本でも遅ればせながら2008年施行「教科書バリアフリー法」や2010年著作権法改正により、代替手段提供に係わる法的・制度的制約が緩和された。しかしその立法趣旨が十分生かされているとはいい難く、必要とする児童生徒の手元にまでは充分届いていないという実態がある。
しかしこれら法改正を契機として、DAISY教科書のようなデジタル教科書の必要性と有効性についての認識は進みつつある。またDAISYと電子書籍の国際標準規格であるEPUBとが融合したことにより、アクセシビリティ確保への期待が高まっている。このような法的・制度的制約の緩和に至る経緯や現状を紹介し、今後のデジタル教科書導入促進の方策を提起する。
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