心電図
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10 巻, 4 号
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  • 宮崎 利久, 小川 聡, 中村 芳郎, Douglas P Zipes
    1990 年 10 巻 4 号 p. 389-396
    発行日: 1990/07/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    開胸犬12頭にCesium chloride (Cs) を静注し, 心室頻拍 (VT) の発生様式と左室心内膜面のmonophasic action potential上の早期後脱分極 (EAD) を観察し, これらに及ぼす心周期, adrenergic interventionの影響を検討した.Csのピーク効果時心房ペーシング周期を漸増するとEAD amplitudeは段階的に増大した.心臓交感神経の電気刺激 (BAS) は同一心周期でのEAD, VT発生率を増加させた.VTに先行するペーシング心拍のEAD amplitudeがVT第1拍のtake-off potentialに一致する例を認めた.Propranolol, phentolamineによるadrenergic blockadeはBASの増悪効果を予防した.
    以上, insitu心のEADの心周期変化に対する反応は細胞内記録により報告されたEADの反応と一致した.Cs投与後のVT発生へのEADの関与が示唆された.本QT延長モデルでの交感神経刺激による不整脈の増悪, adrenergic blockadeの予防効果は再分極異常によるEADの消長によって説明可能と思われた.
  • 清水 渉, 大江 透, 宮沼 弘明, 瀧 晋一, 栗田 隆志, 高木 洋, 相原 直彦, 鎌倉 史郎, 松久茂 久雄, 下村 克朗
    1990 年 10 巻 4 号 p. 397-406
    発行日: 1990/07/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    顕在性WPW症候群5例, 潜在性WPW症候群2例の副伝導路順行性および逆行性の最大1: 1伝導能 (Max1: 1) と有効不応期 (ERP) に対するdisopyramide (Ia群抗不整脈薬) とmexiletine (Ib群抗不整脈薬) の単独および併用効果を検討した. (1) Disopyramideとmexiletineは単独でMax1: 1をほぼ同等に低下させ, ERPをほぼ同等に延長させた. (2) 単独投与群よりもそれぞれ低濃度のdisopyramideとmexiletineの併用で, Max1: 1は単独投与時に比べさらに有意に低下し, ERPも延長する傾向を認めた.以上から, disopyramide (Ia群) とmexiletine (Ib群) の併用により, 副伝導路伝導能は少なくとも相加的に低下する可能性が示唆され, 単剤で臨床効果が不十分な症例や, 副作用のため十分な使用が困難な症例で併用療法が有用と考えられた.
  • 高瀬 凡平, 栗田 明, 丸山 寿晴, 菅原 博子, 岡本 安裕, 上畑 昭美, 西岡 利彦, 里村 公生, 水野 杏一, 中村 治雄
    1990 年 10 巻 4 号 p. 407-416
    発行日: 1990/07/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    心室性期外収縮 (PVC) 症例における自律神経活動を検討するために, 器質的心疾患を有さないPVC症例16例に自律神経反射試験, 運動負荷試験およびホルター心電図 (Holter ECG) を同時に施行し, 自律神経反射試験によりPVCの誘発が認められるgroup A 8症例と, 誘発が認められないgroup B 8症例に分けて検討した.
    その結果, 運動負荷試験によりPVCの誘発される症例は, group Aで8例中5例 (62%) に対してgroup Bでは8例中1例 (13%) であり, その頻度はgroup Aで有意に高かった.運動負荷中のpressure ratep roductもgroup Aに有意の高値が認められた.またHolter ECGにおけるPVCの重症度や, その発現様式には両群間で差は認められなかったが, 日常生活における心拍数の変動はgroup Aに大である傾向が認められた.
    Group Aの症例は, 主に交感神経活動が亢進した状態にあることが考えられ, 同じ器質的心疾患を有さないPVC症例においても, 自律神経反射試験によりPVCの誘発される症例は, そうでない症例に比べ臨床的に異なった意義を有することが示唆された.
  • ―無麻酔慢性房室ブロック犬での検討―
    関口 昭子, 傅 隆泰, 五十嵐 正樹, 小山 晋太郎
    1990 年 10 巻 4 号 p. 417-424
    発行日: 1990/07/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    洞結節および房室結節に対するCa拮抗剤の効果については多くの研究があるが, 下位自動能に対する効果についてはいまだ不明の点も多い.今回我々は14頭の犬に電気的Ablationを行い, 完全房室ブロックを作製し, 無麻酔下に各種Ca拮抗剤の効果を検討した.
    最初に9頭の犬でverapamil (0.4mg/kg) の効果を観察したところ, QRSレート (Rレート) は静注1~2分後に42±14% (平均±SD) の最大増加率を示し, Pレートは1分後が最大で平均29%の増加を示した.さらに別の5頭では, 薬物学的神経遮断を行い, verapamilのほか, diltiazem0.4mg/kg, nifedipine15μg/kgの効果についても調べた.除神経後のRレートはいずれのCa拮抗剤を用いても30%程度の有意な増加を示した.一方, 除神経後のPレートはverapami1, diltiazemでは有意に減少し, nifedipineでは大きな変化が認められなかった.以上の成績からCa拮抗剤によるRレートの増加は, 交感神経作用のほか, Ca拮抗剤そのものの作用も顕著に関与することが示唆される.
  • 尾山 洋太郎, 神田 孝一, 尾谷 透, 若林 央, 富田 籌夫, 館田 邦彦, 村上 匡, 加藤 法喜
    1990 年 10 巻 4 号 p. 425-434
    発行日: 1990/07/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    心室性不整脈に対する薬効判定基準は, 既存の判定基準を利用してなされることが一般的であるが, 今回比較的同一の臨床的背景を有する対照群と抗不整脈剤投与群の両者であっても, 単回帰分析により, かなりの自然変動範囲の違いを有することが明らかになった.したがって薬効判定に際しては, やはり観察期に2回以上のホルター心電図を実施し, 対象群の心室性不整脈の自然変動を求めることでより, 正確な判定がなされ得ると考えられた.この方法をβ遮断剤の一つであるcarteololに応用し, 約40%のVPC頻度抑制効果と15%のRVPC抑制効果が観察された.
  • 青木 隆夫, 田中 博, 平柳 要, 濱田 泰一, 馬場 一憲, 古川 俊之
    1990 年 10 巻 4 号 p. 435-444
    発行日: 1990/07/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    心電図逆問題解法の推定精度と空間分解能を実験的に検討した.実験には犬冠灌流摘出心と円筒型胴体モデルを用い, 心内膜側に単一の, 心外膜側には単一および任意の間隔で2ヵ所に凍結傷害部位を作成した.胴体モデル表面電位から心外膜ST電位を推定し, 相関係数と傷害部位の再現性から精度と分解能を評価した.本解法は無限媒体電位を球関数展開し, これに立体角法で近似した胴体モデルの境界効果を加え心外膜電位を決定する.結果は, (1) 心内膜側傷害によるST下降電位の推定精度は平均相関係数でr=0.596, 傷害部位の推定誤差は0.9cm, (2) 心外膜側傷害によるST上昇電位の推定精度はr=0.767, 推定傷害部位は実測と一致し, (3) 本逆問題解法の空間分解能は2.5cmであった.本解法は心筋傷害部位の推定に十分な精度と分解能を有するため, 局所的電気異常部位の推定には有効な診断情報を提供できるものと考えられる.
  • 住吉 正孝, 中田 八洲郎, 大野 安彦, 久岡 英彦, 小倉 俊介, 中里 祐二, 桜井 秀彦, 山口 洋
    1990 年 10 巻 4 号 p. 445-454
    発行日: 1990/07/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    A-Hブロック (A-HB) とヒス束内ブロック (BHB) で捕捉収縮と補充収縮のQRS波形を比較検討した.ヒス東電位図検査で診断されたA-HB19例, BHB28例, 計47例を対象とし, 捕捉収縮と補充収縮のQRS波形が同じであった例を同一群, 何らかの変化を認めた例を変化群とした.変化群はA-HB7例 (36.8%) , BHB20例 (71.4%) に認められ, BHBで高頻度であったが, A-HBでも従来考えられているより高率であった.BHBではQRS波形の変化群が同一群に比し有意に高齢で, 捕捉収縮の記録時から補充収縮の記録時までの期間が長い傾向にあった.また, 同一群と変化群で補充収縮の心拍数に有意差を認めなかった.
    QRS波形の変化した原因として, 本研究では, 徐脈による影響は否定的で, BHB例の一部では経時的変化による影響が加わっている可能性が示唆されたが, pacemaker shift, 自律神経系の影響など他の要因の関与も考えられた.また, BHBで補充収縮のQRS波形が正常化する場合には, ヒス東内の機能的縦解離が原因となっている例も認められた.
  • 舛田 博文, 桝井 良一, 外園 光一, 三宅 良彦, 佐藤 忠一, 村山 正博, 須階 二朗
    1990 年 10 巻 4 号 p. 455-462
    発行日: 1990/07/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    連発心室期外収縮 (PVC) に対する抗不整脈薬の短期および長期効果を明らかにするために, Holter心電図法を用いて無投薬時に連発PVCを有した心筋症14人, 虚血性心疾患26人, 器質性心疾患を有しない者16人に対して行われた抗不整脈薬治療の効果をretrospectiveに判定した.6ヵ月未満の短期の効果では, 連発PVCをLown grade 4Aと4Bに分けると, 有効率は4B (57.3%) より4A (69.2%) の方が高く, 薬剤抵抗性の者は4Bに多かった.6ヵ月以上の長期の効果として, 投薬後短期に連発PVCのgradeが一旦改善しても長期投与において増悪するものが多く (50%) , 特にIa群薬剤使用時に多くみられた (88%) .連発PVC, 特にgrade 4Bでは抗不整脈薬投与短期に有効と判定されても安易に長期投与することは危険であり, 3~6ヵ月ごとに薬剤の再評価が必要であると思われる.
  • 川久 保清, 柳堀 朗子, 青木 和夫, 郡司 篤晃, 大城 雅也, 井上 博, 杉本 恒明, 坂本 静男
    1990 年 10 巻 4 号 p. 463-468
    発行日: 1990/07/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    運動を始める前のメディカルチェックとして, Bruceの第2段階から始めるトレッドミル負荷試験を心疾患の既往のない外見上健康な成人505人 (男性209人, 平均42歳, 女性296人, 平均43歳) に行ない, 運動負荷時の心電図異常出現頻度について検討した.本法にて比較的短時間に (平均男性7.2分, 女性5.7分) , 安全に自覚的亜最大負荷を行なえた.負荷時のST下降は高年齢ほど多くみられ, 男女ともに10.5%の頻度にみられたが, 負荷後のST下降の回復は早かった.負荷時の心室期外収縮のみられる頻度は加齢とともに増加し, 男性の26.2%, 女性の22.5%にみられ, その約1/10が多形性, 連発性であった.上室期外収縮は男性の9.7%, 女性の12.6%にみられた.
    従来検討の少ない外見上健康な日本人におけるトレッドミル運動負荷心電図異常の発現頻度について報告した.
  • 鈴木 恵子, 戸山 靖一
    1990 年 10 巻 4 号 p. 469-476
    発行日: 1990/07/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    虚血性心疾患の治療に用いられているCABG, PTCAおよび抗狭心症薬の検討にトレッドミル負荷試験によるSTの改善, 運動耐容時間の延長の有無などが調べられている.著者らは, さきにトレッドミル負荷試験におけるDPとSTの関係をもとに求めたDP-ST直線, 角度を用い, その効果を調べた.CABG手術例では, 術前のDP-ST角度の平均値は-25.8°と傾斜は小さいが, 術後は-64.4°と傾斜は大となり, 明らかに心筋酸素消費量と供給の不均衡が改善されていることがわかる.PTCAではCABGに近い改善例も認め, 角度の平均値でみると改善の傾向はあるが, CABGに比べると程度は軽い.一方Nicorandil単独投与例を除くβ遮断薬, Ca拮抗薬, 持続性硝酸薬では, この角度は投薬前後でほとんど変わらず, これらの抗狭心症薬はCABGのように心筋酸素消費と供給の不均衡を本質的に改善するとはいえない点注意すべきであろう.
  • ―雑種成犬を用いた実験的評価―
    藤巻 信也, 小森 貞嘉, 渡辺 雄一郎, 吉崎 哲世, 田村 康二, 斉藤 義明
    1990 年 10 巻 4 号 p. 477-484
    発行日: 1990/07/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    我々は, 心腔内に挿入した刺激電極を使って検出した心内心臓運動図 (以下, 心内CMGと略す) を用いることにより, 致死性不整脈の自動検知と心収縮力の評価を行ってきた.今回雑種成犬を用いて不整脈の自動検知と心収縮力の評価という点での心内CMGの有用性を検討した.
    結果: (1) 1回心拍出量の変化と心内CMGの振幅の変化の間には極めて良い正の相関が認められた. (2) ; a) 上室性頻拍の場合, 血圧および心内CMGのパターン・振幅とも変化はなかった.b) 心室頻拍の場合, 血圧の低下に伴い, 心内CMGの振幅は著明に減少し, 血圧と心内CMGの振幅の間には正の相関が認められた.c) 心室細動の場合, 心内CMGの振幅は著明に減少し規則性が失われ, 心電図との1対1の対応性が失われた.心内CMGを植え込み除細動器に併用することにより, 誤作動を防ぐ可能性が示唆された.また心拍出量を連続的にモニターするシステムにも応用できると考えられる.
  • 斎藤 幾重, 高畑 秀夫, 渡辺 達也, 堀川 章仁, 鈴木 彰, 鈴木 重文, 前山 忠美, 佐藤 雅彦, 小松 正文
    1990 年 10 巻 4 号 p. 485-493
    発行日: 1990/07/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例, 66歳, 女性, 1週間前より風邪様症状が出現, その後息切れ動悸が出現し増強したため外来を受診, 心不全の診断にて入院した.
    外来受診時, 血清Kは4.0mEq/lと正常, 胸部X線写真でCTRが69%と心拡大を認め, 両側に胸水貯留を認めた.心電図上はQTcが0.46と軽度延長, またAPCが頻発し, couplet VPCがみられた.心不全に対しフロセミド, 抗不整脈剤としてジソピラミド, プロカインアミド, リドカインおよびメキシレチンの投与を開始した.
    翌24日, 血清Kは3.3と低下, QTcは0.57と延長した.ホルター心電図ではすでにVTが出現しており, その形からTorsades de pointesと診断した.低K補正のためK製剤を投与したが効果なく, 硫酸マグネシウムの投与によりTorsades de pointesは速やかに消失した.
    本症例は, 利尿剤投与によりTorsades de pointesが発生し, K投与のうえ, Mg静注が著効した.またホルター心電図にてその発生, 消失を観察し得た症例である.
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