症例は69歳の女性で, 心電図上, P波のレート170/分の頻拍を呈し, I,
aV
L誘導でP波は陰性で左房起源の心房性頻拍と推定された.心内電位記録では, 冠静脈洞遠位部電位がP波に先行して出現し, 最早期興奮部位と考えられ, 食道内記録部位, 下位中隔右房, 高位右房の順に伝導した.冠静脈洞および高位右房からの頻回刺激でentrainment現象を認め, プログラム刺激でも頻拍はresetされ, 機序としてリエントリーが考えられた.冠静脈洞遠位部からの頻回刺激ではP波の波形はほぼ不変で, 刺激-P波間隔は210msと伝導遅延を認め, また近位部からの頻回刺激では, 150~170msへと短縮した.この所見は, 冠静脈洞遠位部が緩徐伝導 (slow conduction) 領域内の上流に位置することを示唆するものと考えられた、また高位中隔右房からのプログラム刺激により, 下位中隔右房の心房波が長い伝導時間で順方向性 (orthodromic) に捕捉されたことにより旋回路は右房の一部も含むマクロリエントリー路であることが推定された.
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