心電図
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12 巻, 3 号
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  • 中安 紀美子, 中屋 豊, 野村 昌弘, 藤野 和也, 伊東 進
    1992 年 12 巻 3 号 p. 269-276
    発行日: 1992/05/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    健常者20例, 左室負荷疾患患者 (本態性高血圧, 大動脈弁狭窄兼閉鎖不全, 僧帽弁閉鎖不全) 27例について前胸部36誘導点における心磁図を記録した.得られた記録からQRS波開始より2msecことに磁界図を作成した.Williamsonの方法を用いて推定dipoleを求め, 経時的に移動するmoving dipoleとして表示した.人体では身体各部の電気抵抗が一様でなく, dipoleは単一でないが, 健常群と左室負荷疾患群の心起電力を比較すると以下のような違いがみられ, 本法が左室負荷診断に有用であると考えられた.
    左室負荷症例では心電図QRS波高および体表面磁界の増大がみられない例においても, 磁界図の等価二重極を用いて推定したmoving dipoleではより高頻度に増大がみられた.本法により推定したdipoleは, 健常群および左室負荷群における心起電力の経時変化や特徴をよく反映し, 位置の情報についても把握することができた.また, moving dipoleによる方法では電流源から体表面までの距離にあまり依存せず, 電流源の大きさを比較的容易に推定できるので, 心起電力増大そのものの変化がとらえやすかった.
  • 住吉 正孝, 中田 八洲郎, 戸叶 隆司, 大野 安彦, 久岡 英彦, 小倉 俊介, 中里 祐二, 山口 洋
    1992 年 12 巻 3 号 p. 277-283
    発行日: 1992/05/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ヒス束内ブロック (BHB) 例における遠位ヒス束ペーシング (HB-P) の意義につき検討した.対象は高度および完全房室ブロックでHB-Pにより補充収縮と同一のQRS波形が得られた10例である.このうち, 同時に記録した捕捉収縮が右脚ブロック型もしくは左軸偏位を示した3例で, HB-Pにより正常QRS波形が得られ, その機序としてヒス束内機能的縦解離が示唆された.また, 補充収縮のH2-V時間とHB-P時のペーシングスパイクから心室興奮までの時間との関係では, 両者が一致したのは3例のみで, その他の例では±5から20msecの差を認めた.その中の1例では, HB-Pにより2種類の補充収縮と同一波形が得られ, 補充収縮がともにヒス東起源であることが確認された.ヒス東内の高度および完全房室ブロックにおけるHB-Pは, ヒス束内機能的縦解離の診断など, ヒス束の伝導性の評価に有用な方法である.
  • 石橋 寛, 飯沼 宏之, 安喰 恒輔, 並木 隆雄, 相良 耕一, 傅 隆泰, 加藤 和三
    1992 年 12 巻 3 号 p. 284-291
    発行日: 1992/05/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    特発性心室頻拍 (IVT) 14例を対象とし, これを持続型 (S群; 10例) , 非持続型 (NS群; 4例) に分けて, 安静時およびVT中の心電図, VTの運動誘発性, プログラム電気刺激誘発性, I・II・IV群抗不整脈薬の有効1生について比較検討した.安静時心電図におけるST-T変化, VT中のQRS波形・QRS幅において両群間に差がみられたが, 運動誘発性はともに乏しかった.電気生理学的検査での電気刺激によるVT誘発性はS群で高率であった.右室早期刺激間隔と誘発された頻拍の第1拍目あるいは自然発作時のVTと同一波形のrepetitive ventricular response (RVR) までの間隔との関係は多くが逆相関を示し, その頻度は両群間に差がなかった.薬剤効果では, Ia・IV群薬が高い有効性を示したが, 両群間に差はみられなかった.両群ともにその成因として主にリエントリーが考えられたが, 一部triggered activityの関与も考えられた.また, S・NS群は異なった臨床像を呈すると考えられた.
  • 宮本 正哉, 村上 暎二, 竹越 襄, 藤田 静, 津川 博一, 前田 俊彦, 宮川 松剛
    1992 年 12 巻 3 号 p. 292-298
    発行日: 1992/05/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    洞機能正常者14例を対象として洞電位直接記録法を用い, 過駆動 (overdrive) 後の洞房伝導時間 (SACT) の変化について検討した.さらに, 洞結節自動能と洞房伝導能との関連についても検討した.過駆動後にはSACTは有意に延長した (63.6±7.4mseGから112.7±61.8msec: p<0.01) .基本洞周期長 (BCL) と洞調律時のSACTとの間には正の相関が認められた (Y=26.8+0.04X, r=0.61: p<0.05) .洞調律時のSACTと過駆動後のSACTの延長率との間には負の相関が認められた (Y=910-12.9X, r=-0.71: p<0.01) .洞結節回復時間 (SNRT) および修正洞結節回復時間 (CSNRT) と洞調律時あるいは過駆動後のSACTとの間には相関は認められなかった.
    以上より, (1) 過駆動刺激により洞房伝導が抑制されること, (2) 洞調律時のSACTとBOLとの間には相関があるが, 過駆動後においては洞結節自動能と洞房伝導の間に関連がないこと, (3) 洞調律時のSACTが過駆動後のSACTの変化率に影響を及ぼすことが確認された.
  • 中村 和治, 八巻 通安, 立木 楷, 安井 昭二
    1992 年 12 巻 3 号 p. 299-309
    発行日: 1992/05/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    肥大型心筋症患者における心電図変化の特徴を正常群との隔たりを表現するdeparture mapを作成して検討した.対象は心エコー図にて中隔厚13mmをこえる肥大型心筋症患者24名で, この疾患群を後壁厚13mm以下のA群16名と13mmをこえるB群8名とに分類した.体表面電位図は87誘導点より記録, 各誘導点のQRS波形につき, (1) QRS開始より10, 20, 30, 40, 50, 60mseoの各電位, (2) QRS波形の時間積分値AQRS, (3) 心室興奮到達時間VATを求めた.Departure index (DI) を〔 (各計測値一正常群より求めた平均値) /正常群より求めた標準偏差〕の式にて算出, DIの体表面分布をdeparture mapとして表現した.DI≧2を+2SDareaとし異常正領域と考えた.A群, B群の相違は50・60mseo, AQRS, VATにて明瞭であり, それぞれのdeparture map上の+2SD areaは, A群では左前胸部上方・側胸部上方に, B群では左前胸部から側胸部・背部にかけて広範に出現した.心筋の肥大部位がdeparture mapに表現され, その推定が可能と考えられた.また, 50, 60mseo, AQRS, VATの各departure map上の+2SD areaの面積と, 壁厚和 (中隔厚+後壁厚) は, それぞれr=0.63~0.81の相関を示し心筋肥大の程度も推定可能と考えられた.肥大型心筋症の心電図変化の特徴は, 心筋の肥大部位に対応した心起電力の増大と心室興奮伝播遅延と考えられた.
  • 安部 良治, 山下 一弘, 出川 敏行, 円城寺 由久, 池田 隆徳, 杉 薫, 矢吹 壮, 町井 潔
    1992 年 12 巻 3 号 p. 310-319
    発行日: 1992/05/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    発作性心房細動 (PAF) を洞調律時に予知するためP波同期平均加算心電図 (SAE) の諸指標を器質的心疾患のない108例 {PAF (+) 54例 (PAF群) , PAF (-) 54例 (N群) } および洞調律の僧帽弁狭窄症 (MS) 20例 {PAF (+) 6例 (MS-PAF群) , PAF (-) 14例 (MS-N群) } で比較検討した.記録装置はVCM-3000を用い, (1) P波持続時間 (FPD) , (2) P波終末20msecのRMS電位 (L20) , (3) P波終末5μV以下の持続時間 (D5) の3指標を測定した.PAF群・N群間, MS-PAF群・MS-N群間の比較では, PAF群およびMS-PAF群で有意にFPD, D5が延長し, L20が減少していた.そして, (1) FPD>125msec, (2) L20≦3.0μV, (3) D5>28msecの3条件を用いて, PAF群・N群間およびMS-PAF群・MS-N群間の判別を試みると, (1) + (2) の診断基準でPAF群とN群を (感受性85%, 特異性96%) , (2) + (3) の診断基準でMS-PAF群とMS-N群を (感受性80%, 特異性100%) 判別し得た.器質的心疾患のない例と同様にMS例でもP波同期SAEにより洞調律時にPAFの予知が可能と思われた.
  • 川久保 清, 柳堀 朗子, 青木 和夫, 郡司 篤晃, 野崎 彰, 大城 雅也, 井上 博, 杉本 恒明, 坂本 静男
    1992 年 12 巻 3 号 p. 320-326
    発行日: 1992/05/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    外見上健康人における運動誘発心室期外収縮 (PVC) の頻度および出現様式について検討した.第I研究では, 心疾患の既往のない男性246人 (平均年齢43.4歳) , 女性347人 (平均年齢44.5歳) を対象とし, トレッドミル負荷試験時の運動誘発PVCの性状と出現時相について検討した.運動誘発PVCは男性25.2%, 女性24.0%にみられ, 大部分は単形性, 5個未満であった.運動誘発PVC例の62%は, 負荷終了直前, 直後の心拍数の高い時相でみられ, 右脚ブロック波形や多形性は68%であった.第II研究では, 運動誘発PVC例25人について, ホルター心電図との比較を行った.運動負荷時高い心拍数でPVCのみられた例では, ホルター記録時のPVCの数は少なく, 2連発も少なかった.運動負荷時低い心拍数でPVCのみられた例では, ホルター記録時にはPVCの数が多かった.外見上健康人の運動誘発PVCは, 運動負荷時の出現時相から誘因が異なるものがあると思われた.
  • 丸山 隆久, 大江 透, 岡野 嘉明, 栗田 隆志, 相原 直彦, 鎌倉 史郎, 松久 茂久雄, 下村 克朗
    1992 年 12 巻 3 号 p. 327-335
    発行日: 1992/05/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    心室再分極異常はしばしば重篤な不整脈と関連し, 体表面心電図では従来「QT延長」と表現される.しかしT波の終点の決定が曖昧なまま扱われているという問題がある.本研究ではT波とU波を厳密に区別して再分極過程の体表面心電図上の諸指標を設定し, 健常群 (15名) においてIa群抗不整脈薬投与前後で比較した.さらにTorsades de Pointes (TdP) 群 (8名) においてTdP発生時と非投与時とで比較した.健常群では, Ia群抗不整脈薬投与によりQaTc (QRSの始まりからT波の頂点までの時間をBazett's formulaで補正) が有意に延長し, その変化度はキニジン血中濃度と相関した.したがってQaTcの延長は通常の薬理学的な反応と考えられた.TdP群では, U-amp (U波の振幅) が有意に増大した.すなわち, 異常時 (TdP発生時) の変化の特徴はU波の増大であり, これがT波とU波の融合をもたらしている.
  • 碓井 雅博
    1992 年 12 巻 3 号 p. 336-350
    発行日: 1992/05/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    3種類の心室細動閾値測定法を用いてIC群薬のflecainide, III群薬のbretylium, d-sotalol, E-4031の抗細動効果を比較検討した.イヌの健常心において, 50Hz持続電気刺激法による心室細動閾値 (VFT) は, flecainide, d-sotalol, E-4031で上昇したが, 拡張期興奮閾値を上昇し, 伝導時間を延長したflecainideでVFTは著明に上昇した.Proteaseによる局所的出血性壊死心において, flecainideは連続期外刺激法, トレイン刺激法によるVFTをともに上昇させたが, III群薬はVFT測定法により異なる効果を示した.不応期延長の程度が大であったd-sotalolとE-4031で連続期外刺激法によるVFTが上昇し, 抗アドレナリン作用をもつbretylium, β遮断作用をもつd-sotalolでトレイン刺激法によるVFTが上昇した.以上より50Hz持続電気刺激法は興奮性, 伝導性, 不応期の影響を受け, 連続期外刺激法は不応期延長を, トレイン刺激法は交感神経抑制作用, 伝導抑制作用を反映することが示唆された.
  • 鈴木 恵子, 戸山 靖一
    1992 年 12 巻 3 号 p. 351-357
    発行日: 1992/05/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    心筋梗塞の責任冠動脈を非観血的方法で推測するために, 陳旧性後下壁梗塞の責任冠動脈が右冠動脈 (RC) か左回旋枝 (CX) かを, 心電図, ベクトル心電図, 体表面電位図, タリウム・シンチグラム (SCG) の所見を用い, 総点数法で判定した.総点数法は各検査ことにいくつかのパラメータを設け, 冠動脈造影法 (CAG) で責任冠動脈が判定できたRC群とCX群の出現頻度を比べて点数を出し, 各症例ことの総点数で責任冠動脈がいずれかを判別した.そして, CAGでの判定との一致度を調べた結果, 心電図での適中率は81.7%, ベクトル心電図では86.7%, 体表面電位図では80.7%, SCGでは84.2%であった.さらに適中率を向上させるために, この四つの検査成績を組み合わせることにより, 適中率は92.0%まであげることができた.なお総点数法はベクトル心電図で再現性が確かめられている.
  • 川良 徳弘, 佐竹 修太郎, 床井 伸介, 小竹 茂, 佐崎 なほ子, 山下 勝弘, 比江嶋 一昌
    1992 年 12 巻 3 号 p. 358-366
    発行日: 1992/05/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    後中隔副伝導路を有する潜在性WPW症候群の3例に高周波力テーテル焼灼術を適用した.3例中2例は4薬剤に抵抗して発作が頻発するため, 残りの1例は頻拍により失神を呈し, 薬剤によると考えられる肝機能障害をきたしたため本法の適応と判断した.副伝導路を逆行路とする室房伝導時に冠静脈洞内をマッピングした.心房内電位は冠静脈洞開口部より1~2cmのところで最早期に記録され, ここに13.56MHzの高周波を出力20~40Wで20~50秒間, 双極通電した.通電中副伝導路のブロックが生じたが, 数分後回復がみられたため, 頻拍が誘発不可能となるまで通電を繰り返した (13~80回) .3例とも副伝導路の逆伝導能は低下した.1例で, 2日目以降副伝導路の逆伝導は消失した.2例は薬剤服用中で, 術後14~18ヵ月間発作は起こっていない.冠静脈洞内からのアプローチは多くの回数を要し, 副伝導路の離断にいたらない場合もあることから問題があると思われた.
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