心電図
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13 巻, 1 号
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  • 佐藤 俊明, 呉 博威, 清末 達人, 有田 眞
    1993 年 13 巻 1 号 p. 3-9
    発行日: 1993/01/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    各種抗不整脈薬のATP感受性K+チャネルに対する効果をモルモット心室筋細胞を用いて検討した.ランプ波膜電位固定により得られる疑似定常状態膜電流に代謝阻害剤2, 4-dinitrophenol (50μM) を添加すると, -70mVより脱分極側での外向き電流が著明に増力口した.この電流はglibenclamide (1μM) 添加により完全に抑制されるのでATP感受性K+電流 (IK, ATP) と考えられる.Ia群のcibenzoline (10μM) , disopyramide (30μM) , procainamide (100μM) , およびIc群のflecainide (10μM) は, このIK, ATPをそれぞれ平均値で95%, 78%, 76%, 67%抑制した.これらの濃度はflecainideを除きほぼ治療域の濃度に相当する.これに対しIb群のmexiletine (30μM) , Ic群のpilsicainide (50μM) およびIII群のE4031 (10μM) は治療域の5倍以上の濃度でもIK, ATPを抑制しなかった.以上の結果をふまえ, Ia群抗不整脈薬によるIK, ATP抑制の虚血不整脈に対する意義と低血糖発作における役割について考察する.
  • 村川 裕二, 郭 宗徳, 井上 博
    1993 年 13 巻 1 号 p. 10-18
    発行日: 1993/01/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    麻酔開胸犬に用い抗不整脈薬が電気的除細動効率に与える影響を比較し, その変化を推測する指標を求めた.両心室に縫着したチタニウム電極を介して心室細動誘発10秒後にショックパルスを与え, 除細動に成功した最小のピーク電流を除細動閾値 (DFT) とした.Disopyramide群 (n=6) では, 投与量による一定のDFT変化はなかった.Mexiletine (n=6) とflecainide (n=6) は用量依存性にDFTを上昇させた (M: r=0.49, F: r=0.82) .両薬剤によるDFTの上昇は, 右室伝導時間の変化に相関しており (M: r=0.58, F: r=0.87) , flecainide群では心室ペーシング時のQRS幅の延長もDFTの上昇と関連していた (r=0.82) .III群のE-4031では有意ではないが, DFTは用量依存性の低下傾向を示し, 右室有効不応期の延長と負の相関を示した (r=0.48) .除細動効率の悪化は薬剤濃度や心室興奮伝導時間をモニターすることにより, 予防できることが示唆された.
  • 堤 健
    1993 年 13 巻 1 号 p. 19-31
    発行日: 1993/01/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    In vitroの実験より, Class III actionを有する抗不整脈薬の逆使用頻度依存性ブロック (reverse use dependent block: RUDB) の出現様式を検討し, 催不整脈作用との関連につき考察を力口えた.その結果使用した薬剤 (auinidine, amiodarone, E-4031, MS-551) により, RUDBの出現様式に差を認めた.徐脈性のRUDBを有する薬剤では早期後脱分極 (early after depolarization: EAD) が誘発された.III群薬剤により誘発されたEADは, (1) 外液力リウム濃度の上昇, (2) K+ohannel opener, (3) IIb群薬剤, (4) Ca拮抗薬により抑制可能であった.また再分極遅延による受攻期延長作用 (arrhythmogenic diastolic window: ADW) が, 催不整脈作用に関係している可能性が示唆された.Torsades de Pointesの成立には, triggered activityに加えreentryの関与が示唆されることを実験的に示した.
  • 藤木 明, 谷 昌尚, 水牧 功一, 吉田 繁樹
    1993 年 13 巻 1 号 p. 32-38
    発行日: 1993/01/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    I群薬の心室性不整脈に対する催不整脈作用の原因は不明な点が多い.そこで不整脈の機序が明らかな房室回帰性頻拍 (AVRT) を対象にI群薬の催不整脈作用を電気生理学的に検討した.対象は頻拍に副伝導路が関与した14例で顕性WPW症候群6例, 不顕性WPW症候群8例.いずれもI群薬投与にかかわらずAVRT (房室結節を順伝導し副伝導路を逆伝導する) が誘発可能であった.顕性WPW症候群における心房刺激時の誘発促進の機序はI群薬により副伝導路の順伝導のみが抑制され逆伝導が保たれ―方向性伝導が容易に生じるためと考えられた.不顕性WPW症候群のI群薬による誘発促進は比較的まれだが, 誘発zoneが拡大しinoessant型頻拍となる例もあり, 不応期延長に比べ伝導時間延長作用が強いことが原因と考えられた.AVRTに対するI群薬の催不整脈作用の機序には旋回路内の―方向性伝導の促進, 伝導時間延長が関与した.
  • ―発作性心房細動, 発作性上室性頻拍に対する効果―
    井野 威, 新 博次, 早川 弘一
    1993 年 13 巻 1 号 p. 39-47
    発行日: 1993/01/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    発作性心房細動 (PAF) , 発作性上室性頻拍 (PSVT) に対するpirmenol, Pilsicainide単回経口投与の頻拍停止効果を検討した.
    〔対象と方法〕発症後5日以内のPAF19例, PSVT14例にそれぞれ封筒法にてpirmenol200mg, ないしpilsicainide150, 200mgを経口投与後, 頻拍持続状況, 薬剤血漿中濃度, 心電図変化を検討した.
    〔結果〕頻拍停止効果はPAFでpirmenol: 44.4%, pilsicainide: 60.0%, PSVTはpirmenol: 57.1%, pilsicainide: 85.7%であった.なお頻拍停止の85%は投与後60分以内にみられた.非停止例の投与90分後血漿中濃度は1例を除き頻拍停止時血漿中濃度とほぼ同等であった.特にpilsicainideはQRS幅, PSVT周期の有意に延長させたが, 副作用は認めなかった.
    〔結語〕Pirmenol, piliicainide単回経口投与は優れた頻拍停止効果を示し, 安全性も高く, 有用な頻拍停止法と考えられた.しかし, pilsicainideのQRS幅延長作用には注意が必要である.
  • 栗田 隆志, 大江 透, 片桐 有一, 瀧 晋一, 新城 哲治, 清水 渉, 高木 洋, 相原 直彦, 鎌倉 史郎, 下村 克朗
    1993 年 13 巻 1 号 p. 48-60
    発行日: 1993/01/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    〔目的〕催不整脈作用によるTorsades de pointes (TdP) とincessant型VT (1-VT) の特徴を明らかにする.
    1.TdP〔方法〕Ia投与中にTdPを発症したTdP (+) 群 (23例) と発症しなかったTdP (-) 群 (40例) に関して, TdPの発生頻度, 血中濃度, 性別, 血清K, OTc時間を比較.TdP時のmonophasic action potential (MAP) を記録.〔結果〕発生頻度は0.5%で, 血中濃度は低値であった.TdP (+) 群は女性が多く, 血清K値は低く, QTcは延長していた.MAPにおいて早期後脱分極が高率に観察された.
    II.I-VT〔方法〕: 再発性単形性VTの患者65例にIa, Ib, IV群の165剤を洞調律中に静注し, I-VTの発生頻度とその特徴を検討.I-VT (+) 群とI-VT (-) 群で種々の臨床的特徴を検討.ジソピラミド投与者で, 投与前後のQRS時間の変化率を比較.〔結果〕発生頻度は16/185剤 (9%) .I-VTはリエントリー性VTのみに誘発され, clinical VTと同形で心拍数は遅く, 長い連結期を有するPVCより開始した.ORSの延長率はI-VT (+) 群がI-VT (-) 群に比して有意に大であった.
  • 郭 宗徳
    1993 年 13 巻 1 号 p. 61-75
    発行日: 1993/01/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    新しいIC群抗不整脈薬の心室細動予防効果および電気的除細動に及ぼす影響を明らかにするため, 麻酔開胸犬51頭で, (1) flecainide, Propafenone, pilsicainideの心室細動閾値 (VFT) に及ぼす効果を3種類のVFT測定法で検討し, (2) flecainideの除細動閾値 (DFT) に及ぼす効果を検討した.右室有効不応期は各薬剤により用量依存的に延長したが, その空間的不均一性は変化しなかった.右室内伝導時間も用量依存的に延長したが, その程度は短い基本周期で大きかった.持続刺激法, train刺激法, 期外刺激法によるVFTは用量依存的に上昇し, 期外刺激法による反復性心室興奮閾値 (RET) は上昇傾向を示した.DFTについては, 低用量のflecainideはこれを上昇させなかったが, 高用量では上昇させた.IC群薬は強力な心室細動予防効果をもつが, 高用量では除細動を困難にする方向に作用するので, 除細動器を植え込まれた例では注意が必要である.
  • 新 博次, 平山 悦之, 井野 威, 大村 和子, 斎藤 寛和, 早川 弘一
    1993 年 13 巻 1 号 p. 76-82
    発行日: 1993/01/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    心室性不整脈の薬物療法において第一選択薬が無効の場合, いかなる抗不整脈薬を第二選択とすべきかにつき検討した.ホルター心電図にて心室性期外収縮5, 000/日以上を示し, Olass ICのみならず他のClassの薬剤の効果判定を行った46例, またβ-blookerのみならず他のClassの薬剤の効果判定を行った33例を対象とし, Class IC, β-blockerそれぞれの無効群において, 他のClassの薬剤に対する効果を検討した.Class IC無効群ではβ-blockerの有効率が9/10 (90%) と最も高く, これに対しβ-blooker無効群ではOlass ICの有効率が10/11 (91%) と最も高率であった.
    Olass Ia, Ib無効例において, Class ICの有効率が高いことを考慮すれば, 第一選択薬としてのOlass Ia, b, あるいはβ-blookerが無効であった場合にはClass ICを, さらにClass ICが無効であったならば, β-blookerの使用が勧められる.
  • 吉田 明弘, 井上 智夫, 土井 智文, 尾家 伸之, 横山 光宏
    1993 年 13 巻 1 号 p. 83-94
    発行日: 1993/01/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    右室流出路起源心室性頻拍の臨床像について検討した.対象は器質的心疾患を認めず左脚ブロック型下方軸をもつ心室性頻拍患者25例 (持続性9例, 非持続性16例) で, トレッドミル運動負荷試験, isoproterenol負荷試験, 電気生理学的検査, β遮断剤・Ca拮抗剤・Ia群およびIb群抗不整脈剤の薬効評価, ホルター心電図による心室性頻拍の先行洞周期と連結時間の関係について検討した.トレッドミル運動負荷試験では86%の陽性であり, isoproterenol負荷試験では77%に陽性であったのに対し, プログラム刺激での誘発率は23%であった.β遮断剤は88%に有効で他の薬剤に比べ有効率が高かった.またホルター心電図では71%に先行洞周期と連結時間の間に正相関を認めた.以上より右室流出路起源心室性頻拍は運動やカテコラミンによって誘発されやすく, β遮断剤が有効で, その機序としてはtriggered aotivityまたはenhanoed automaticityが考えられた.
  • 北沢 仁, 相沢 義房, 池主 雅臣, 草野 頼子, 柴田 昭, 小田 栄司
    1993 年 13 巻 1 号 p. 95-100
    発行日: 1993/01/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    完全房室ブロックに合併した左脚ブロック型の持続性心室頻拍 (VT) に頻回刺激を加えると, エントレーンメント現象が確認され, リエントリーが頻拍の機序と考えられた.VT中に分裂電位が記録される右室流出路から頻回刺激を行うと, 体表面心電図は不変のままVTはエントレーンされた.刺激部位には直接捕捉される成分と, 緩徐伝導路を経た1拍前の刺激で捕捉される成分が記録され, 局所電位の融合と考えられた.
    緩徐伝導路を刺激すれば, 体表面心電図には変化を伴わずにVTはエントレーンされる一方で, 局所電位にはこのような融合を認めることが期待される.本例の局所電位の所見は体表面心電図には認められない, リエントリー回路内に限局した融合でconcealed fusionというべき所見と考えられた.
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