心電図
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13 巻, 3 号
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  • 向井 誠時, 早野 順一郎, 藤浪 隆夫
    1993 年 13 巻 3 号 p. 239-247
    発行日: 1993/05/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Complex demodulation (CDM) によって心拍および血圧変動の高周波 (HF) 成分と低周波 (LF) 成分の振幅を評価し, 運動に対する循環系自律神経反応を検討した.健常者11名に3強度の定常エルゴメーター負荷を行ったところ, 運動強度に応じてRR間隔は短縮 (p<0.01) , 収縮期血圧は上昇した (p<0.05) .RR間隔のHF成分は運動開始直後より低値となったが (p<0.05) , LF/HFは運動開始時に一過性に上昇するのみであった.運動により収縮期血圧のHF成分は増加したが (p<0.05) , LF成分は85%の強度でのみ増加した (p<0.05) .最大握力の30%で限界までhandgripを行ったところ, RR間隔は時間とともに短縮し (p<0.Ol) , そのHF成分は減少したが (p<0.01) , LF成分とLF/HFは変化しなかった.収縮期血圧とそのLF成分はともに増加した (p<0.05) .CDMにより得た心拍変動のHF成分と収縮期血圧変動のLF成分は, それぞれ運動中の心臓迷走神経活動および交感神経活動の連続的な指標となり得ると考える.
  • 宍戸 稔聡, 大黒 哲, 野々木 宏, 宮崎 俊一, 後藤 葉一, 斉藤 克己, 土師 一夫
    1993 年 13 巻 3 号 p. 248-253
    発行日: 1993/05/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    急性心筋梗塞症例における加算平均心電図 (SAE) 所見の経時的変化について, 発症後24時間以内の初回急性心筋梗塞症34例 (前壁19, 下壁15) を対象として梗塞部位別に検討した.発症後24時間以内, 48時間後, 1週後, 2週後, 3週後, 4週後の時点でSAEを記録した.SAE各指標は時間経過とともに変動し, 同一症例でも発症24時間以内では, total filterd QRS duration (TFD) , low amplitude signal duration under 40μV (LAS40) は長く, root mean square voltage for last 40mseo (RMS40) は低かった.発症2週以降ではSAE各指標は比較的安定していた.また下壁梗塞症は前壁梗塞症に比し, TFD, LAS40は長く, RMS40は低い傾向にあった.LP陽性例は24時間以内では8例であったが, 48時間後では4例と減少した.2週以降の時点でLPが陽1生であった5例中1例で, 持続性心室頻拍が発現した.SAEを心筋梗塞後の評価に用いる場合, 梗塞部位, 記録時期について考慮する必要があると考えられた.
  • ―心電図QT間隔および陰性T波からの検討―
    秋満 忠郁, 丹羽 裕子, 三好 博, 井上 健, 原 政英, 前田 利裕, 犀川 哲典, 坂田 利家
    1993 年 13 巻 3 号 p. 254-264
    発行日: 1993/05/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    再灌流療法を施行した急性心筋梗塞例の心電図を経時的に記録, 再灌流群と非再灌流群におけるQT間隔および陰性T波の経時的変化の違いを明らかにし, 梗塞責任冠動脈再灌流の有無および慢性期心機能を非観血的に判定できるか否かを検討した.再灌流群では非再灌流群に比し梗塞発症後早期にQT間隔が延長し, 陰性T波が出現した.また発症1ヵ月後のQT間隔は, 非再灌流群が再灌流群に比し有意に延長していた.梗塞発症後24時間以内の10%以上のQTc間隔延長または-0.1mV以上の陰性T波出現を再灌流の指標としたときの感度, 特異度はそれぞれ95%, 73%と80%, 91%であり, 心筋梗塞発症後早期のQT間隔延長および陰性T波出現は梗塞責任冠動脈再灌流の非観血的指標になりうると考えられた.また, 1ヵ月後のQT間隔は前壁梗塞において慢性期左室駆出率と有意な相関を認め, 慢性期のQT間隔は慢性期左室収縮機能の指標として臨床的に有用であると考えられた.
  • ―Holter心電図および体表面電位図を用いた検討―
    土井 哲也
    1993 年 13 巻 3 号 p. 265-274
    発行日: 1993/05/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Holter心電図で記録された右室起源の心室性期外収縮 (VPC) を体表面電位図で右室流出路起源 (RVOT群) 44例と, 右室流入路または右室心尖部起源 (RVlA群) 21例に分類し, 発生起源別に器質的心疾患の有無とその内容およびLown分類による臨床的特徴の検討, さらにR-R間隔二次元表示法による発生機序推定を行った.RVOT群VPCは健常心筋由来で単発性, 連結時間は固定性で心拍数に非依存性のものが多く, 発生機序として旋回時間の安定したreentryが推定された.一方, RVlA群VPCは傷害心筋由来で連発性, 連結時間は変動性で先行R-R間隔と正相関するものが多く, 発生機序としてtriggered activityが推定されたが, 施回時間が不安定なreentryの可能性も考えられた.以上のようにVPCは発生起源により臨床的特徴, 発生機序が異なるため治療, 予後を含め発生起源別の検討が重要であり, このために体表面電位図によるVPC発生起源同定は有用な方法と考えられた.
  • 池田 隆徳, 杉 薫, 円城寺 由久, 山下 一弘, 安部 良治, 二宮 健次, 矢吹 壮, 山口 徹
    1993 年 13 巻 3 号 p. 275-281
    発行日: 1993/05/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    リエントリーを機序とする心室頻拍 (VT) において早期刺激による誘発ゾーン (最長値, 最短値) とVT周期との関係を検討した.対象は, 体表面心電図でVTを認め, 心室早期刺激でVT誘発が可能で, その機序がリエントリーであると診断された24例である.VT誘発にisoproterenol負荷を要した症例は対象から除外した.器質的心疾患は13例 (54%) に認められた.相関関係は, VTを誘発し得た早期刺激数の違いにより, 単発早期刺激 (14) 例と複数発早期刺激 (10) 例に分類し, 検討した.単発早期刺激例は, 誘発ゾーンの最長値, 最単値ともに強い正相関を示した (p<0.01) が, 相関係数は最長値の方で大きかった (r=0.84 VS r=0.75) .また, 単発早期刺激では器質的心疾患合併 (9) 例に限定し, 両者の相関性を検討したが, 相関関係に明らかな変化を認めなかった.複数発早期刺激例は最長値で正相関の傾向を示したが, 最短値では相関を認めなかった.VT周期から誘発可能な最期刺激連結期を推定することは, 特に単発早期刺激を行う場合において可能と考えられた.
  • 神田 章弘, 小沢 友紀雄, 斎藤 穎, 谷川 直, 渡辺 一郎, 矢久保 修嗣, 笠巻 裕二, 花川 和也, 近藤 一彦, 小島 利明, ...
    1993 年 13 巻 3 号 p. 282-293
    発行日: 1993/05/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    コンピューター処理を用いず, 狭帯域アナログバンドパスフィルタ, high resolution amplifierによる心拍ことの心室遅延電位 (LP) 連続記録法を開発し, 加算平均心電図法では検討不可能な心拍ことのfiltered QRS durationおよびLPの形態を観察した.加算平均心電図法にてLP陽性の症例は, 本実時間LP連続記録法にてもLPの記録が可能であった.一部の症例で心拍ことにfiltered QRS durationおよびLP形態の変動が認められる症例があった.LP陽性の心室性期外収縮例では, 心室性期外収縮前の正常心拍のfiltered QRS durationの方が心室性期外収縮後の正常心拍のfiltered QRS durationよりも長かった.本実時間LP連続記録法はLPの心拍ことの変動を記録し, その経時的変化を短時間にとらえることが可能であった.本法は, SAEにおいてLP陽性と診断された症例に対し, 心拍ことにLP変動の有無などを検討できる新しいLPの検査法であり, 臨床的有用性が示唆される.
  • I. 健常者における検討
    高瀬 理恵, 吉田 早苗, 山田 彰, 大手 信之, 早野 順一郎, 鈴木 賢二
    1993 年 13 巻 3 号 p. 294-300
    発行日: 1993/05/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    心疾患を疑わせる自覚症状がなく循環器系薬剤を服用していない35~59歳の男性2, 046名, 女性310名についてHR-STループの検討を行った.座位自転車エルゴメータを用いて, 男性は50W, 女1生は25Wより開始する多段階運動負荷テストを行い, 血圧とCM5誘導心電図を観察した.15秒ごとの加算心拍波形によりJ点より60msecの位置でST偏位を計測し, 15秒間の平均心拍を心拍数とした.水平または下向型で0.1mV以上のST低下を陽性とする従来の診断基準では, 男性の3.0%, 女性の12.6%で陽性であった.これに対し, HR-STループが時計回転を示したもの (ループ (+) ) の頻度は男性の9.9%, 女性の8.6%であった.ST (-) /ループ (+) 群には血圧の上昇や, 下肢の疲労のために目標心拍数まで運動を継続できなかった者の頻度が高かった.HR-STループの異常は負荷終了後の酸素需給の異常を反映している可能性が示唆された.
  • 南家 俊彦
    1993 年 13 巻 3 号 p. 301-311
    発行日: 1993/05/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    QRS区間内の微小高周波成分を検出し, その経時的な形態変化から心室内興奮伝播様式の解析を行った.検出には時間情報の歪みが小さく, 濾波特性の変更が容易なsubtraction法を用い最適な濾波特性を求めた.対象は健常例 (N群) , 右, 左脚ブロック例 (R, L群) , 右, 左脚ブロック型心室期外収縮例 (VR, VL群) とした.N群は初期低振幅, 中期高振幅, 後期低振幅の3成分を形成した.R群はN群より中期の振幅は低く, 後期の持続時間は延長した.L群は中, 後期の分離は不明瞭で, 持続時間は著明に延長し振幅は低値を示した.VR, VL群は初期の持続時間は延長し振幅は低値を示した.以上より伝導系を介する興奮は持続時間は短く, 電位変動が大で高周波成分を多く含んでいた.伝導障害, 興奮発生・進行の異常による心室筋内伝導の場合は持続時間は延長し, 電位変動が小さいと考えられた.本研究により心室内興奮伝播様式の鑑別が可能と考えられた.
  • 鷲塚 隆, 相沢 義房, 池主 雅臣, 曽我 悟, 宮島 武文, 内藤 直木, 草野 頼子, 高橋 和義, 内山 博英, 北沢 仁, 柴田 ...
    1993 年 13 巻 3 号 p. 312-319
    発行日: 1993/05/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例は21歳男性.15歳時より動悸発作出現, 左軸偏位+右脚ブロック型の持続性心室頻拍 (VT) が記録された.諸検査で心臓に異常は認めず, VTはverapamil静注で停止したが, 同薬360mg内服にても再発を繰り返した.右室心尖部よりの心室早期刺激で, 自然発作と同一のVTが誘発され, 頻回刺激でエントレーメント現象が確認され, 機序はリエントリーと考えられた.頻拍中のマッピングで左室心尖部中隔側にQRS波の開始より30~60msec先行する電位が1.0×1.0cm以上の領域に同定された.VT中のペーシングで融合のないエントレーメント現象を示す部位での通電でVTは数秒後に停止したが, 再誘発され, このときわずかにORS波形の変化を認めた.その近傍で脚様の電位がQRS波の開始に45msec先行する部位での通電によりVTは停止し, 以後誘発不可能となった.術中, 術後に合併症はなく, 特発性心室頻拍例に対する本法の有用性が示唆されたが, 小さな局所電位の意義とリエントリー回路の必須な部位の同定には, いまだ検討の余地があると思われる.
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