心筋表面を走行する冠動脈が異常に収縮して心筋が虚血に陥った場合にその異常収縮を冠動脈の攣縮 (冠攣縮) と定義する.冠攣縮によって生ずる典型的な症候群が異型狭心症である.異型狭心症は1959年Prinz-metalらによって記載されたが, 彼らがこの症候群の特徴としてあげたいくつかの所見のうち現在でも通用するのは, 安静時に出現することと発作が心電図のST上昇を伴うことの二つである.しかしながら冠攣縮の発作はSTの上昇のみでなく下降を伴うこともしばしばであり, また同一の症例においても発作の初期あるいは発作が軽度の時はST低下, 発作の極期あるいは発作が強い時はST上昇が出現することも稀でないので, 現在では冠攣縮による狭心症を一括して冠攣縮性狭心症と呼ぶのが普通である.冠攣縮の発作は特に夜間から早朝にかけての安静時に出現しやすく, 日中の労作によっても発作は通常は誘発されない.筆者らが71例の異型狭心症患者においてホルター心電図を記録した成績によると, 2, 067回の虚血発作のうち52%は午前0時から8時にかけての8時間に出現していた.しかも発作の67%は自覚症状のない無症候性心筋虚血であった.
抄録全体を表示