種々の基礎疾患により開心術を行った生後2日より85歳までの137症例より心房筋または心室筋標本を得, 酵素処理により単一心筋細胞を作成, 細胞全膜電位固定法を用いてNa
+電流を測定した.はじめに, 生後2日より63歳までの心臓移植11症例より, 同一個体よりの心房, 心室筋細胞のNa
+電流を測定したところ, 単位膜容量あたりの電流値はそれぞれ, 1.3±0.2nA/pF, 1.7±0.3nA/pFと有意な差がなかった.チャネルカイネティクスならびにリドカインの作用にも, 心房筋, 心室筋の間で有意差を認めなかった.次に, すべての症例より得た測定値につき, 患者の種々の要因とNa
+チャネルの性質との関係を検討した.膜容量, 最大内向き電流値, 最大コンダクタンス, 活性化ならびに不活性化の電位依存性を示すパラメーターと, 組織 (心房筋か心室筋か) , 性別, 年齢, 基礎疾患との関係を統計処理によって検討したところ, 膜容量, 最大内向き電流値と50%不活性化を示す電位のみが, 患者の年齢と関連をもつことが示された (n=137, p<0.05) .
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